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二人のルール
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少し前までは食べるのが面倒だと言っていた杏さんが、最近では僕の作った料理を食べて美味しいと言ってくれる。
なんとなくだけど、料理を作る僕を杏さんが必要としてくれているような気がしてくるから不思議だ。
以前に比べて、食事をしている時の杏さんの表情が柔らかくなってきたようにも感じる。
せめて僕が一緒に暮らしている間は、毎日ちゃんとした食生活を送ってもらおう。
食事を終えると杏さんはお風呂に向かい、僕はその間に洗い物を済ませた。
食材を見ながら明日の朝食と弁当の献立を考え、仕込みがちょうど済んだタイミングで杏さんが入浴を済ませてリビングに戻って来たので、僕もお風呂に入ろうと着替えを持って浴室に向かう。
もちろんだけど、浴室も無駄に広い。
これは風呂掃除が大変そうだ。
このゴージャスなマンションは杏さんの所有物なので、僕は家賃を払わなくてもいいらしい。
ここにいる間、家事全般は僕がやる事になっている。
僕が家事をする分、食費や光熱費は負担してくれると杏さんが言うので、ありがたくそのご厚意に甘えることにした。
昨日の晩に杏さんと二人で簡単に決めたルールだ。
杏さんは普段、下着以外の洗濯物をすべてクリーニング業者に頼んでいると言っていた。
だから昨日までこの部屋には洗濯機というものが存在しなかった。
洗濯機だけでなく、料理をしないからか冷蔵庫もなかった。
飲み物はどうするんだろうと思ったらウォーターサーバーは完備だし、ドリンク用の小さな冷蔵庫がリビングやベッドルームなど各部屋に備え付けてあるらしい。
さすが、超高級マンション。
庶民の僕には理解できない無駄な便利さだ。
浴室についてるミストサウナとかジャグジーとか、こんなの必要か?
とりあえず今日からこの部屋には、僕の部屋から運び込んだ冷蔵庫と洗濯機がある。
庶民の僕が家事をするには必要なものだ。
この広さが無駄だと思ったけれど、広い浴槽で思いっきり足を伸ばしてお湯に浸かれるってとこだけは悪くないな。
僕がお風呂から上がると、杏さんはソファーに座ってビールを飲みながらノートパソコンとにらめっこしていた。
会社であれだけ仕事をしておいて、家にまで仕事を持ち帰っているんだろうか?
それは杏さんが就業時間内に仕事がさばけないというわけではなく、与えられた以上の仕事をしているからいつも多忙なんだと思う。
僕の姿に気付いた杏さんが、リビングの隅の小さな冷蔵庫を指差した。
「ビールなら冷えてる。飲んでいいぞ」
「いただきます」
僕が冷蔵庫からビールを取り出すと、杏さんは僕に『向かいのソファーに座れ』と目で促した。
それにしてもでかいソファーだな。
こんなの僕の住んでた部屋に二つも置いたら、一部屋塞がっちゃうよ。
「さて……早速、昨日の話の続きだ。一緒に住むと言っても、基本的に部屋は別々。お互いの部屋には勝手に入らないこと」
「掃除はどうします?」
「留守中はしないで欲しい。掃除して欲しい時にはこちらから頼むようにする」
「わかりました」
そうだ、掃除道具も用意しておかないといけないな。
広い床の上をお掃除ロボットが勝手に走り回って綺麗にしてくれるので、フローリングの掃除は少しラクできそうだ。
なんとなくだけど、料理を作る僕を杏さんが必要としてくれているような気がしてくるから不思議だ。
以前に比べて、食事をしている時の杏さんの表情が柔らかくなってきたようにも感じる。
せめて僕が一緒に暮らしている間は、毎日ちゃんとした食生活を送ってもらおう。
食事を終えると杏さんはお風呂に向かい、僕はその間に洗い物を済ませた。
食材を見ながら明日の朝食と弁当の献立を考え、仕込みがちょうど済んだタイミングで杏さんが入浴を済ませてリビングに戻って来たので、僕もお風呂に入ろうと着替えを持って浴室に向かう。
もちろんだけど、浴室も無駄に広い。
これは風呂掃除が大変そうだ。
このゴージャスなマンションは杏さんの所有物なので、僕は家賃を払わなくてもいいらしい。
ここにいる間、家事全般は僕がやる事になっている。
僕が家事をする分、食費や光熱費は負担してくれると杏さんが言うので、ありがたくそのご厚意に甘えることにした。
昨日の晩に杏さんと二人で簡単に決めたルールだ。
杏さんは普段、下着以外の洗濯物をすべてクリーニング業者に頼んでいると言っていた。
だから昨日までこの部屋には洗濯機というものが存在しなかった。
洗濯機だけでなく、料理をしないからか冷蔵庫もなかった。
飲み物はどうするんだろうと思ったらウォーターサーバーは完備だし、ドリンク用の小さな冷蔵庫がリビングやベッドルームなど各部屋に備え付けてあるらしい。
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庶民の僕には理解できない無駄な便利さだ。
浴室についてるミストサウナとかジャグジーとか、こんなの必要か?
とりあえず今日からこの部屋には、僕の部屋から運び込んだ冷蔵庫と洗濯機がある。
庶民の僕が家事をするには必要なものだ。
この広さが無駄だと思ったけれど、広い浴槽で思いっきり足を伸ばしてお湯に浸かれるってとこだけは悪くないな。
僕がお風呂から上がると、杏さんはソファーに座ってビールを飲みながらノートパソコンとにらめっこしていた。
会社であれだけ仕事をしておいて、家にまで仕事を持ち帰っているんだろうか?
それは杏さんが就業時間内に仕事がさばけないというわけではなく、与えられた以上の仕事をしているからいつも多忙なんだと思う。
僕の姿に気付いた杏さんが、リビングの隅の小さな冷蔵庫を指差した。
「ビールなら冷えてる。飲んでいいぞ」
「いただきます」
僕が冷蔵庫からビールを取り出すと、杏さんは僕に『向かいのソファーに座れ』と目で促した。
それにしてもでかいソファーだな。
こんなの僕の住んでた部屋に二つも置いたら、一部屋塞がっちゃうよ。
「さて……早速、昨日の話の続きだ。一緒に住むと言っても、基本的に部屋は別々。お互いの部屋には勝手に入らないこと」
「掃除はどうします?」
「留守中はしないで欲しい。掃除して欲しい時にはこちらから頼むようにする」
「わかりました」
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