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想定外の展開
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3時の休憩時間、矢野さんが僕にコーヒーを淹れてくれた。
「鴫野、さっきから難しい顔してるけど大丈夫か?さっきの会議で出たメニューに何か問題でもあったか?」
「いえ、そちらは大丈夫です」
メニューにはなんの問題もない。
問題は僕にある。
「だったらなんだ?まだこの間の事でヘコんでるのか?」
「いや、まぁ……」
なんと答えていいかわからず、僕は曖昧に返事をした。
彼女でもなんでもない同期の女の子と社内でディープキスして、その子の胸を触っている現場を杏さんに見られたなんて、相手がいくら矢野さんでも言えるわけがない。
あまり勘ぐられるのは厄介だ。
話をすり替えてしまおう。
「あ、そうだ」
僕はポケットから取り出したボタンを手のひらに乗せて、矢野さんに差し出した。
「あのー……ところで矢野さん。これ、矢野さんのですよね?」
「ん?なんだこれ?」
矢野さんはボタンを指でつまみ上げてじっと眺めた。
おそらく自分のものなのに心当たりがないのか、珍しそうに眺めながらボタンを手のひらの上で転がしている。
「いや、俺のじゃないよ。ってか、どう見てもこれ、女物だろ?」
「え?そうですか?」
「男のワイシャツに、こんな光沢のある凝ったデザインのボタンついてると思うか?でも見覚えある気がするんだよなぁ……。どこで見たんだっけ?」
女物って事は、美玖のものかな?
いや、だけどこれを見つけた時より前に布団をめくった時にはなかったはずだ。
「どうした、これ?」
「日曜日に僕の部屋で拾ったんです。だから矢野さんが金曜の夜に僕を送ってくれた時に落として行ったのかなーって」
僕が何気なくそう言うと、矢野さんはコーヒーを飲む手を止めた。
「俺は送ってないぞ。あん時おまえを送ったのは杏さんだ」
「えっ、杏さんが?」
「ああそうか、なんか見覚えあると思った。それ杏さんが金曜日に着てたブラウスのボタンだよ。飲みに行った時に杏さんの向かいに座ってたら、ピカピカ光ってやけに目についたんだ」
ちょっと待てよ。
金曜の夜に僕を送ったのが杏さんだって?!
杏さんのブラウスのボタンが僕のベッドに落ちていたり、夢に見た杏さんの唇や体の柔らかい感触がやけにリアルだったり、シーツに血みたいなシミがついていたり……。
そういえば昨日の朝、燃えるゴミを集めていたら、ゴミ箱の中からやけにたくさんのティッシュが出てきた。
その時はあまり気にも留めなかったけど……まさか……。
いろんなことがグルグルと頭の中を駆け巡り、それらを踏まえた上で現実に起こったと考えうることを僕の脳が弾き出した瞬間、杏さんのあの言葉がハッキリと蘇った。
『酔っていなくても……おまえは誰にでもあんな事をするんだな』
ええぇーっ?!
そういう意味?!
あれは夢じゃなかったのか?!
僕はホントに、酔った勢いで杏さんを……?!
ヤバイ……有り得ない……!!
何かの間違いであって欲しい……!!
「どうした?顔色悪いぞ、鴫野?」
「いや……なんでも……」
まさかクビとか……訴訟とか……責任取れとか……。
どう転んでも最悪な事態をいくつも予測して、さっきまでとは比べ物にならないほど冷たい汗が僕の背中を滑り落ちた。
杏さんに直接確かめる勇気なんてないけれど……このまま黙って覚えていないふりをしていていいものか?
杏さんは何も言わなかったけど、僕のしでかしたことをどう思っているんだろう?
「鴫野、さっきから難しい顔してるけど大丈夫か?さっきの会議で出たメニューに何か問題でもあったか?」
「いえ、そちらは大丈夫です」
メニューにはなんの問題もない。
問題は僕にある。
「だったらなんだ?まだこの間の事でヘコんでるのか?」
「いや、まぁ……」
なんと答えていいかわからず、僕は曖昧に返事をした。
彼女でもなんでもない同期の女の子と社内でディープキスして、その子の胸を触っている現場を杏さんに見られたなんて、相手がいくら矢野さんでも言えるわけがない。
あまり勘ぐられるのは厄介だ。
話をすり替えてしまおう。
「あ、そうだ」
僕はポケットから取り出したボタンを手のひらに乗せて、矢野さんに差し出した。
「あのー……ところで矢野さん。これ、矢野さんのですよね?」
「ん?なんだこれ?」
矢野さんはボタンを指でつまみ上げてじっと眺めた。
おそらく自分のものなのに心当たりがないのか、珍しそうに眺めながらボタンを手のひらの上で転がしている。
「いや、俺のじゃないよ。ってか、どう見てもこれ、女物だろ?」
「え?そうですか?」
「男のワイシャツに、こんな光沢のある凝ったデザインのボタンついてると思うか?でも見覚えある気がするんだよなぁ……。どこで見たんだっけ?」
女物って事は、美玖のものかな?
いや、だけどこれを見つけた時より前に布団をめくった時にはなかったはずだ。
「どうした、これ?」
「日曜日に僕の部屋で拾ったんです。だから矢野さんが金曜の夜に僕を送ってくれた時に落として行ったのかなーって」
僕が何気なくそう言うと、矢野さんはコーヒーを飲む手を止めた。
「俺は送ってないぞ。あん時おまえを送ったのは杏さんだ」
「えっ、杏さんが?」
「ああそうか、なんか見覚えあると思った。それ杏さんが金曜日に着てたブラウスのボタンだよ。飲みに行った時に杏さんの向かいに座ってたら、ピカピカ光ってやけに目についたんだ」
ちょっと待てよ。
金曜の夜に僕を送ったのが杏さんだって?!
杏さんのブラウスのボタンが僕のベッドに落ちていたり、夢に見た杏さんの唇や体の柔らかい感触がやけにリアルだったり、シーツに血みたいなシミがついていたり……。
そういえば昨日の朝、燃えるゴミを集めていたら、ゴミ箱の中からやけにたくさんのティッシュが出てきた。
その時はあまり気にも留めなかったけど……まさか……。
いろんなことがグルグルと頭の中を駆け巡り、それらを踏まえた上で現実に起こったと考えうることを僕の脳が弾き出した瞬間、杏さんのあの言葉がハッキリと蘇った。
『酔っていなくても……おまえは誰にでもあんな事をするんだな』
ええぇーっ?!
そういう意味?!
あれは夢じゃなかったのか?!
僕はホントに、酔った勢いで杏さんを……?!
ヤバイ……有り得ない……!!
何かの間違いであって欲しい……!!
「どうした?顔色悪いぞ、鴫野?」
「いや……なんでも……」
まさかクビとか……訴訟とか……責任取れとか……。
どう転んでも最悪な事態をいくつも予測して、さっきまでとは比べ物にならないほど冷たい汗が僕の背中を滑り落ちた。
杏さんに直接確かめる勇気なんてないけれど……このまま黙って覚えていないふりをしていていいものか?
杏さんは何も言わなかったけど、僕のしでかしたことをどう思っているんだろう?
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