15 / 95
想定外の展開
2
しおりを挟む
もしかして渡部さんは、僕と美玖が別れた事をもう知っていて、それについて何か言いたい事でもあるのかな?
それとも何かもっと別の、業務上の用だろうか。
「あのね鴫野くん……。この間、美玖から『別れた』って聞いたんだけど……」
渡部さんは少しためらいがちに口を開いた。
ああ、やっぱりその話か。
どこまで詳しく話したかのは知らないけど、一応報告されたんだな。
「聞いたの?」
「うん……。何て言うかその……」
「そうなんだ。あ、友達だからって、別に渡部さんが責任感じる事はないよ」
いくら美玖の友達でも、僕と美玖が別れた事に渡部さんはなんの関係もない。
言いにくいならわざわざ言わなきゃいいのに。
「責任って言うか……むしろ、ホッとしたと言うか」
「えっ?!」
僕と美玖が別れてホッとしたってどういう意味だ?
これでも結構傷付いてるんだけど。
「どういう意味?」
「今更こんな事言うのもなんだけど……美玖は鴫野くんと付き合ってる間も、鴫野くんの他に付き合ってる人が何人かいたから」
「……そうなんだ」
「会うたびに美玖からはいろいろ聞いてた……。鴫野くんの事は、地味でつまらないけど真面目だし、勤め先は大手で国家資格も持ってるし、家事もできるから仕事辞めたくなった時のために結婚相手としてキープしときたいって。鴫野くんなら浮気してもバレなさそうだとも言ってた」
そんな事、今更言う必要あるのか?
なんで人の傷口に塩を擦り込むような事をするんだろう?
って言うか、そんな重大な事、知ってたんならもっと早く教えてくれよ。
「ふーん、そうか……。でも今更そんな事聞いてもな。2年もそれに気付かなかった僕も悪いわけだし」
取り乱してもカッコ悪いだけだ。
美玖とは終わったんだし僕にはもう関係ない。
「鴫野くんは悪くないよ」
渡部さんは必死な顔をして僕をかばう。
おそらく慰めてくれているつもりなんだろうけど、僕はそんなの望んでいないし、ちっとも嬉しくない。
僕は美玖が好きだったから、美玖が僕をどう思っていたかとか、浮気をしていたことも知っていた渡部さんに同情されたって余計に惨めなだけだ。
「もういいって。そんなふうに思われてたって知らなかったけどさ……美玖のいない所で陰口みたいなの、いい気しないよ。僕は好きだったし?」
「ごめん……私、そんなつもりじゃ……」
渡部さんは僕を気の毒に思ってくれただけで、きっと悪気はないんだろう。
余計なお世話だと思わなくもないけど、彼女を責めても仕方ない。
「話はそれだけ?だったらもう行くよ」
僕が会議室を出ようとすると、渡部さんは僕の腕を掴んで引き留めた。
まだ何か言いたいことがあるのか?
もう美玖のことは忘れたいんだけどな。
「待って鴫野くん!あのっ、私ね……」
「何?」
振り返った瞬間、渡部さんが僕の胸に飛び込んできた。
その勢いに押されて、僕の体は壁際に追いやられる。
え、なにこれ?
壁ドンとかいうやつ?
さっぱり状況が飲み込めない。
「あのー……渡部さん?」
「私、入社してすぐの頃からずっと鴫野くんが好きだったの!」
「……ハイ?」
「あの合コンの時もホントは鴫野くんともっと近付きたかったのに、私は幹事だったから……なかなか話せないでいるうちに、いつの間にか美玖に鴫野くん取られちゃって……」
何を血迷ったか、渡部さんは僕の胸にしがみついて、よくわからない言葉を並べたてる。
あの時美玖と付き合わなくても僕は渡部さんと付き合う気なんてなかったけど、今はそんなことを言える状況じゃなさそうだ。
それとも何かもっと別の、業務上の用だろうか。
「あのね鴫野くん……。この間、美玖から『別れた』って聞いたんだけど……」
渡部さんは少しためらいがちに口を開いた。
ああ、やっぱりその話か。
どこまで詳しく話したかのは知らないけど、一応報告されたんだな。
「聞いたの?」
「うん……。何て言うかその……」
「そうなんだ。あ、友達だからって、別に渡部さんが責任感じる事はないよ」
いくら美玖の友達でも、僕と美玖が別れた事に渡部さんはなんの関係もない。
言いにくいならわざわざ言わなきゃいいのに。
「責任って言うか……むしろ、ホッとしたと言うか」
「えっ?!」
僕と美玖が別れてホッとしたってどういう意味だ?
これでも結構傷付いてるんだけど。
「どういう意味?」
「今更こんな事言うのもなんだけど……美玖は鴫野くんと付き合ってる間も、鴫野くんの他に付き合ってる人が何人かいたから」
「……そうなんだ」
「会うたびに美玖からはいろいろ聞いてた……。鴫野くんの事は、地味でつまらないけど真面目だし、勤め先は大手で国家資格も持ってるし、家事もできるから仕事辞めたくなった時のために結婚相手としてキープしときたいって。鴫野くんなら浮気してもバレなさそうだとも言ってた」
そんな事、今更言う必要あるのか?
なんで人の傷口に塩を擦り込むような事をするんだろう?
って言うか、そんな重大な事、知ってたんならもっと早く教えてくれよ。
「ふーん、そうか……。でも今更そんな事聞いてもな。2年もそれに気付かなかった僕も悪いわけだし」
取り乱してもカッコ悪いだけだ。
美玖とは終わったんだし僕にはもう関係ない。
「鴫野くんは悪くないよ」
渡部さんは必死な顔をして僕をかばう。
おそらく慰めてくれているつもりなんだろうけど、僕はそんなの望んでいないし、ちっとも嬉しくない。
僕は美玖が好きだったから、美玖が僕をどう思っていたかとか、浮気をしていたことも知っていた渡部さんに同情されたって余計に惨めなだけだ。
「もういいって。そんなふうに思われてたって知らなかったけどさ……美玖のいない所で陰口みたいなの、いい気しないよ。僕は好きだったし?」
「ごめん……私、そんなつもりじゃ……」
渡部さんは僕を気の毒に思ってくれただけで、きっと悪気はないんだろう。
余計なお世話だと思わなくもないけど、彼女を責めても仕方ない。
「話はそれだけ?だったらもう行くよ」
僕が会議室を出ようとすると、渡部さんは僕の腕を掴んで引き留めた。
まだ何か言いたいことがあるのか?
もう美玖のことは忘れたいんだけどな。
「待って鴫野くん!あのっ、私ね……」
「何?」
振り返った瞬間、渡部さんが僕の胸に飛び込んできた。
その勢いに押されて、僕の体は壁際に追いやられる。
え、なにこれ?
壁ドンとかいうやつ?
さっぱり状況が飲み込めない。
「あのー……渡部さん?」
「私、入社してすぐの頃からずっと鴫野くんが好きだったの!」
「……ハイ?」
「あの合コンの時もホントは鴫野くんともっと近付きたかったのに、私は幹事だったから……なかなか話せないでいるうちに、いつの間にか美玖に鴫野くん取られちゃって……」
何を血迷ったか、渡部さんは僕の胸にしがみついて、よくわからない言葉を並べたてる。
あの時美玖と付き合わなくても僕は渡部さんと付き合う気なんてなかったけど、今はそんなことを言える状況じゃなさそうだ。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
タイプではありませんが
雪本 風香
恋愛
彼氏に振られたばかりの山下楓に告白してきた男性は同期の星野だった。
顔もいい、性格もいい星野。
だけど楓は断る。
「タイプじゃない」と。
「タイプじゃないかもしれんけどさ。少しだけ俺のことをみてよ。……な、頼むよ」
懇願する星野に、楓はしぶしぶ付き合うことにしたのだ。
星野の3カ月間の恋愛アピールに。
好きよ、好きよと言われる男性に少しずつ心を動かされる女の子の焦れったい恋愛の話です。
※体の関係は10章以降になります。
※ムーンライトノベルズ様、エブリスタ様にも投稿しています。
元カノと復縁する方法
なとみ
恋愛
「別れよっか」
同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。
会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。
自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。
表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる