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いつの日かまた、パドックで
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「僕はね……ねえさんが『今だけ』って言った時……僕がねえさんに本気にならないように、そう言ったんだって思ってたんです。ねえさんは僕のことなんか好きでもなんでもないんだって……そばにいてくれれば誰でも良かったんだって思って、すごくショックだったんです」
「……そうなん?」
ねえさんはキョトンとしている。
なんだか勘違いしているみたいだし、この際だから僕の気持ちをハッキリ伝えた方がいい。
「そうですよ、僕はずっと本気ですから。ねえさん、僕は……初めて会った時からずっと、ねえさんが好きです」
「えっ、そうやったん?!」
ねえさんって、もしかしてものすごく鈍い人なんだろうか?
本気で驚いているみたいだ。
「僕はねえさんとお互いを名前で呼び合って、次に会う約束をして、一緒に誕生日をお祝いして、日曜日の競馬場以外でも会える関係になりたいです」
「うん……それなんやけど……」
「……ダメですか?」
もしかして、恋人として付き合うのは無理だと言われるのか?
ありったけの勇気を振り絞って、人生で初めて告白したのに……。
「そうやなくて……。あのさ……アタシを、アンチャンとおんなじ苗字にしてくれる?」
「……はい?」
「そんで、一緒に住むってどうやろう?」
ねえさんが僕と同じ苗字になって、一緒に暮らす……?
それってもしかして……養子縁組?
いやいや、そんなわけないだろ!
いろいろ飛び越えて、いきなり結婚?!
ねえさんが初彼女ならぬお嫁さんになるのか?
「ちなみにな……一緒に暮らす予定の子がおるんやけど……」
「えっ?!ねえさん子供がいるんですか?」
これまで子供がいるようなそぶりはまったく見せなかったのに、まさかのシングルマザーだったとは!
僕なんかにいきなり父親がつとまるのか?
ねえさんからの突然のプロポーズとカミングアウトに驚き戸惑っていると、ねえさんは僕の手を取って、そっと自分のお腹に導いた。
「居てるねん。あん時の……アンチャンの子が、ここに」
「そうですか、あの時の…………ええっ?!」
ねえさんのお腹に、僕の……子供?!
ねえさんが奥さんで、お母さんで、僕がお父さんになるのか?
あまりの急展開に僕の頭の中はグルグルと大暴走して、目を見開き口をポカンと開けて放心状態だ。
「……やっぱり無理やんな、急にこんなこと言うたって……。お腹の子が自分の子っていう証拠もないしって、思てんのやろ?」
ねえさんは少し悲しそうに、放心状態の僕の手を、ゆっくりと離した。
「ごめん。今の全部忘れて。もう会わへんし、アンチャンには迷惑かけへん。やっぱりこの子はアタシ一人で産んで育てるから」
うつむいたままそう言って、ねえさんは僕に背を向けて歩き出した。
僕は我に返り、慌ててねえさんを追いかける。
「……そうなん?」
ねえさんはキョトンとしている。
なんだか勘違いしているみたいだし、この際だから僕の気持ちをハッキリ伝えた方がいい。
「そうですよ、僕はずっと本気ですから。ねえさん、僕は……初めて会った時からずっと、ねえさんが好きです」
「えっ、そうやったん?!」
ねえさんって、もしかしてものすごく鈍い人なんだろうか?
本気で驚いているみたいだ。
「僕はねえさんとお互いを名前で呼び合って、次に会う約束をして、一緒に誕生日をお祝いして、日曜日の競馬場以外でも会える関係になりたいです」
「うん……それなんやけど……」
「……ダメですか?」
もしかして、恋人として付き合うのは無理だと言われるのか?
ありったけの勇気を振り絞って、人生で初めて告白したのに……。
「そうやなくて……。あのさ……アタシを、アンチャンとおんなじ苗字にしてくれる?」
「……はい?」
「そんで、一緒に住むってどうやろう?」
ねえさんが僕と同じ苗字になって、一緒に暮らす……?
それってもしかして……養子縁組?
いやいや、そんなわけないだろ!
いろいろ飛び越えて、いきなり結婚?!
ねえさんが初彼女ならぬお嫁さんになるのか?
「ちなみにな……一緒に暮らす予定の子がおるんやけど……」
「えっ?!ねえさん子供がいるんですか?」
これまで子供がいるようなそぶりはまったく見せなかったのに、まさかのシングルマザーだったとは!
僕なんかにいきなり父親がつとまるのか?
ねえさんからの突然のプロポーズとカミングアウトに驚き戸惑っていると、ねえさんは僕の手を取って、そっと自分のお腹に導いた。
「居てるねん。あん時の……アンチャンの子が、ここに」
「そうですか、あの時の…………ええっ?!」
ねえさんのお腹に、僕の……子供?!
ねえさんが奥さんで、お母さんで、僕がお父さんになるのか?
あまりの急展開に僕の頭の中はグルグルと大暴走して、目を見開き口をポカンと開けて放心状態だ。
「……やっぱり無理やんな、急にこんなこと言うたって……。お腹の子が自分の子っていう証拠もないしって、思てんのやろ?」
ねえさんは少し悲しそうに、放心状態の僕の手を、ゆっくりと離した。
「ごめん。今の全部忘れて。もう会わへんし、アンチャンには迷惑かけへん。やっぱりこの子はアタシ一人で産んで育てるから」
うつむいたままそう言って、ねえさんは僕に背を向けて歩き出した。
僕は我に返り、慌ててねえさんを追いかける。
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