パドックで会いましょう

櫻井音衣

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卒業アルバム

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「ん……?あれ……?」

この先生、誰かに似ているような……?
学生時代によく似た先生でもいたかな?

「どないした?」
「いえ……。担任の先生が誰かに似ているような気がして」
「担任な……。結構男前やろ?」
「そうですね」

先輩がそんなふうに言うところを見ると、先生を教師としてだけではなく、大人の男としても尊敬する存在だったのだろう。

「先輩の学校は男子の制服、学ランだったんですね。カッコいいなあ……。僕は中学も高校もブレザーだったんで、憧れてたんですよね」

先輩のクラスメイトたちを順番に見ていく。
僕みたいな小柄な生徒もいたようだ。

「ん……?」

女子の生徒の中に、やたらと大人びた美人を見つけた。
とても中学生とは思えない色気が漂っている。

「今度はなんや?」

僕はまじまじと、その女子生徒の顔を見た。
つまらなさそうな、憂いを帯びた表情。
少し茶色い長い髪と、涼しげな切れ長の目に、スタイルの良いスラリとした体。

「あー、こいつか」

先輩は横からアルバムを覗き込んだ。

「こいつ、俺のヤンチャしてた時の仲間でな。小学校の時から一緒に遊んでたやつや。大人っぽくて美人やろ?」
「……ですね」
「こんなほっそい体してんのに、ケンカもめちゃめちゃつようてな。そやけど優しくて面倒見はええねん。そんなんやから、みんなから『ねえさん』って呼ばれとった」
「……ねえさん……?」

やっぱりそうだ、間違いない。
先輩、ねえさんと友達だったのか!!

「ん?なんや、気になるんか?」
「先輩は……その、ねえさんとは仲が良かったんですよね?」
「ああ、付き合い長かったからな」
「どんな人でした?」

見ず知らずのはずのねえさんに興味を持った僕を、不思議に思ったのだろう。
先輩は少し首をかしげた後、ゆっくりと話し出した。

「こいつな……可哀想なやつやねん」


その夜、僕は先輩の部屋に泊めてもらった。
先輩は布団に入って間もなく、軽い寝息をたて始めた。
僕は用意してもらった布団に横になり、眠れなくて寝返りを打つ。

『こいつな……可哀想なやつやねん』

先輩がしてくれた『ねえさん』の話は、僕に大きなショックを与えた。


先輩の話によると、中学時代のねえさんは向かうところ敵無しのヤンキーで、先輩や他のヤンキー仲間とつるんでは、他校の不良たちとしょっちゅうケンカをしていたそうだ。
中学3年の時に例の先生が担任になり、熱心に声を掛けてくる先生に心を動かされ、先輩もねえさんも変わったのだと言う。
それまでは学校に行ってもまともに授業を受けていなかったのに、服装や髪型の乱れを正し、真面目に授業を受けるようになったらしい。

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