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競馬場デビュー
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列の最後尾に並んで待った末に、『未成年では?』とか『学生では?』とか訝られながらも、ようやく入場料を払い、なんとか場内に入ることができた。
しかし馬券売り場はどこだろう?
場内の案内板を見て位置を確認しようと立ち止まると、後ろから歩いて来た人たちにぶつかられた。
「こんな所で立ち止まんな、邪魔やろが!」
前をろくに見もしないで歩いてきたこの人たちも悪いのに、関西弁で怒鳴られると怖くて文句も言い返せない。
神奈川生まれの神奈川育ちの僕にとって、関西は未知の世界で、言葉といい勢いといい、何もかもが恐ろしい。
とりあえず殴られないうちに謝っておこう。
「す、すみません……」
素直に謝ったと言うのに、男は僕のシャツの襟首をガシッとつかんで顔をグッと近付けた。
「すみませんで済んだら警察要らんのじゃ!」
えぇーっ?!
ぶつかっただけで大袈裟な!
そもそも、ぶつかって来たのはそっちじゃないか!
……なんて、怖くて口が裂けても言えない!!
強面の男たちにわけのわからない因縁をつけられる僕を、誰もが見ないふりして素通りしていく。
誰も助けてくれないなんて、関西人は情に厚いんじゃなかったのか?!
こちらに来てからまだ1週間しか経っていないのに、意外と冷たい関西人に絶望しそうになっていると、誰かが男の腕を掴んだ。
天の助けか、はたまた神か。
きっとさらにイカツイ強そうな男の人に違いない。
「ちょっとアンタらぁ、そんな坊や相手に何調子こいてんねん。ええ加減にしときぃや」
予想に反して女の人の声がした。
「あっ、ねえさん……」
……ねえさん?
どう見ても20代半ば過ぎの、華奢な体つきをした女性だ。
この強面の男たちが怖れるような女性にはとても見えない。
「大の男がしょうもない事でいちいちガタガタぬかすな、みっともない」
「すんません……」
「わかったら早よ行け」
ねえさんと呼ばれたその女性がシッシッと手で追い払うと、強面の男たちは頭を下げて、そそくさと去って行った。
一体この人、何者なんだ?
「大丈夫か?ケガしてへん?」
「あっ、大丈夫です。ありがとうございました」
僕が慌てて頭を下げると、その人は笑って僕の頭をワシャワシャと撫でた。
「ええって、気にせんといて。なんや、この辺の子やないな?競馬場、初めてか?」
「はい……。馬券を買って来るように頼まれたんですけど、どこに行けばいいのかもわからなくて」
「そうなんや。じゃあ、ついといで。アタシが連れてったる」
しかし馬券売り場はどこだろう?
場内の案内板を見て位置を確認しようと立ち止まると、後ろから歩いて来た人たちにぶつかられた。
「こんな所で立ち止まんな、邪魔やろが!」
前をろくに見もしないで歩いてきたこの人たちも悪いのに、関西弁で怒鳴られると怖くて文句も言い返せない。
神奈川生まれの神奈川育ちの僕にとって、関西は未知の世界で、言葉といい勢いといい、何もかもが恐ろしい。
とりあえず殴られないうちに謝っておこう。
「す、すみません……」
素直に謝ったと言うのに、男は僕のシャツの襟首をガシッとつかんで顔をグッと近付けた。
「すみませんで済んだら警察要らんのじゃ!」
えぇーっ?!
ぶつかっただけで大袈裟な!
そもそも、ぶつかって来たのはそっちじゃないか!
……なんて、怖くて口が裂けても言えない!!
強面の男たちにわけのわからない因縁をつけられる僕を、誰もが見ないふりして素通りしていく。
誰も助けてくれないなんて、関西人は情に厚いんじゃなかったのか?!
こちらに来てからまだ1週間しか経っていないのに、意外と冷たい関西人に絶望しそうになっていると、誰かが男の腕を掴んだ。
天の助けか、はたまた神か。
きっとさらにイカツイ強そうな男の人に違いない。
「ちょっとアンタらぁ、そんな坊や相手に何調子こいてんねん。ええ加減にしときぃや」
予想に反して女の人の声がした。
「あっ、ねえさん……」
……ねえさん?
どう見ても20代半ば過ぎの、華奢な体つきをした女性だ。
この強面の男たちが怖れるような女性にはとても見えない。
「大の男がしょうもない事でいちいちガタガタぬかすな、みっともない」
「すんません……」
「わかったら早よ行け」
ねえさんと呼ばれたその女性がシッシッと手で追い払うと、強面の男たちは頭を下げて、そそくさと去って行った。
一体この人、何者なんだ?
「大丈夫か?ケガしてへん?」
「あっ、大丈夫です。ありがとうございました」
僕が慌てて頭を下げると、その人は笑って僕の頭をワシャワシャと撫でた。
「ええって、気にせんといて。なんや、この辺の子やないな?競馬場、初めてか?」
「はい……。馬券を買って来るように頼まれたんですけど、どこに行けばいいのかもわからなくて」
「そうなんや。じゃあ、ついといで。アタシが連れてったる」
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