253 / 268
社内恋愛終了のお知らせ
4
しおりを挟む
「サイズはどう?」
「少しゆるいけど……潤さんに指輪のサイズなんて教えたことないもんね。前に友達の付き合いでアクセサリー見に行ったら左手の薬指にちょうどいいサイズがなくて、お店には奇数の号数しか売ってないから、サイズ直しするしかないって言われたの」
そのお店で指のサイズをはからせてもらったら、私の薬指のサイズは左が8号で、右が9号だった。
「ああ……じつはサイズ聞かれてもわからなくて、あとでサイズ直しもできるから、とりあえず9号にしておくかって店員に言われてどうしようかと思ってたら、ゆうこさんが……」
ゆうこさんはハンドルを握り前を向いたまま口を開く。
「わたくしの目に狂いがなければ、志織さんの薬指のサイズは左が8号、右が9号です。今は左手の薬指につけられているのでゆるいと思いますが、左手の薬指には結婚指輪をつけることになりますので、そうすると婚約指輪は右手の薬指につけるのがよろしいかと」
潤さんは私の左手の薬指から指輪を抜き取り、右手の薬指につけ直した。
あつらえたようにピッタリだ。
普通の状態でも見ただけではわかりづらいだろうに、私の左手はギプスをして三角巾で吊った状態だから、指なんて見えにくいと思う。
それでもわかってしまうのはなぜなんだ?
ゆうこさんの目にはカウンター的な、精密なセンサーか何かが搭載されているんじゃなかろうか?
「ピッタリ……。なんでわかったんだろう……」
「ビックリしただろ?ゆうこさんはジュエリータキウチの社長の娘なんだ」
「えっ、ジュエリータキウチ?!」
ジュエリータキウチと言ったら、国内最大手のジュエリーショップチェーンだ。
おそらく良家のお嬢様だとは思っていたけれど、私の想像を遥かに超えている。
と言うことは、瀧内くんはジュエリータキウチの社長の孫でもあるわけだ。
「ゆうこさん、若い頃は社会勉強のために社長の娘って言う素性は隠して、店頭で販売員をしてたんだって。売り上げ全国トップだったらしいよ。玲司はゆうこさんに似たんだな」
「大学時代にアルバイトをしてみたいと父に言ったら、うちの会社の店ならいいと言われましたので。大学時代の4年間はアルバイトとして働いて、卒業してから玲司の父親と結婚するまでの2年間は店長を務めました。その経験上、指輪のサイズは手を見ればわかります」
「……と言うわけで、志織にピッタリの指輪を選ぶことができた」
ジュエリーショップに数年勤めたからと言って、手を見ただけで指輪のサイズをピッタリ言い当てるなんてことは、常人には無理だと思う。
やはりゆうこさんは常人を超越した底知れぬ能力を秘めているに違いない。
「感服いたしました……」
ゆうこさんと言う人があまりにも不可思議すぎて、指輪を見つめながら何度も首をかしげていると、潤さんはまた指輪を私の左手の薬指につけ直した。
「とりあえず……少しゆるいかも知れないけど、結婚指輪を買うまでは左手につけといて。俺の奥さんになるって印みたいなものだから」
「うん、わかった。抜けてなくさないように気を付けないとね」
こんな大事なものをなくしてしまったら大変だ。
絶対に落とさないように気を付けなければ。
本音を言うと、潤さんから初めてもらった指輪はきっと特別だと思うから、ずっと左手の薬指につけておきたい。
だけど結婚指輪をするまでとなると、左手の薬指にこの指輪をつけていられる期間は短そうだ。
「ちなみに結婚してもその指輪をどうしても左手の薬指につけておきたいのでしたら、結婚指輪の上に重ねづけすると、指から抜けるのを防ぐことができます」
「なるほど……そんなつけ方もあるんですね……。参考にします……」
もしかしてゆうこさんには、私の考えていることもお見通しなんだろうか?
やっぱりゆうこさんは間違いなく瀧内くんのお母さんだと、妙に納得してしまった。
「ところで……そろそろお昼ですけど、お二人ともお腹が空いてませんか?」
そう言われてみるとお腹が空いたなと思いながら車の時計を見ると、時刻はちょうど12時だった。
こんなところまで正確だと思わず笑いそうになる。
「空いてます。どこかで昼食にしますか?」
潤さんがお腹を軽くさすりながらそう言うと、ゆうこさんは目の前にあったコンビニの駐車場に入って車を停めた。
コンビニで昼食を調達するのかと思っていると、ゆうこさんは助手席に置いていた大きなバッグから風呂敷に包まれたものを取り出した。
そして風呂敷をほどき、漆塗りの立派な二段重を潤さんに差し出す。
「時間短縮のため、昼食は車の中で召し上がっていただけるようにお弁当をお持ちしました。わたくし、飲み物を買って参ります」
そう言ってゆうこさんは車を降り、コンビニの中へと入っていく。
どこまでも用意周到で完璧な秘書だ……!
「少しゆるいけど……潤さんに指輪のサイズなんて教えたことないもんね。前に友達の付き合いでアクセサリー見に行ったら左手の薬指にちょうどいいサイズがなくて、お店には奇数の号数しか売ってないから、サイズ直しするしかないって言われたの」
そのお店で指のサイズをはからせてもらったら、私の薬指のサイズは左が8号で、右が9号だった。
「ああ……じつはサイズ聞かれてもわからなくて、あとでサイズ直しもできるから、とりあえず9号にしておくかって店員に言われてどうしようかと思ってたら、ゆうこさんが……」
ゆうこさんはハンドルを握り前を向いたまま口を開く。
「わたくしの目に狂いがなければ、志織さんの薬指のサイズは左が8号、右が9号です。今は左手の薬指につけられているのでゆるいと思いますが、左手の薬指には結婚指輪をつけることになりますので、そうすると婚約指輪は右手の薬指につけるのがよろしいかと」
潤さんは私の左手の薬指から指輪を抜き取り、右手の薬指につけ直した。
あつらえたようにピッタリだ。
普通の状態でも見ただけではわかりづらいだろうに、私の左手はギプスをして三角巾で吊った状態だから、指なんて見えにくいと思う。
それでもわかってしまうのはなぜなんだ?
ゆうこさんの目にはカウンター的な、精密なセンサーか何かが搭載されているんじゃなかろうか?
「ピッタリ……。なんでわかったんだろう……」
「ビックリしただろ?ゆうこさんはジュエリータキウチの社長の娘なんだ」
「えっ、ジュエリータキウチ?!」
ジュエリータキウチと言ったら、国内最大手のジュエリーショップチェーンだ。
おそらく良家のお嬢様だとは思っていたけれど、私の想像を遥かに超えている。
と言うことは、瀧内くんはジュエリータキウチの社長の孫でもあるわけだ。
「ゆうこさん、若い頃は社会勉強のために社長の娘って言う素性は隠して、店頭で販売員をしてたんだって。売り上げ全国トップだったらしいよ。玲司はゆうこさんに似たんだな」
「大学時代にアルバイトをしてみたいと父に言ったら、うちの会社の店ならいいと言われましたので。大学時代の4年間はアルバイトとして働いて、卒業してから玲司の父親と結婚するまでの2年間は店長を務めました。その経験上、指輪のサイズは手を見ればわかります」
「……と言うわけで、志織にピッタリの指輪を選ぶことができた」
ジュエリーショップに数年勤めたからと言って、手を見ただけで指輪のサイズをピッタリ言い当てるなんてことは、常人には無理だと思う。
やはりゆうこさんは常人を超越した底知れぬ能力を秘めているに違いない。
「感服いたしました……」
ゆうこさんと言う人があまりにも不可思議すぎて、指輪を見つめながら何度も首をかしげていると、潤さんはまた指輪を私の左手の薬指につけ直した。
「とりあえず……少しゆるいかも知れないけど、結婚指輪を買うまでは左手につけといて。俺の奥さんになるって印みたいなものだから」
「うん、わかった。抜けてなくさないように気を付けないとね」
こんな大事なものをなくしてしまったら大変だ。
絶対に落とさないように気を付けなければ。
本音を言うと、潤さんから初めてもらった指輪はきっと特別だと思うから、ずっと左手の薬指につけておきたい。
だけど結婚指輪をするまでとなると、左手の薬指にこの指輪をつけていられる期間は短そうだ。
「ちなみに結婚してもその指輪をどうしても左手の薬指につけておきたいのでしたら、結婚指輪の上に重ねづけすると、指から抜けるのを防ぐことができます」
「なるほど……そんなつけ方もあるんですね……。参考にします……」
もしかしてゆうこさんには、私の考えていることもお見通しなんだろうか?
やっぱりゆうこさんは間違いなく瀧内くんのお母さんだと、妙に納得してしまった。
「ところで……そろそろお昼ですけど、お二人ともお腹が空いてませんか?」
そう言われてみるとお腹が空いたなと思いながら車の時計を見ると、時刻はちょうど12時だった。
こんなところまで正確だと思わず笑いそうになる。
「空いてます。どこかで昼食にしますか?」
潤さんがお腹を軽くさすりながらそう言うと、ゆうこさんは目の前にあったコンビニの駐車場に入って車を停めた。
コンビニで昼食を調達するのかと思っていると、ゆうこさんは助手席に置いていた大きなバッグから風呂敷に包まれたものを取り出した。
そして風呂敷をほどき、漆塗りの立派な二段重を潤さんに差し出す。
「時間短縮のため、昼食は車の中で召し上がっていただけるようにお弁当をお持ちしました。わたくし、飲み物を買って参ります」
そう言ってゆうこさんは車を降り、コンビニの中へと入っていく。
どこまでも用意周到で完璧な秘書だ……!
0
お気に入りに追加
429
あなたにおすすめの小説
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
最後の男
深冬 芽以
恋愛
バツイチで二児の母、アラフォーでパートタイマー。
恋の仕方なんて、とうに忘れた……はずだった。
元夫との結婚生活がトラウマで、男なんてこりごりだと思っていた彩《あや》は、二歳年下の上司・智也《ともや》からある提案をされる。
「別れた夫が最後の男でいいのか__?」
智也の一言に気持ちが揺れ、提案を受け入れてしまう。
智也との関係を楽しみ始めた頃、彩は五歳年下の上司・隼《はやと》から告白される。
智也とは違い、子供っぽさを隠さずに甘えてくる隼に、彩は母性本能をくすぐられる。
子供がいれば幸せだと思っていた。
子供の幸せが自分の幸せだと思っていた。
けれど、二人の年下上司に愛されて、自分が『女』であることを思いだしてしまった。
愛されたい。愛したい。もう一度……。
バツイチで、母親で、四十歳間近の私でも、もう一度『恋』してもいいですか__?
冷徹上司の、甘い秘密。
青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。
「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」
「別に誰も気にしませんよ?」
「いや俺が気にする」
ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。
※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。
地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!
めーぷる
恋愛
見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。
秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。
呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――
地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。
ちょっとだけ三角関係もあるかも?
・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。
・毎日11時に投稿予定です。
・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。
・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。
偽装溺愛 ~社長秘書の誤算~
深冬 芽以
恋愛
あらすじ
俵理人《たわらりひと》34歳、職業は秘書室長兼社長秘書。
女は扱いやすく、身体の相性が良ければいい。
結婚なんて冗談じゃない。
そう思っていたのに。
勘違いストーカー女から逃げるように引っ越したマンションで理人が再会したのは、過去に激しく叱責された女。
年上で子持ちのデキる女なんて面倒くさいばかりなのに、つい関わらずにはいられない。
そして、互いの利害の一致のため、偽装恋人関係となる。
必要な時だけ恋人を演じればいい。
それだけのはずが……。
「偽装でも、恋人だろ?」
彼女の甘い香りに惹き寄せられて、抗えない――。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる