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怪我とプリンの巧妙?
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こうしていとこ同士の3人を見ていると、力関係はやはり瀧内くんが一番上だと思う。
潤さんと伊藤くんは瀧内くんのことが可愛くて仕方ないから、つい甘くなってこんなつれない発言も許してしまうのだろう。
「ところでさっきから気になってたんだけど……潤さんが退院したら二人が手伝いに行くんだよね?それで食事の支度は誰がするの?伊藤くんも瀧内くんも料理できないんでしょ?」
「あー……弁当とか?」
伊藤くんがそう答えると、潤さんは大きなため息をついた。
「俺は毎日コンビニ弁当はいやだぞ……」
「大丈夫だよ、弁当屋もあるから!そうだ、ピザとか寿司のデリバリーなんかも……」
「いい。手は使えるから、食事は自分でなんとかする。でもおまえらの分まで作る余裕はないからな」
潤さんは松葉杖をついてキッチンに立つつもりなんだろうか?
「ああもう、ホンマに情けないやっちゃ!いつも世話になってる兄貴が怪我してるときくらい、ちゃんと面倒見んかいな!」
さすがに怪我人の潤さんをキッチンに立たせるのは好ましくないと思ったのか、葉月が立ち上がって伊藤くんと瀧内くんの頭を鷲掴みにした。
その勢いに潤さんも少々たじろいでいる。
「三島課長!私がごはん作りに行きますから、無理せんといてください」
「いや……気持ちはありがたいけど、木村は志織の世話もしてるから大変だろ?」
「二人分も三人分も一緒ですて!三島課長の家で志織と私も一緒に食べればええんちゃいます?」
「なるほど、それはいい考えだなぁ……」
葉月の提案は潤さんを納得させたようで、潤さんは感心した様子でうなずいている。
すると伊藤くんが葉月の顔色を窺いながら、おそるおそる手を挙げた。
「あのー……俺と玲司の分は?」
「何を甘えたことぬかしとんねん!元気なやつは自分で食べるもんくらい自分らでなんとかせぇ!」
「えーっ?!そんな冷たいこと言うなよ、葉月ぃ……」
伊藤くんが情けない声を出して肩を落としていると、瀧内くんが至って冷静な顔をして、眼鏡を指先で押し上げながら小さく手を挙げた。
「だったらひとつ提案があるんですが」
「なんや玲司?」
「潤さんが退院したら、志織さんも潤さんの家に住めばいいんじゃないですか?そうすれば葉月さんと僕と志岐くんで3人一緒に二人の生活をサポートできるし、僕らが帰ったあとは潤さんと志織さん二人で助け合って、なんとかできると思うんですけど」
瀧内くんの提案を聞いて、私たちはしばらく黙り込んだ。
いくらなんでもそれは……と私が言いかけたとき、葉月が瀧内くんの両肩を思いきり叩いた。
「それええな!めっちゃ合理的や!」
「そうしたら僕と志岐くんの食事も用意してくれますよね?」
「当たり前やん!でも手伝いはしてもらうで」
「仰せのままに」
私と潤さんの意見も聞かずに話は勝手に進んでいく。
潤さんは心なしか嬉しそうに見えた。
「それじゃあ、運んでも大丈夫な荷物はあとで送るついでに預かりますよ」
「そうしよか」
「なんなら土曜日に、志織さんの家にある荷物も運べるものだけでも運びますか?」
呆気に取られて黙って聞いているうちに、私の部屋の荷物まで運ぶ話になっている。
それはいわゆる『引っ越し』なのでは?
さすがにこのまま黙っているわけにはいかない。
「あのー……ちょっといい?」
「ん?なんや?」
「私も潤さんも、そうするとは一言も言ってないんだけど……」
私がおそるおそるそう言うと、葉月と瀧内くんは同時に潤さんの方を振り返った。
潤さんは二人の勢いに少し戸惑いながらも、うっすらと笑みを浮かべている。
おそらくこの顔は……。
「志織がいいなら、もちろん俺はかまわないけど……。部屋も余ってるし……みんなもその方が手間が省けるだろうし……」
──やっぱり……。
潤さんは『早く一緒に暮らしたい』と前から言っていたし、断るわけがないか。
断るどころか、潤さんはきっと心の中で瀧内くんに向かって『よくやった!』と叫んでいるに違いない。
「潤くんの家に住めば佐野は家賃も要らないし、会社は近くなるし、おまけにずっと潤くんと一緒にいられるんだから、メリットしかないよな。いずれは一緒になるんだし、この際だから同棲しちゃえばいいじゃん」
伊藤くんは当たり前のような顔をしてさらりとそう言ってのけた。
前に潤さんにも同じことを言われたけれど、同僚の伊藤くんにまで言われるとは思わなかった。
「ど……同棲って……」
潤さんと伊藤くんは瀧内くんのことが可愛くて仕方ないから、つい甘くなってこんなつれない発言も許してしまうのだろう。
「ところでさっきから気になってたんだけど……潤さんが退院したら二人が手伝いに行くんだよね?それで食事の支度は誰がするの?伊藤くんも瀧内くんも料理できないんでしょ?」
「あー……弁当とか?」
伊藤くんがそう答えると、潤さんは大きなため息をついた。
「俺は毎日コンビニ弁当はいやだぞ……」
「大丈夫だよ、弁当屋もあるから!そうだ、ピザとか寿司のデリバリーなんかも……」
「いい。手は使えるから、食事は自分でなんとかする。でもおまえらの分まで作る余裕はないからな」
潤さんは松葉杖をついてキッチンに立つつもりなんだろうか?
「ああもう、ホンマに情けないやっちゃ!いつも世話になってる兄貴が怪我してるときくらい、ちゃんと面倒見んかいな!」
さすがに怪我人の潤さんをキッチンに立たせるのは好ましくないと思ったのか、葉月が立ち上がって伊藤くんと瀧内くんの頭を鷲掴みにした。
その勢いに潤さんも少々たじろいでいる。
「三島課長!私がごはん作りに行きますから、無理せんといてください」
「いや……気持ちはありがたいけど、木村は志織の世話もしてるから大変だろ?」
「二人分も三人分も一緒ですて!三島課長の家で志織と私も一緒に食べればええんちゃいます?」
「なるほど、それはいい考えだなぁ……」
葉月の提案は潤さんを納得させたようで、潤さんは感心した様子でうなずいている。
すると伊藤くんが葉月の顔色を窺いながら、おそるおそる手を挙げた。
「あのー……俺と玲司の分は?」
「何を甘えたことぬかしとんねん!元気なやつは自分で食べるもんくらい自分らでなんとかせぇ!」
「えーっ?!そんな冷たいこと言うなよ、葉月ぃ……」
伊藤くんが情けない声を出して肩を落としていると、瀧内くんが至って冷静な顔をして、眼鏡を指先で押し上げながら小さく手を挙げた。
「だったらひとつ提案があるんですが」
「なんや玲司?」
「潤さんが退院したら、志織さんも潤さんの家に住めばいいんじゃないですか?そうすれば葉月さんと僕と志岐くんで3人一緒に二人の生活をサポートできるし、僕らが帰ったあとは潤さんと志織さん二人で助け合って、なんとかできると思うんですけど」
瀧内くんの提案を聞いて、私たちはしばらく黙り込んだ。
いくらなんでもそれは……と私が言いかけたとき、葉月が瀧内くんの両肩を思いきり叩いた。
「それええな!めっちゃ合理的や!」
「そうしたら僕と志岐くんの食事も用意してくれますよね?」
「当たり前やん!でも手伝いはしてもらうで」
「仰せのままに」
私と潤さんの意見も聞かずに話は勝手に進んでいく。
潤さんは心なしか嬉しそうに見えた。
「それじゃあ、運んでも大丈夫な荷物はあとで送るついでに預かりますよ」
「そうしよか」
「なんなら土曜日に、志織さんの家にある荷物も運べるものだけでも運びますか?」
呆気に取られて黙って聞いているうちに、私の部屋の荷物まで運ぶ話になっている。
それはいわゆる『引っ越し』なのでは?
さすがにこのまま黙っているわけにはいかない。
「あのー……ちょっといい?」
「ん?なんや?」
「私も潤さんも、そうするとは一言も言ってないんだけど……」
私がおそるおそるそう言うと、葉月と瀧内くんは同時に潤さんの方を振り返った。
潤さんは二人の勢いに少し戸惑いながらも、うっすらと笑みを浮かべている。
おそらくこの顔は……。
「志織がいいなら、もちろん俺はかまわないけど……。部屋も余ってるし……みんなもその方が手間が省けるだろうし……」
──やっぱり……。
潤さんは『早く一緒に暮らしたい』と前から言っていたし、断るわけがないか。
断るどころか、潤さんはきっと心の中で瀧内くんに向かって『よくやった!』と叫んでいるに違いない。
「潤くんの家に住めば佐野は家賃も要らないし、会社は近くなるし、おまけにずっと潤くんと一緒にいられるんだから、メリットしかないよな。いずれは一緒になるんだし、この際だから同棲しちゃえばいいじゃん」
伊藤くんは当たり前のような顔をしてさらりとそう言ってのけた。
前に潤さんにも同じことを言われたけれど、同僚の伊藤くんにまで言われるとは思わなかった。
「ど……同棲って……」
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