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Accidents will happen
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「潤くんとだよ。月曜の朝に『どうだった?』って聞いたけど『別になんにもない』って言うし、めちゃくちゃ暗いし、普段なら絶対にしないようなミスするし、あれは絶対半分魂抜けてたなぁ」
やっぱり潤さんは私との間にあったことを伊藤くんたちには話していないようだ。
『なんにもなかった』と言ったと言うことは、潤さんは本当に私とのことをなかったことにしてしまったのかも知れない。
ここは私も話を合わせておいた方がいいのかと思っていると、瀧内くんが口の中のおにぎりをお茶で流し込んで私の方を見た。
「なんにもなくてあんな腑抜けた状態になるわけがないでしょう。僕が志織さんとはうまくいったのかって聞いたら、潤さん、言ってましたよ。『フラれた』って」
「ええっ?!それは違うよ、むしろフラれたのは私の方で……!」
思わず声をあげると、瀧内くんがニヤリと笑った。
ああ……この顔は何度も見たことがある。
猛烈にいやな予感しかしない。
「あれ?何もなかったんじゃなかったんでしたっけ?」
「えっ……もしかして今のって……」
「嘘ですよ。秘密主義の潤さんが僕らにそんなことを言うわけないじゃないですか」
しまった……はめられた……!
潤さんはきっと話していないだろうと思っていたのに、瀧内くんが真顔であんなことを言うものだから、すっかり信じてしまった。
「潤さんも志織さんも詰めが激甘というか、隠し事がどヘタですよね。全部顔に出てますよ」
「えーっ……そんなに……?」
思わず右手で顔を押さえて、がっくりと肩を落とした。
私がどれだけ隠そうとしても、瀧内くんには何もかも見透かされているらしい。
「それで、何があったんです?」
瀧内くんはどうってこともなさそうな顔でそう言って、三つ目のおにぎりの最後の一口を口に放り込んだ。
「潤さんが話してないのに、私の口から話すのもどうかと思うんだけど……」
「そうですか?それじゃあ潤さんが志織さんをフッたということで、この話はこれで終わりにしましょう。志織さんだって、自分をフッた男がどうしていようと知りたくもないでしょ?」
「えっ?!いや、だからそれはね……」
瀧内くんは私の言い訳を聞こうともせず腕時計を見て立ち上がる。
「ああ、もうこんな時間だ。僕、急ぐのでそろそろ行きますね」
瀧内くんの含みを持たせた言い方が気になって、なんとか潤さんのことを聞き出そうと思ったけれど、瀧内くんは荷物を手にさっさと病室を出ていった。
だったら伊藤くんと葉月に尋ねようと思いながら振り返ると、伊藤くんが私とは目を合わさないようにして席を立った。
「俺もそろそろ行くよ。葉月は?」
「私も郵便局寄りたいし、そろそろ行くわ。そこまで一緒に行こ」
伊藤くんに続いて葉月までもが席を立つ。
「そうかぁ……フラれたかぁ……。俺はてっきり、潤くんは佐野のことが好きなんだと思ってたんだけどな。まぁ、失恋なんてよくあることだし、佐野もあんまり気にしない方がいいよ」
「いや、だからそれは……!」
「あっ、そうや。有田課長が有給の件で夕方にでも連絡してって言うてたで。いつから出勤するか決まったら私にも連絡してな」
「あああ、ちょっと待って葉月!」
私が引き留めるのも聞かずに、葉月と伊藤くんは二人仲良く病室を出ていった。
ぽつんと一人取り残された私は、肩を落として大きなため息をつきながら、食べかけの昼食に向き直る。
結局、潤さんのことは何も聞けなかった。
ただひとつだけわかったのは、潤さんの様子がおかしかったと言うことだけだ。
潤さんがどうしているのか、何を思っているのかが気になってしかたがない。
みんなが意図的に私に隠しているようにも感じられる。
真相を知るのは怖い気もするけれど、私の気持ちも早く伝えたいから、今夜あたり、勇気を出して潤さんに電話してみよう。
昼食を終えて1時間ほど経った頃、診察室へ行って医師から検査の結果を聞いた。
特に異常はなかったので退院の許可が下り、手荷物をまとめて会計を済ませ、母と一緒に病院を出た。
タクシーで一度私のマンションに寄り、母に手伝ってもらいながら着替えなどを用意してから、有給の件で会社に電話をした。
有田課長は少しゆっくり休んでいいと言ってくれたけど、実家でぼんやりしていたからと言って骨折がすぐに治るわけでもないし、来週の火曜日が診察日なので、その日までは有給を使って仕事を休ませてもらうことにした。
病院はマンションからの方が近いので、月曜日の晩に戻りたいと葉月にメッセージを送ってから、再びタクシーを呼んで実家に帰った。
実家に戻ると、父がリビングのソファーで横になってウンウン唸っていた。
包帯に隠れているけれど足首もずいぶん腫れて痛々しい。
私より父の方が重症のようだ。
やっぱり潤さんは私との間にあったことを伊藤くんたちには話していないようだ。
『なんにもなかった』と言ったと言うことは、潤さんは本当に私とのことをなかったことにしてしまったのかも知れない。
ここは私も話を合わせておいた方がいいのかと思っていると、瀧内くんが口の中のおにぎりをお茶で流し込んで私の方を見た。
「なんにもなくてあんな腑抜けた状態になるわけがないでしょう。僕が志織さんとはうまくいったのかって聞いたら、潤さん、言ってましたよ。『フラれた』って」
「ええっ?!それは違うよ、むしろフラれたのは私の方で……!」
思わず声をあげると、瀧内くんがニヤリと笑った。
ああ……この顔は何度も見たことがある。
猛烈にいやな予感しかしない。
「あれ?何もなかったんじゃなかったんでしたっけ?」
「えっ……もしかして今のって……」
「嘘ですよ。秘密主義の潤さんが僕らにそんなことを言うわけないじゃないですか」
しまった……はめられた……!
潤さんはきっと話していないだろうと思っていたのに、瀧内くんが真顔であんなことを言うものだから、すっかり信じてしまった。
「潤さんも志織さんも詰めが激甘というか、隠し事がどヘタですよね。全部顔に出てますよ」
「えーっ……そんなに……?」
思わず右手で顔を押さえて、がっくりと肩を落とした。
私がどれだけ隠そうとしても、瀧内くんには何もかも見透かされているらしい。
「それで、何があったんです?」
瀧内くんはどうってこともなさそうな顔でそう言って、三つ目のおにぎりの最後の一口を口に放り込んだ。
「潤さんが話してないのに、私の口から話すのもどうかと思うんだけど……」
「そうですか?それじゃあ潤さんが志織さんをフッたということで、この話はこれで終わりにしましょう。志織さんだって、自分をフッた男がどうしていようと知りたくもないでしょ?」
「えっ?!いや、だからそれはね……」
瀧内くんは私の言い訳を聞こうともせず腕時計を見て立ち上がる。
「ああ、もうこんな時間だ。僕、急ぐのでそろそろ行きますね」
瀧内くんの含みを持たせた言い方が気になって、なんとか潤さんのことを聞き出そうと思ったけれど、瀧内くんは荷物を手にさっさと病室を出ていった。
だったら伊藤くんと葉月に尋ねようと思いながら振り返ると、伊藤くんが私とは目を合わさないようにして席を立った。
「俺もそろそろ行くよ。葉月は?」
「私も郵便局寄りたいし、そろそろ行くわ。そこまで一緒に行こ」
伊藤くんに続いて葉月までもが席を立つ。
「そうかぁ……フラれたかぁ……。俺はてっきり、潤くんは佐野のことが好きなんだと思ってたんだけどな。まぁ、失恋なんてよくあることだし、佐野もあんまり気にしない方がいいよ」
「いや、だからそれは……!」
「あっ、そうや。有田課長が有給の件で夕方にでも連絡してって言うてたで。いつから出勤するか決まったら私にも連絡してな」
「あああ、ちょっと待って葉月!」
私が引き留めるのも聞かずに、葉月と伊藤くんは二人仲良く病室を出ていった。
ぽつんと一人取り残された私は、肩を落として大きなため息をつきながら、食べかけの昼食に向き直る。
結局、潤さんのことは何も聞けなかった。
ただひとつだけわかったのは、潤さんの様子がおかしかったと言うことだけだ。
潤さんがどうしているのか、何を思っているのかが気になってしかたがない。
みんなが意図的に私に隠しているようにも感じられる。
真相を知るのは怖い気もするけれど、私の気持ちも早く伝えたいから、今夜あたり、勇気を出して潤さんに電話してみよう。
昼食を終えて1時間ほど経った頃、診察室へ行って医師から検査の結果を聞いた。
特に異常はなかったので退院の許可が下り、手荷物をまとめて会計を済ませ、母と一緒に病院を出た。
タクシーで一度私のマンションに寄り、母に手伝ってもらいながら着替えなどを用意してから、有給の件で会社に電話をした。
有田課長は少しゆっくり休んでいいと言ってくれたけど、実家でぼんやりしていたからと言って骨折がすぐに治るわけでもないし、来週の火曜日が診察日なので、その日までは有給を使って仕事を休ませてもらうことにした。
病院はマンションからの方が近いので、月曜日の晩に戻りたいと葉月にメッセージを送ってから、再びタクシーを呼んで実家に帰った。
実家に戻ると、父がリビングのソファーで横になってウンウン唸っていた。
包帯に隠れているけれど足首もずいぶん腫れて痛々しい。
私より父の方が重症のようだ。
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