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目撃証言
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それから私は、三年前から護と付き合っていて結婚も考えていることと、今日会議室で目撃してしまったことや護の言った言葉を、瀧内くんに詳しく話した。
私と護が付き合っていることをなぜ知っているのかと尋ねると、自宅の最寄り駅といくつかの行きつけの店が私と同じなのだと瀧内くんは言った。
そして休日や夜に私と護が二人でその店にいるところを何度も見かけたことがあるそうだ。
自宅の最寄り駅は会社からは少し遠いので、そうそう会社の人に会うことはないだろうと思っていたのに、案外世の中はせまい。
瀧内くんは商品管理部にいるときから「二人が付き合っているのは知っていたけれど、知らないふりをしていた」らしい。
仕方がないので護の浮気相手が奥田さんだということも明かしたけれど、瀧内くんは顔色ひとつ変えず冷静な表情を崩さなかった。
葉月も奥田さんの男遊びが激しいという噂は耳にしていたそうで、なんだか妙に納得したような顔をしている。
「それにしてもタイミングが悪いというか……佐野主任も見ちゃったんですね。まぁ、会社であんなことしてたら、いつ誰に見つかってもおかしくないとは思ってましたけど」
彼氏の浮気現場を目撃してしまった私にはさすがに同情したのか、瀧内くんはほんの少し気の毒そうな顔をしてそう言った。
「ってことは……瀧内も見たことあるんか?」
葉月にそう尋ねられると、瀧内くんはコクリとうなずいた。
「給湯室とか会議室とか、会社でイチャついてたのは何度か目撃してます。僕が第三倉庫専用のエレベーターを待ってたときに、地下から上がってきたエレベーターに二人一緒に乗っていたことも一度ありました」
「えぇっ……」
第三倉庫は地下の狭い通路を通った一番奥にあるので、その場所の不便さから、過去のあまり売れなかった商品の過剰な在庫や、発売に至らなかった企画のサンプル品、取っておいて意味があるのかよくわからないような資料の墓場みたいになっている。
商品管理部で働く私たちは、古い商品のサンプルやデータ化されていないアナログな資料がどうしても必要な時には、それを探すため第三倉庫の目の前にある専用のエレベーターを使って足を運ぶことがある。
けれどそんなことも年に数回で、せいぜい片手で数えられる程度の頻度の低さだ。
地下には第三倉庫と、ボイラー室などの一般社員が行く用事のない部屋しかないので、営業部の護が地下に行く必要などあるはずもない。
ましてや業務上なんの接点もない商品管理部の奥田さんと一緒に第三倉庫に行くなんて、どう考えてもおかしい。
おそらく時と場所もわきまえず発情した二人は、滅多に人の来ない薄暗くホコリっぽいあの場所で互いの性欲を満たし、その事後をたまたま瀧内くんに目撃されたのだろう。
社会人として恥ずかしくはないのか?
せめて会社の人に見つからないようにするくらいの配慮ってものはないのか?
その他にもいろいろと思うところはあるけれど、呆れ果てて言葉が出てこない。
「所かまわず盛りよってからに、会社をなんやと思うてるねん……。せやけど変やないか?橋口は彼女と結婚したい言うてのろけまくっとんやろ?」
葉月は眉間にシワを寄せながら首をかしげる。
ゆっくりとは言えずいぶん飲んだし、さすがにお酒が回ってきたのだろう。
最初は『橋口くん』『瀧内くん』と呼んでいたのに、さっきから完全に呼び捨てになってしまっている。
上司の三島課長が抜けて気をつかう相手がいなくなったこともあってか、言葉遣いもだんだん荒くなってきているような気がするのは、私の気のせいではないと思う。
「カムフラージュですかね?橋口さんと奥田さんがイチャついているところは何度か見てますけど、一緒にいるのを初めて見たのは営業部に異動した直後だから、半年くらい前です。少なくとも半年前には二人は何らかの関係があったことになりますね」
私と護が付き合っていることをなぜ知っているのかと尋ねると、自宅の最寄り駅といくつかの行きつけの店が私と同じなのだと瀧内くんは言った。
そして休日や夜に私と護が二人でその店にいるところを何度も見かけたことがあるそうだ。
自宅の最寄り駅は会社からは少し遠いので、そうそう会社の人に会うことはないだろうと思っていたのに、案外世の中はせまい。
瀧内くんは商品管理部にいるときから「二人が付き合っているのは知っていたけれど、知らないふりをしていた」らしい。
仕方がないので護の浮気相手が奥田さんだということも明かしたけれど、瀧内くんは顔色ひとつ変えず冷静な表情を崩さなかった。
葉月も奥田さんの男遊びが激しいという噂は耳にしていたそうで、なんだか妙に納得したような顔をしている。
「それにしてもタイミングが悪いというか……佐野主任も見ちゃったんですね。まぁ、会社であんなことしてたら、いつ誰に見つかってもおかしくないとは思ってましたけど」
彼氏の浮気現場を目撃してしまった私にはさすがに同情したのか、瀧内くんはほんの少し気の毒そうな顔をしてそう言った。
「ってことは……瀧内も見たことあるんか?」
葉月にそう尋ねられると、瀧内くんはコクリとうなずいた。
「給湯室とか会議室とか、会社でイチャついてたのは何度か目撃してます。僕が第三倉庫専用のエレベーターを待ってたときに、地下から上がってきたエレベーターに二人一緒に乗っていたことも一度ありました」
「えぇっ……」
第三倉庫は地下の狭い通路を通った一番奥にあるので、その場所の不便さから、過去のあまり売れなかった商品の過剰な在庫や、発売に至らなかった企画のサンプル品、取っておいて意味があるのかよくわからないような資料の墓場みたいになっている。
商品管理部で働く私たちは、古い商品のサンプルやデータ化されていないアナログな資料がどうしても必要な時には、それを探すため第三倉庫の目の前にある専用のエレベーターを使って足を運ぶことがある。
けれどそんなことも年に数回で、せいぜい片手で数えられる程度の頻度の低さだ。
地下には第三倉庫と、ボイラー室などの一般社員が行く用事のない部屋しかないので、営業部の護が地下に行く必要などあるはずもない。
ましてや業務上なんの接点もない商品管理部の奥田さんと一緒に第三倉庫に行くなんて、どう考えてもおかしい。
おそらく時と場所もわきまえず発情した二人は、滅多に人の来ない薄暗くホコリっぽいあの場所で互いの性欲を満たし、その事後をたまたま瀧内くんに目撃されたのだろう。
社会人として恥ずかしくはないのか?
せめて会社の人に見つからないようにするくらいの配慮ってものはないのか?
その他にもいろいろと思うところはあるけれど、呆れ果てて言葉が出てこない。
「所かまわず盛りよってからに、会社をなんやと思うてるねん……。せやけど変やないか?橋口は彼女と結婚したい言うてのろけまくっとんやろ?」
葉月は眉間にシワを寄せながら首をかしげる。
ゆっくりとは言えずいぶん飲んだし、さすがにお酒が回ってきたのだろう。
最初は『橋口くん』『瀧内くん』と呼んでいたのに、さっきから完全に呼び捨てになってしまっている。
上司の三島課長が抜けて気をつかう相手がいなくなったこともあってか、言葉遣いもだんだん荒くなってきているような気がするのは、私の気のせいではないと思う。
「カムフラージュですかね?橋口さんと奥田さんがイチャついているところは何度か見てますけど、一緒にいるのを初めて見たのは営業部に異動した直後だから、半年くらい前です。少なくとも半年前には二人は何らかの関係があったことになりますね」
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