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浮気現場目撃
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「どないした?橋口くんと喧嘩でもしたん?」
「そうじゃないんだけど……。あのさ、護って普段営業部にいる時はどんな感じ?」
私の質問の意図がわからない様子で、葉月はまた首をかしげている。
「どんなって?」
「同僚に私のこと話したりするのかなーとか……仲のいい女子はいるのかなーとか…… 」
歯切れの悪い調子で言葉を発すると、葉月はプチプチと枝豆を口に入れながら怪訝な顔をした。
「そんなん気にすんの志織らしくないな。ケンカじゃなかったら何があったんや?」
やっぱり葉月の目はごまかせそうもない。
ホントは話したくないけれど、話を聞くなら護が浮気してることは話さなきゃダメみたいだ。
私は仕方なく、今日目撃してしまった衝撃的な出来事を話す決心をして、景気付けに勢いよくチューハイを煽った。
ジョッキをテーブルの上に置いて、すっかり口紅の取れてしまった口元を紙ナフキンで拭う。
「じつはね……今日、護が浮気してる現場、見ちゃったんだ」
声のトーンを落としてそう言うと、葉月は一瞬大きく目を見開いた。
「えっ?!浮気って……嘘やろ?!」
「嘘じゃないよ、この目で見たんだから。仕事中に会議室でキスして、相手の体を撫でくりまわしてた」
「マジか……!あの橋口くんが……!!」
驚くのも無理はない。
職場では爽やかなイケメンで評判の護がそんなことをしているなんて聞かされたら、護を知っている社内の人間ならきっと誰もが同じような反応をするだろう。
私も本当に驚いたし、今でもまだ信じられないくらいなのだから。
葉月は興奮気味にチューハイを煽り、ジョッキをテーブルに置いて身を乗り出した。
「もっと詳しく聞かせてや。相手は?」
「商品管理部の2年目の子。護と付き合ってるのが私だって知ってるかどうかはわからないけど、護に彼女がいるのわかってて関係を持ってる。本気じゃなくてセフレって感じだった。護がね、私のことは好きだけど、セックスはその子とした方が気持ちいいから好きだって」
聞いたままの言葉を伝えると、葉月はテーブルの上で拳を握りしめた。
「なんちゅうやっちゃ……ただれきっとる……!!ほんで志織はそれ見てどないしたん?」
「どうもしない……っていうか、何もできないよ。腹は立つけど仕事中だったし、見なかったふりしてやり過ごした」
私の言葉に納得がいかなかったのだろう。
葉月は握り拳をテーブルにガツンと叩きつけた。
その音に少し驚いた様子で、近くの席にいた客が何人か振り返る。
「なんでやねん!浮気現場に乗り込んで一発どついたればええのに!」
「葉月、ちょっと落ち着いて」
「これが落ち着いていられるか!なんやったら代わりに私が橋口どついたる!」
かなりの興奮状態だ。
私と護が付き合いだした頃から知っている分、余計に腹が立っているのかも知れない。
私も一緒になって「どついたる!」と叫びたい衝動を抑え、できるだけ冷静なふりをして葉月の握り拳に手を添える。
「いやいや……。葉月の気持ちはすっごく嬉しいんだけど、やっぱり暴力は……。それより、もっと激しく完膚なきまで叩きのめしたいんだ」
「何それ、どういうこと?」
葉月は眉間にシワを寄せて、運ばれてきた唐揚げに箸をつけた。
私も取り皿に唐揚げを乗せて、思いっきりレモンを搾る。
「3年も付き合ってきてさ、もうすぐ30だよ?たまに結婚の話も出たりするから護もそのつもりなんだろうし、そろそろかなぁってなんとなくだけど思ってたの、私は」
「まぁ、当然やな」
「それなのによりによって私の部下と浮気してるんだよ?もしこのまま何も知らないふりして付き合って、いずれ結婚したとしてもさ……あれ、絶対浮気するよね」
「するやろうな、間違いなく」
「そうじゃないんだけど……。あのさ、護って普段営業部にいる時はどんな感じ?」
私の質問の意図がわからない様子で、葉月はまた首をかしげている。
「どんなって?」
「同僚に私のこと話したりするのかなーとか……仲のいい女子はいるのかなーとか…… 」
歯切れの悪い調子で言葉を発すると、葉月はプチプチと枝豆を口に入れながら怪訝な顔をした。
「そんなん気にすんの志織らしくないな。ケンカじゃなかったら何があったんや?」
やっぱり葉月の目はごまかせそうもない。
ホントは話したくないけれど、話を聞くなら護が浮気してることは話さなきゃダメみたいだ。
私は仕方なく、今日目撃してしまった衝撃的な出来事を話す決心をして、景気付けに勢いよくチューハイを煽った。
ジョッキをテーブルの上に置いて、すっかり口紅の取れてしまった口元を紙ナフキンで拭う。
「じつはね……今日、護が浮気してる現場、見ちゃったんだ」
声のトーンを落としてそう言うと、葉月は一瞬大きく目を見開いた。
「えっ?!浮気って……嘘やろ?!」
「嘘じゃないよ、この目で見たんだから。仕事中に会議室でキスして、相手の体を撫でくりまわしてた」
「マジか……!あの橋口くんが……!!」
驚くのも無理はない。
職場では爽やかなイケメンで評判の護がそんなことをしているなんて聞かされたら、護を知っている社内の人間ならきっと誰もが同じような反応をするだろう。
私も本当に驚いたし、今でもまだ信じられないくらいなのだから。
葉月は興奮気味にチューハイを煽り、ジョッキをテーブルに置いて身を乗り出した。
「もっと詳しく聞かせてや。相手は?」
「商品管理部の2年目の子。護と付き合ってるのが私だって知ってるかどうかはわからないけど、護に彼女がいるのわかってて関係を持ってる。本気じゃなくてセフレって感じだった。護がね、私のことは好きだけど、セックスはその子とした方が気持ちいいから好きだって」
聞いたままの言葉を伝えると、葉月はテーブルの上で拳を握りしめた。
「なんちゅうやっちゃ……ただれきっとる……!!ほんで志織はそれ見てどないしたん?」
「どうもしない……っていうか、何もできないよ。腹は立つけど仕事中だったし、見なかったふりしてやり過ごした」
私の言葉に納得がいかなかったのだろう。
葉月は握り拳をテーブルにガツンと叩きつけた。
その音に少し驚いた様子で、近くの席にいた客が何人か振り返る。
「なんでやねん!浮気現場に乗り込んで一発どついたればええのに!」
「葉月、ちょっと落ち着いて」
「これが落ち着いていられるか!なんやったら代わりに私が橋口どついたる!」
かなりの興奮状態だ。
私と護が付き合いだした頃から知っている分、余計に腹が立っているのかも知れない。
私も一緒になって「どついたる!」と叫びたい衝動を抑え、できるだけ冷静なふりをして葉月の握り拳に手を添える。
「いやいや……。葉月の気持ちはすっごく嬉しいんだけど、やっぱり暴力は……。それより、もっと激しく完膚なきまで叩きのめしたいんだ」
「何それ、どういうこと?」
葉月は眉間にシワを寄せて、運ばれてきた唐揚げに箸をつけた。
私も取り皿に唐揚げを乗せて、思いっきりレモンを搾る。
「3年も付き合ってきてさ、もうすぐ30だよ?たまに結婚の話も出たりするから護もそのつもりなんだろうし、そろそろかなぁってなんとなくだけど思ってたの、私は」
「まぁ、当然やな」
「それなのによりによって私の部下と浮気してるんだよ?もしこのまま何も知らないふりして付き合って、いずれ結婚したとしてもさ……あれ、絶対浮気するよね」
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