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知らぬ顔をやめた順平
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いつの間にかウトウトしていたらしい。
ドアの向こうがやけに騒がしくて目が覚めた。
女の人がわめいている。
はっきりとは聞こえないけれど、順平を激しくなじっているのは間違いない。
……順平のやつ、またひどい事言ったな。
誰彼構わず手当たり次第食い散らかして、おまけに用が済んだら冷たくあしらうんだから。
見た目がいい分、余計にタチが悪い。
フローリングを苛立たしげに歩く大きな足音と玄関のドアが乱暴に閉まる音がした。
やれやれ、やっと帰ったか。
これで安心してシャワーでも……と思ったけれど、すぐに出て行くのもなんとなく気まずい。
やっぱりもう少し後にしようと思って布団から顔を出した時、部屋のドアが勢いよく開いた。
「うひゃあっ!!」
驚きのあまり変な叫び声をあげてしまった。
順平は部屋の入り口で私を見下ろしている。
「こっそり聞き耳たててたのか?」
私は慌てて布団をはね除け起き上がった。
「んなっ……!!そんなわけないでしょ!!聞こえないように布団の中で耳塞いでたのよ!!って言うか勝手にドア開けないで!!それに……!!」
「なんだよ、居候。俺の部屋で俺がやる事に文句あんのか?」
それを言われると返す言葉もない。
だけど私だって家賃を払ってここに住んでいるんだから、少しくらい言い返してもいいはずだ。
「それはそうだけどっ……!どうせならそういう事は私にはわからないようにやってよ!!」
「今夜はマスターの家に泊まるんじゃなかったのか?」
「そんなわけないでしょ?!私、そんな事一言も言ってないじゃない!!」
「ふーん……。今日は帰って来ないと思ってた。一緒に暮らしてる女が急に帰ってきたから帰れって言ったら、あの女怒って帰った」
「……当たり前だよ……」
ホントに最低だ、この男……。
デリカシーの欠片もない。
これ以上何を話しても無駄だから、この辺で話を打ち切った方が良さそうだ。
「とりあえず、私はお風呂に入りたいの」
「一緒に?」
「んなわけあるかっ!!出るに出られなくて困ってたの!!もうあっち行って!!」
立ち上がり順平の体を両手でぐいぐい押すと、順平が急に険しい顔をして私の腕を掴んだ。
「……マスターの香水の匂いがする」
「えっ?」
私は慌てて順平に捕まれていない方の腕を鼻に近付け、匂いを嗅いで確かめる。
ほんの微かに早苗さんの香水の香りがした。
「匂いが移るようなやらしい事してきたんだ」
「バカッ!アンタには言われたくないよ!!」
「ふーん……否定しないのか。来い!!」
順平は乱暴に掴んだ私の腕を強く引いて歩きだした。
こんなに怒っている順平を見たのは初めてだ。
なんとか逃げ出そうと抵抗しても、掴まれた腕が痛むばかりで男である順平の力には敵わない。
ドアの向こうがやけに騒がしくて目が覚めた。
女の人がわめいている。
はっきりとは聞こえないけれど、順平を激しくなじっているのは間違いない。
……順平のやつ、またひどい事言ったな。
誰彼構わず手当たり次第食い散らかして、おまけに用が済んだら冷たくあしらうんだから。
見た目がいい分、余計にタチが悪い。
フローリングを苛立たしげに歩く大きな足音と玄関のドアが乱暴に閉まる音がした。
やれやれ、やっと帰ったか。
これで安心してシャワーでも……と思ったけれど、すぐに出て行くのもなんとなく気まずい。
やっぱりもう少し後にしようと思って布団から顔を出した時、部屋のドアが勢いよく開いた。
「うひゃあっ!!」
驚きのあまり変な叫び声をあげてしまった。
順平は部屋の入り口で私を見下ろしている。
「こっそり聞き耳たててたのか?」
私は慌てて布団をはね除け起き上がった。
「んなっ……!!そんなわけないでしょ!!聞こえないように布団の中で耳塞いでたのよ!!って言うか勝手にドア開けないで!!それに……!!」
「なんだよ、居候。俺の部屋で俺がやる事に文句あんのか?」
それを言われると返す言葉もない。
だけど私だって家賃を払ってここに住んでいるんだから、少しくらい言い返してもいいはずだ。
「それはそうだけどっ……!どうせならそういう事は私にはわからないようにやってよ!!」
「今夜はマスターの家に泊まるんじゃなかったのか?」
「そんなわけないでしょ?!私、そんな事一言も言ってないじゃない!!」
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「……当たり前だよ……」
ホントに最低だ、この男……。
デリカシーの欠片もない。
これ以上何を話しても無駄だから、この辺で話を打ち切った方が良さそうだ。
「とりあえず、私はお風呂に入りたいの」
「一緒に?」
「んなわけあるかっ!!出るに出られなくて困ってたの!!もうあっち行って!!」
立ち上がり順平の体を両手でぐいぐい押すと、順平が急に険しい顔をして私の腕を掴んだ。
「……マスターの香水の匂いがする」
「えっ?」
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「匂いが移るようなやらしい事してきたんだ」
「バカッ!アンタには言われたくないよ!!」
「ふーん……否定しないのか。来い!!」
順平は乱暴に掴んだ私の腕を強く引いて歩きだした。
こんなに怒っている順平を見たのは初めてだ。
なんとか逃げ出そうと抵抗しても、掴まれた腕が痛むばかりで男である順平の力には敵わない。
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