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略奪で得た幸せは格別に甘い蜜の味?
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日が傾いて窓の外が薄暗くなってくると、オフィス街は仕事を終えた人たちの姿が目立ち始めた。
カフェの壁に掛けられたレトロな時計の針は、5時15分を少し過ぎたところを指している。
「もうそろそろ行こうかな。6時からバイトなんだ」
「なんのバイトしてんの?」
「昼も夜もキッチンで調理してるよ。その店、昼はカフェなんだけど、夜はバーになるの」
「へぇ。朱里、料理好きだもんね。行ってみたいな。今度行くから場所教えて」
「うん」
席を立って一緒にレジに向かうと、志穂がバッグから財布を出して振り返った。
「ここは私が出しとく」
「えっ?私、お茶代くらいは出せるよ?」
「いいって、私が誘ったんだし。その代わり、今度久しぶりに朱里の手料理食べさせて」
もしかして志穂なりに慰めてくれているのかな?
ここは素直にその気持ちを受け取っておこう。
「そんなんでいいの?じゃあ、お言葉に甘えてご馳走になります」
会計が済んで店の外に出ようと通りに面したドアの方を向いた時、信じられない光景が私の目に飛び込んできた。
見慣れたスーツ姿の横に、お腹の大きな女性の姿。
それは幸せそうに笑って、手を繋いで歩く壮介と紗耶香だった。
何がなんだかまったく理解できない。
「壮介……と……紗耶香……?どういう事……?壮介の相手……あの時会った人と違う……?」
呆然とその姿を見送る私の肩を、志穂が強く揺すった。
「朱里、これどういう事?!あれ、壮介さんだよね?」
「うん……でも、私にもわけがわからないよ……」
「もしかして……紗耶香が言ってた『友達』って、朱里だったって事……?」
「嘘でしょ………?」
混乱する頭の中でかき集めた情報が、パズルのピースのようにカチカチと音をたてて繋がっていく。
ああ、そうなんだ。
今目の前で見たものがすべてを物語っている。
私は親友だと思っていた紗耶香に、婚約者を奪われた。
それが動かざる真実だ。
私はうつむいて唇を噛みしめた。
志穂は心配そうに私の背中に手を添えた。
「朱里……大丈夫?」
「……うん。今更何言ったって、どうにもならないしね……」
壮介は私を捨てた事なんか忘れて、紗耶香と幸せになろうとしている。
紗耶香のお腹には壮介の子がいるのだから、今更何を言っても私に勝ち目なんてない。
もし壮介が紗耶香より私を大事だと思っていたら最初から浮気なんてしなかったはずだから、その時点で私は紗耶香に負けていたのだ。
これは勝ち負けの問題ではないとわかっていても、そうとしか思えなかった。
「あのさ……もうちょっとだけ時間いいかな?」
「うん……」
「じゃあ……とりあえず、ここ出ようか」
店を出て広場のベンチに座ると、志穂は神妙な面持ちで私の方を見た。
「こんな時に酷かも知れないけど……紗耶香から前に聞いてた事、全部話すね。話の内容が内容だし、勝手に話すのもどうかと思ったから詳しく話さなかったけど、朱里にはそれを知る権利があると思うから」
カフェの壁に掛けられたレトロな時計の針は、5時15分を少し過ぎたところを指している。
「もうそろそろ行こうかな。6時からバイトなんだ」
「なんのバイトしてんの?」
「昼も夜もキッチンで調理してるよ。その店、昼はカフェなんだけど、夜はバーになるの」
「へぇ。朱里、料理好きだもんね。行ってみたいな。今度行くから場所教えて」
「うん」
席を立って一緒にレジに向かうと、志穂がバッグから財布を出して振り返った。
「ここは私が出しとく」
「えっ?私、お茶代くらいは出せるよ?」
「いいって、私が誘ったんだし。その代わり、今度久しぶりに朱里の手料理食べさせて」
もしかして志穂なりに慰めてくれているのかな?
ここは素直にその気持ちを受け取っておこう。
「そんなんでいいの?じゃあ、お言葉に甘えてご馳走になります」
会計が済んで店の外に出ようと通りに面したドアの方を向いた時、信じられない光景が私の目に飛び込んできた。
見慣れたスーツ姿の横に、お腹の大きな女性の姿。
それは幸せそうに笑って、手を繋いで歩く壮介と紗耶香だった。
何がなんだかまったく理解できない。
「壮介……と……紗耶香……?どういう事……?壮介の相手……あの時会った人と違う……?」
呆然とその姿を見送る私の肩を、志穂が強く揺すった。
「朱里、これどういう事?!あれ、壮介さんだよね?」
「うん……でも、私にもわけがわからないよ……」
「もしかして……紗耶香が言ってた『友達』って、朱里だったって事……?」
「嘘でしょ………?」
混乱する頭の中でかき集めた情報が、パズルのピースのようにカチカチと音をたてて繋がっていく。
ああ、そうなんだ。
今目の前で見たものがすべてを物語っている。
私は親友だと思っていた紗耶香に、婚約者を奪われた。
それが動かざる真実だ。
私はうつむいて唇を噛みしめた。
志穂は心配そうに私の背中に手を添えた。
「朱里……大丈夫?」
「……うん。今更何言ったって、どうにもならないしね……」
壮介は私を捨てた事なんか忘れて、紗耶香と幸せになろうとしている。
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もし壮介が紗耶香より私を大事だと思っていたら最初から浮気なんてしなかったはずだから、その時点で私は紗耶香に負けていたのだ。
これは勝ち負けの問題ではないとわかっていても、そうとしか思えなかった。
「あのさ……もうちょっとだけ時間いいかな?」
「うん……」
「じゃあ……とりあえず、ここ出ようか」
店を出て広場のベンチに座ると、志穂は神妙な面持ちで私の方を見た。
「こんな時に酷かも知れないけど……紗耶香から前に聞いてた事、全部話すね。話の内容が内容だし、勝手に話すのもどうかと思ったから詳しく話さなかったけど、朱里にはそれを知る権利があると思うから」
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