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嘘も通せば修羅場になる
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順平からは一度だけ、誕生日でもなんでもない日に、私に似合いそうだったからとネックレスをプレゼントされた事があった。
そんなに高いものではなかったかも知れないけれど、バイトと劇団の活動を掛け持ちしていつもお金のなかった順平が、私のためにそうしてくれた事が嬉しかったのを覚えている。
そういえばあのネックレス、どうしたっけ。
「さっさと運んで終わらせようぜ」
「あ、うん。そうだね」
荷物を運ぼうと立ち上がった時、順平は壮介の目の前で私を抱き寄せた。
不意を突かれた私は何事かと思いながら、順平のなすがままになっている。
「これが済んだら服買いに行こう。おまえに似合う服買ってやる。これからは俺がおまえをいい女にしてやるからな」
順平は自信たっぷりに笑みを浮かべて、呆気に取られた私の頬に軽くキスをした。
何言ってんの……?!
めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!!
壮介もポカンとして私と順平を見ている。
順平の彼女のふりって、ここで必要?
むしろ順平が私の彼氏のふりしてるって、なんかおかしくないか?
順平の意図がよくわからないまま部屋と車を何度か往復して、最後の荷物を運び出そうとした時、壮介が封筒を差し出した。
「これ……全額は無理だけど、とりあえず……」
「うん」
「残りもできるだけ早く返すから。用意できたら連絡する」
「わかった」
お金の入った封筒を受け取りバッグにしまった。
結婚したと言っていたのに、ここに来てから一度も彼女の姿を見ていない。
別れ話をした翌日にこの部屋で会っているのだから、私に会わせたくなくて外出させたとは考えにくい。
「今日は彼女いないの?」
「出掛けてる」
夕方なのに食事の用意もしないで?
それに外はもう暗くなっているのに、妊婦を一人で出歩かせて危なくない?
なんて、余計なお世話か。
私には関係のない事だ。
「朱里、もう新しい男できたんだ」
「え?」
「誰でも良かったんだな。だったら我慢なんかしないで、もっと早く別れようって言えば良かった」
「何それ。我慢しなきゃいけないほど、私と一緒にいるのは苦痛だったって言いたいの?」
「朱里には俺しかいないんだと思ってたから、見捨てられなかった」
随分とひどい言われようだ。
壮介は私の事なんて好きじゃなかったけど同棲までして捨てるわけにもいかず、仕方なく結婚するつもりだったんだな。
「自惚れてる」
思わずポツリと呟いた。
それは壮介に対しての言葉だったのか、それとも私自身に対しての言葉なのか。
私だって壮介が他の女を選ぶなんて思っていなかった。
お互いにたいして好きでもなかったのに、なんのために3年も一緒にいたんだろう。
こんなの、恋とも愛とも呼べない。
壮介と過ごした日々を振り返っても、胸が熱くしめつけられるような思い出なんて、ひとつもない。
悲しさとか悔しさを通り越して、ただ虚しさだけが心に残った。
私は合鍵を玄関の下駄箱の上に置き、別れの言葉もなく、最後の荷物を手に部屋を出た。
そんなに高いものではなかったかも知れないけれど、バイトと劇団の活動を掛け持ちしていつもお金のなかった順平が、私のためにそうしてくれた事が嬉しかったのを覚えている。
そういえばあのネックレス、どうしたっけ。
「さっさと運んで終わらせようぜ」
「あ、うん。そうだね」
荷物を運ぼうと立ち上がった時、順平は壮介の目の前で私を抱き寄せた。
不意を突かれた私は何事かと思いながら、順平のなすがままになっている。
「これが済んだら服買いに行こう。おまえに似合う服買ってやる。これからは俺がおまえをいい女にしてやるからな」
順平は自信たっぷりに笑みを浮かべて、呆気に取られた私の頬に軽くキスをした。
何言ってんの……?!
めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!!
壮介もポカンとして私と順平を見ている。
順平の彼女のふりって、ここで必要?
むしろ順平が私の彼氏のふりしてるって、なんかおかしくないか?
順平の意図がよくわからないまま部屋と車を何度か往復して、最後の荷物を運び出そうとした時、壮介が封筒を差し出した。
「これ……全額は無理だけど、とりあえず……」
「うん」
「残りもできるだけ早く返すから。用意できたら連絡する」
「わかった」
お金の入った封筒を受け取りバッグにしまった。
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「今日は彼女いないの?」
「出掛けてる」
夕方なのに食事の用意もしないで?
それに外はもう暗くなっているのに、妊婦を一人で出歩かせて危なくない?
なんて、余計なお世話か。
私には関係のない事だ。
「朱里、もう新しい男できたんだ」
「え?」
「誰でも良かったんだな。だったら我慢なんかしないで、もっと早く別れようって言えば良かった」
「何それ。我慢しなきゃいけないほど、私と一緒にいるのは苦痛だったって言いたいの?」
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「自惚れてる」
思わずポツリと呟いた。
それは壮介に対しての言葉だったのか、それとも私自身に対しての言葉なのか。
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こんなの、恋とも愛とも呼べない。
壮介と過ごした日々を振り返っても、胸が熱くしめつけられるような思い出なんて、ひとつもない。
悲しさとか悔しさを通り越して、ただ虚しさだけが心に残った。
私は合鍵を玄関の下駄箱の上に置き、別れの言葉もなく、最後の荷物を手に部屋を出た。
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