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捨てる男在れば拾う神と悪魔のような男在り
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「やっぱいい。私は私のペースで歩くから」
「朝にならないように気を付けるんだな」
口を開けば憎まれ口ばかり。
私は相当憎まれているんだな。
順平は昔の事は何一つ話そうとしないけれど、きっとそれでいいんだ。
今更昔の話をしたってなんにもならない。
懐かしさで昔の恋愛感情なんかを思い出して、勘違いして妙な関係になっても困る。
私たちの間には、少し距離があるくらいがちょうどいいのかも知れない。
順平を追う事をやめた私は自分のペースで歩く。
前を向いてどんどん進む順平は、引き離した私を振り返りもせず、もう随分先の方を歩いている。
順平はいつだってそうだった。
まっすぐ夢を追い掛けて、劇団の活動に夢中になると私のことを何週間も放っておいて、舞台が終わると悪びれもせず当たり前のように笑って会いに来た。
順平の夢も、そのために努力していた事も知っていたから、私は順平を責める事ができなかった。
順平の夢が叶う頃には、もう私なんか必要ないと言うだろう。
もし夢をあきらめる日が来たら、私は順平になんと言えばいいのだろう。
そんな先の事ばかり考えてはいつも不安になっていた。
少しだけでいいから私を安心させて欲しかったのに、順平は私の気持ちになんか気付いてくれなかった。
順平には言わなかったけれど、私にだって夢はあった。
でもそれは順平とはきっと叶わない夢だと思ったから、手遅れになる前に、私は順平の前から消えたんだ。
舞台を控え劇団の活動に夢中になっていた順平は、私がいなくなった事になんてしばらく気付かなかっただろうし、気付いたところで、順平が髪を振り乱し必死になって探してくれたりはしなかったのだろうと思う。
それも今となっては昔の話だ。
私も順平もあの頃とは違う。
順平の後ろ姿はもう、見失いそうなほど小さくなっている。
一度離してしまった手が私を引き寄せてくれることなんて、最初から期待していない。
下手に優しくされて勘違いしても困るし、もうあんなつらい思いはしたくないから、嫌われたままでいい。
私は明日の朝食用のパンと牛乳を買おうと、通り掛かったコンビニに立ち寄った。
安いバターロールと牛乳をかごに入れてレジへ向かおうとすると、順平が店の中に入ってきた。
さっきあんなに遠くにいたはずなのに、どうして戻って来たんだろう?
「買い物?」
「……ああ」
コンビニに入った順平は、手にした買い物かごに惣菜パンやペットボトル入りのコーヒー、ビールなどを適当に放り込む。
なんだ、明日の朝食を買い忘れて戻って来たんだな。
やっぱり順平は順平だ。
「朝にならないように気を付けるんだな」
口を開けば憎まれ口ばかり。
私は相当憎まれているんだな。
順平は昔の事は何一つ話そうとしないけれど、きっとそれでいいんだ。
今更昔の話をしたってなんにもならない。
懐かしさで昔の恋愛感情なんかを思い出して、勘違いして妙な関係になっても困る。
私たちの間には、少し距離があるくらいがちょうどいいのかも知れない。
順平を追う事をやめた私は自分のペースで歩く。
前を向いてどんどん進む順平は、引き離した私を振り返りもせず、もう随分先の方を歩いている。
順平はいつだってそうだった。
まっすぐ夢を追い掛けて、劇団の活動に夢中になると私のことを何週間も放っておいて、舞台が終わると悪びれもせず当たり前のように笑って会いに来た。
順平の夢も、そのために努力していた事も知っていたから、私は順平を責める事ができなかった。
順平の夢が叶う頃には、もう私なんか必要ないと言うだろう。
もし夢をあきらめる日が来たら、私は順平になんと言えばいいのだろう。
そんな先の事ばかり考えてはいつも不安になっていた。
少しだけでいいから私を安心させて欲しかったのに、順平は私の気持ちになんか気付いてくれなかった。
順平には言わなかったけれど、私にだって夢はあった。
でもそれは順平とはきっと叶わない夢だと思ったから、手遅れになる前に、私は順平の前から消えたんだ。
舞台を控え劇団の活動に夢中になっていた順平は、私がいなくなった事になんてしばらく気付かなかっただろうし、気付いたところで、順平が髪を振り乱し必死になって探してくれたりはしなかったのだろうと思う。
それも今となっては昔の話だ。
私も順平もあの頃とは違う。
順平の後ろ姿はもう、見失いそうなほど小さくなっている。
一度離してしまった手が私を引き寄せてくれることなんて、最初から期待していない。
下手に優しくされて勘違いしても困るし、もうあんなつらい思いはしたくないから、嫌われたままでいい。
私は明日の朝食用のパンと牛乳を買おうと、通り掛かったコンビニに立ち寄った。
安いバターロールと牛乳をかごに入れてレジへ向かおうとすると、順平が店の中に入ってきた。
さっきあんなに遠くにいたはずなのに、どうして戻って来たんだろう?
「買い物?」
「……ああ」
コンビニに入った順平は、手にした買い物かごに惣菜パンやペットボトル入りのコーヒー、ビールなどを適当に放り込む。
なんだ、明日の朝食を買い忘れて戻って来たんだな。
やっぱり順平は順平だ。
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