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サクラの樹の下にはオバケがいるんだよ
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「なんにもないけど、新しい部屋を借りるまでうちの店の事務所で寝泊まりする?」
「えっ、いいんですか?!」
「朱里ちゃんがいいならね。シャワーとトイレと簡易キッチンくらいはついてるけど、ホントになんにもない場所だよ。それでもいい?」
「じゅうぶんです、雨風しのげれば!」
マスター、なんて優しいの!!
世の中にはこんないい人もいるんだな。
「ああそうだ、ここにいる間、家賃代わりに店手伝ってくれたら助かるよ。洗い物とか」
「もちろんやらせていただきます!!洗い物でも掃除でも、なんでも言って下さい!」
ずっと家事をしていたから、そんなことくらいお安い御用だ。
それで寝泊まりする場所を確保できるなんてありがたい。
世の中捨てたもんじゃないなと思っていたら、さっきまではいなかった若い男が現れた。
「へー、なんでもだって。じゃあ夜の相手もお願いしちゃえば?マスター」
「えっ?!」
突然割り込んで来て、わざと私に聞こえるような大きさの声でマスターに耳打ちした失礼なその男は、人をバカにするような目で私を見た。
「懲りもせずにまた酒飲んで。学習機能ってものがないのか?」
その男はまぎれもなく順平だった。
順平がなんでここに?!
私は状況が理解できず、皿のように目を見開いてマスターと順平を交互に見る。
「ああ順平。もうそんな時間か」
マスターは私のおかしな様子には気付かず、腕時計をチラッと見た。
「朱里ちゃん、昨日は随分酔ってたから覚えてないよね。こいつ順平。昨日君が連れ出されそうになったのを阻止したバイトくん」
「えぇっ?!」
最悪だ。
最悪だ。
最悪だ。
あんなところを順平に見られた上に、助けられたなんて!!
「礼のひとつも言えねぇの?」
順平は私を見下して勝ち誇ったような顔をしている。
悔しいけど助けてもらったのは事実だ。
「もしかしてあれか、あの男についてけば体と引き換えに今夜は泊まる所に困らないと思ってたとか?まんざらでもなさそうだったしな」
酔っていたとはいえ、実際似たような事を考えたから返す言葉もない。
順平よ、それは仕返しなのか?
もしかして、私が勝手にいなくなった事をまだ根に持っているのか?
「順平、あんまりいじめないでやってくれ」
「なに?マスター、マジでこの女どうにかしちゃおうとか思ってる?」
「思ってないよ。純粋な人助けだ」
この女って何よ。
どうにかってなんだよ。
しかし順平はいつの間にこんなに最低な男になったんだろう?
昔はこんなひどい事は口が裂けても言わなかったのに。
「ほっときゃいいのに。マスターは人が好すぎるんだよ」
「朱里ちゃんを助けたのは順平だろ?」
「この店がいかがわしい店だって、他の客に誤解されたらどうすんだよ。こいつを助けたかったわけじゃない。こいつは自分の意思でついて行こうとしてたんだからな」
順平はグラスを洗いながら舌打ちをした。
これ以上関わりたくなかったのに、私が新しい部屋を借りられるまで何度も顔を合わせなくちゃならないって事か。
お金貯めて早く部屋借りなきゃ。
今度の仕事は多少きつくても時給の高い職場を紹介してもらおう。
「えっ、いいんですか?!」
「朱里ちゃんがいいならね。シャワーとトイレと簡易キッチンくらいはついてるけど、ホントになんにもない場所だよ。それでもいい?」
「じゅうぶんです、雨風しのげれば!」
マスター、なんて優しいの!!
世の中にはこんないい人もいるんだな。
「ああそうだ、ここにいる間、家賃代わりに店手伝ってくれたら助かるよ。洗い物とか」
「もちろんやらせていただきます!!洗い物でも掃除でも、なんでも言って下さい!」
ずっと家事をしていたから、そんなことくらいお安い御用だ。
それで寝泊まりする場所を確保できるなんてありがたい。
世の中捨てたもんじゃないなと思っていたら、さっきまではいなかった若い男が現れた。
「へー、なんでもだって。じゃあ夜の相手もお願いしちゃえば?マスター」
「えっ?!」
突然割り込んで来て、わざと私に聞こえるような大きさの声でマスターに耳打ちした失礼なその男は、人をバカにするような目で私を見た。
「懲りもせずにまた酒飲んで。学習機能ってものがないのか?」
その男はまぎれもなく順平だった。
順平がなんでここに?!
私は状況が理解できず、皿のように目を見開いてマスターと順平を交互に見る。
「ああ順平。もうそんな時間か」
マスターは私のおかしな様子には気付かず、腕時計をチラッと見た。
「朱里ちゃん、昨日は随分酔ってたから覚えてないよね。こいつ順平。昨日君が連れ出されそうになったのを阻止したバイトくん」
「えぇっ?!」
最悪だ。
最悪だ。
最悪だ。
あんなところを順平に見られた上に、助けられたなんて!!
「礼のひとつも言えねぇの?」
順平は私を見下して勝ち誇ったような顔をしている。
悔しいけど助けてもらったのは事実だ。
「もしかしてあれか、あの男についてけば体と引き換えに今夜は泊まる所に困らないと思ってたとか?まんざらでもなさそうだったしな」
酔っていたとはいえ、実際似たような事を考えたから返す言葉もない。
順平よ、それは仕返しなのか?
もしかして、私が勝手にいなくなった事をまだ根に持っているのか?
「順平、あんまりいじめないでやってくれ」
「なに?マスター、マジでこの女どうにかしちゃおうとか思ってる?」
「思ってないよ。純粋な人助けだ」
この女って何よ。
どうにかってなんだよ。
しかし順平はいつの間にこんなに最低な男になったんだろう?
昔はこんなひどい事は口が裂けても言わなかったのに。
「ほっときゃいいのに。マスターは人が好すぎるんだよ」
「朱里ちゃんを助けたのは順平だろ?」
「この店がいかがわしい店だって、他の客に誤解されたらどうすんだよ。こいつを助けたかったわけじゃない。こいつは自分の意思でついて行こうとしてたんだからな」
順平はグラスを洗いながら舌打ちをした。
これ以上関わりたくなかったのに、私が新しい部屋を借りられるまで何度も顔を合わせなくちゃならないって事か。
お金貯めて早く部屋借りなきゃ。
今度の仕事は多少きつくても時給の高い職場を紹介してもらおう。
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