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今夜こそ、一緒に
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その日の昼休み。
昼食を取るために足を運んだいつものレストランが珍しく満席だったので、そこから少し先にあるカフェに行くことにした。
その途中にある喫茶店の前を通りかかった時、髪の長い女の人と笑いながら向かい合ってコーヒーを飲んでいる彼を見掛けた。
その女性は間違いなく彼の妻だった。
前に一度だけ見掛けた時より髪が伸びて、頬の辺りが少しふっくらしている。
二人して楽しそうに笑う姿は、どこか幸せそうにも見えた。
離婚するなんて嘘だったんだ。
帰りが遅くなった日はおそらく妻と会っていて、二人はきっと復縁するつもりなんだろう。
そうでなければあんなに幸せそうに笑えるはずがない。
妻との関係が修復できた今、用済みの私は間違いなく捨てられる。
つらくても苦しくても、愛していたから彼の言葉を信じて待っていたのに。
彼と私が愛し合った罪が私だけに課せられるなんておかしい。
彼も同じ重さの罪を背負うべきだ。
その夜。
急いで帰宅した私は、腕によりを掛けて作ったいつもより豪華な料理と、贅沢なワインをテーブルに並べて彼の帰りを待った。
彼と私の最後の晩餐ってやつだ。
最後の夜だから、心から笑って記念日をお祝いしよう。
それが済んだら、今度こそひと思いに……。
昼食を取るために足を運んだいつものレストランが珍しく満席だったので、そこから少し先にあるカフェに行くことにした。
その途中にある喫茶店の前を通りかかった時、髪の長い女の人と笑いながら向かい合ってコーヒーを飲んでいる彼を見掛けた。
その女性は間違いなく彼の妻だった。
前に一度だけ見掛けた時より髪が伸びて、頬の辺りが少しふっくらしている。
二人して楽しそうに笑う姿は、どこか幸せそうにも見えた。
離婚するなんて嘘だったんだ。
帰りが遅くなった日はおそらく妻と会っていて、二人はきっと復縁するつもりなんだろう。
そうでなければあんなに幸せそうに笑えるはずがない。
妻との関係が修復できた今、用済みの私は間違いなく捨てられる。
つらくても苦しくても、愛していたから彼の言葉を信じて待っていたのに。
彼と私が愛し合った罪が私だけに課せられるなんておかしい。
彼も同じ重さの罪を背負うべきだ。
その夜。
急いで帰宅した私は、腕によりを掛けて作ったいつもより豪華な料理と、贅沢なワインをテーブルに並べて彼の帰りを待った。
彼と私の最後の晩餐ってやつだ。
最後の夜だから、心から笑って記念日をお祝いしよう。
それが済んだら、今度こそひと思いに……。
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