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別れを告げた恋、始まった二人の恋
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外に出て夕食を取った後、二人は志信の部屋で肩を寄せ合って寛いでいた。
指を絡めて手を握り、他愛ない話をして、時おりキスをする。
しばらくそうして過ごした後、薫は壁に掛けられた時計を見た。
時計の針は10時をさそうとしている。
「そろそろ帰ろうかな……」
「帰したくないな……。泊まってけば?」
志信は薫を抱きしめて、頬にキスをした。
薫は少しくすぐったそうに肩をすくめる。
「だって私、着替えもなんにもないよ」
「そうだったな。じゃあ、送ってく。明日、また会える?」
「うん」
明日も会う約束をしたあと、志信の部屋を出て、手を繋いで歩いた。
薫への想いがようやく通じた事もあってか、いつもは気にした事もない街を照らす外灯の灯りや頬を撫でる夜風までもが、志信には心地よく感じる。
「なんか……信じられないな……」
「ん?何が?」
「薫がオレの彼女になったなんて……」
「私の事、信じられないの?」
「そうじゃなくて、夢みたいって言うか……。ずっとフラれっぱなしだったから」
志信が少し照れくさそうにそう言うと、薫は志信の手をギュッと握りしめた。
「ごめんね、素っ気なくして。でも、夢じゃないよ」
「……だよな」
志信はしっかりと薫の手を握り返し、その手の温もりを確かめた。
「今日の薫はもちろんキレイだけど……オレはやっぱり、いつもの薫が好き」
「なんで?」
「薫、その服だといろいろ気になって落ち着かないだろ?気になってあまり食べられなかったみたいだし」
「うん……実は……」
薫が何も言わなくても、志信には見事に見透かされていたらしい。
料理をこぼして洋服を汚さないか、たくさん食べるとお腹が張ってウエストのラインがみっともなくなるのではないかと、気が抜けなかったのだ。
薫のバツが悪そうな顔に志信は笑う。
「だと思った。オレの前では無理して頑張らなくていいよ。服装とか気にして好きなもの食べたり飲んだりしにくいんじゃ、疲れるだろ?」
「そうだね」
「でも、オレのためにキレイになろうとしてくれたの?」
「うん……。長野さんが『魔法を掛けてあげます!!』って、いろいろしてくれてね」
「魔法?」
志信が不思議そうに首をかしげる。
「女としての自信が持てる魔法なのかな……。私が女らしくないから捨てられたのかなとか……志信だってキレイでかわいい女の子の方が好きに決まってるとか言ったから……。結局よく考えたら、なんの努力もしないでそれを言い訳にしてたんだよね……」
薫が噛みしめるようにそう言うと、志信は薫の頭を撫でて、優しく笑った。
「オレのためにキレイになろうとしてくれるのは嬉しいけど、あんまりキレイになると他の男に盗られちゃうんじゃないかって、オレが不安になるよ」
「盗られないよ……」
薫は照れくさそうに呟いた。
スタイルも良く、そこそこの美人だという自覚が、薫にはまったくないらしい。
そんな薫に、志信は一抹の不安を感じる。
しかし薫は無駄に愛嬌を振り撒かない。
こんなにかわいい一面を持っている事を知っているのは自分だけなのだと思うと、誇らしい気さえした。
「オレはどんな薫でも好き。汗流して一生懸命仕事して、思いきり食べたり飲んだりして笑ってる薫が一番好き」
「ありがと……」
「でも、たまにはこういう薫も見たいな。時々は二人でオシャレしてデートでもしようか」
「うん」
二人は顔を見合わせて、幸せそうに笑った。
「会社では今まで通りね」
「卯月さん?」
「そう。同期の笠松くん」
「だな。でもその分、二人の時は思いっきりイチャイチャして、これでもかってくらい可愛がってやるから覚悟してろよ」
「やだもう……なんか恥ずかしい……」
薫は志信の言葉に頬を赤らめ、少し照れくさそうに笑った。
薫のマンションの前まで来た時、手を繋いで歩く二人をジッと見つめるひとつの影があった。
「あ……」
その人が誰なのかに気付いた薫は、小さな声をあげて足を止め、息を飲む。
志信の手を握る薫の手が緊張で強ばった。
「ん?」
志信は薫の視線の先を追って、そこに浩樹がいる事に気付いた。
「薫、大丈夫?」
「この前の返事、まだしてなかったから……」
少し落ち着かない様子で薫が視線をさまよわせる。
薫の気持ちに迷いが生じたりはしないだろうか。
先ほどまでの幸せな気持ちは一変して、志信の胸に不安が湧き起こる。
しかし薫を信じたい。
二つの相反する思いが志信の中で交錯した。
「そうか……。オレ、一緒にいようか?」
「ううん……。ちゃんと断って、あの人との事は全部終わりにするから。志信は帰ってて」
「でも……」
指を絡めて手を握り、他愛ない話をして、時おりキスをする。
しばらくそうして過ごした後、薫は壁に掛けられた時計を見た。
時計の針は10時をさそうとしている。
「そろそろ帰ろうかな……」
「帰したくないな……。泊まってけば?」
志信は薫を抱きしめて、頬にキスをした。
薫は少しくすぐったそうに肩をすくめる。
「だって私、着替えもなんにもないよ」
「そうだったな。じゃあ、送ってく。明日、また会える?」
「うん」
明日も会う約束をしたあと、志信の部屋を出て、手を繋いで歩いた。
薫への想いがようやく通じた事もあってか、いつもは気にした事もない街を照らす外灯の灯りや頬を撫でる夜風までもが、志信には心地よく感じる。
「なんか……信じられないな……」
「ん?何が?」
「薫がオレの彼女になったなんて……」
「私の事、信じられないの?」
「そうじゃなくて、夢みたいって言うか……。ずっとフラれっぱなしだったから」
志信が少し照れくさそうにそう言うと、薫は志信の手をギュッと握りしめた。
「ごめんね、素っ気なくして。でも、夢じゃないよ」
「……だよな」
志信はしっかりと薫の手を握り返し、その手の温もりを確かめた。
「今日の薫はもちろんキレイだけど……オレはやっぱり、いつもの薫が好き」
「なんで?」
「薫、その服だといろいろ気になって落ち着かないだろ?気になってあまり食べられなかったみたいだし」
「うん……実は……」
薫が何も言わなくても、志信には見事に見透かされていたらしい。
料理をこぼして洋服を汚さないか、たくさん食べるとお腹が張ってウエストのラインがみっともなくなるのではないかと、気が抜けなかったのだ。
薫のバツが悪そうな顔に志信は笑う。
「だと思った。オレの前では無理して頑張らなくていいよ。服装とか気にして好きなもの食べたり飲んだりしにくいんじゃ、疲れるだろ?」
「そうだね」
「でも、オレのためにキレイになろうとしてくれたの?」
「うん……。長野さんが『魔法を掛けてあげます!!』って、いろいろしてくれてね」
「魔法?」
志信が不思議そうに首をかしげる。
「女としての自信が持てる魔法なのかな……。私が女らしくないから捨てられたのかなとか……志信だってキレイでかわいい女の子の方が好きに決まってるとか言ったから……。結局よく考えたら、なんの努力もしないでそれを言い訳にしてたんだよね……」
薫が噛みしめるようにそう言うと、志信は薫の頭を撫でて、優しく笑った。
「オレのためにキレイになろうとしてくれるのは嬉しいけど、あんまりキレイになると他の男に盗られちゃうんじゃないかって、オレが不安になるよ」
「盗られないよ……」
薫は照れくさそうに呟いた。
スタイルも良く、そこそこの美人だという自覚が、薫にはまったくないらしい。
そんな薫に、志信は一抹の不安を感じる。
しかし薫は無駄に愛嬌を振り撒かない。
こんなにかわいい一面を持っている事を知っているのは自分だけなのだと思うと、誇らしい気さえした。
「オレはどんな薫でも好き。汗流して一生懸命仕事して、思いきり食べたり飲んだりして笑ってる薫が一番好き」
「ありがと……」
「でも、たまにはこういう薫も見たいな。時々は二人でオシャレしてデートでもしようか」
「うん」
二人は顔を見合わせて、幸せそうに笑った。
「会社では今まで通りね」
「卯月さん?」
「そう。同期の笠松くん」
「だな。でもその分、二人の時は思いっきりイチャイチャして、これでもかってくらい可愛がってやるから覚悟してろよ」
「やだもう……なんか恥ずかしい……」
薫は志信の言葉に頬を赤らめ、少し照れくさそうに笑った。
薫のマンションの前まで来た時、手を繋いで歩く二人をジッと見つめるひとつの影があった。
「あ……」
その人が誰なのかに気付いた薫は、小さな声をあげて足を止め、息を飲む。
志信の手を握る薫の手が緊張で強ばった。
「ん?」
志信は薫の視線の先を追って、そこに浩樹がいる事に気付いた。
「薫、大丈夫?」
「この前の返事、まだしてなかったから……」
少し落ち着かない様子で薫が視線をさまよわせる。
薫の気持ちに迷いが生じたりはしないだろうか。
先ほどまでの幸せな気持ちは一変して、志信の胸に不安が湧き起こる。
しかし薫を信じたい。
二つの相反する思いが志信の中で交錯した。
「そうか……。オレ、一緒にいようか?」
「ううん……。ちゃんと断って、あの人との事は全部終わりにするから。志信は帰ってて」
「でも……」
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