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想いを伝えて
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「ですって。良かったですね、卯月さん。自信持って下さい」
薫は志信の言葉に顔を真っ赤にしたままうなずいた。
「じゃあ、あとはよろしく」
手を振ってさっさと帰って行く梨花の背中を目で追いながら、志信はわけがわからずぐるぐると思いを巡らせる。
(あとはよろしくってなんだ?!この状況でオレにどうしろって?!)
「あの……笠松くん……」
薫を腕の中に受け止めたままの格好だった事に気付いた志信は、慌てて手を離した。
「あ……ごめん」
二人でほんの少しの間、うつむいたまま何も言えずに立ち尽くしていた。
しかしずっとこうしているわけにもいかない。
志信は少しためらいがちに顔を上げる。
「あの……このままここで立ちっぱなしってのもなんだから……良かったら上がって」
「うん……」
薫を部屋に案内した志信は、キッチンで二人分のコーヒーを入れながら考える。
(長野さんの言ってたお届けものって、卯月さんの事だったのか?!でもなんでオレに?それに二人で話してって……一体何を話せば?)
急に部屋で二人っきりにされた上に、いつものラフな服装でも一緒にいるとじゅうぶんドキドキするのに、薫がいつもとは別人のような女性らしい格好をしている事に改めて気付き、志信は急激にドキドキし始めた。
いつもよりさらに速い鼓動を落ち着けようと、薫に背を向け、気付かれないように静かに深呼吸した。
(落ち着け、オレ……。とにかく、理性崩壊して無理やり押し倒したりとかするなよ。卯月さんが嫌がるような事だけは、絶対に……)
何度も自分にそう言い聞かせ、コーヒーを持って部屋に戻ると、薫も落ち着かない様子でソワソワしていた。
志信はできるだけ平静を装い、緊張で手が震えないように細心の注意を払って、薫にコーヒーを差し出した。
「とりあえず……コーヒーでも飲んで」
「ありがとう……」
薫は志信から受け取ったコーヒーをゆっくりと一口飲んだ。
そして少しの間、考え込んでいるそぶりを見せたあと、何かを思いきったように顔を上げた。
「あのね、笠松くん……。何から話せばいいのかわからないんだけど……」
「うん……。あっ……」
志信は薫があのネックレスをしている事に気付き、驚いて薫の顔をジッと見た。
「卯月さん……そのネックレス……」
「あ、これね……もらったの。好きな人に」
「えっ、もらった……?!」
(まさか同じ事考えてるヤツがいるなんて……。しかも好きな人にもらった、って……なんだそれ……?オレの出る幕なんて全然ないじゃん)
志信はため息をついてコーヒーに口をつけた。
薫はコーヒーカップにそえていた両手を膝の上でギュッと握りしめて、目の前に座っている志信の方をまっすぐに見る。
「笠松くん……聞いてくれる?ずっと私が話せなかった事……笠松くんには、ちゃんと話しておきたいの」
「えっ?ああ、うん……」
(なんでオレに?もうオレの事なんて関係ないんじゃ……)
それから薫は志信に、浩樹との間に起こった事をすべて話した。
入社当初、浩樹と社内恋愛をしていた事。
2年も付き合っていたのに、浩樹にはそれよりずっと前から彼女がいて、それを後になって他人の口から聞かされた事。
彼女の妊娠を機に結婚した浩樹が支社に異動になり、別れの言葉も、浩樹本人の口から真実を聞く事もなくその恋が終わった事。
また同じように傷付くのが怖くて、もう恋愛はしないと思っていた事。
そして、あの日浩樹から聞かされた彼女との離婚の話や、今も好きだからもう一度付き合って欲しいと言われた事。
そのすぐ後、浩樹にキスされたところに、志信が居合わせてしまった事。
薫が話している間ずっと、志信はただ黙って薫の話に耳を傾けていた。
「これが、私が誰にも話せなかったけど笠松くんには話しておきたかった事。あの飲み会の時に社内恋愛はしないって言ったのも、笠松くんに同期以上の事求めないでって言ったのも、この事が原因」
話し終えた薫は、気になっていた事を志信に尋ねる。
「酔ってて覚えてないけど……ホントに私、あの人の事が今でも好きだって言った?」
志信はバツが悪そうな顔で頬をかいた。
嘘をついた事に、薫は気付いているようだ。
ここで更に嘘を重ねて言い逃れをするのは男らしくないと思い、おもむろに頭を下げた。
「ごめん、あれは嘘なんだ……。でも、オレと間違えて名前呼んでたから、まだ好きなのかなって……」
志信は薫が酔って話した事の内容を話した。
酔っていたとは言え、自分が志信にそんな話をした事に薫は驚いていた。
そして少し膨れっ面で志信を見る。
「そうなんだ……。私、そんな事話したんだね。でも、ひどいよ笠松くん……嘘なんかついて……」
「ごめん、それはホントにオレが悪かった」
薫は志信の言葉に顔を真っ赤にしたままうなずいた。
「じゃあ、あとはよろしく」
手を振ってさっさと帰って行く梨花の背中を目で追いながら、志信はわけがわからずぐるぐると思いを巡らせる。
(あとはよろしくってなんだ?!この状況でオレにどうしろって?!)
「あの……笠松くん……」
薫を腕の中に受け止めたままの格好だった事に気付いた志信は、慌てて手を離した。
「あ……ごめん」
二人でほんの少しの間、うつむいたまま何も言えずに立ち尽くしていた。
しかしずっとこうしているわけにもいかない。
志信は少しためらいがちに顔を上げる。
「あの……このままここで立ちっぱなしってのもなんだから……良かったら上がって」
「うん……」
薫を部屋に案内した志信は、キッチンで二人分のコーヒーを入れながら考える。
(長野さんの言ってたお届けものって、卯月さんの事だったのか?!でもなんでオレに?それに二人で話してって……一体何を話せば?)
急に部屋で二人っきりにされた上に、いつものラフな服装でも一緒にいるとじゅうぶんドキドキするのに、薫がいつもとは別人のような女性らしい格好をしている事に改めて気付き、志信は急激にドキドキし始めた。
いつもよりさらに速い鼓動を落ち着けようと、薫に背を向け、気付かれないように静かに深呼吸した。
(落ち着け、オレ……。とにかく、理性崩壊して無理やり押し倒したりとかするなよ。卯月さんが嫌がるような事だけは、絶対に……)
何度も自分にそう言い聞かせ、コーヒーを持って部屋に戻ると、薫も落ち着かない様子でソワソワしていた。
志信はできるだけ平静を装い、緊張で手が震えないように細心の注意を払って、薫にコーヒーを差し出した。
「とりあえず……コーヒーでも飲んで」
「ありがとう……」
薫は志信から受け取ったコーヒーをゆっくりと一口飲んだ。
そして少しの間、考え込んでいるそぶりを見せたあと、何かを思いきったように顔を上げた。
「あのね、笠松くん……。何から話せばいいのかわからないんだけど……」
「うん……。あっ……」
志信は薫があのネックレスをしている事に気付き、驚いて薫の顔をジッと見た。
「卯月さん……そのネックレス……」
「あ、これね……もらったの。好きな人に」
「えっ、もらった……?!」
(まさか同じ事考えてるヤツがいるなんて……。しかも好きな人にもらった、って……なんだそれ……?オレの出る幕なんて全然ないじゃん)
志信はため息をついてコーヒーに口をつけた。
薫はコーヒーカップにそえていた両手を膝の上でギュッと握りしめて、目の前に座っている志信の方をまっすぐに見る。
「笠松くん……聞いてくれる?ずっと私が話せなかった事……笠松くんには、ちゃんと話しておきたいの」
「えっ?ああ、うん……」
(なんでオレに?もうオレの事なんて関係ないんじゃ……)
それから薫は志信に、浩樹との間に起こった事をすべて話した。
入社当初、浩樹と社内恋愛をしていた事。
2年も付き合っていたのに、浩樹にはそれよりずっと前から彼女がいて、それを後になって他人の口から聞かされた事。
彼女の妊娠を機に結婚した浩樹が支社に異動になり、別れの言葉も、浩樹本人の口から真実を聞く事もなくその恋が終わった事。
また同じように傷付くのが怖くて、もう恋愛はしないと思っていた事。
そして、あの日浩樹から聞かされた彼女との離婚の話や、今も好きだからもう一度付き合って欲しいと言われた事。
そのすぐ後、浩樹にキスされたところに、志信が居合わせてしまった事。
薫が話している間ずっと、志信はただ黙って薫の話に耳を傾けていた。
「これが、私が誰にも話せなかったけど笠松くんには話しておきたかった事。あの飲み会の時に社内恋愛はしないって言ったのも、笠松くんに同期以上の事求めないでって言ったのも、この事が原因」
話し終えた薫は、気になっていた事を志信に尋ねる。
「酔ってて覚えてないけど……ホントに私、あの人の事が今でも好きだって言った?」
志信はバツが悪そうな顔で頬をかいた。
嘘をついた事に、薫は気付いているようだ。
ここで更に嘘を重ねて言い逃れをするのは男らしくないと思い、おもむろに頭を下げた。
「ごめん、あれは嘘なんだ……。でも、オレと間違えて名前呼んでたから、まだ好きなのかなって……」
志信は薫が酔って話した事の内容を話した。
酔っていたとは言え、自分が志信にそんな話をした事に薫は驚いていた。
そして少し膨れっ面で志信を見る。
「そうなんだ……。私、そんな事話したんだね。でも、ひどいよ笠松くん……嘘なんかついて……」
「ごめん、それはホントにオレが悪かった」
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