君に恋していいですか?

櫻井音衣

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想いを伝えて

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梨花は薫が今まで着た事もないような洋服を次から次へと手に取って、薫の体にあてがった。
ああでもないとか、これはかなりいいかもとか言いながら真剣な表情で服を選ぶ。
薫は首をかしげながら、着せ替え人形のように、されるがままになっていた。

(なんかよくわからないけど……とりあえず任せてみようかな……)

なぜ洋服を買うのかもわからないが、自分のために一生懸命になってくれている梨花の厚意を、ありがたく受け取っておこうと薫は思った。


新しい洋服と、それに合う靴、そしてこれまでに使った事のない化粧品とマニキュアを買った。
どれも派手ではなく、どちらかと言うと控えめで清楚な感じの色合いに、薫は少しくすぐったいような、それでも少し心が踊るような、不思議な気分だった。

(女の子がオシャレする時って、こんな気分なのかな……)



一度家に戻り、新しい服を着て、梨花にメイクをしてもらった。
二種類の色のマニキュアでネイルアートを施してもらった薫は、生まれて初めての経験に少しドキドキしていた。
それから、梨花がいつもバッグに入れていると言う携帯用のヘアアイロンで、ふんわりと髪を巻いてもらった。

「すごい!!卯月さん、キレイですよ!!」

鏡にうつる自分はまるで自分ではないようで、薫は少し恥ずかしそうにしている。

「おかしくない?こんな格好したことないから、なんか恥ずかしい……」
「何言ってるんですか!!すっごく素敵です!!」
「ホント……?自分じゃこんな服選ばないし化粧もできないから、なんか自分じゃないみたい……。制服以外のスカートなんて何年ぶりだろう?」

薫が照れくさそうにそう言うと、梨花は嬉しそうに目を細めた。

「ホントに似合ってますよ」
「かなり照れくさいけど……ありがとう」

少しは女らしくなれただろうかと、薫は鏡の中の見慣れない自分の姿をマジマジと眺めた。

「さあ、新しい靴を履いて行きますよ!!」
「えっ……?行くってどこに?」
「いいから早く!!……あ、大事な物、忘れてました」

梨花はテーブルの上に置かれていたウサギのネックレスを手に取って薫につけた。
薫の襟元で、ダイヤを抱いたウサギが愛らしく揺れている。

「完璧!!」

薫が新しい靴を箱から出している間に、梨花はポケットからスマホを取り出し、素早く入力したメッセージを送信した。

「さあ、行きましょ」

一体どこへ行くのだろうと思いながら新しい靴を履いた薫は、梨花の後をついて歩く。

(オシャレして外食?まさか、合コンとかじゃないよね?)



薫のマンションから10分くらい歩いた所にあるマンションに辿り着くと、梨花はスタスタと足早にエントランスを通り抜けた。

「あのー……長野さん、ここは?」
「細かい事はいいから、ついてきてください」

有無を言わさぬ梨花が、ある部屋の前に立ちインターホンのボタンを押すと、ゆっくりとドアが開く。

「ハイ……」

薫は聞き覚えのある声にドキッとした。

(えっ……?まさか……)

「お届けものです」

梨花は薫の腕をグイッと引いて志信の前に立たせ、ポンと背中を押した。
梨花に背中を押された勢いで前のめりによろめいた薫を、志信が慌てて受け止める。

「えっ……ええっ?!」

突然の事に、志信も薫もわけがわからず慌てふためいている。

「あのー……長野さん……?これはその……」

しどろもどろになっている志信に、梨花は意味深な笑みを見せた。

「笠松さんごめんなさい。私と石田さんで、勝手にお節介焼いちゃった」
「えっ?!」
「私たちができるのもここまでですよ。あとは二人で、ちゃんと話して下さい」

(なんだ?!全然わけわかんねぇ!!ちゃんとも何も、卯月さんにはあの人がいるんじゃ……)

志信はチラリと薫を見て、いつもとは違うその姿に目を奪われる。
そんな志信の様子を見て、梨花がニッコリ笑った。

「笠松さん、今日の卯月さん、どうですか?」

突然尋ねられて、志信はまたしどろもどろになって小さく呟く。

「あ……その……ものすごくキレイ……です……」

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