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想いを伝えて
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翌朝。
梨花は薫がまだ眠っている事を確認してスマホを手に取り、トークアプリを開いていくつかのメッセージのやり取りをした。
メッセージのやり取りを終えた梨花はスマホを枕元に置き、息を殺して薫の寝顔を見つめる。
かなりお酒を飲んで酔っていたようだが、薫はゆうべの事を覚えているだろうか?
過去の恋の話を聞いた時には、薫がどれほど傷付いたのかと思うと、つらくて胸が痛かった。
それでも志信のまっすぐな想いに触れて、やっと一歩前へと踏み出す気持ちになれた薫を、心から応援したいと梨花は思う。
本当は魔法なんて必要ないのはわかっている。
だけど少しでもそれで薫が自信を持って志信の胸に飛び込めるのなら、力になりたい。
新入社員の頃、慣れないSSの仕事に馴染めず仕事に悩んでいた梨花を、薫はどんな時も冷静に、誰よりも優しく支えてくれた。
カウンセラーの役割と言えばそれまでなのかも知れないが、真剣に悩みを聞き、それを受け入れ励ましてくれた薫は、梨花にとって大きな心の支えだった。
薫のおかげで仕事もだんだん楽しくなり、本社のSS部に配属になった後も、薫は仕事の悩みを聞き、気に掛けてくれた。
ある時には梨花のミスでやり直す事になった入力作業を、事務職とカウンセラーとでは仕事の内容も違うのに、遅くまで残業して助けてくれた事もあった。
決して口数は多くないし、愛想笑いもしないけど、梨花にとって薫は、誰よりも優しく頼もしい先輩だ。
いつも仕事の面では助けてもらってばかりなのだから、こんな時こそ力になりたいと梨花は思った。
スマホの通知音で目覚めた志信は、ぼんやりとした頭でスマホの画面を開いた。
同僚からの誘いかと思ったら、メッセージの送信者は梨花だった。
【おはようございます♪
笠松さんにお届けしたいものがあります。
今日の夕方、おうちにいてもらえますか?】
今日は予定もないので、家で一日中ダラダラと過ごすつもりでいる。
しかし梨花が届けたいものには心当たりがない。
梨花からのメッセージに首をかしげながら、とりあえず今日は一日家にいると返信した。
【そちらに向かう前にまた連絡しますね。
笠松さんのご自宅の詳しい場所の地図を送ってください】
梨花に言われた通り地図を送信した志信は、ゴロリと仰向けになって天井を見上げた。
(卯月さん……どうしてるかな……)
もうあきらめようと決めたのに、ふとした瞬間に薫の事を考えている自分に気付く。
あの日の薫と浩樹のキスシーンが、何度忘れようとしても頭から離れない。
一人暮らしの部屋に彼を招き入れたという事は、二人は既に元通りの深い仲で、薫はきっと今頃、想い続けた人と幸せな時間を過ごしているのだろう。
どんなに手を伸ばしても、もう届かない。
この想いを伝える事はもうできないけれど、せめて薫の幸せを願いたい。
そう思いながらも、やっぱり今でもどうしようもなく薫が好きで仕方がない。
(卯月さんの心も体も……全部奪って、オレのものにしちゃえたらいいのにな……)
志信はそんな事を考えながら寝返りを打ち、大きなため息をついた。
お昼になり、薫と梨花は外に出て昼食を取った後、前に一緒に買い物をしたモールへ足を運んだ。
「何か買い物でもあるの?」
薫が尋ねると、梨花は自信ありげに笑う。
「そうです。今日は梨花プロデュースで卯月さんを変身させちゃいます」
「えっ?!」
「早速行きますよ!!」
梨花は勇み足で薫の手を引いて、少し落ち着いた大人っぽい洋服の並ぶショップに入った。
「えぇっと……変身ってどういう事?」
「そのまんまです。卯月さん自身の知らない卯月さんに変身しましょう!!今日はすべて梨花に任せて下さい」
「ハ、ハイ……」
ただならぬ梨花の気迫に押されて、薫はわけもわからずうなずいた。
梨花は薫がまだ眠っている事を確認してスマホを手に取り、トークアプリを開いていくつかのメッセージのやり取りをした。
メッセージのやり取りを終えた梨花はスマホを枕元に置き、息を殺して薫の寝顔を見つめる。
かなりお酒を飲んで酔っていたようだが、薫はゆうべの事を覚えているだろうか?
過去の恋の話を聞いた時には、薫がどれほど傷付いたのかと思うと、つらくて胸が痛かった。
それでも志信のまっすぐな想いに触れて、やっと一歩前へと踏み出す気持ちになれた薫を、心から応援したいと梨花は思う。
本当は魔法なんて必要ないのはわかっている。
だけど少しでもそれで薫が自信を持って志信の胸に飛び込めるのなら、力になりたい。
新入社員の頃、慣れないSSの仕事に馴染めず仕事に悩んでいた梨花を、薫はどんな時も冷静に、誰よりも優しく支えてくれた。
カウンセラーの役割と言えばそれまでなのかも知れないが、真剣に悩みを聞き、それを受け入れ励ましてくれた薫は、梨花にとって大きな心の支えだった。
薫のおかげで仕事もだんだん楽しくなり、本社のSS部に配属になった後も、薫は仕事の悩みを聞き、気に掛けてくれた。
ある時には梨花のミスでやり直す事になった入力作業を、事務職とカウンセラーとでは仕事の内容も違うのに、遅くまで残業して助けてくれた事もあった。
決して口数は多くないし、愛想笑いもしないけど、梨花にとって薫は、誰よりも優しく頼もしい先輩だ。
いつも仕事の面では助けてもらってばかりなのだから、こんな時こそ力になりたいと梨花は思った。
スマホの通知音で目覚めた志信は、ぼんやりとした頭でスマホの画面を開いた。
同僚からの誘いかと思ったら、メッセージの送信者は梨花だった。
【おはようございます♪
笠松さんにお届けしたいものがあります。
今日の夕方、おうちにいてもらえますか?】
今日は予定もないので、家で一日中ダラダラと過ごすつもりでいる。
しかし梨花が届けたいものには心当たりがない。
梨花からのメッセージに首をかしげながら、とりあえず今日は一日家にいると返信した。
【そちらに向かう前にまた連絡しますね。
笠松さんのご自宅の詳しい場所の地図を送ってください】
梨花に言われた通り地図を送信した志信は、ゴロリと仰向けになって天井を見上げた。
(卯月さん……どうしてるかな……)
もうあきらめようと決めたのに、ふとした瞬間に薫の事を考えている自分に気付く。
あの日の薫と浩樹のキスシーンが、何度忘れようとしても頭から離れない。
一人暮らしの部屋に彼を招き入れたという事は、二人は既に元通りの深い仲で、薫はきっと今頃、想い続けた人と幸せな時間を過ごしているのだろう。
どんなに手を伸ばしても、もう届かない。
この想いを伝える事はもうできないけれど、せめて薫の幸せを願いたい。
そう思いながらも、やっぱり今でもどうしようもなく薫が好きで仕方がない。
(卯月さんの心も体も……全部奪って、オレのものにしちゃえたらいいのにな……)
志信はそんな事を考えながら寝返りを打ち、大きなため息をついた。
お昼になり、薫と梨花は外に出て昼食を取った後、前に一緒に買い物をしたモールへ足を運んだ。
「何か買い物でもあるの?」
薫が尋ねると、梨花は自信ありげに笑う。
「そうです。今日は梨花プロデュースで卯月さんを変身させちゃいます」
「えっ?!」
「早速行きますよ!!」
梨花は勇み足で薫の手を引いて、少し落ち着いた大人っぽい洋服の並ぶショップに入った。
「えぇっと……変身ってどういう事?」
「そのまんまです。卯月さん自身の知らない卯月さんに変身しましょう!!今日はすべて梨花に任せて下さい」
「ハ、ハイ……」
ただならぬ梨花の気迫に押されて、薫はわけもわからずうなずいた。
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