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不器用な二人
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薫はわけもわからないまま、梨花に言われた通り紙袋の中の包みを開いた。
細長い箱の中には、ダイヤをあしらったウサギのネックレスが入っていた。
「かわいい……。ん?まだ何か……」
紙袋の中にまだ何かが入っている事に気付いて取り出した薄い黄緑色の封筒には、青いインクで『卯月さんへ』と書かれていた。
薫は封筒から取り出した便箋を開き、青い文字を目で追った。
卯月さんへ
同期として仲良くしようって言ったけど、
本当はずっと前から好きだった。
誰よりも一生懸命頑張って仕事してる君も、
美味しそうにたくさん食べる君も、
お酒をたくさん飲む君も、全部好き。
着飾ってなくても、
しっかり化粧してなくても、
誰よりもかわいい。
恥ずかしそうにしてる顔は
ドキドキするくらいかわいい。
君はよく自分の事を
『女らしくない』って言うけれど、
さりげなく気遣いができる優しい君は、
オレにとって他の誰よりもかわいい女の子だよ。
同期とか社内の人間とか関係なく、
オレの事、君を好きな一人の男として
見て欲しいんだ。
うまく言えないけど、
オレは誰よりも君が好きで、
ずっと、君を大切にしたい。
酔ってたから覚えてないかも知れないけど……
卯月さん、前に言ったよね。
『笠松くんの彼女は幸せだね』って。
絶対によそ見しないし、
オレの隣でずっと笑ってもらえるように
目一杯大切にするから
幸せな、オレの彼女になりませんか?
笠松 志信より
その手紙は『好き』のオンパレードで、志信の溢れんばかりの薫への想いが詰まっていた。
好き。
かわいい。
ずっと大切にする。
照れくさいほど甘くて優しい志信の言葉は、じんわりと染みて、薫の心を温かく包んだ。
さっきまでとは違う温かい滴が薫の頬を伝う。
最初から志信は、こんな自分を受け入れてくれていた。
女性としての自信のない自分の事を、いつも女性として気遣い優しくしてくれた。
こんなに深い愛情を持って見てくれていたから、あんなに優しく抱きしめてくれたんだと薫は思う。
(ありがとう……笠松くん……)
薫はウサギのネックレスを手に取ってみた。
『すっげぇかわいい子がいてね……その子に似合いそうだなって……。プレゼントしようかなって思ってさ……』
『すっげぇ好きなんだけどね……。オレの片想いなんだ』
あの時の志信の言葉が薫の脳裏に蘇り、また涙が溢れた。
(あれ、私の事だったの……?もしかしてあの時……これを届けに来てくれたの……?それなのに私……)
「どうしよう……」
涙を拭いながら急にオロオロし始める薫に、梨花は優しく微笑んだ。
「お節介かなって思ったんですけど……笠松さんの気持ち、ちゃんと伝わりましたか?」
「うん……」
「卯月さんの気持ちは……どうですか?笠松さんの事、まだただの同期としてしか見られませんか?」
薫はゆっくりと首を横に振った。
「ううん……。でも……笠松くん、私がまだあの人の事好きだって、誤解してると思う……」
シュンとしている薫に、梨花は明るく笑う。
「簡単です。誤解は早いうちに解いちゃえばいいんです。卯月さんの気持ち、ちゃんと伝えてあげて下さい」
「まだ間に合うかな……。自信ないよ……」
仕事に関しては誰よりも自信を持ち、上司を相手にしても毅然とした態度を崩さない薫が、初恋を自覚したばかりの少女のような表情で戸惑っている。
梨花はそれが堪らなく愛しくて、薫を思い切り抱きしめたい衝動に駆られた。
そして、志信もこのギャップにやられたのだなと勝手に納得した。
「笠松さんはどんな卯月さんも好きだと思いますけどね……。じゃあ明日、私が卯月さんに魔法掛けてあげます」
「魔法……って、何?」
「明日のお楽しみですよ。そうと決まれば、もう寝ましょう!!明日は忙しくなりますよ!」
「えぇっ……?!」
梨花の言葉の意味がわからないまま、薫は梨花の布団を用意して、一緒に床についた。
薄暗いオレンジ色の常夜灯の光の下で、梨花は優しい声で呟いた。
「二人とも不器用ですね……。でも、恋してる卯月さん、かわいいです」
「恋……してるのかな……」
「笠松さんの事、好きでしょう?」
「……うん……好き……」
言葉にしてみて初めて、ハッキリと自分の気持ちが見えたような気がした。
寂しかったのは、志信に会えなかったから。
胸がモヤモヤしたのは、志信が他の誰かを好きだと思ったから。
(いい加減気付けよ、って……笠松くんの気持ちに、って事……?)
急に照れくさくなり、薫は熱くなる頬を両手で覆った。
(近付かないようにしてたって事は、笠松くんの気持ちにも自分の気持ちにも気付かなかったわけじゃないけど、ずっと見ないようにしてたのかな……?)
細長い箱の中には、ダイヤをあしらったウサギのネックレスが入っていた。
「かわいい……。ん?まだ何か……」
紙袋の中にまだ何かが入っている事に気付いて取り出した薄い黄緑色の封筒には、青いインクで『卯月さんへ』と書かれていた。
薫は封筒から取り出した便箋を開き、青い文字を目で追った。
卯月さんへ
同期として仲良くしようって言ったけど、
本当はずっと前から好きだった。
誰よりも一生懸命頑張って仕事してる君も、
美味しそうにたくさん食べる君も、
お酒をたくさん飲む君も、全部好き。
着飾ってなくても、
しっかり化粧してなくても、
誰よりもかわいい。
恥ずかしそうにしてる顔は
ドキドキするくらいかわいい。
君はよく自分の事を
『女らしくない』って言うけれど、
さりげなく気遣いができる優しい君は、
オレにとって他の誰よりもかわいい女の子だよ。
同期とか社内の人間とか関係なく、
オレの事、君を好きな一人の男として
見て欲しいんだ。
うまく言えないけど、
オレは誰よりも君が好きで、
ずっと、君を大切にしたい。
酔ってたから覚えてないかも知れないけど……
卯月さん、前に言ったよね。
『笠松くんの彼女は幸せだね』って。
絶対によそ見しないし、
オレの隣でずっと笑ってもらえるように
目一杯大切にするから
幸せな、オレの彼女になりませんか?
笠松 志信より
その手紙は『好き』のオンパレードで、志信の溢れんばかりの薫への想いが詰まっていた。
好き。
かわいい。
ずっと大切にする。
照れくさいほど甘くて優しい志信の言葉は、じんわりと染みて、薫の心を温かく包んだ。
さっきまでとは違う温かい滴が薫の頬を伝う。
最初から志信は、こんな自分を受け入れてくれていた。
女性としての自信のない自分の事を、いつも女性として気遣い優しくしてくれた。
こんなに深い愛情を持って見てくれていたから、あんなに優しく抱きしめてくれたんだと薫は思う。
(ありがとう……笠松くん……)
薫はウサギのネックレスを手に取ってみた。
『すっげぇかわいい子がいてね……その子に似合いそうだなって……。プレゼントしようかなって思ってさ……』
『すっげぇ好きなんだけどね……。オレの片想いなんだ』
あの時の志信の言葉が薫の脳裏に蘇り、また涙が溢れた。
(あれ、私の事だったの……?もしかしてあの時……これを届けに来てくれたの……?それなのに私……)
「どうしよう……」
涙を拭いながら急にオロオロし始める薫に、梨花は優しく微笑んだ。
「お節介かなって思ったんですけど……笠松さんの気持ち、ちゃんと伝わりましたか?」
「うん……」
「卯月さんの気持ちは……どうですか?笠松さんの事、まだただの同期としてしか見られませんか?」
薫はゆっくりと首を横に振った。
「ううん……。でも……笠松くん、私がまだあの人の事好きだって、誤解してると思う……」
シュンとしている薫に、梨花は明るく笑う。
「簡単です。誤解は早いうちに解いちゃえばいいんです。卯月さんの気持ち、ちゃんと伝えてあげて下さい」
「まだ間に合うかな……。自信ないよ……」
仕事に関しては誰よりも自信を持ち、上司を相手にしても毅然とした態度を崩さない薫が、初恋を自覚したばかりの少女のような表情で戸惑っている。
梨花はそれが堪らなく愛しくて、薫を思い切り抱きしめたい衝動に駆られた。
そして、志信もこのギャップにやられたのだなと勝手に納得した。
「笠松さんはどんな卯月さんも好きだと思いますけどね……。じゃあ明日、私が卯月さんに魔法掛けてあげます」
「魔法……って、何?」
「明日のお楽しみですよ。そうと決まれば、もう寝ましょう!!明日は忙しくなりますよ!」
「えぇっ……?!」
梨花の言葉の意味がわからないまま、薫は梨花の布団を用意して、一緒に床についた。
薄暗いオレンジ色の常夜灯の光の下で、梨花は優しい声で呟いた。
「二人とも不器用ですね……。でも、恋してる卯月さん、かわいいです」
「恋……してるのかな……」
「笠松さんの事、好きでしょう?」
「……うん……好き……」
言葉にしてみて初めて、ハッキリと自分の気持ちが見えたような気がした。
寂しかったのは、志信に会えなかったから。
胸がモヤモヤしたのは、志信が他の誰かを好きだと思ったから。
(いい加減気付けよ、って……笠松くんの気持ちに、って事……?)
急に照れくさくなり、薫は熱くなる頬を両手で覆った。
(近付かないようにしてたって事は、笠松くんの気持ちにも自分の気持ちにも気付かなかったわけじゃないけど、ずっと見ないようにしてたのかな……?)
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