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優しい人、優しかった人
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「全然飲まないのも物足りないなぁ。ビールの一杯くらいは飲まない?」
「少しなら」
志信は店員を呼び止めてビールを2つ注文してからタバコに火をつけた。
運ばれてきたビールで乾杯して、タバコを吸いながら何か話題はないかと考える。
(そう言えば……)
「長野さん、あのケーキ食べきれたかな」
「ああ、全部食べたって言ってたよ。美味しかったって」
「そうなんだ……すごいな。いい誕生日祝いになったかな」
そう言いながら志信は、薫の誕生日がわかればさっきのネックレスをプレゼントできるかもと思い、この流れで尋ねてみる事にした。
「卯月さんの誕生日は?」
「私はもう過ぎた。5月15日だから」
志信は内心ガッカリしながら、なんでもない顔で会話を続けた。
「ああ……だから、薫って名前なんだ」
「そうみたい。笠松くんは?」
薫が少しでも自分の事を知ろうとしてくれたのが嬉しくて、志信は微笑んだ。
「オレはまだ先だな。2月8日だから」
「笠松くん……まだ20代なんだね……」
「でも同じ歳だよ」
「20代と30代だと、なんか同じ歳とは思えないような気がする」
「そうかな……」
(なんかガキって言われたみたいで複雑……)
志信がタバコを吸い終わる頃、注文していた料理が運ばれてきた。
料理を口に運びながら、志信は薫に尋ねる。
「卯月さんは誕生日どうしてた?誰かにお祝いとかしてもらった?」
(男と二人でお祝いした……とかじゃなければいいんだけどな)
志信は尋ねてから少し不安になって、おそるおそる薫の返事を待つ。
しかし薫は気にも留めない様子で、ハンバーグをナイフで切り分けている。
「普通に仕事して、帰りに高いビール買って、家で御飯作って、ビール飲みながら食べた」
ある意味薫らしいと思いながら、志信は更に尋ねる。
「お祝いはしてないの?」
「誕生日がめでたいような歳でもないよ」
「誕生日はいくつになってもめでたいよ。お祝いしてないなら……オレがしようか」
志信の言葉に薫は怪訝な顔をする。
「しようかって、何を?」
「誕生日のお祝い」
「それはいい」
瞬時に断られ、志信は慌てて食い下がる。
「なんで?しようよ」
「いい。また歳取るような気がするし」
「えー……」
(そういう問題?)
薫はハンバーグを口に運びながら、やけにガッカリしている志信の様子を不思議そうに見ている。
「笠松くんってお祝い好きなの?」
「なんで?」
「長野さんの誕生日のお祝いもしてあげたじゃない。お祝いとかパーティーが好きなのかなって」
「……違うよ」
(卯月さんだから、遅れてでもお祝いしたかっただけなのにな……。全然わかってないよ……)
「気持ちだけもらっとく。ありがと」
薫に素っ気なく断られて、志信はため息をついた。
(ウサギのネックレス、プレゼントするタイミング逃しちゃったな……。やっぱりオレからもらったって、嬉しくもないか……)
食事を終えて、もう一杯ビールを飲んだ後、二人はハンバーグレストランを後にした。
「ごちそうさまでした。ありがとう」
「どういたしまして。美味しかった?」
「うん、美味しかったよ」
「なら良かった」
志信がいつものように送って行こうとすると、薫は立ち止まって志信の方を見た。
「今日はまだ時間も早いし、大丈夫だよ」
「えっ、でも……」
「ホントにここで大丈夫だから。じゃあ、ありがとう。また明日ね」
「少しなら」
志信は店員を呼び止めてビールを2つ注文してからタバコに火をつけた。
運ばれてきたビールで乾杯して、タバコを吸いながら何か話題はないかと考える。
(そう言えば……)
「長野さん、あのケーキ食べきれたかな」
「ああ、全部食べたって言ってたよ。美味しかったって」
「そうなんだ……すごいな。いい誕生日祝いになったかな」
そう言いながら志信は、薫の誕生日がわかればさっきのネックレスをプレゼントできるかもと思い、この流れで尋ねてみる事にした。
「卯月さんの誕生日は?」
「私はもう過ぎた。5月15日だから」
志信は内心ガッカリしながら、なんでもない顔で会話を続けた。
「ああ……だから、薫って名前なんだ」
「そうみたい。笠松くんは?」
薫が少しでも自分の事を知ろうとしてくれたのが嬉しくて、志信は微笑んだ。
「オレはまだ先だな。2月8日だから」
「笠松くん……まだ20代なんだね……」
「でも同じ歳だよ」
「20代と30代だと、なんか同じ歳とは思えないような気がする」
「そうかな……」
(なんかガキって言われたみたいで複雑……)
志信がタバコを吸い終わる頃、注文していた料理が運ばれてきた。
料理を口に運びながら、志信は薫に尋ねる。
「卯月さんは誕生日どうしてた?誰かにお祝いとかしてもらった?」
(男と二人でお祝いした……とかじゃなければいいんだけどな)
志信は尋ねてから少し不安になって、おそるおそる薫の返事を待つ。
しかし薫は気にも留めない様子で、ハンバーグをナイフで切り分けている。
「普通に仕事して、帰りに高いビール買って、家で御飯作って、ビール飲みながら食べた」
ある意味薫らしいと思いながら、志信は更に尋ねる。
「お祝いはしてないの?」
「誕生日がめでたいような歳でもないよ」
「誕生日はいくつになってもめでたいよ。お祝いしてないなら……オレがしようか」
志信の言葉に薫は怪訝な顔をする。
「しようかって、何を?」
「誕生日のお祝い」
「それはいい」
瞬時に断られ、志信は慌てて食い下がる。
「なんで?しようよ」
「いい。また歳取るような気がするし」
「えー……」
(そういう問題?)
薫はハンバーグを口に運びながら、やけにガッカリしている志信の様子を不思議そうに見ている。
「笠松くんってお祝い好きなの?」
「なんで?」
「長野さんの誕生日のお祝いもしてあげたじゃない。お祝いとかパーティーが好きなのかなって」
「……違うよ」
(卯月さんだから、遅れてでもお祝いしたかっただけなのにな……。全然わかってないよ……)
「気持ちだけもらっとく。ありがと」
薫に素っ気なく断られて、志信はため息をついた。
(ウサギのネックレス、プレゼントするタイミング逃しちゃったな……。やっぱりオレからもらったって、嬉しくもないか……)
食事を終えて、もう一杯ビールを飲んだ後、二人はハンバーグレストランを後にした。
「ごちそうさまでした。ありがとう」
「どういたしまして。美味しかった?」
「うん、美味しかったよ」
「なら良かった」
志信がいつものように送って行こうとすると、薫は立ち止まって志信の方を見た。
「今日はまだ時間も早いし、大丈夫だよ」
「えっ、でも……」
「ホントにここで大丈夫だから。じゃあ、ありがとう。また明日ね」
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