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これ以上、心を揺さぶられないように
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「あっ、そうだ。ケーキ!!まだ食べてないですね。卯月さんと笠松さんの分置いて、あとはいただいて帰りますね」
「あっ、うん……」
薫がナイフとお皿を用意して、ケーキを二人分だけ切り分けた。
それを見た梨花は少し驚いた様子で目をパチパチさせている。
「そんなに少しでいいんですか?」
「いいよ。これだけあればじゅうぶん」
「オレも」
「じゃあ、あとは家に帰って、友達といただきますね」
「うん、祝ってもらいな」
「ありがとうございます!」
ケーキを手に梨花が部屋を出ると、二人っきりになった薫と志信の間に、ぎこちない空気が流れた。
薫はできるだけ普通にしていようと平静を装う。
「とりあえず……片付けようか」
「そうだね」
二人で空いた食器をキッチンに運び、それから二人並んで洗い物をした。
「なんか……いろいろありすぎて、1日が長かった気がする」
「まさかこういう展開になるとはな」
(オレはすっげぇラッキーだったけど……)
薫がスポンジで食器を洗い、志信が水で泡をすすぎ落とした。
連携プレーのおかげで、たくさんあった汚れた食器は、思いのほか早く洗い終わった。
「二人でやると早いね」
「役に立ったなら良かった」
「ケーキ食べようか。コーヒーでも入れる?まだビールもあるけど……」
「ビール飲みたいけど……とりあえず、ケーキにはコーヒーかな」
「そうだね。そうしようか」
薫の入れたコーヒーを飲みながら、二人でケーキを食べた。
二人でケーキを食べている事に、薫も志信もなんとなく違和感を抱く。
「ケーキなんて久し振り」
「オレもだ」
「いつもお酒ばっかりだもんね」
「卯月さんが行きたいって言うなら、それ以外の所にも行くけど」
「うーん……。やっぱりお酒かな」
「だよなぁ」
他愛ない話をしながらケーキを食べて、コーヒーを飲み終わると、またビールを飲み始めた。
「たまにはこういうのもいいね。結構楽しかった」
「うん。卯月さんの料理、うまかったし」
「たいしたものは作ってないよ」
「そんな事ないよ。すげぇうまかった」
「そう……?なら良かった」
時間も随分遅くなったのに、志信と二人でゆっくりとビールを飲みながら、他愛ない話をして過ごすのは心地が良くて、なんとなくこのまま別れるのは惜しいような気もする。
(もう少しこのまま一緒にいたいかな……。でもこのまま二人っきりって言うのも……。いやいや……二人っきりだからって、何かあるとは限らないし……。って言うか、何かって……何を考えてるの私?!)
そんな事をぐるぐると考えながら、薫はチラリと志信の様子を窺った。
志信は顔色ひとつ変えないで、平然とビールを飲んでいる。
(ホラ……。どうって事ない……)
薫が自分の考えに戸惑っている間、志信は志信でドキドキしているのを薫に気付かれないように平静を装っていた。
(二人っきりでこのまま耐えられるかな……。昨日酔っておかしな事言ったばかりなのに、ここで手を出したら、それこそ酔って誰にでも手を出す男と思われかねない……)
一時の感情に流されて薫に嫌われるような事だけはしないでおこうと心に誓いながら、志信はビールを飲み干した。
ビールが空になり、薫は新しいビールを冷蔵庫に取りに行くために立ち上がろうとした。
「あっ……!」
隣に志信が座っている事に緊張していたのか、しばらくぎこちない体勢で座っていた薫は、しびれた足がもつれて志信の上にダイブした。
「わっ……!」
倒れ込んだ薫を受け止めて、志信が薫に押し倒されたような格好になる。
「いてて……」
顔を上げた薫は、至近距離にある志信の顔に驚いて、途端にあたふたし始めた。
「ごっ……ごめん……!!」
起き上がろうとしても、軽い酔いも手伝い、その上に足がしびれて体に力が入らない。
(どうしよう、起き上がれない……!!)
「あのっ……ごめん、起き上がりたいんだけど……今、足がしびれて起き上がれない……」
慌てふためく薫を、志信はギュッと抱きしめた。
「あっ、うん……」
薫がナイフとお皿を用意して、ケーキを二人分だけ切り分けた。
それを見た梨花は少し驚いた様子で目をパチパチさせている。
「そんなに少しでいいんですか?」
「いいよ。これだけあればじゅうぶん」
「オレも」
「じゃあ、あとは家に帰って、友達といただきますね」
「うん、祝ってもらいな」
「ありがとうございます!」
ケーキを手に梨花が部屋を出ると、二人っきりになった薫と志信の間に、ぎこちない空気が流れた。
薫はできるだけ普通にしていようと平静を装う。
「とりあえず……片付けようか」
「そうだね」
二人で空いた食器をキッチンに運び、それから二人並んで洗い物をした。
「なんか……いろいろありすぎて、1日が長かった気がする」
「まさかこういう展開になるとはな」
(オレはすっげぇラッキーだったけど……)
薫がスポンジで食器を洗い、志信が水で泡をすすぎ落とした。
連携プレーのおかげで、たくさんあった汚れた食器は、思いのほか早く洗い終わった。
「二人でやると早いね」
「役に立ったなら良かった」
「ケーキ食べようか。コーヒーでも入れる?まだビールもあるけど……」
「ビール飲みたいけど……とりあえず、ケーキにはコーヒーかな」
「そうだね。そうしようか」
薫の入れたコーヒーを飲みながら、二人でケーキを食べた。
二人でケーキを食べている事に、薫も志信もなんとなく違和感を抱く。
「ケーキなんて久し振り」
「オレもだ」
「いつもお酒ばっかりだもんね」
「卯月さんが行きたいって言うなら、それ以外の所にも行くけど」
「うーん……。やっぱりお酒かな」
「だよなぁ」
他愛ない話をしながらケーキを食べて、コーヒーを飲み終わると、またビールを飲み始めた。
「たまにはこういうのもいいね。結構楽しかった」
「うん。卯月さんの料理、うまかったし」
「たいしたものは作ってないよ」
「そんな事ないよ。すげぇうまかった」
「そう……?なら良かった」
時間も随分遅くなったのに、志信と二人でゆっくりとビールを飲みながら、他愛ない話をして過ごすのは心地が良くて、なんとなくこのまま別れるのは惜しいような気もする。
(もう少しこのまま一緒にいたいかな……。でもこのまま二人っきりって言うのも……。いやいや……二人っきりだからって、何かあるとは限らないし……。って言うか、何かって……何を考えてるの私?!)
そんな事をぐるぐると考えながら、薫はチラリと志信の様子を窺った。
志信は顔色ひとつ変えないで、平然とビールを飲んでいる。
(ホラ……。どうって事ない……)
薫が自分の考えに戸惑っている間、志信は志信でドキドキしているのを薫に気付かれないように平静を装っていた。
(二人っきりでこのまま耐えられるかな……。昨日酔っておかしな事言ったばかりなのに、ここで手を出したら、それこそ酔って誰にでも手を出す男と思われかねない……)
一時の感情に流されて薫に嫌われるような事だけはしないでおこうと心に誓いながら、志信はビールを飲み干した。
ビールが空になり、薫は新しいビールを冷蔵庫に取りに行くために立ち上がろうとした。
「あっ……!」
隣に志信が座っている事に緊張していたのか、しばらくぎこちない体勢で座っていた薫は、しびれた足がもつれて志信の上にダイブした。
「わっ……!」
倒れ込んだ薫を受け止めて、志信が薫に押し倒されたような格好になる。
「いてて……」
顔を上げた薫は、至近距離にある志信の顔に驚いて、途端にあたふたし始めた。
「ごっ……ごめん……!!」
起き上がろうとしても、軽い酔いも手伝い、その上に足がしびれて体に力が入らない。
(どうしよう、起き上がれない……!!)
「あのっ……ごめん、起き上がりたいんだけど……今、足がしびれて起き上がれない……」
慌てふためく薫を、志信はギュッと抱きしめた。
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