32 / 61
これ以上、心を揺さぶられないように
1
しおりを挟む
それから3人で、薫の手料理を思いっきり堪能して、楽しくお酒を飲んだ。
誕生日の記念に写真を撮ろうと梨花が言い出し、3人一緒に撮った後、二人ずつの写真も撮る事にした。
梨花のスマホで写真を撮り、薫と志信にその画像を送ると、志信は薫とのツーショットをしげしげと眺めた。
(二人で写真撮るのなんて初めてだ……。今日はいろいろラッキーな日だなぁ)
しばらくすると、薫と志信のどちらがゲームが強いかと言う話になり、ムキになった二人が格闘ゲームで対決をする事になった。
「負けたら罰ゲームですよね」
梨花が楽しそうに言うと、薫と志信は目を見合わせる。
「どうする?」
「そうだなぁ……」
「じゃあ、私が決めてもいいですか?」
「なんで?」
「誕生日だから、今日の主役は梨花だって」
「あぁ……なるほどね。じゃあ長野さんが女王様って事で」
「お姫様がいいんだけど……まぁいっか。笠松さんのお姫様は梨花じゃないですからねぇ」
「長野さん!!」
志信が梨花に向かって、余計な事は言うなと人指し指を口元に当てると、梨花は笑いを堪えながら肩をすくめた。
「ハイハイ、照れ屋さんですねぇ。じゃあ、どうしようかな。卯月さんが勝ったら……卯月さん何か欲しい物ないですか?」
「ないよ。強いて言えばタバコが欲しい」
「タバコですかぁ……。笠松さんは?」
「オレも同じかなぁ」
「もうっ!!全然面白くないです!!やっぱり私が考えますから!!」
「えぇっ……」
面白い罰ゲームとはなんなのか?
一体何をさせられるのかと、薫と志信は不安そうに顔を見合わせた。
「じゃあ……卯月さんが勝ったら、1週間笠松さんが晩御飯を奢ってあげて下さい」
「よし、わかった」
「笠松さんが勝ったら、卯月さんはあのワンピースを着て笠松さんとデートして下さい」
「えっ?!ちょっと待ってよ……」
途端に薫はうろたえる。
「卯月さんが勝てばいいんですよ。頑張って下さい」
「そうだね……。絶対負けない!!」
二つの罰ゲームは、どちらが負けても自分にはダメージがないどころか、むしろご褒美じゃないかと志信は気付く。
(どっちにしてもオレは美味しいって事?さすが長野さん……)
梨花の考えた罰ゲームとは名ばかりの景品(?)を掛けてゲームはスタートした。
白熱してバトルを繰り広げる二人を、梨花はほろ酔い加減で笑って見ていた。
そして、ゲームが終わった時。
勝者の薫が、安堵の表情を浮かべてガッツポーズをした。
「やった……!!勝った……!!」
「あーあ……負けちゃったよ。卯月さんがあのワンピース着て恥ずかしそうにしてるの、見たかったのに……」
志信の呟きに、薫が横目でジットリと志信を見た。
「笠松くんってホントやらしい……」
「……まぁ、否定はしないけど……」
「えっ?!」
「オレも男ですからね。卯月さんの色っぽい姿見たら、ドキドキしますよ」
志信の発言に、薫は真っ赤になってうつむいた。
(何……?冗談?それともホントにそんな事考えてるの?!)
「笠松さん、残念でしたねぇ」
「ホントにね。でもまぁ、約束は守りますよ。1週間晩御飯を奢るんだよね」
「良かったですね、卯月さん」
「うん……」
(これってつまり……1週間毎日、笠松くんと一緒に晩御飯を食べるって事……?)
薫は志信と二人きりで過ごす時間が長くなることを、少し不安に思った。
しばらく経った頃、梨花のスマホが鳴った。
電話に出た梨花は、電話の相手と話した後、いそいそと帰り支度を始めた。
「今日約束してた友達が、手が空いたから今から会おうって。迎えに来てくれる事になったんで、これから帰りますね」
「えっ?」
梨花がいなくなったら二人きりになってしまう。
心の準備もできていないのに、どうすればいいだろう?
戸惑う二人のそんな気持ちに、梨花は気付いていないようだ。
「笠松さん、卯月さん、ごちそうさまでした!!今日はすっごく楽しかったです」
「あ、うん……。どういたしまして」
「片付け手伝えなくてごめんなさい。笠松さん、卯月さんの手伝いしてあげて下さいね」
「いや、私は大丈夫だよ」
志信と二人きりになるのを避けるために、やんわりと手伝いを断って帰ってもらうつもりだったのに、梨花は大きく首を横に振る。
「ダメですよ。こんなにたくさん、卯月さんだけじゃ大変です。笠松さん、おうちは近いんですよね?」
「近いけど……」
「終電の時間の心配もないし大丈夫ですね」
(終電なくなるほど遅くまで二人っきりにさせて、どうするつもりだ?!)
誕生日の記念に写真を撮ろうと梨花が言い出し、3人一緒に撮った後、二人ずつの写真も撮る事にした。
梨花のスマホで写真を撮り、薫と志信にその画像を送ると、志信は薫とのツーショットをしげしげと眺めた。
(二人で写真撮るのなんて初めてだ……。今日はいろいろラッキーな日だなぁ)
しばらくすると、薫と志信のどちらがゲームが強いかと言う話になり、ムキになった二人が格闘ゲームで対決をする事になった。
「負けたら罰ゲームですよね」
梨花が楽しそうに言うと、薫と志信は目を見合わせる。
「どうする?」
「そうだなぁ……」
「じゃあ、私が決めてもいいですか?」
「なんで?」
「誕生日だから、今日の主役は梨花だって」
「あぁ……なるほどね。じゃあ長野さんが女王様って事で」
「お姫様がいいんだけど……まぁいっか。笠松さんのお姫様は梨花じゃないですからねぇ」
「長野さん!!」
志信が梨花に向かって、余計な事は言うなと人指し指を口元に当てると、梨花は笑いを堪えながら肩をすくめた。
「ハイハイ、照れ屋さんですねぇ。じゃあ、どうしようかな。卯月さんが勝ったら……卯月さん何か欲しい物ないですか?」
「ないよ。強いて言えばタバコが欲しい」
「タバコですかぁ……。笠松さんは?」
「オレも同じかなぁ」
「もうっ!!全然面白くないです!!やっぱり私が考えますから!!」
「えぇっ……」
面白い罰ゲームとはなんなのか?
一体何をさせられるのかと、薫と志信は不安そうに顔を見合わせた。
「じゃあ……卯月さんが勝ったら、1週間笠松さんが晩御飯を奢ってあげて下さい」
「よし、わかった」
「笠松さんが勝ったら、卯月さんはあのワンピースを着て笠松さんとデートして下さい」
「えっ?!ちょっと待ってよ……」
途端に薫はうろたえる。
「卯月さんが勝てばいいんですよ。頑張って下さい」
「そうだね……。絶対負けない!!」
二つの罰ゲームは、どちらが負けても自分にはダメージがないどころか、むしろご褒美じゃないかと志信は気付く。
(どっちにしてもオレは美味しいって事?さすが長野さん……)
梨花の考えた罰ゲームとは名ばかりの景品(?)を掛けてゲームはスタートした。
白熱してバトルを繰り広げる二人を、梨花はほろ酔い加減で笑って見ていた。
そして、ゲームが終わった時。
勝者の薫が、安堵の表情を浮かべてガッツポーズをした。
「やった……!!勝った……!!」
「あーあ……負けちゃったよ。卯月さんがあのワンピース着て恥ずかしそうにしてるの、見たかったのに……」
志信の呟きに、薫が横目でジットリと志信を見た。
「笠松くんってホントやらしい……」
「……まぁ、否定はしないけど……」
「えっ?!」
「オレも男ですからね。卯月さんの色っぽい姿見たら、ドキドキしますよ」
志信の発言に、薫は真っ赤になってうつむいた。
(何……?冗談?それともホントにそんな事考えてるの?!)
「笠松さん、残念でしたねぇ」
「ホントにね。でもまぁ、約束は守りますよ。1週間晩御飯を奢るんだよね」
「良かったですね、卯月さん」
「うん……」
(これってつまり……1週間毎日、笠松くんと一緒に晩御飯を食べるって事……?)
薫は志信と二人きりで過ごす時間が長くなることを、少し不安に思った。
しばらく経った頃、梨花のスマホが鳴った。
電話に出た梨花は、電話の相手と話した後、いそいそと帰り支度を始めた。
「今日約束してた友達が、手が空いたから今から会おうって。迎えに来てくれる事になったんで、これから帰りますね」
「えっ?」
梨花がいなくなったら二人きりになってしまう。
心の準備もできていないのに、どうすればいいだろう?
戸惑う二人のそんな気持ちに、梨花は気付いていないようだ。
「笠松さん、卯月さん、ごちそうさまでした!!今日はすっごく楽しかったです」
「あ、うん……。どういたしまして」
「片付け手伝えなくてごめんなさい。笠松さん、卯月さんの手伝いしてあげて下さいね」
「いや、私は大丈夫だよ」
志信と二人きりになるのを避けるために、やんわりと手伝いを断って帰ってもらうつもりだったのに、梨花は大きく首を横に振る。
「ダメですよ。こんなにたくさん、卯月さんだけじゃ大変です。笠松さん、おうちは近いんですよね?」
「近いけど……」
「終電の時間の心配もないし大丈夫ですね」
(終電なくなるほど遅くまで二人っきりにさせて、どうするつもりだ?!)
2
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
閉じたまぶたの裏側で
櫻井音衣
恋愛
河合 芙佳(かわい ふうか・28歳)は
元恋人で上司の
橋本 勲(はしもと いさお・31歳)と
不毛な関係を3年も続けている。
元はと言えば、
芙佳が出向している半年の間に
勲が専務の娘の七海(ななみ・27歳)と
結婚していたのが発端だった。
高校時代の同級生で仲の良い同期の
山岸 應汰(やまぎし おうた・28歳)が、
そんな芙佳の恋愛事情を知った途端に
男友達のふりはやめると詰め寄って…。
どんなに好きでも先のない不毛な関係と、
自分だけを愛してくれる男友達との
同じ未来を望める関係。
芙佳はどちらを選ぶのか?
“私にだって
幸せを求める権利くらいはあるはずだ”
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ
慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。
その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは
仕事上でしか接点のない上司だった。
思っていることを口にするのが苦手
地味で大人しい司書
木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)
×
真面目で優しい千紗子の上司
知的で容姿端麗な課長
雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29)
胸を締め付ける切ない想いを
抱えているのはいったいどちらなのか———
「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」
「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」
「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」
真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。
**********
►Attention
※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです)
※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。
※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~
けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。
ただ…
トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。
誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。
いや…もう女子と言える年齢ではない。
キラキラドキドキした恋愛はしたい…
結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。
最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。
彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して…
そんな人が、
『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』
だなんて、私を指名してくれて…
そして…
スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、
『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』
って、誘われた…
いったい私に何が起こっているの?
パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子…
たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。
誰かを思いっきり好きになって…
甘えてみても…いいですか?
※after story別作品で公開中(同じタイトル)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる