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後輩は鎹(かすがい)?
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「ないない……。私なんか大食いだし、酒飲みだし、ヘビースモーカーだし、いっつも汗とオイルの匂いがするし……。かわいげも女らしさの欠片もないのに、誰も奥さんにしたいなんて思わないよ」
自嘲気味に話す薫の言葉を聞きながら、志信は頬をかいた。
(いきなり奥さんにって言うのはアレだけど……じつは今すぐ彼女にしたいと思ってる男が、ここに一人いたりして……)
昨日酔ってさらけ出した本音を、薫は覚えていないのだろうか?
ハッキリ『好きだ』とは言わなかったが、それに近い事を言ったと思う。
(愛しくて抱きしめたくなるとか、すっげぇかわいいとか……本人を目の前にして、オレもよく言ったもんだ……。それに、同期以上の事をしてもいいかなんて……。酔って口説くタイプかって聞かれたって事は、オレってすっげぇ軽いと思われてる……?)
一抹の不安を感じながら、志信は薫の様子を窺っていた。
薫は志信の気持ちも知らないで、梨花と笑いながらメニューの相談をしている。
(ああいう事、誰にでも言うと思われてんのかな……。オレバカだ……酔って調子に乗りすぎた……。卯月さんも酒のせいで覚えてなかったらいいんだけどな……)
梨花がスーパーの手前で立ち止まり、ケーキをじっくり選びたいと言って一人で隣のケーキ屋に行ったので、食材は薫と志信の二人で買い物する事になった。
(長野さん、これはもしかして気を利かせたつもりか?急に二人きりにされたら、昨日の事もあるし緊張する……)
志信がカートを押しながら、食材を選んでいる薫の後ろ姿を見つめていると、不意に薫が振り返って尋ねた。
「笠松くん、何か苦手な物ある?」
「いや、特にないよ」
(君が作った物なら、嫌いだろうが焦げてようが、なんでも食べます!!)
「何か食べたい物ある?」
(卯月さん……って、アホかオレは?!)
心の声が聞こえていたらソッコーで殴られそうだと思いながら、志信は食べたい物を考えるふりをした。
「唐揚げとか……」
「うん。それは作る」
「海老フライとか」
「海老フライね。せっかく誕生日だから、大きい海老フライがいいかな」
「洋食屋みたいな海老フライ食べたい」
「じゃあ、大きい海老買ってあげて」
「よし、任せとけ」
気前よく返事をする志信を、薫は何か言いたそうに見ている。
「……何?」
「ううん。ただ、私がいても良かったのかなあと思っただけ」
「どういう事?」
「笠松くんって、誕生日のお祝いしてあげるほど長野さんと仲良しなんだなぁと思って。今日は一人で買い物してたら偶然長野さんと会って、一緒に買い物する事になったんだけど……。長野さんが笠松くんと、そんな約束してるなんて知らなかったから」
「えぇっ…?!」
(違う!!そんなんじゃないから誤解しないで!!)
志信は誤解を解こうと慌てて言い訳する。
「いや、オレも今日会ったのは偶然なんだけど……。卯月さんが試着室で着替えてる時に、今日が誕生日だって聞いたから、晩飯でもおごるって言っただけ」
「そうなんだ。長野さん、甘え上手でかわいいからね。あんなにかわいくお願いされたら、男の人はイヤな気はしないでしょう」
「え?」
(何言ってんだ?)
志信の顔を見ないで笑って話す薫に、志信は少しの苛立ちを覚えた。
「私の家より、笠松くんの家の方が良かったんじゃないの?そうしたら私、料理して適当に食べたら帰るのに」
梨花との仲を勘違いされ、志信は眉を寄せてため息をついた。
「あのさ……それ、勘違い」
「え?」
「オレは最初から、長野さんと二人きりになりたいなんて一言も言ってないし、思ってない。卯月さんはオレと長野さんをくっ付けたいの?」
少し苛立った志信の口調に、薫は少し戸惑って小声で答える。
「別に……もしかしたら私はお邪魔なんじゃないかと思っただけ」
志信の気持ちも知らずにそんな事を言う薫に腹が立って、志信は奥歯をギリッと噛みしめた。
自嘲気味に話す薫の言葉を聞きながら、志信は頬をかいた。
(いきなり奥さんにって言うのはアレだけど……じつは今すぐ彼女にしたいと思ってる男が、ここに一人いたりして……)
昨日酔ってさらけ出した本音を、薫は覚えていないのだろうか?
ハッキリ『好きだ』とは言わなかったが、それに近い事を言ったと思う。
(愛しくて抱きしめたくなるとか、すっげぇかわいいとか……本人を目の前にして、オレもよく言ったもんだ……。それに、同期以上の事をしてもいいかなんて……。酔って口説くタイプかって聞かれたって事は、オレってすっげぇ軽いと思われてる……?)
一抹の不安を感じながら、志信は薫の様子を窺っていた。
薫は志信の気持ちも知らないで、梨花と笑いながらメニューの相談をしている。
(ああいう事、誰にでも言うと思われてんのかな……。オレバカだ……酔って調子に乗りすぎた……。卯月さんも酒のせいで覚えてなかったらいいんだけどな……)
梨花がスーパーの手前で立ち止まり、ケーキをじっくり選びたいと言って一人で隣のケーキ屋に行ったので、食材は薫と志信の二人で買い物する事になった。
(長野さん、これはもしかして気を利かせたつもりか?急に二人きりにされたら、昨日の事もあるし緊張する……)
志信がカートを押しながら、食材を選んでいる薫の後ろ姿を見つめていると、不意に薫が振り返って尋ねた。
「笠松くん、何か苦手な物ある?」
「いや、特にないよ」
(君が作った物なら、嫌いだろうが焦げてようが、なんでも食べます!!)
「何か食べたい物ある?」
(卯月さん……って、アホかオレは?!)
心の声が聞こえていたらソッコーで殴られそうだと思いながら、志信は食べたい物を考えるふりをした。
「唐揚げとか……」
「うん。それは作る」
「海老フライとか」
「海老フライね。せっかく誕生日だから、大きい海老フライがいいかな」
「洋食屋みたいな海老フライ食べたい」
「じゃあ、大きい海老買ってあげて」
「よし、任せとけ」
気前よく返事をする志信を、薫は何か言いたそうに見ている。
「……何?」
「ううん。ただ、私がいても良かったのかなあと思っただけ」
「どういう事?」
「笠松くんって、誕生日のお祝いしてあげるほど長野さんと仲良しなんだなぁと思って。今日は一人で買い物してたら偶然長野さんと会って、一緒に買い物する事になったんだけど……。長野さんが笠松くんと、そんな約束してるなんて知らなかったから」
「えぇっ…?!」
(違う!!そんなんじゃないから誤解しないで!!)
志信は誤解を解こうと慌てて言い訳する。
「いや、オレも今日会ったのは偶然なんだけど……。卯月さんが試着室で着替えてる時に、今日が誕生日だって聞いたから、晩飯でもおごるって言っただけ」
「そうなんだ。長野さん、甘え上手でかわいいからね。あんなにかわいくお願いされたら、男の人はイヤな気はしないでしょう」
「え?」
(何言ってんだ?)
志信の顔を見ないで笑って話す薫に、志信は少しの苛立ちを覚えた。
「私の家より、笠松くんの家の方が良かったんじゃないの?そうしたら私、料理して適当に食べたら帰るのに」
梨花との仲を勘違いされ、志信は眉を寄せてため息をついた。
「あのさ……それ、勘違い」
「え?」
「オレは最初から、長野さんと二人きりになりたいなんて一言も言ってないし、思ってない。卯月さんはオレと長野さんをくっ付けたいの?」
少し苛立った志信の口調に、薫は少し戸惑って小声で答える。
「別に……もしかしたら私はお邪魔なんじゃないかと思っただけ」
志信の気持ちも知らずにそんな事を言う薫に腹が立って、志信は奥歯をギリッと噛みしめた。
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