君に恋していいですか?

櫻井音衣

文字の大きさ
上 下
27 / 61
後輩は鎹(かすがい)?

しおりを挟む
「あぁ……。やっぱり、ちゃんと貸してあげれば良かったですねぇ」
「何を?」
「メイク道具です。卯月さん、いつもは化粧直しなんてしないのに、急に貸して欲しいって。ちゃんと化粧しましょうかって言ったら、恥ずかしがって結局化粧直しもしないで行っちゃったから……」

梨花の言葉の意味がいまいちよくわからなくて、志信は首をかしげた。

「それが何か?」
「忙しくて汗かいたしって、化粧崩れしてるの気になってたみたいなんで。笠松さんに見られるの、恥ずかしかったんじゃないですか?」
「まさか……。それにオレは、そんな事全然気にしないけど……」
「卯月さんも女の子って事ですよ。自分の事を女らしくないってよく言うし、自分に自信がないみたいなんで、後輩さんたちと自分を比べて気後れしちゃったんじゃないですか?」
「ふーん……」

(オレにとっては、あの子たちより卯月さんの方が何倍もかわいいけどな……)

どこか腑に落ちない様子の志信に、梨花が笑い掛けた。

「自信持たせてあげて下さいよ、笠松さん。卯月さん、キレイでスタイルもいいのにもったいないですから」
「卯月さんにとっては、オレなんかただの同期だよ?まったく眼中にないからね」
「そんな事はないと思いますよ。急に化粧崩れとか服装を気にするなんて、卯月さんが笠松さんを意識してるって証拠です」
「……だといいんだけどね」

志信がため息混じりに呟くと、梨花は急に何かを思い出したようにポンと手を叩いた。

「あっ、そうだ。さっき卯月さんと下着買いに行ったんですけど」
「えっ、何、突然?!」

急に下着の話をされて、志信はドギマギしている。

「見せる相手はいないって。それから卯月さん……Eカップらしいです」
「いっ……」

突然の梨花の暴露話に、志信は絶句した。

(Eカップ?!あの細さで?!道理で大きいはずだよ!!)

「笠松さんに教えちゃった事、卯月さんには内緒ですよ。梨花、今日は誕生日なんです。卯月さんと笠松さんにお祝いしてもらえたら嬉しいなぁ」

甘えた声で報酬をおねだりをする梨花に、志信は頭を下げた。

「……お祝いさせて下さい……」



その後、3人で昼食を取る事になった。
薫と志信は、あんな事があったのが昨日の今日で、どこかぎこちない。
そんな二人の仲を梨花が取り持つように、3人でイタリアンレストランに足を運んだ。

「ここのパスタランチが美味しいんです!!」
「へぇ……こんなオシャレなお店があったんだね。会社のすぐ近くなのに知らなかった」

慣れない店の雰囲気に薫はソワソワしている。

「私、お昼とか仕事の後に同僚と一緒によく来るんですよ。卯月さんはあまり外食しないんですか?」
「こういう店には来ないから。普段お昼はコンビニとか弁当屋で買ってSSで食べるし。外で食べる時も一人で定食屋とか、サラリーマンのオジサンに混じって食べたりする」

志信は薫の言葉を聞きながら、美味しそうに食べる薫の顔を思い出して微笑んだ。

(なんか卯月さんらしいな……)

梨花は驚いた様子で更に尋ねる。

「夜はどうしてます?」
「誰かと飲みに行く時は居酒屋かな。一人の時はたまにバーに行ったりもするけど、だいたいは家で簡単な物作って、お酒飲みながら食べるし」

『誰かと』と言う薫の言葉に、志信はなんとなくモヤッとした。

(誰かと飲みに、って……オレ以外にもそんな相手がいるのかなぁ……)

「自炊してるんですねぇ。私なんか、一人だとつい面倒で、デパ地下でデリ買って帰っちゃいますよ」

薫が首をかしげる。

「デリ……?」
「お惣菜です」
「お惣菜ね……」

今時の流行りに疎い薫は、なんでもオシャレに言う若い女の子の言葉がよくわからない。
そんな自分は全然かわいくないと思う。
一人でも平気でサラリーマンのオジサンに混じって定食屋でガッツリと定食を食べるあたり、かわいい女の子には程遠い。

(色気より食い気……だな)

自分のかわいげの無さに、薫はまたガックリと肩を落とした。
そんな薫の顔を見ながら、志信は考える。

(また昼飯一緒に行こうって言ったら、OKしてくれるかな……?)

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

交際マイナス一日婚⁉ 〜ほとぼりが冷めたら離婚するはずなのに、鬼上司な夫に無自覚で溺愛されていたようです〜

朝永ゆうり
恋愛
憧れの上司と一夜をともにしてしまったらしい杷留。お酒のせいで記憶が曖昧なまま目が覚めると、隣りにいたのは同じく状況を飲み込めていない様子の三条副局長だった。 互いのためにこの夜のことは水に流そうと約束した杷留と三条だったが、始業後、なぜか朝会で呼び出され―― 「結婚、おめでとう!」 どうやら二人は、互いに記憶のないまま結婚してしまっていたらしい。 ほとぼりが冷めた頃に離婚をしようと約束する二人だったが、互いのことを知るたびに少しずつ惹かれ合ってゆき―― 「杷留を他の男に触れさせるなんて、考えただけでぞっとする」 ――鬼上司の独占愛は、いつの間にか止まらない!?

手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】

まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と… 「Ninagawa Queen's Hotel」 若きホテル王 蜷川朱鷺  妹     蜷川美鳥 人気美容家 佐井友理奈 「オークワイナリー」 国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介 血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…? 華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。

Re_Love 〜婚約破棄した元彼と〜

鳴宮鶉子
恋愛
Re_Love 〜婚約破棄した元彼と〜

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

史上最強最低男からの求愛〜今更貴方とはやり直せません!!〜

鳴宮鶉子
恋愛
中高一貫校時代に愛し合ってた仲だけど、大学時代に史上最強最低な別れ方をし、わたしを男嫌いにした相手と復縁できますか?

スパダリな義理兄と❤︎♡甘い恋物語♡❤︎

鳴宮鶉子
恋愛
IT関係の会社を起業しているエリートで見た目も極上にカッコイイ母の再婚相手の息子に恋をした。妹でなくわたしを女として見て

同期の姫は、あなどれない

青砥アヲ
恋愛
社会人4年目を迎えたゆきのは、忙しいながらも充実した日々を送っていたが、遠距離恋愛中の彼氏とはすれ違いが続いていた。 ある日、電話での大喧嘩を機に一方的に連絡を拒否され、音信不通となってしまう。 落ち込むゆきのにアプローチしてきたのは『同期の姫』だった。 「…姫って、付き合ったら意彼女に尽くすタイプ?」 「さぁ、、試してみる?」 クールで他人に興味がないと思っていた同期からの、思いがけないアプローチ。動揺を隠せないゆきのは、今まで知らなかった一面に翻弄されていくことにーーー 【登場人物】 早瀬ゆきの(はやせゆきの)・・・R&Sソリューションズ開発部第三課 所属 25歳 姫元樹(ひめもといつき)・・・R&Sソリューションズ開発部第一課 所属 25歳 ◆表紙画像は簡単表紙メーカー様で作成しています。 ◆他にエブリスタ様にも掲載してます。

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

処理中です...