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後輩は鎹(かすがい)?
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「こっちに来て下さい」
「いや……オレ、女の子の服の事は全然わからないよ?!」
「いいから!!」
梨花に強引に手を引かれ、志信は店内に足を踏み入れた。
(すっげぇ恥ずかしいんだけど……)
「着替えました?開けてもいいですか?」
試着室の前で、梨花が中の誰かに声を掛けた。
「あ……ちょっと待って……」
その聞き覚えのある声に志信はドキッとした。
しかしあの薫が休日に社内の人間と仲良く買い物に出掛けたりするはずはない。
(え?今のって……。オレ、卯月さんの事好きすぎて、おかしくなってきたのかな?)
「もう大丈夫」
志信が首をかしげていると、また試着室の中から声が聞こえた。
その声はやっぱり薫の声に似ている。
「じゃあ、開けますよぉ」
梨花が試着室のカーテンを開けると、志信が今まで見た事のない薫の姿がそこにあった。
「え……」
「あ……」
薫と志信はお互いに、そこにいるはずのない相手の姿に驚いて、一瞬言葉を失った。
(なんで卯月さんが?!って言うか、めちゃめちゃ色っぽいんだけど!!)
さっきまでここにいなかったはずの志信の姿を見て、薫は驚いて顔を真っ赤にした。
(な、なんで?!なんで笠松くんがいるの?!)
急にあたふたしている二人を内心面白がりながら、梨花はいつものように明るく、何事もない風を装った。
「うわぁー!やっぱり似合う!!すっごく素敵です!!ねっ、笠松さん!」
梨花に同意を求められ、志信は我に返る。
「え?あっ、うん……」
(やべぇ……思いっきり見とれてた……)
昨日、酔った勢いに任せて、随分いろいろと口走った。
普段なら絶対言わないような甘い言葉を吐き、拒まれるのをわかっていながら、冗談めかして薫を口説いた。
その上、薫をわざと突き放すような、責めるような卑屈な物の言い方をしてしまった。
頭では何を言っているかわかっていたのに、酔って自分の言動を止める事ができなかった。
その時の薫の顔を思い出すと、志信はいたたまれない気持ちでいっぱいになる。
(うぅ……気まずい……。あんな変な事ばっかり言って、嫌われてたらどうしよう……)
「あの……恥ずかしいから、もうそろそろ着替えてもいい?」
薫がためらいがちに尋ねると、梨花は大袈裟に声をあげた。
「せっかくだから買っちゃえばどうですかぁ。卯月さんスタイルもいいし、すっごく似合ってるしキレイですよ!」
「いや……あの……こんな服、着て行くとこもないし……持っててもしょうがないって言うか……」
「デートで着たらいいじゃないですかぁ」
恥ずかしそうにカーテンで自分の体を隠そうとする薫に、梨花は事も無げに言い放つ。
「さっきも言ったけど、そんな相手いないし」
恥ずかしそうにうつむく薫に、志信はまた見とれている。
(かっ……かわいい……!!オレならいつでも喜んでデートするけど!!って言うか、して下さい!!)
「男と女なんて、いつどうなるかわかりませんよ?」
梨花の意味深な微笑みに、薫はまた真っ赤になった。
「変な事ばっかり言わないで……。とりあえず、これはいらない……。やっぱりこういう服は落ち着かないから……。もう着替えるね」
「すっごく似合ってるのに、もったいない」
薫がカーテンを閉めると、梨花は残念そうに肩をすくめたあと、試着室から少し離れた場所へ移動し、志信を手招きした。
そして薫には聞こえないように、小声で尋ねる。
「笠松さん、昨日卯月さんと会ってたでしょう?」
昨日薫と約束していた事は梨花には言っていなかったはずなのに、梨花が知っていた事に志信は少し驚いた。
「会ってたけど……」
「やっぱり。どうでした?」
「うーん……。なんとなくだけど、ちょっと様子がおかしかったような……」
「おかしかったですか?」
「うん。うちの部署の後輩の女の子たちに、卯月さんも一緒に飲みに行こうって誘われたんだけどさ。私はいいから笠松くんだけでも行ってきたら?とか言われて。もちろん断ったけど、二人で飲んでても、なんかソワソワしてるって言うか、やたらとうつむいたりして……」
志信が説明すると、梨花は小さくため息をついた。
「いや……オレ、女の子の服の事は全然わからないよ?!」
「いいから!!」
梨花に強引に手を引かれ、志信は店内に足を踏み入れた。
(すっげぇ恥ずかしいんだけど……)
「着替えました?開けてもいいですか?」
試着室の前で、梨花が中の誰かに声を掛けた。
「あ……ちょっと待って……」
その聞き覚えのある声に志信はドキッとした。
しかしあの薫が休日に社内の人間と仲良く買い物に出掛けたりするはずはない。
(え?今のって……。オレ、卯月さんの事好きすぎて、おかしくなってきたのかな?)
「もう大丈夫」
志信が首をかしげていると、また試着室の中から声が聞こえた。
その声はやっぱり薫の声に似ている。
「じゃあ、開けますよぉ」
梨花が試着室のカーテンを開けると、志信が今まで見た事のない薫の姿がそこにあった。
「え……」
「あ……」
薫と志信はお互いに、そこにいるはずのない相手の姿に驚いて、一瞬言葉を失った。
(なんで卯月さんが?!って言うか、めちゃめちゃ色っぽいんだけど!!)
さっきまでここにいなかったはずの志信の姿を見て、薫は驚いて顔を真っ赤にした。
(な、なんで?!なんで笠松くんがいるの?!)
急にあたふたしている二人を内心面白がりながら、梨花はいつものように明るく、何事もない風を装った。
「うわぁー!やっぱり似合う!!すっごく素敵です!!ねっ、笠松さん!」
梨花に同意を求められ、志信は我に返る。
「え?あっ、うん……」
(やべぇ……思いっきり見とれてた……)
昨日、酔った勢いに任せて、随分いろいろと口走った。
普段なら絶対言わないような甘い言葉を吐き、拒まれるのをわかっていながら、冗談めかして薫を口説いた。
その上、薫をわざと突き放すような、責めるような卑屈な物の言い方をしてしまった。
頭では何を言っているかわかっていたのに、酔って自分の言動を止める事ができなかった。
その時の薫の顔を思い出すと、志信はいたたまれない気持ちでいっぱいになる。
(うぅ……気まずい……。あんな変な事ばっかり言って、嫌われてたらどうしよう……)
「あの……恥ずかしいから、もうそろそろ着替えてもいい?」
薫がためらいがちに尋ねると、梨花は大袈裟に声をあげた。
「せっかくだから買っちゃえばどうですかぁ。卯月さんスタイルもいいし、すっごく似合ってるしキレイですよ!」
「いや……あの……こんな服、着て行くとこもないし……持っててもしょうがないって言うか……」
「デートで着たらいいじゃないですかぁ」
恥ずかしそうにカーテンで自分の体を隠そうとする薫に、梨花は事も無げに言い放つ。
「さっきも言ったけど、そんな相手いないし」
恥ずかしそうにうつむく薫に、志信はまた見とれている。
(かっ……かわいい……!!オレならいつでも喜んでデートするけど!!って言うか、して下さい!!)
「男と女なんて、いつどうなるかわかりませんよ?」
梨花の意味深な微笑みに、薫はまた真っ赤になった。
「変な事ばっかり言わないで……。とりあえず、これはいらない……。やっぱりこういう服は落ち着かないから……。もう着替えるね」
「すっごく似合ってるのに、もったいない」
薫がカーテンを閉めると、梨花は残念そうに肩をすくめたあと、試着室から少し離れた場所へ移動し、志信を手招きした。
そして薫には聞こえないように、小声で尋ねる。
「笠松さん、昨日卯月さんと会ってたでしょう?」
昨日薫と約束していた事は梨花には言っていなかったはずなのに、梨花が知っていた事に志信は少し驚いた。
「会ってたけど……」
「やっぱり。どうでした?」
「うーん……。なんとなくだけど、ちょっと様子がおかしかったような……」
「おかしかったですか?」
「うん。うちの部署の後輩の女の子たちに、卯月さんも一緒に飲みに行こうって誘われたんだけどさ。私はいいから笠松くんだけでも行ってきたら?とか言われて。もちろん断ったけど、二人で飲んでても、なんかソワソワしてるって言うか、やたらとうつむいたりして……」
志信が説明すると、梨花は小さくため息をついた。
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