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高鳴る鼓動
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薫はタバコを二箱買い、コンビニを出ようとして足を止めた。
(笠松くんと……販売事業部の女の子たち?)
みんな女の子らしく小綺麗な服を着て、キレイに化粧をしている。
薫は思わず志信の周りにいる女の子たちと自分を見比べて、引け目を感じてしまう。
(私、全然女らしくないな。いくらただの同期って言っても、どうせ一緒にいるなら笠松くんだって……かわいい子の方がいいに決まってる……)
おしゃれでかわいらしい彼女たちと違って、自分はいつものようにラフな服装で、化粧直しさえしていない。
薫は無意識に自分の髪についた匂いを嗅いで、ガックリと肩を落とした。
(タバコ臭いし、汗臭いし……おまけにオイル交換何回もしたからオイル臭いし……。ひどすぎる……)
女らしくない自分に情けなさを感じて、ため息をつきながら店の外に出た。
「笠松くん、お待たせ」
薫が声を掛けると、後輩たちは驚いた顔で薫と志信を交互に見た。
「えっ?笠松さんと卯月さんって……」
「もしかしてお二人は……」
後輩たちが言おうとした言葉を志信が遮る。
「同期だから、たまに飲みに行ったり仲良くしてもらってんの。これから卯月さんと一緒に飲みに行くんだ」
志信がそう言うと後輩たちは納得したようで、どこかホッとしたようにも見えた。
「あー……なるほど、同期ですかぁ。恋人同士かと思ってビックリしちゃった!」
「まさか、そんなわけないですよねぇ」
(……それどういう意味?)
確かにそんなわけはないのに、女として全否定されたような気がして、複雑な思いが薫の胸にわき上がった。
「じゃあ卯月さんも一緒にいかがですか?」
「えっ?」
戸惑う薫に、志信が小声で耳打ちする。
「料理の美味しいオシャレなダイニングバーがあるから一緒に行こうって、さっきから……」
どうやら志信は同じ部署のかわいい女子たちから人気があるようだ。
薫は作り笑いを浮かべて、志信を見た。
「私は遠慮するけど……かわいい後輩からのお誘いだし、せっかくだから笠松くんは行ってくれば?」
「えっ?!」
「笠松くんも、若くてかわいい女の子と飲んだ方が楽しいでしょ?」
(は?何言ってんの?)
志信は薫の言葉に、ほんの少しの苛立ちを覚えた。
「笠松さん、卯月さんはそうおっしゃってますけど……」
「行かない。オレは卯月さんと飲みに行く。じゃあお疲れ」
志信は後輩たちの誘いを素っ気なく断って、薫の方を向いた。
「行こう、卯月さん」
「う……うん……。お疲れ様……」
薫は後輩たちに挨拶をして、志信の後を追う。
さっきまであの焼き鳥屋に行くのを楽しみにしていたはずの薫が、急におかしな事を言い出したのはなぜだろう?
志信は不機嫌そうに眉を寄せて考えていた。
(オレとの約束なんかどうでもいいって事か?そりゃ卯月さんにとっては、オレはただの同期かも知れないけど……オレ一人で勝手に浮かれて、バカみたいじゃん……)
焼き鳥屋に入ってカウンター席に並んで座り、生ビールと焼き鳥の盛り合わせを注文した。
志信は運ばれてきたジョッキの生ビールを勢いよく煽る。
(いろいろ思うところはあるけど、ちょっと落ち着こう。そもそもオレが一方的に好きってだけで、付き合ってるわけでもないんだし……卯月さんを責めても仕方ない……)
焼き鳥屋に入って2時間近く経った。
お酒は生ビールをジョッキで3杯飲んだ後、ウイスキーの水割りに変わった。
いつもより早いペースでウイスキーの水割りを煽る志信を、薫は心配そうに見ていた。
「笠松くん、ちょっと飲むペース早過ぎじゃない?」
「そんな事ないよ」
「ホントに大丈夫?」
「……心配してくれんの?」
ただでさえカウンター席ですぐそばに座っているのに、志信が体を薫の方に向け、顔を近付けて、薫の顔を覗き込むようにジッと見た。
「あの……そんな近くでジッと見ないで……」
薫はたまらず顔をそむけた。
志信はいつもより早く酔いが回って気が大きくなったのか、なんだか今日はやけに薫が自分を意識しているように感じた。
(さっきから照れてうつむいたり、ジッと見たら恥ずかしそうに目をそらしたりしてる。かわいいな……ちょっといじめちゃおうか……)
「あのさ……さっきのあれ、なんなの?」
「え?」
「オレは、卯月さんと約束したんだよ?オレ、卯月さんとの約束すっげぇ楽しみにしてたのに、他の女の子と行けってなんなの?」
薫は目をそらしたままで小さく呟く。
「……笠松くんだって、一緒にいるならかわいい子の方がいいでしょ?」
「卯月さんの言うかわいい子って、さっきの後輩たちみたいな子の事?」
怪訝そうに尋ねる志信に、薫はうなずいた。
(笠松くんと……販売事業部の女の子たち?)
みんな女の子らしく小綺麗な服を着て、キレイに化粧をしている。
薫は思わず志信の周りにいる女の子たちと自分を見比べて、引け目を感じてしまう。
(私、全然女らしくないな。いくらただの同期って言っても、どうせ一緒にいるなら笠松くんだって……かわいい子の方がいいに決まってる……)
おしゃれでかわいらしい彼女たちと違って、自分はいつものようにラフな服装で、化粧直しさえしていない。
薫は無意識に自分の髪についた匂いを嗅いで、ガックリと肩を落とした。
(タバコ臭いし、汗臭いし……おまけにオイル交換何回もしたからオイル臭いし……。ひどすぎる……)
女らしくない自分に情けなさを感じて、ため息をつきながら店の外に出た。
「笠松くん、お待たせ」
薫が声を掛けると、後輩たちは驚いた顔で薫と志信を交互に見た。
「えっ?笠松さんと卯月さんって……」
「もしかしてお二人は……」
後輩たちが言おうとした言葉を志信が遮る。
「同期だから、たまに飲みに行ったり仲良くしてもらってんの。これから卯月さんと一緒に飲みに行くんだ」
志信がそう言うと後輩たちは納得したようで、どこかホッとしたようにも見えた。
「あー……なるほど、同期ですかぁ。恋人同士かと思ってビックリしちゃった!」
「まさか、そんなわけないですよねぇ」
(……それどういう意味?)
確かにそんなわけはないのに、女として全否定されたような気がして、複雑な思いが薫の胸にわき上がった。
「じゃあ卯月さんも一緒にいかがですか?」
「えっ?」
戸惑う薫に、志信が小声で耳打ちする。
「料理の美味しいオシャレなダイニングバーがあるから一緒に行こうって、さっきから……」
どうやら志信は同じ部署のかわいい女子たちから人気があるようだ。
薫は作り笑いを浮かべて、志信を見た。
「私は遠慮するけど……かわいい後輩からのお誘いだし、せっかくだから笠松くんは行ってくれば?」
「えっ?!」
「笠松くんも、若くてかわいい女の子と飲んだ方が楽しいでしょ?」
(は?何言ってんの?)
志信は薫の言葉に、ほんの少しの苛立ちを覚えた。
「笠松さん、卯月さんはそうおっしゃってますけど……」
「行かない。オレは卯月さんと飲みに行く。じゃあお疲れ」
志信は後輩たちの誘いを素っ気なく断って、薫の方を向いた。
「行こう、卯月さん」
「う……うん……。お疲れ様……」
薫は後輩たちに挨拶をして、志信の後を追う。
さっきまであの焼き鳥屋に行くのを楽しみにしていたはずの薫が、急におかしな事を言い出したのはなぜだろう?
志信は不機嫌そうに眉を寄せて考えていた。
(オレとの約束なんかどうでもいいって事か?そりゃ卯月さんにとっては、オレはただの同期かも知れないけど……オレ一人で勝手に浮かれて、バカみたいじゃん……)
焼き鳥屋に入ってカウンター席に並んで座り、生ビールと焼き鳥の盛り合わせを注文した。
志信は運ばれてきたジョッキの生ビールを勢いよく煽る。
(いろいろ思うところはあるけど、ちょっと落ち着こう。そもそもオレが一方的に好きってだけで、付き合ってるわけでもないんだし……卯月さんを責めても仕方ない……)
焼き鳥屋に入って2時間近く経った。
お酒は生ビールをジョッキで3杯飲んだ後、ウイスキーの水割りに変わった。
いつもより早いペースでウイスキーの水割りを煽る志信を、薫は心配そうに見ていた。
「笠松くん、ちょっと飲むペース早過ぎじゃない?」
「そんな事ないよ」
「ホントに大丈夫?」
「……心配してくれんの?」
ただでさえカウンター席ですぐそばに座っているのに、志信が体を薫の方に向け、顔を近付けて、薫の顔を覗き込むようにジッと見た。
「あの……そんな近くでジッと見ないで……」
薫はたまらず顔をそむけた。
志信はいつもより早く酔いが回って気が大きくなったのか、なんだか今日はやけに薫が自分を意識しているように感じた。
(さっきから照れてうつむいたり、ジッと見たら恥ずかしそうに目をそらしたりしてる。かわいいな……ちょっといじめちゃおうか……)
「あのさ……さっきのあれ、なんなの?」
「え?」
「オレは、卯月さんと約束したんだよ?オレ、卯月さんとの約束すっげぇ楽しみにしてたのに、他の女の子と行けってなんなの?」
薫は目をそらしたままで小さく呟く。
「……笠松くんだって、一緒にいるならかわいい子の方がいいでしょ?」
「卯月さんの言うかわいい子って、さっきの後輩たちみたいな子の事?」
怪訝そうに尋ねる志信に、薫はうなずいた。
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