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詰めすぎた距離、引き離される心
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強引に志信に手を引かれ、深夜まで営業しているアイスクリームスタンドでアイスを買ってもらった薫は、少し腑に落ちない様子で店先のベンチに座ってアイスを食べていた。
(何この展開……?おかしくないか……?)
「うまい?」
志信はタバコを吸いながら、アイスを食べる薫を嬉しそうに笑って見ている。
「美味しいけど……。なんでアイス?」
「食べたいかなぁと思っただけ」
「何それ……」
(何なの?その目は……)
カップの中のバニラアイスをスプーンで口に運びながら、薫は少し眉を寄せた。
(しかも食べてるの私だけだし……)
「笠松くんは食べないの?」
「ん?卯月さんが食べさせてくれるなら食べたいけど」
「バカ……そんな事しないよ」
照れくさそうに呟く薫を、志信は愛しげに見つめている。
(だから……なんで?)
やけに急速に距離を縮められた気がして、薫は志信の言動に戸惑っていた。
(一体なんなの?私と笠松くんは仲のいい同期ってだけなのに……。こんなのまるで……)
いつの間にか志信のペースに乗せられている自分と、笑いながらどんどん自分の領域に入ってこようとする志信。
一緒にいるのはラクだし楽しいとは思う。
でも、それは『同じ会社の同期』として。
それだけだ。
(勘違いしちゃダメ……。変に期待させちゃダメ……。私はもう……)
「オレ……さっき勝ったよねぇ」
志信の言葉にハッとして、薫は顔を上げた。
「え?ああ、うん」
「卯月さんにアイス食べさせて欲しい、って言うのもアリかなぁ……」
「えぇっ……」
「あ……でも、やっぱり……呼び方変えたいって言うのも捨てがたいし、手料理も食べさせて欲しいしなぁ……」
「何言ってるの……」
(もうやめてよ……)
「どうしようかなぁ……迷うなぁ……」
薫はアイスを食べる手を止めて、少し考えてから静かに息をついた。
「笠松くん……そういうの、私に求められても困るよ。前にも言ったでしょ?そういう事は……彼女にやってもらって」
薫の言葉を聞くと、それまで楽しそうに笑っていた志信は一瞬真顔になって、薫の顔をジッと見た。
『だったらオレの彼女になってよ』
思わずそう言いかけて、志信はその言葉がこぼれ落ちないように、奥歯をグッと噛みしめた。
そして薫からそっと目をそらすと、少し寂しげに笑った。
「ハハ……ちょっと飲みすぎたかな……。ごめん、つい調子に乗っちゃった」
「うん……」
二人の間に、ぎこちない空気と沈黙が流れた。
お互いに目をそらして合わせないようにした。
薫がアイスの最後の一口を食べ終わると、志信はタバコの煙を吐き出して、短くなったタバコを水の入った灰皿に投げ込んだ。
「帰ろうか」
「うん……」
さっきとは違って少し距離を取って歩く薫に、志信は静かに話し掛けた。
「やっぱり……明日はいいや」
「え?」
「休みの日までただの同期のオレと一緒にいるなんて、卯月さんにとっては迷惑だよね」
「……迷惑なんて言ってないよ」
「無理しなくていいよ。さっきのゲームの分のお願いは……明日の約束、取り消させて。それでいい?」
「……うん」
薫は小さくうなずいて、志信の背中を見た。
(なんか……笠松くんが今何を思ってるのかとか……もう何も考えたくない……)
それから黙ったまま歩き、薫のマンションの前までたどり着くと、志信はほんの一瞬薫の顔を見つめて、じゃあね、と背を向けた。
遠くなっていく志信の背中を見つめながら、薫はため息をついた。
(これで……いいんだよね……)
志信は足早に歩きながら、さっきの薫の言葉を思い出してため息をついた。
(さすがにヘコんだな……。フラれっぱなしだよ……。オレの事なんて、ただの同期くらいにしか思ってないんだもんな……)
やっと少し距離を縮められたと思ったら、『ここから先には入らないで』とでも言うかのように、ハッキリと線を引かれる。
(オレの事……そんなに迷惑……?)
どうにもならない想いが、志信の心をしめつけた。
どんなに優しくしても、どれだけ自分の存在をアピールしても、薫の心には触れる事ができない。
(最初っから『有り得ない』って言われてたもんな……。やっぱり無理なのか……。いくら押してもダメなら、少し距離を置いた方がいいのかな……。どうしてあんなに頑なに恋愛を拒むんだろう……)
どんどん大きくなる薫への想いを持て余して、志信はまた大きくため息をついた。
(何この展開……?おかしくないか……?)
「うまい?」
志信はタバコを吸いながら、アイスを食べる薫を嬉しそうに笑って見ている。
「美味しいけど……。なんでアイス?」
「食べたいかなぁと思っただけ」
「何それ……」
(何なの?その目は……)
カップの中のバニラアイスをスプーンで口に運びながら、薫は少し眉を寄せた。
(しかも食べてるの私だけだし……)
「笠松くんは食べないの?」
「ん?卯月さんが食べさせてくれるなら食べたいけど」
「バカ……そんな事しないよ」
照れくさそうに呟く薫を、志信は愛しげに見つめている。
(だから……なんで?)
やけに急速に距離を縮められた気がして、薫は志信の言動に戸惑っていた。
(一体なんなの?私と笠松くんは仲のいい同期ってだけなのに……。こんなのまるで……)
いつの間にか志信のペースに乗せられている自分と、笑いながらどんどん自分の領域に入ってこようとする志信。
一緒にいるのはラクだし楽しいとは思う。
でも、それは『同じ会社の同期』として。
それだけだ。
(勘違いしちゃダメ……。変に期待させちゃダメ……。私はもう……)
「オレ……さっき勝ったよねぇ」
志信の言葉にハッとして、薫は顔を上げた。
「え?ああ、うん」
「卯月さんにアイス食べさせて欲しい、って言うのもアリかなぁ……」
「えぇっ……」
「あ……でも、やっぱり……呼び方変えたいって言うのも捨てがたいし、手料理も食べさせて欲しいしなぁ……」
「何言ってるの……」
(もうやめてよ……)
「どうしようかなぁ……迷うなぁ……」
薫はアイスを食べる手を止めて、少し考えてから静かに息をついた。
「笠松くん……そういうの、私に求められても困るよ。前にも言ったでしょ?そういう事は……彼女にやってもらって」
薫の言葉を聞くと、それまで楽しそうに笑っていた志信は一瞬真顔になって、薫の顔をジッと見た。
『だったらオレの彼女になってよ』
思わずそう言いかけて、志信はその言葉がこぼれ落ちないように、奥歯をグッと噛みしめた。
そして薫からそっと目をそらすと、少し寂しげに笑った。
「ハハ……ちょっと飲みすぎたかな……。ごめん、つい調子に乗っちゃった」
「うん……」
二人の間に、ぎこちない空気と沈黙が流れた。
お互いに目をそらして合わせないようにした。
薫がアイスの最後の一口を食べ終わると、志信はタバコの煙を吐き出して、短くなったタバコを水の入った灰皿に投げ込んだ。
「帰ろうか」
「うん……」
さっきとは違って少し距離を取って歩く薫に、志信は静かに話し掛けた。
「やっぱり……明日はいいや」
「え?」
「休みの日までただの同期のオレと一緒にいるなんて、卯月さんにとっては迷惑だよね」
「……迷惑なんて言ってないよ」
「無理しなくていいよ。さっきのゲームの分のお願いは……明日の約束、取り消させて。それでいい?」
「……うん」
薫は小さくうなずいて、志信の背中を見た。
(なんか……笠松くんが今何を思ってるのかとか……もう何も考えたくない……)
それから黙ったまま歩き、薫のマンションの前までたどり着くと、志信はほんの一瞬薫の顔を見つめて、じゃあね、と背を向けた。
遠くなっていく志信の背中を見つめながら、薫はため息をついた。
(これで……いいんだよね……)
志信は足早に歩きながら、さっきの薫の言葉を思い出してため息をついた。
(さすがにヘコんだな……。フラれっぱなしだよ……。オレの事なんて、ただの同期くらいにしか思ってないんだもんな……)
やっと少し距離を縮められたと思ったら、『ここから先には入らないで』とでも言うかのように、ハッキリと線を引かれる。
(オレの事……そんなに迷惑……?)
どうにもならない想いが、志信の心をしめつけた。
どんなに優しくしても、どれだけ自分の存在をアピールしても、薫の心には触れる事ができない。
(最初っから『有り得ない』って言われてたもんな……。やっぱり無理なのか……。いくら押してもダメなら、少し距離を置いた方がいいのかな……。どうしてあんなに頑なに恋愛を拒むんだろう……)
どんどん大きくなる薫への想いを持て余して、志信はまた大きくため息をついた。
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