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社員食堂で昼食を
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販売事業部に配属になった時は、薫と同じ本社勤務になった事を密かに喜んでいたりもしたのだが、薫が本社勤務でありながら日中のほとんどを各SSを回って過ごす事から、志信がSSにいた頃より顔を合わせる機会は減ってしまった。
極たまに研修や会議で顔を合わせる事はあっても、なかなか声をかける事はできなかった。
そんな中で先週の金曜日。
SS部と合同の飲み会があると知ってはいたが、薫がそんな席には滅多に顔を出さないと聞いていたのであまり期待はしていなかったものの、ほんのわずかな望みを掛けて、定時を過ぎて出先から戻った志信は、他の社員より遅れて飲み会に参加した。
そこで、一人壁際の席でつまらなさそうに酒を煽っている薫を見つけた時は、期待していなかった分だけ余計に嬉しかった。
このチャンスを逃すまいと、さりげなく薫の向かいの席に座り、思いきっていつもより積極的な態度で声を掛け、酒の勢いもあってかつい調子に乗って『付き合ってみる?』などと口を滑らせた。
まったく脈ナシの『社内恋愛は有り得ない』と言う薫の言葉に少々ヘコみはしたものの、いきなり付き合おうと言うのも無理な話かと思い直し、『同期の仲間として仲良くしよう』と連絡先の交換をした。
それからはひたすら自分の存在をアピールしようと必死だった。
どんなふうに接したら、薫との距離を縮める事が出来るだろうか?
薫が『有り得ない』と言っていた恋愛の対象に、いつかはなりたい。
時間を掛ければ、少しずつでも自分の方を見てくれるだろうか?
会議室を出て廊下を歩いている薫の後ろ姿を見つけた志信は、少し歩く速度を速め、その背中を追いかけて声を掛けた。
「お疲れ様」
「あ……お疲れ様」
「ホントに疲れてる感じ?」
「うん……。目一杯疲れてる」
疲れた表情で凝り固まった肩を動かしている薫を見て、志信は尋ねる。
「ずっと社内に籠りっきりじゃ滅入っちゃうかな。昼飯、外に出る?」
「いや、社食でいいよ。久し振りだし」
「ホントに?じゃあ……一度部署に戻るから、また後で、食堂の前で」
「わかった」
薫と別れた後、志信が上機嫌で販売事業部の前に戻ると、梨花が笑って手を振っていた。
「笠松さーん」
「あ……長野さん」
「どうですか?金曜日、あれからうまくいきましたか?」
興味津々の様子で尋ねる梨花に、志信は笑って頭を下げた。
「おかげさまで、今日の昼飯を一緒に食べる事になりました」
「良かったですねぇ!」
梨花は手を叩いて喜んでいる。
「お礼に約束通り、今日のお昼をご馳走させていただきます」
志信は財布から千円札を取り出し、梨花に手渡した。
「お釣はいいよ。後で休憩の時に飲み物でも買って」
「ありがとうございます!太っ腹ですねぇ」
「またいい情報があったらよろしくね」
「もちろんです!」
梨花が嬉しそうに笑って去っていくと、志信は資料を机の上に置き、慌てて食堂に向かった。
志信が社員食堂の前に着いた時には、既に薫はそこにいて志信を待っていた。
「お待たせ」
「遅いよ。お腹空いた」
「ごめんごめん」
(なんか、デートの待ち合わせしてるカップルみたいだなぁ……)
ほんの些細な事が嬉しくて、志信は笑って薫の顔を見た。
「何食べるんだっけ?」
「一番高いの、コーヒー付きで」
「姫の仰せのままに」
「だから……姫はないって……」
また照れくさそうにしている薫の顔を見て、志信は嬉しそうに笑う。
(この顔がなんとも言えずかわいい……)
極たまに研修や会議で顔を合わせる事はあっても、なかなか声をかける事はできなかった。
そんな中で先週の金曜日。
SS部と合同の飲み会があると知ってはいたが、薫がそんな席には滅多に顔を出さないと聞いていたのであまり期待はしていなかったものの、ほんのわずかな望みを掛けて、定時を過ぎて出先から戻った志信は、他の社員より遅れて飲み会に参加した。
そこで、一人壁際の席でつまらなさそうに酒を煽っている薫を見つけた時は、期待していなかった分だけ余計に嬉しかった。
このチャンスを逃すまいと、さりげなく薫の向かいの席に座り、思いきっていつもより積極的な態度で声を掛け、酒の勢いもあってかつい調子に乗って『付き合ってみる?』などと口を滑らせた。
まったく脈ナシの『社内恋愛は有り得ない』と言う薫の言葉に少々ヘコみはしたものの、いきなり付き合おうと言うのも無理な話かと思い直し、『同期の仲間として仲良くしよう』と連絡先の交換をした。
それからはひたすら自分の存在をアピールしようと必死だった。
どんなふうに接したら、薫との距離を縮める事が出来るだろうか?
薫が『有り得ない』と言っていた恋愛の対象に、いつかはなりたい。
時間を掛ければ、少しずつでも自分の方を見てくれるだろうか?
会議室を出て廊下を歩いている薫の後ろ姿を見つけた志信は、少し歩く速度を速め、その背中を追いかけて声を掛けた。
「お疲れ様」
「あ……お疲れ様」
「ホントに疲れてる感じ?」
「うん……。目一杯疲れてる」
疲れた表情で凝り固まった肩を動かしている薫を見て、志信は尋ねる。
「ずっと社内に籠りっきりじゃ滅入っちゃうかな。昼飯、外に出る?」
「いや、社食でいいよ。久し振りだし」
「ホントに?じゃあ……一度部署に戻るから、また後で、食堂の前で」
「わかった」
薫と別れた後、志信が上機嫌で販売事業部の前に戻ると、梨花が笑って手を振っていた。
「笠松さーん」
「あ……長野さん」
「どうですか?金曜日、あれからうまくいきましたか?」
興味津々の様子で尋ねる梨花に、志信は笑って頭を下げた。
「おかげさまで、今日の昼飯を一緒に食べる事になりました」
「良かったですねぇ!」
梨花は手を叩いて喜んでいる。
「お礼に約束通り、今日のお昼をご馳走させていただきます」
志信は財布から千円札を取り出し、梨花に手渡した。
「お釣はいいよ。後で休憩の時に飲み物でも買って」
「ありがとうございます!太っ腹ですねぇ」
「またいい情報があったらよろしくね」
「もちろんです!」
梨花が嬉しそうに笑って去っていくと、志信は資料を机の上に置き、慌てて食堂に向かった。
志信が社員食堂の前に着いた時には、既に薫はそこにいて志信を待っていた。
「お待たせ」
「遅いよ。お腹空いた」
「ごめんごめん」
(なんか、デートの待ち合わせしてるカップルみたいだなぁ……)
ほんの些細な事が嬉しくて、志信は笑って薫の顔を見た。
「何食べるんだっけ?」
「一番高いの、コーヒー付きで」
「姫の仰せのままに」
「だから……姫はないって……」
また照れくさそうにしている薫の顔を見て、志信は嬉しそうに笑う。
(この顔がなんとも言えずかわいい……)
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