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愛するということ
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「心配しなくても、俺はしーちゃんから離れたりしないよ」
「いっくん……」
「俺としーちゃんは、ずっと一緒に生きていくんだから」
「昔の彼女とか……すごく好きだった人とまた出会っても?」
紫恵がためらいがちに尋ねると、逸樹は紫恵の頬を両手で包み込んで笑った。
「しーちゃんより好きになった人もいないし、これからもしーちゃん以上の人なんか絶対に現れない。俺にはしーちゃんしかいないよ」
付き合いだしてから何年経っても、逸樹の紫恵への愛はブレることがない。
逸樹はいつでも、ほんの些細なことで不安になる紫恵を優しく抱きしめて、どれくらい紫恵を愛しているかを伝えて安心させてくれる。
「もしいっくんが、他の人を好きになったから別れて欲しいって言っても、私はきっと真理子さんみたいに送り出してあげられない……。思いきり泣きわめいて、行かないでって、みっともなくすがっちゃうと思う」
「そんなの俺だって同じだよ。しーちゃんを手放したくないもん。もしかしたら、逃げられないように縛り付けちゃうかも……」
冗談とも本気ともつかない逸樹の言葉に、紫恵は思わず吹き出した。
「それじゃ絶対逃げられないね」
「当たり前だ、絶対逃がさん!っていうかそれ以前に、俺以外の男なんか好きになるな。しーちゃんは一生俺だけのしーちゃんでいろよ」
逸樹は紫恵が思っていたより、嫉妬心も独占欲も強いらしい。
逸樹が紫恵を信用していないからそう言うわけではないとわかっている。
だから紫恵は、それだけ逸樹に愛されているのだと嬉しくなる。
「うん、そうだよ。いっくんも他の人なんか好きにならないでね」
「そんなやんわりした言い方でいいの?俺はもっとしーちゃんに束縛されたいんだけど」
予想外の逸樹の言葉に、紫恵は首をかしげた。
「いっくんって変わってるね……。男の人は束縛って一番嫌いなんじゃないの?」
「俺はしーちゃんの愛でがんじがらめにされたい。身動き取れないくらいに」
逸樹の愛は、紫恵が思っていたより相当激しいようだ。
紫恵を束縛するだけでなく、紫恵に束縛されたいと言う逸樹を、この上なく愛しいと紫恵は思う。
「がんじがらめに……?じゃあ……絶対に逃げられないように、いっくんの全部を私で包み込んじゃおうかな」
紫恵は華奢な両手で、逸樹の大きな体をギュッと抱きしめた。
「それすごい幸せだ。ずっとしーちゃんの中にいられる」
「いっくんは、一生私だけのいっくん。誰にも渡さないからね」
珍しく独占欲をあらわにした紫恵を、逸樹は嬉しそうに抱きしめた。
「俺がしーちゃんだけのものだって、確かめてよ」
「ん……?じゃあ…確かめちゃおうかな……」
紫恵は少し照れくさそうにそう言って、逸樹の唇に柔らかい唇を重ねた。
いつもは受け身になっている紫恵がその手で逸樹の体に触れ、素肌に舌と唇を這わせた。
あまり上手とは言えない、ぎこちない紫恵の愛撫に、逸樹は少しくすぐったそうに身を任せている。
慣れない手つきがもどかしくて、逸樹が紫恵の背中に手を伸ばしかけた時、紫恵が少し顔を上げて熱を帯びた目で逸樹を見つめた。
「いっくんは……確かめてくれないの?」
逸樹を求める紫恵の表情がいつになく艶かしく色っぽい。
逸樹は身体中の血が熱くなるのを感じた。
「もう我慢できない。俺にも確かめさせて」
「うん……確かめて」
お互いの愛を何度確かめあってもきっと足りない。
愛してるともっと伝えたくて、もっともっと愛して欲しくて。
言葉で、態度で、体温で、体で。
二人は自分の持てるすべてを使って、貪欲に愛を求め確かめ合う。
他の者にとってどうなのかはわからないけれど、それが二人にとっては自然な愛し方。
愛し合う二人だけの幸せのかたちであることには違いない。
自分の弱さもずるさも何もかも、すべてを委ねられる相手がいて、自分もまた相手のすべてを受け入れる。
この先もずっとお互いにとって唯一無二の存在でありたい。
逸樹と紫恵はそんな想いを込めるように大切に抱きしめ合って、甘い余韻と温もりの中で心地よい眠りについた。
「いっくん……」
「俺としーちゃんは、ずっと一緒に生きていくんだから」
「昔の彼女とか……すごく好きだった人とまた出会っても?」
紫恵がためらいがちに尋ねると、逸樹は紫恵の頬を両手で包み込んで笑った。
「しーちゃんより好きになった人もいないし、これからもしーちゃん以上の人なんか絶対に現れない。俺にはしーちゃんしかいないよ」
付き合いだしてから何年経っても、逸樹の紫恵への愛はブレることがない。
逸樹はいつでも、ほんの些細なことで不安になる紫恵を優しく抱きしめて、どれくらい紫恵を愛しているかを伝えて安心させてくれる。
「もしいっくんが、他の人を好きになったから別れて欲しいって言っても、私はきっと真理子さんみたいに送り出してあげられない……。思いきり泣きわめいて、行かないでって、みっともなくすがっちゃうと思う」
「そんなの俺だって同じだよ。しーちゃんを手放したくないもん。もしかしたら、逃げられないように縛り付けちゃうかも……」
冗談とも本気ともつかない逸樹の言葉に、紫恵は思わず吹き出した。
「それじゃ絶対逃げられないね」
「当たり前だ、絶対逃がさん!っていうかそれ以前に、俺以外の男なんか好きになるな。しーちゃんは一生俺だけのしーちゃんでいろよ」
逸樹は紫恵が思っていたより、嫉妬心も独占欲も強いらしい。
逸樹が紫恵を信用していないからそう言うわけではないとわかっている。
だから紫恵は、それだけ逸樹に愛されているのだと嬉しくなる。
「うん、そうだよ。いっくんも他の人なんか好きにならないでね」
「そんなやんわりした言い方でいいの?俺はもっとしーちゃんに束縛されたいんだけど」
予想外の逸樹の言葉に、紫恵は首をかしげた。
「いっくんって変わってるね……。男の人は束縛って一番嫌いなんじゃないの?」
「俺はしーちゃんの愛でがんじがらめにされたい。身動き取れないくらいに」
逸樹の愛は、紫恵が思っていたより相当激しいようだ。
紫恵を束縛するだけでなく、紫恵に束縛されたいと言う逸樹を、この上なく愛しいと紫恵は思う。
「がんじがらめに……?じゃあ……絶対に逃げられないように、いっくんの全部を私で包み込んじゃおうかな」
紫恵は華奢な両手で、逸樹の大きな体をギュッと抱きしめた。
「それすごい幸せだ。ずっとしーちゃんの中にいられる」
「いっくんは、一生私だけのいっくん。誰にも渡さないからね」
珍しく独占欲をあらわにした紫恵を、逸樹は嬉しそうに抱きしめた。
「俺がしーちゃんだけのものだって、確かめてよ」
「ん……?じゃあ…確かめちゃおうかな……」
紫恵は少し照れくさそうにそう言って、逸樹の唇に柔らかい唇を重ねた。
いつもは受け身になっている紫恵がその手で逸樹の体に触れ、素肌に舌と唇を這わせた。
あまり上手とは言えない、ぎこちない紫恵の愛撫に、逸樹は少しくすぐったそうに身を任せている。
慣れない手つきがもどかしくて、逸樹が紫恵の背中に手を伸ばしかけた時、紫恵が少し顔を上げて熱を帯びた目で逸樹を見つめた。
「いっくんは……確かめてくれないの?」
逸樹を求める紫恵の表情がいつになく艶かしく色っぽい。
逸樹は身体中の血が熱くなるのを感じた。
「もう我慢できない。俺にも確かめさせて」
「うん……確かめて」
お互いの愛を何度確かめあってもきっと足りない。
愛してるともっと伝えたくて、もっともっと愛して欲しくて。
言葉で、態度で、体温で、体で。
二人は自分の持てるすべてを使って、貪欲に愛を求め確かめ合う。
他の者にとってどうなのかはわからないけれど、それが二人にとっては自然な愛し方。
愛し合う二人だけの幸せのかたちであることには違いない。
自分の弱さもずるさも何もかも、すべてを委ねられる相手がいて、自分もまた相手のすべてを受け入れる。
この先もずっとお互いにとって唯一無二の存在でありたい。
逸樹と紫恵はそんな想いを込めるように大切に抱きしめ合って、甘い余韻と温もりの中で心地よい眠りについた。
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