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愛するということ
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大輔にプロポーズされてからの数日間、息をつく間もないほど目まぐるしかった。
プロポーズの二日後、大輔と香織は両家の両親の顔合わせのための食事会を開いた。
『香織さんと結婚させてください』と大輔が言うと、香織の両親は大輔との結婚には反対しなかったが、娘が見知らぬ土地でうまくやっていけるのかと懸念した。
その時大輔は、香織にも仕事があるし、知人も身内もいない場所へいきなり連れて行くのはかわいそうだから、こちらに戻って両親の経営している学習塾を講師として手伝うつもりだと言った。
大輔はいずれ役に立つかもと教員免許を取ったけれど、その時は教師よりサラリーマンになることを選んだそうだ。
二人で話し合った結果、結婚式と新婚旅行、新居探しは、大輔がこちらに戻るのが正式に決まってからにして、それまでは別居婚という形を取ることにしたと話した。
結婚していきなり別居はいかがなものかという意見も出たが、とにかく香織と一日も早く結婚したいという大輔の熱意で、無事に両家の両親から結婚の了承を得る事ができた。
食事会の翌日には、役所で必要な書類を取り寄せ、ジュエリーショップに結婚指輪を買いに行った。
そのまた翌日、香織は有給を取って大輔と二人で役所に足を運び、婚姻届けを提出した。
その後、近所の小さな教会に立ち寄った。
あまり日本語の上手ではない温厚そうな外国人神父の見守るなか、香織と大輔は二人だけの仮の結婚式を挙げた。
祭壇の前でお互いの指に真新しいおそろいの結婚指輪をはめて、幸せになろうと誓いのキスをした。
その夜はホテルのディナーでお祝いをして、予約していた部屋に泊まった。
久しぶりに重ね合った体でお互いの感触と肌の温もりを感じ、身も心も安心感と幸福感でいっぱいに満たされて、抱きしめ合ったまま眠りについた。
大輔の有休の間は、香織の仕事が終わるとどちらかの家で家族と一緒に食事をしたり、父親の車を借りて迎えに来た大輔の運転でドライブに出掛けたりもした。
そして有休の最終日、大輔は次に帰ってくる約束を残して、新幹線に乗って名残惜しそうに帰っていった。
香織は名字が近田から市橋に変わっただけで、他にはこれといって何も変わらないからか、大輔と結婚した実感はまだあまり湧かない。
だけど離れていても大輔と同じ結婚指輪をしているだけで、夫婦という確かな絆がそこにあるような気がする。
大輔を見送るために有休を取った翌日の昼休み、香織は円といつものカフェに来ていた。
円はランチのサラダをフォークでつつきながらため息をつく。
「しかしホントに驚いたわ……。なんの前触れもなくいきなり結婚しちゃうんだもんなぁ……」
「もう……またそれ?」
香織は入籍した翌日から何度も聞かされた円の言葉に苦笑いを浮かべた。
「だって結婚するなんて一言も言わなかったでしょ?」
「まぁ……急に決まったからね……」
円は運ばれてきたランチのチキンソテーを切り分けながら、相変わらずブツブツ言っている。
「新婚なのに別居って寂しいわね」
「うーん、そうでもない。夜には電話もくれるし、お互い離れてても前よりはずっと安心感があるよ」
「ふーん。せっかく結婚しても、いつも一緒にいられないなんて、私はやだ」
恋愛体質の円らしい言葉だ。
きっと好きな人との激甘新婚生活を夢見ているのだろう。
「ずっとこのままってわけじゃないよ。大輔は仕事が落ち着いたら、会社辞めてこっちに戻って来るし。一緒に暮らすのはその後かな」
あまりにもあっさりしている香織に、円は怪訝な顔をした。
プロポーズの二日後、大輔と香織は両家の両親の顔合わせのための食事会を開いた。
『香織さんと結婚させてください』と大輔が言うと、香織の両親は大輔との結婚には反対しなかったが、娘が見知らぬ土地でうまくやっていけるのかと懸念した。
その時大輔は、香織にも仕事があるし、知人も身内もいない場所へいきなり連れて行くのはかわいそうだから、こちらに戻って両親の経営している学習塾を講師として手伝うつもりだと言った。
大輔はいずれ役に立つかもと教員免許を取ったけれど、その時は教師よりサラリーマンになることを選んだそうだ。
二人で話し合った結果、結婚式と新婚旅行、新居探しは、大輔がこちらに戻るのが正式に決まってからにして、それまでは別居婚という形を取ることにしたと話した。
結婚していきなり別居はいかがなものかという意見も出たが、とにかく香織と一日も早く結婚したいという大輔の熱意で、無事に両家の両親から結婚の了承を得る事ができた。
食事会の翌日には、役所で必要な書類を取り寄せ、ジュエリーショップに結婚指輪を買いに行った。
そのまた翌日、香織は有給を取って大輔と二人で役所に足を運び、婚姻届けを提出した。
その後、近所の小さな教会に立ち寄った。
あまり日本語の上手ではない温厚そうな外国人神父の見守るなか、香織と大輔は二人だけの仮の結婚式を挙げた。
祭壇の前でお互いの指に真新しいおそろいの結婚指輪をはめて、幸せになろうと誓いのキスをした。
その夜はホテルのディナーでお祝いをして、予約していた部屋に泊まった。
久しぶりに重ね合った体でお互いの感触と肌の温もりを感じ、身も心も安心感と幸福感でいっぱいに満たされて、抱きしめ合ったまま眠りについた。
大輔の有休の間は、香織の仕事が終わるとどちらかの家で家族と一緒に食事をしたり、父親の車を借りて迎えに来た大輔の運転でドライブに出掛けたりもした。
そして有休の最終日、大輔は次に帰ってくる約束を残して、新幹線に乗って名残惜しそうに帰っていった。
香織は名字が近田から市橋に変わっただけで、他にはこれといって何も変わらないからか、大輔と結婚した実感はまだあまり湧かない。
だけど離れていても大輔と同じ結婚指輪をしているだけで、夫婦という確かな絆がそこにあるような気がする。
大輔を見送るために有休を取った翌日の昼休み、香織は円といつものカフェに来ていた。
円はランチのサラダをフォークでつつきながらため息をつく。
「しかしホントに驚いたわ……。なんの前触れもなくいきなり結婚しちゃうんだもんなぁ……」
「もう……またそれ?」
香織は入籍した翌日から何度も聞かされた円の言葉に苦笑いを浮かべた。
「だって結婚するなんて一言も言わなかったでしょ?」
「まぁ……急に決まったからね……」
円は運ばれてきたランチのチキンソテーを切り分けながら、相変わらずブツブツ言っている。
「新婚なのに別居って寂しいわね」
「うーん、そうでもない。夜には電話もくれるし、お互い離れてても前よりはずっと安心感があるよ」
「ふーん。せっかく結婚しても、いつも一緒にいられないなんて、私はやだ」
恋愛体質の円らしい言葉だ。
きっと好きな人との激甘新婚生活を夢見ているのだろう。
「ずっとこのままってわけじゃないよ。大輔は仕事が落ち着いたら、会社辞めてこっちに戻って来るし。一緒に暮らすのはその後かな」
あまりにもあっさりしている香織に、円は怪訝な顔をした。
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