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花盗人と花を守る人
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ベッドに入ると、逸樹は昔何かの本で読んだ話を思い出し、紫恵を腕枕しながらその話をした。
「人んちの庭に咲いた花でも、美しければ欲しくなるのは人のサガというか、罪を犯してでも欲しくなるほど美しかったんだから、それは仕方ないって」
「なあに、それ?」
突然なんの話だろうと、紫恵は逸樹の目を見て尋ねた。
「盗まれた方はそれだけの美しい花を咲かせたってことが自慢になるから、花盗人は罪にならないって、昔の人は言ったらしいよ」
「そうなの?」
人の物を盗んでも罪にならないとはおかしな話だ。
紫恵はなんとなく腑に落ちない。
逸樹は、眉を寄せている紫恵の頭を優しく撫でる。
「でもやっぱり……どんなにその花が美しくても、人の物を盗むのは罪になるって、俺は思う」
「うん、そうだね」
逸樹が同じように考えているとわかった紫恵は、どことなく嬉しそうだ。
「夫婦って、一緒にいると考え方も似てくるのかな?」
「そうかも。誰が見てもかわいいのはわかるけど、俺はしーちゃんを誰にも盗られたくない」
新婚でもないのに、恥ずかしげもなく妻を『かわいい』と言うなんて、自分は逸樹に溺愛されている。
そう思うと照れくさいような気もするけれど、やっぱり嬉しいと紫恵は思う。
「私もいっくんを誰にも盗られたくないよ」
「大丈夫。俺は誰かに盗まれそうになったら、棘で刺して身を守るから」
「じゃあ私もそうする」
紫恵が笑ってそう言うと、逸樹は自信ありげに笑みを浮かべた。
「しーちゃんを愛でていいのは俺だけ。俺は何がなんでも、盗人からしーちゃんを守るよ」
「私はこれからもずっと、枯れないように愛情込めて大切にいっくんを守るね」
逸樹は紫恵の髪を撫でながら、華奢な体を包み込むように抱きしめて、優しく唇を重ねた。
「じゃあ……俺だけのかわいいしーちゃん、思いっきり愛でていい?」
「……うん」
逸樹に熱い眼差しで見つめられ求められると、紫恵の肌は上気してほのかに赤く染まり、その先の甘い期待に体の奥が疼く。
二人の唇が吸い寄せられるように重なった。
優しい口付けが次第に熱を帯びて、深くて熱いキスに変わる。
逸樹が唇を離すと、紫恵は逸樹の胸元に唇を押し当てて、強く吸った。
逸樹の胸元には、紫恵が刻んだ赤いシルシが浮かび上がる。
それは『逸樹を他の人には渡さない』とアピールしているようにも見えた。
普段ベッドではあまり自己主張をしない紫恵が初めてそんなことをしたので、逸樹は少し驚いている。
紫恵がその赤いシルシを、柔らかな指先でそっとなぞった。
「私の……私だけのいっくん」
「ん?」
「これからも、私にだけ、してね」
逸樹は紫恵に身も心も独占されていることが無性に嬉しくて、思いっきり甘いキスをした。
「当たり前だろ?一生しーちゃんとしかしないよ」
「私もいっくんとしかしない」
「じゃ、思いっきりしよ」
抱きしめ合って舌を絡めたキスをして、お互いの熱い素肌に手のひらや指先、唇で触れ合い、舌を這わせた。
逸樹が紫恵の柔らかいところを長い指で探ってたっぷりと潤わせ、キスをしながら体の奥の深い部分を満たした。
逸樹は息を荒くして、甘い声をあげて乱れる紫恵を揺さぶり、目一杯の愛を注ぐ。
何度も重ね合ううちに、お互いの体が相手の体に一番馴染む体になっている。
お互いの心を求め合う気持ちが、体だけの快楽を求めるそれとは比べ物にならないほどの快感と幸福感を与えた。
甘い余韻の中で、二人は何度も愛してると囁きながらキスをして、大切そうに抱きしめ合って眠りについた。
「人んちの庭に咲いた花でも、美しければ欲しくなるのは人のサガというか、罪を犯してでも欲しくなるほど美しかったんだから、それは仕方ないって」
「なあに、それ?」
突然なんの話だろうと、紫恵は逸樹の目を見て尋ねた。
「盗まれた方はそれだけの美しい花を咲かせたってことが自慢になるから、花盗人は罪にならないって、昔の人は言ったらしいよ」
「そうなの?」
人の物を盗んでも罪にならないとはおかしな話だ。
紫恵はなんとなく腑に落ちない。
逸樹は、眉を寄せている紫恵の頭を優しく撫でる。
「でもやっぱり……どんなにその花が美しくても、人の物を盗むのは罪になるって、俺は思う」
「うん、そうだね」
逸樹が同じように考えているとわかった紫恵は、どことなく嬉しそうだ。
「夫婦って、一緒にいると考え方も似てくるのかな?」
「そうかも。誰が見てもかわいいのはわかるけど、俺はしーちゃんを誰にも盗られたくない」
新婚でもないのに、恥ずかしげもなく妻を『かわいい』と言うなんて、自分は逸樹に溺愛されている。
そう思うと照れくさいような気もするけれど、やっぱり嬉しいと紫恵は思う。
「私もいっくんを誰にも盗られたくないよ」
「大丈夫。俺は誰かに盗まれそうになったら、棘で刺して身を守るから」
「じゃあ私もそうする」
紫恵が笑ってそう言うと、逸樹は自信ありげに笑みを浮かべた。
「しーちゃんを愛でていいのは俺だけ。俺は何がなんでも、盗人からしーちゃんを守るよ」
「私はこれからもずっと、枯れないように愛情込めて大切にいっくんを守るね」
逸樹は紫恵の髪を撫でながら、華奢な体を包み込むように抱きしめて、優しく唇を重ねた。
「じゃあ……俺だけのかわいいしーちゃん、思いっきり愛でていい?」
「……うん」
逸樹に熱い眼差しで見つめられ求められると、紫恵の肌は上気してほのかに赤く染まり、その先の甘い期待に体の奥が疼く。
二人の唇が吸い寄せられるように重なった。
優しい口付けが次第に熱を帯びて、深くて熱いキスに変わる。
逸樹が唇を離すと、紫恵は逸樹の胸元に唇を押し当てて、強く吸った。
逸樹の胸元には、紫恵が刻んだ赤いシルシが浮かび上がる。
それは『逸樹を他の人には渡さない』とアピールしているようにも見えた。
普段ベッドではあまり自己主張をしない紫恵が初めてそんなことをしたので、逸樹は少し驚いている。
紫恵がその赤いシルシを、柔らかな指先でそっとなぞった。
「私の……私だけのいっくん」
「ん?」
「これからも、私にだけ、してね」
逸樹は紫恵に身も心も独占されていることが無性に嬉しくて、思いっきり甘いキスをした。
「当たり前だろ?一生しーちゃんとしかしないよ」
「私もいっくんとしかしない」
「じゃ、思いっきりしよ」
抱きしめ合って舌を絡めたキスをして、お互いの熱い素肌に手のひらや指先、唇で触れ合い、舌を這わせた。
逸樹が紫恵の柔らかいところを長い指で探ってたっぷりと潤わせ、キスをしながら体の奥の深い部分を満たした。
逸樹は息を荒くして、甘い声をあげて乱れる紫恵を揺さぶり、目一杯の愛を注ぐ。
何度も重ね合ううちに、お互いの体が相手の体に一番馴染む体になっている。
お互いの心を求め合う気持ちが、体だけの快楽を求めるそれとは比べ物にならないほどの快感と幸福感を与えた。
甘い余韻の中で、二人は何度も愛してると囁きながらキスをして、大切そうに抱きしめ合って眠りについた。
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