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揺るぎない愛情
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逸樹と希望が公園から帰ってきて昼食を済ませた後、紫恵がキッチンで後片付けをしていると希望がリュックサックからお気に入りの猫のぬいぐるみを引っ張り出した。
そしておもちゃ箱をひっくり返し、おままごとセットをカチャカチャと並べ始めた。
雨が降りだして外では遊べないから、お人形とままごとでもするつもりなのだろう。
希望のごっこ遊びはいつも、大人が思い付かないような子供らしい設定だったり、そうかと思えば時々ドキッとさせられるような子供らしくない台詞が出てきたりする。
子供と言うのは大人が思っているより大人をよく見ているようだ。
「ミミちゃん、りぃちゃん、お腹すいたでしょう。ごはんにしましょうね。にゃーん、お腹すいたにゃん。今日の晩御飯はりぃちゃんの大好きなカレーよ。やったー、ののちゃんのカレー美味しいからだーい好きだワン」
希望は一人で何役もこなしているらしい。
ミミちゃんはいつも希望が可愛がっている猫のぬいぐるみだと知っているが、りぃちゃんは紫恵が初めて聞く名前だった。
しかしどこかで聞いたようなやり取りだ。
「ミミちゃん、ニンジンも食べましょうね。えーん、ニンジン嫌いだにゃん。嫌いなんて言うとニンジンさんが悲しいって泣いちゃうよ」
なるほど、これは紫恵と希望のいつものやり取りだ。
ままごと遊びの中では、好き嫌いするミミちゃんを希望がたしなめている。
「ミミちゃん、ニンジンさんが食べてーって言ってるワン」
これは逸樹のいつもの台詞だ。
どうやら希望が紫恵役でミミちゃんが希望役、そしてりぃちゃんという犬が逸樹役らしい。
「僕はののちゃん大好きだから、ののちゃんの作ったごはんは残さず食べるワン。わぁ、嬉しいな。のの、りぃちゃんだーい好き」
配役がわかってしまったので、端から聞いていると少し恥ずかしい。
逸樹は笑いをこらえながら希望のままごとを見ている。
「ミミちゃん、ニンジンちゃんと食べてえらいねー。ワンワン、ののちゃんおかわりだワン!りぃちゃん食べるの速すぎるよ、もっとよく噛んで食べなきゃ」
今度はりぃちゃんが希望にたしなめられているようだ。
それを見た逸樹がたまらず吹き出した。
「ははっ、りぃちゃん、ののちゃんに叱られちゃったよ」
洗い物を終えてタオルで手を拭いた紫恵は、リビングで希望のままごと遊びを逸樹と一緒に見物することにした。
「はいりぃちゃん、いーっぱい食べてね。ワンワン!やっぱりののちゃんのカレーは世界一美味しいワン」
紫恵は希望が手にしている小さな茶色い犬に目を留めた。
「あれ……?」
希望はさっきまでそれを持っていなかったはずなのに、一体どうしたんだろう?
紫恵は見覚えのある小さな茶色い犬を見て顔をしかめた。
「ねぇ、ののちゃん。そのワンちゃん、新しいお友達?」
紫恵が尋ねると、希望はままごとの手を止めて顔をあげた。
「うん、りぃちゃんだよ」
「それどうしたの?」
「公園でかおちゃんにもらったの」
なるほど、見覚えがあると思ったら、昨日香織が手芸教室で作っていた羊毛フェルトの犬のマスコットだ。
「公園で香織さんに会ったの?」
「かおちゃんといっくんと一緒にりぃちゃんのお散歩したんだよ」
紫恵は少し首をかしげながらゆっくりと逸樹の方を向いた。
「香織さんといっくんとりぃちゃんのお散歩って……?」
「先週公園で偶然会って、りぃちゃんって名前の犬の散歩を一緒にしたんだ。ののちゃんがもっとりぃちゃんと遊びたいって言うから今日も来てくれて、さっきも一緒に散歩したよ」
逸樹がそう言うと、先週は何も言わなかったのにと紫恵は眉間にシワを寄せた。
そしておもちゃ箱をひっくり返し、おままごとセットをカチャカチャと並べ始めた。
雨が降りだして外では遊べないから、お人形とままごとでもするつもりなのだろう。
希望のごっこ遊びはいつも、大人が思い付かないような子供らしい設定だったり、そうかと思えば時々ドキッとさせられるような子供らしくない台詞が出てきたりする。
子供と言うのは大人が思っているより大人をよく見ているようだ。
「ミミちゃん、りぃちゃん、お腹すいたでしょう。ごはんにしましょうね。にゃーん、お腹すいたにゃん。今日の晩御飯はりぃちゃんの大好きなカレーよ。やったー、ののちゃんのカレー美味しいからだーい好きだワン」
希望は一人で何役もこなしているらしい。
ミミちゃんはいつも希望が可愛がっている猫のぬいぐるみだと知っているが、りぃちゃんは紫恵が初めて聞く名前だった。
しかしどこかで聞いたようなやり取りだ。
「ミミちゃん、ニンジンも食べましょうね。えーん、ニンジン嫌いだにゃん。嫌いなんて言うとニンジンさんが悲しいって泣いちゃうよ」
なるほど、これは紫恵と希望のいつものやり取りだ。
ままごと遊びの中では、好き嫌いするミミちゃんを希望がたしなめている。
「ミミちゃん、ニンジンさんが食べてーって言ってるワン」
これは逸樹のいつもの台詞だ。
どうやら希望が紫恵役でミミちゃんが希望役、そしてりぃちゃんという犬が逸樹役らしい。
「僕はののちゃん大好きだから、ののちゃんの作ったごはんは残さず食べるワン。わぁ、嬉しいな。のの、りぃちゃんだーい好き」
配役がわかってしまったので、端から聞いていると少し恥ずかしい。
逸樹は笑いをこらえながら希望のままごとを見ている。
「ミミちゃん、ニンジンちゃんと食べてえらいねー。ワンワン、ののちゃんおかわりだワン!りぃちゃん食べるの速すぎるよ、もっとよく噛んで食べなきゃ」
今度はりぃちゃんが希望にたしなめられているようだ。
それを見た逸樹がたまらず吹き出した。
「ははっ、りぃちゃん、ののちゃんに叱られちゃったよ」
洗い物を終えてタオルで手を拭いた紫恵は、リビングで希望のままごと遊びを逸樹と一緒に見物することにした。
「はいりぃちゃん、いーっぱい食べてね。ワンワン!やっぱりののちゃんのカレーは世界一美味しいワン」
紫恵は希望が手にしている小さな茶色い犬に目を留めた。
「あれ……?」
希望はさっきまでそれを持っていなかったはずなのに、一体どうしたんだろう?
紫恵は見覚えのある小さな茶色い犬を見て顔をしかめた。
「ねぇ、ののちゃん。そのワンちゃん、新しいお友達?」
紫恵が尋ねると、希望はままごとの手を止めて顔をあげた。
「うん、りぃちゃんだよ」
「それどうしたの?」
「公園でかおちゃんにもらったの」
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「公園で香織さんに会ったの?」
「かおちゃんといっくんと一緒にりぃちゃんのお散歩したんだよ」
紫恵は少し首をかしげながらゆっくりと逸樹の方を向いた。
「香織さんといっくんとりぃちゃんのお散歩って……?」
「先週公園で偶然会って、りぃちゃんって名前の犬の散歩を一緒にしたんだ。ののちゃんがもっとりぃちゃんと遊びたいって言うから今日も来てくれて、さっきも一緒に散歩したよ」
逸樹がそう言うと、先週は何も言わなかったのにと紫恵は眉間にシワを寄せた。
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