50 / 57
少しずつ積み重ねて
5
しおりを挟む
「愛美のご両親はどんな人?」
『政弘さん』が尋ねると、愛美は両親の事を話し始めた。
穏やかで物腰の柔らかい父親は高校の社会科教師。
特に日本史が好きで、小さい頃はよく歴史博物館やお城に連れて行ってくれたのだが、幼かった愛美には父親の言っている事はよくわからなかったそうだ。
明るくサバサバした性格の母親は、中学校の国語教師。
とにかく大雑把で、『終わり良ければすべて善し』の性格で、プロセスがどうであれ、なんでも帳尻が合えばいいといつも言うらしい。
ちなみに二人姉弟で、この春社会人になる弟がいる。
弟は小学生の頃からずっとバレーボールをしていて、この春入社する会社の実業団に入る事が決まっているという。
弟の話の後、『政弘さん』は、愛美もスポーツをしていた事があるかと尋ねた。
愛美も小学生の頃はバレーボールをしていたけれど、身長があまり伸びず、同じポジションの背の高いチームメイトにはポジション争いで勝てなかったので、あきらめて中学では陸上部に入部して、短距離走の選手としてそれなりの成績も残した。
高校では運動部には入らず家庭科部に入り、週に二度ほど家庭科室に集まって、料理や手芸をしていた。
「こんな話、面白いですか?」
高校時代の部活の話をした後、愛美は『政弘さん』に尋ねた。
「面白いって言うか……俺と出会う前の愛美の事を知るのは楽しいし、嬉しいよ」
「じゃあ、今日はこれくらいにしておきます。また今度、政弘さんの話も聞かせて下さいね」
愛美は少し眠そうな目をして、『政弘さん』の胸に頬をすり寄せた。
「今日はたくさん歩きましたね」
『政弘さん』は愛美を優しく抱きしめて髪を撫でる。
「そうだね。疲れた?……もう寝ようか」
愛美が『政弘さん』の腕の中で顔を上げた。
「……ベッドの中で、たくさんしてくれるんじゃなかったんですか?」
「ん?何を?」
「……キスの続き」
愛美は少し恥ずかしそうに呟いた。
愛美からこんな事を言うのは珍しい。
『政弘さん』は、ちょっと意地悪をしてみようかと、わざとらしく焦らしてみる。
「愛美が疲れてなければ」
「……じゃあ、寝ます」
愛美にあっさりとそう言われ、そんなはずじゃなかったのにと『政弘さん』はうろたえる。
「えっ、キスの続きは?」
「政弘さんが疲れてなければ」
同じ言葉をそっくりそのまま返されて、『政弘さん』は心の中で白旗をあげた。
(やっぱり愛美には敵わない……)
「全然疲れてません。キスの続き、したいです」
愛美は少し笑って、『政弘さん』の唇に軽くキスをした。
「いっぱい、するんですよね」
「……もちろん」
見つめ合って、微笑んで、優しく唇を重ねた。
愛美のいつになく甘いキスに、『政弘さん』は身体中が熱くなるのを感じた。
「愛美、今日は甘い、ね」
「甘いの、嫌いですか?」
いつもはちょっと辛口な愛美が、少し甘えた声で尋ねた。
愛美も甘えたい時はちゃんと甘えてくれるのだとわかり、『政弘さん』は嬉しくなる。
「ううん、めちゃくちゃ好き。愛美は?」
「政弘さんに限り、大好きです」
「じゃあ、もっと甘くしよ」
抱きしめて、優しく唇を重ねて、柔らかく舌を絡めた。
何度も何度も、飽きることなくキスをした。
頬を撫でる指先や、髪を撫でる大きな手。
時おり小さくもらす吐息混じりの甘い声。
お互いの肌の温もりや体の重みさえ愛しい。
「キスの続き……もっとする?」
愛美は耳元で囁く甘い声にうなずいて、その華奢な腕で『政弘さん』を抱きしめた。
「もちろん」
『政弘さん』が尋ねると、愛美は両親の事を話し始めた。
穏やかで物腰の柔らかい父親は高校の社会科教師。
特に日本史が好きで、小さい頃はよく歴史博物館やお城に連れて行ってくれたのだが、幼かった愛美には父親の言っている事はよくわからなかったそうだ。
明るくサバサバした性格の母親は、中学校の国語教師。
とにかく大雑把で、『終わり良ければすべて善し』の性格で、プロセスがどうであれ、なんでも帳尻が合えばいいといつも言うらしい。
ちなみに二人姉弟で、この春社会人になる弟がいる。
弟は小学生の頃からずっとバレーボールをしていて、この春入社する会社の実業団に入る事が決まっているという。
弟の話の後、『政弘さん』は、愛美もスポーツをしていた事があるかと尋ねた。
愛美も小学生の頃はバレーボールをしていたけれど、身長があまり伸びず、同じポジションの背の高いチームメイトにはポジション争いで勝てなかったので、あきらめて中学では陸上部に入部して、短距離走の選手としてそれなりの成績も残した。
高校では運動部には入らず家庭科部に入り、週に二度ほど家庭科室に集まって、料理や手芸をしていた。
「こんな話、面白いですか?」
高校時代の部活の話をした後、愛美は『政弘さん』に尋ねた。
「面白いって言うか……俺と出会う前の愛美の事を知るのは楽しいし、嬉しいよ」
「じゃあ、今日はこれくらいにしておきます。また今度、政弘さんの話も聞かせて下さいね」
愛美は少し眠そうな目をして、『政弘さん』の胸に頬をすり寄せた。
「今日はたくさん歩きましたね」
『政弘さん』は愛美を優しく抱きしめて髪を撫でる。
「そうだね。疲れた?……もう寝ようか」
愛美が『政弘さん』の腕の中で顔を上げた。
「……ベッドの中で、たくさんしてくれるんじゃなかったんですか?」
「ん?何を?」
「……キスの続き」
愛美は少し恥ずかしそうに呟いた。
愛美からこんな事を言うのは珍しい。
『政弘さん』は、ちょっと意地悪をしてみようかと、わざとらしく焦らしてみる。
「愛美が疲れてなければ」
「……じゃあ、寝ます」
愛美にあっさりとそう言われ、そんなはずじゃなかったのにと『政弘さん』はうろたえる。
「えっ、キスの続きは?」
「政弘さんが疲れてなければ」
同じ言葉をそっくりそのまま返されて、『政弘さん』は心の中で白旗をあげた。
(やっぱり愛美には敵わない……)
「全然疲れてません。キスの続き、したいです」
愛美は少し笑って、『政弘さん』の唇に軽くキスをした。
「いっぱい、するんですよね」
「……もちろん」
見つめ合って、微笑んで、優しく唇を重ねた。
愛美のいつになく甘いキスに、『政弘さん』は身体中が熱くなるのを感じた。
「愛美、今日は甘い、ね」
「甘いの、嫌いですか?」
いつもはちょっと辛口な愛美が、少し甘えた声で尋ねた。
愛美も甘えたい時はちゃんと甘えてくれるのだとわかり、『政弘さん』は嬉しくなる。
「ううん、めちゃくちゃ好き。愛美は?」
「政弘さんに限り、大好きです」
「じゃあ、もっと甘くしよ」
抱きしめて、優しく唇を重ねて、柔らかく舌を絡めた。
何度も何度も、飽きることなくキスをした。
頬を撫でる指先や、髪を撫でる大きな手。
時おり小さくもらす吐息混じりの甘い声。
お互いの肌の温もりや体の重みさえ愛しい。
「キスの続き……もっとする?」
愛美は耳元で囁く甘い声にうなずいて、その華奢な腕で『政弘さん』を抱きしめた。
「もちろん」
0
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
Promise Ring
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
浅井夕海、OL。
下請け会社の社長、多賀谷さんを社長室に案内する際、ふたりっきりのエレベーターで突然、うなじにキスされました。
若くして独立し、業績も上々。
しかも独身でイケメン、そんな多賀谷社長が地味で無表情な私なんか相手にするはずなくて。
なのに次きたとき、やっぱりふたりっきりのエレベーターで……。
元カノと復縁する方法
なとみ
恋愛
「別れよっか」
同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。
会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。
自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。
表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!
【完結】つぎの色をさがして
蒼村 咲
恋愛
【あらすじ】
主人公・黒田友里は上司兼恋人の谷元亮介から、浮気相手の妊娠を理由に突然別れを告げられる。そしてその浮気相手はなんと同じ職場の後輩社員だった。だが友里の受難はこれでは終わらなかった──…
身代わりお見合い婚~溺愛社長と子作りミッション~
及川 桜
恋愛
親友に頼まれて身代わりでお見合いしたら……
なんと相手は自社の社長!?
末端平社員だったので社長にバレなかったけれど、
なぜか一夜を共に過ごすことに!
いけないとは分かっているのに、どんどん社長に惹かれていって……
極道に大切に飼われた、お姫様
真木
恋愛
珈涼は父の組のため、生粋の極道、月岡に大切に飼われるようにして暮らすことになる。憧れていた月岡に甲斐甲斐しく世話を焼かれるのも、教え込まれるように夜ごと結ばれるのも、珈涼はただ恐ろしくて殻にこもっていく。繊細で怖がりな少女と、愛情の伝え方が下手な極道の、すれ違いラブストーリー。
【R18】鬼上司は今日も私に甘くない
白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。
逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー
法人営業部メンバー
鈴木梨沙:28歳
高濱暁人:35歳、法人営業部部長
相良くん:25歳、唯一の年下くん
久野さん:29歳、一個上の優しい先輩
藍沢さん:31歳、チーフ
武田さん:36歳、課長
加藤さん:30歳、法人営業部事務
イケメンエリート軍団の籠の中
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり
女子社員募集要項がネットを賑わした
1名の採用に300人以上が殺到する
松村舞衣(24歳)
友達につき合って応募しただけなのに
何故かその超難関を突破する
凪さん、映司さん、謙人さん、
トオルさん、ジャスティン
イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々
でも、なんか、なんだか、息苦しい~~
イケメンエリート軍団の鳥かごの中に
私、飼われてしまったみたい…
「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる
他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる