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それも悪くない
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意地悪を言ったのに、『政弘さん』はイヤな顔をするどころか、愛に溢れた言葉を惜しみなく返してくる。
どこまでこの人の愛情は深いのだろう。
この先もずっと、その計り知れないほどの深い愛情に溺れていられたら幸せだと愛美は思う。
(気持ちを試された事は、もうこれくらいで許してあげよう。私も反省して、政弘さんが不安にならないように、もう少し素直に気持ちを伝える努力をしようかな)
「嬉しいですよ、すごく。政弘さんがいつも私の事考えてくれてるって、改めてわかりましたから」
愛美が微笑みながらそう言うと、『政弘さん』も嬉しそうに笑った。
「開けてみていいですか?」
「うん、開けてみて」
その包みを開けると、箱の中にはネックレスが入っていた。
愛美はそれをそっと手に取る。
「アクアマリンって言うんだって。3月の誕生石らしいよ」
猫のモチーフのペンダントトップには、アクアマリンがキラキラと輝きを放っている。
「綺麗……。それにこの猫、かわいいです」
「その猫、すましてるのに可愛らしくて、なんとなく愛美っぽいなぁって。それなら猫アレルギーの愛美でも大丈夫でしょ」
愛美はその猫をまじまじと眺めてみた。
猫特有のプライドの高そうなツンとした雰囲気はあるものの、それが愛らしさを引き立てているようにも感じる。
(すましてるのに可愛らしい?!政弘さんの中で私ってそんなイメージなの?)
前にも『政弘さん』に、猫っぽいと言われた事を思い出して、愛美は思わず笑ってしまう。
(それじゃあ私は、政弘さんの前では猫らしくすましたり、甘えたりしてみようかな)
「これつけてる愛美、見たいな。貸して、俺がつけてあげる」
そう言って『政弘さん』はネックレスを手に取った。
愛美は両手で首筋にかかる髪を上げ、『政弘さん』がネックレスをつけてくれるのを待つ。
首筋に微かに触れる『政弘さん』の指先がくすぐったい。
ネックレスの金具を留めると『政弘さん』はその細い首筋にそっと口付けた。
首筋に触れた唇の柔らかい感触に、愛美は思わずビクリと肩を震わせる。
「髪上げてるの、首筋が色っぽくていいね」
「もう……何言ってるんですか……」
愛美が少し赤い顔をして恥ずかしそうに呟くと、『政弘さん』は込み上げる笑いを堪えた。
「ごめんって……。でもホラ、やっぱりすごく似合ってる」
愛美はネックレスをした自分の姿をルームミラーに写し、満足そうに笑った。
「ありがとうございます。大事にしますね」
「どういたしまして。気に入ってもらえて良かった。俺もずっと大事にするよ」
『政弘さん』にはまだ何もプレゼントしていないのに、一体何を大事にするのだろうと、愛美は首をかしげた。
「大事にするって……何を?」
「愛美を」
『政弘さん』は愛美を抱き寄せて、頬に軽く口付けた。
どこで誰が見ているかもわからないのに、土曜日の真っ昼間、しかも家族連れやカップルたちで賑わうショッピングモールの駐車場でいちゃつくなんて、もってのほかだ。
(こんなところで恥ずかしい……)
愛美は赤い顔をしてうつむいた。
『政弘さん』は少し笑いながら、しきりに恥ずかしがっている愛美の頭を、大きな手でポンポンと優しく叩く。
「早くネックレスして欲しくて、何も考えずにここで渡したけど……家とか夜景スポットとか、もっと違う場所で、二人きりの時に渡せば良かったかな。ごめんね」
「いえ……。ちょっと人目が気になって恥ずかしいけど……やっぱり嬉しいです」
「嬉しいの?じゃあもっとキスしていい?」
身を乗り出して顔を近付けてくる『政弘さん』の体を、愛美は必死で押し返した。
「もうっ!そうじゃなくて!こんなところでキスされたら恥ずかしいって言ったんです!!嬉しいっていうのはネックレスの事です!!」
愛美の慌てぶりがあまりにおかしくて、『政弘さん』は堪えきれず声をあげて笑った。
「冗談だよ。ホントはもっとキスしたいんだけど、続きは帰ってからね。今度からキスは二人きりの時にするから、機嫌直して。じゃあ、そろそろ車降りて中に入ろうか」
「ホントにもう……」
(政弘さんって、やっぱり激甘……)
車を降りると『政弘さん』は愛美の手を取り、指を絡めて手を繋いだ。
手を繋いで外を歩くのは久しぶりだ。
愛美はまた照れくさそうにしている。
「ん?どうかした?」
「いえ、なんでも……」
何度も手を握ったり、抱きしめたり、キスをしたり、ゆうべも今朝も裸であんなに抱き合っていたのに、手を繋いで外を歩くだけで照れくさそうにしている愛美を、どうしてそんなに照れるのだろうと、『政弘さん』は不思議に思う。
(愛美って面白い……。まだまだ俺の知らないところがたくさんあるんだろうな)
どこまでこの人の愛情は深いのだろう。
この先もずっと、その計り知れないほどの深い愛情に溺れていられたら幸せだと愛美は思う。
(気持ちを試された事は、もうこれくらいで許してあげよう。私も反省して、政弘さんが不安にならないように、もう少し素直に気持ちを伝える努力をしようかな)
「嬉しいですよ、すごく。政弘さんがいつも私の事考えてくれてるって、改めてわかりましたから」
愛美が微笑みながらそう言うと、『政弘さん』も嬉しそうに笑った。
「開けてみていいですか?」
「うん、開けてみて」
その包みを開けると、箱の中にはネックレスが入っていた。
愛美はそれをそっと手に取る。
「アクアマリンって言うんだって。3月の誕生石らしいよ」
猫のモチーフのペンダントトップには、アクアマリンがキラキラと輝きを放っている。
「綺麗……。それにこの猫、かわいいです」
「その猫、すましてるのに可愛らしくて、なんとなく愛美っぽいなぁって。それなら猫アレルギーの愛美でも大丈夫でしょ」
愛美はその猫をまじまじと眺めてみた。
猫特有のプライドの高そうなツンとした雰囲気はあるものの、それが愛らしさを引き立てているようにも感じる。
(すましてるのに可愛らしい?!政弘さんの中で私ってそんなイメージなの?)
前にも『政弘さん』に、猫っぽいと言われた事を思い出して、愛美は思わず笑ってしまう。
(それじゃあ私は、政弘さんの前では猫らしくすましたり、甘えたりしてみようかな)
「これつけてる愛美、見たいな。貸して、俺がつけてあげる」
そう言って『政弘さん』はネックレスを手に取った。
愛美は両手で首筋にかかる髪を上げ、『政弘さん』がネックレスをつけてくれるのを待つ。
首筋に微かに触れる『政弘さん』の指先がくすぐったい。
ネックレスの金具を留めると『政弘さん』はその細い首筋にそっと口付けた。
首筋に触れた唇の柔らかい感触に、愛美は思わずビクリと肩を震わせる。
「髪上げてるの、首筋が色っぽくていいね」
「もう……何言ってるんですか……」
愛美が少し赤い顔をして恥ずかしそうに呟くと、『政弘さん』は込み上げる笑いを堪えた。
「ごめんって……。でもホラ、やっぱりすごく似合ってる」
愛美はネックレスをした自分の姿をルームミラーに写し、満足そうに笑った。
「ありがとうございます。大事にしますね」
「どういたしまして。気に入ってもらえて良かった。俺もずっと大事にするよ」
『政弘さん』にはまだ何もプレゼントしていないのに、一体何を大事にするのだろうと、愛美は首をかしげた。
「大事にするって……何を?」
「愛美を」
『政弘さん』は愛美を抱き寄せて、頬に軽く口付けた。
どこで誰が見ているかもわからないのに、土曜日の真っ昼間、しかも家族連れやカップルたちで賑わうショッピングモールの駐車場でいちゃつくなんて、もってのほかだ。
(こんなところで恥ずかしい……)
愛美は赤い顔をしてうつむいた。
『政弘さん』は少し笑いながら、しきりに恥ずかしがっている愛美の頭を、大きな手でポンポンと優しく叩く。
「早くネックレスして欲しくて、何も考えずにここで渡したけど……家とか夜景スポットとか、もっと違う場所で、二人きりの時に渡せば良かったかな。ごめんね」
「いえ……。ちょっと人目が気になって恥ずかしいけど……やっぱり嬉しいです」
「嬉しいの?じゃあもっとキスしていい?」
身を乗り出して顔を近付けてくる『政弘さん』の体を、愛美は必死で押し返した。
「もうっ!そうじゃなくて!こんなところでキスされたら恥ずかしいって言ったんです!!嬉しいっていうのはネックレスの事です!!」
愛美の慌てぶりがあまりにおかしくて、『政弘さん』は堪えきれず声をあげて笑った。
「冗談だよ。ホントはもっとキスしたいんだけど、続きは帰ってからね。今度からキスは二人きりの時にするから、機嫌直して。じゃあ、そろそろ車降りて中に入ろうか」
「ホントにもう……」
(政弘さんって、やっぱり激甘……)
車を降りると『政弘さん』は愛美の手を取り、指を絡めて手を繋いだ。
手を繋いで外を歩くのは久しぶりだ。
愛美はまた照れくさそうにしている。
「ん?どうかした?」
「いえ、なんでも……」
何度も手を握ったり、抱きしめたり、キスをしたり、ゆうべも今朝も裸であんなに抱き合っていたのに、手を繋いで外を歩くだけで照れくさそうにしている愛美を、どうしてそんなに照れるのだろうと、『政弘さん』は不思議に思う。
(愛美って面白い……。まだまだ俺の知らないところがたくさんあるんだろうな)
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