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二章 (ポーディングの街編)
10.責任の行方
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「おい、これはどういうことだ!」
「隊長、トロールって言ってなかったか?」
「ゴブリン・ロードが長ではないのか!」
討伐部隊がパニックになっている。
「まずは隊長を手当するんだ!まだ息はあるぞ!」
取り敢えずは、隊長の容態を診ることに専念するだろう。
しかし、それが終わったらどうなるか。犯人探しが始まるだろう。
全ての原因は……俺だ。
どう責任を取ろうかと、顔面蒼白になっていると、女の声が叫ぶ。
「みんな!落ち着いて!」
視線が一斉に集まる。そこにいたのは、あの女戦士だった。
「今はバラバラになっていてはダメ!今こそ強くいるのよ!」
女がそう言うと、周りの自警団と冒険者たちがまとまり出す。
「そ……そうだ。隊長がこんな状態の今こそ、俺たちの真価を発揮する時じゃないのか?」
「そうだそうだ!目を覚まそうぜ!」
「俺たちB級にできることは何かないか?」
バラバラになった部隊が徐々に一つになっていくのを見て、なんとも言えない安堵の波が押し寄せる。
奥で一連の流れを見ていた、薄汚れた格好の男が話し出す。
「おいおい、お前ら忘れたのか?俺らがこんな状態になってるのは、そこにいるおっさんが原因だってことを。」
「お前、今になって何を……」
「だーかーらー、隊長がこんなことになったのも、自警団の半分が戻ってこないのも、そこにいるおっさんが間違えたからなんだよ!」
「それは……そうかもしれんが……」
「それに、そのおっさん噂の汚点様だろ?元々おかしいと思っていたんだ。どうして汚点と呼ばれる奴の言うことを信じるのかってよ。」
反論するものは誰もいなくなった。
ここにいる全員が、俺のことを睨んでいる。そんな感覚になった。
皆、俺のせいだと分かっているようだが、それをあえて言うものは、今までいなかった。この男を除いて。
「なぁ!聞いてんのか?あぁ?お前のせいで自警団はーー」
「もうやめてよ!」
言葉を遮ったのは、やはりあの女戦士だった。
「お前、だって、隊長がーー」
「もう、いいじゃん……お兄ちゃん……」
お兄ちゃん?
「誰にだって間違いはあるの……だって、先遣隊の人も、ゴブリン・ロードだって言ってたじゃん」
「お前……でも、納得がいかねぇ!どうせこのおっさんが俺たちを罠に掛けようとしていたんだ!こいつは悪魔と契約を結んでいて!魔族にも懐柔されてーー」
女戦士が、男に近づき、バチンッと平手打ちをする。
「目を覚ましてよ!今はそんなこと言ってる場合じゃない!今は被害を最低限にするために動くべきよ!責任の追及ができるような時期じゃないわ!」
「………っくそッ」
男はそう言って茂みの奥へ走り去った。
女戦士は何か感情が溢れたのか、泣いているようだった。
"戦士の涙を見てはいけない"
そのような不文律がある。
しかし、今は仕方がないだろう。彼女がどれだけの勇気を持ってこの場を収めたか。どれほどの身を削って、俺を庇ったか。考えることすら、おこがましい。
俺はそんな彼女に敬意を表し、彼女の前に立って最敬礼をした。
そんな俺を見て、目の前の戦士は、泣きながら最敬礼を返してくれた。
「隊長、トロールって言ってなかったか?」
「ゴブリン・ロードが長ではないのか!」
討伐部隊がパニックになっている。
「まずは隊長を手当するんだ!まだ息はあるぞ!」
取り敢えずは、隊長の容態を診ることに専念するだろう。
しかし、それが終わったらどうなるか。犯人探しが始まるだろう。
全ての原因は……俺だ。
どう責任を取ろうかと、顔面蒼白になっていると、女の声が叫ぶ。
「みんな!落ち着いて!」
視線が一斉に集まる。そこにいたのは、あの女戦士だった。
「今はバラバラになっていてはダメ!今こそ強くいるのよ!」
女がそう言うと、周りの自警団と冒険者たちがまとまり出す。
「そ……そうだ。隊長がこんな状態の今こそ、俺たちの真価を発揮する時じゃないのか?」
「そうだそうだ!目を覚まそうぜ!」
「俺たちB級にできることは何かないか?」
バラバラになった部隊が徐々に一つになっていくのを見て、なんとも言えない安堵の波が押し寄せる。
奥で一連の流れを見ていた、薄汚れた格好の男が話し出す。
「おいおい、お前ら忘れたのか?俺らがこんな状態になってるのは、そこにいるおっさんが原因だってことを。」
「お前、今になって何を……」
「だーかーらー、隊長がこんなことになったのも、自警団の半分が戻ってこないのも、そこにいるおっさんが間違えたからなんだよ!」
「それは……そうかもしれんが……」
「それに、そのおっさん噂の汚点様だろ?元々おかしいと思っていたんだ。どうして汚点と呼ばれる奴の言うことを信じるのかってよ。」
反論するものは誰もいなくなった。
ここにいる全員が、俺のことを睨んでいる。そんな感覚になった。
皆、俺のせいだと分かっているようだが、それをあえて言うものは、今までいなかった。この男を除いて。
「なぁ!聞いてんのか?あぁ?お前のせいで自警団はーー」
「もうやめてよ!」
言葉を遮ったのは、やはりあの女戦士だった。
「お前、だって、隊長がーー」
「もう、いいじゃん……お兄ちゃん……」
お兄ちゃん?
「誰にだって間違いはあるの……だって、先遣隊の人も、ゴブリン・ロードだって言ってたじゃん」
「お前……でも、納得がいかねぇ!どうせこのおっさんが俺たちを罠に掛けようとしていたんだ!こいつは悪魔と契約を結んでいて!魔族にも懐柔されてーー」
女戦士が、男に近づき、バチンッと平手打ちをする。
「目を覚ましてよ!今はそんなこと言ってる場合じゃない!今は被害を最低限にするために動くべきよ!責任の追及ができるような時期じゃないわ!」
「………っくそッ」
男はそう言って茂みの奥へ走り去った。
女戦士は何か感情が溢れたのか、泣いているようだった。
"戦士の涙を見てはいけない"
そのような不文律がある。
しかし、今は仕方がないだろう。彼女がどれだけの勇気を持ってこの場を収めたか。どれほどの身を削って、俺を庇ったか。考えることすら、おこがましい。
俺はそんな彼女に敬意を表し、彼女の前に立って最敬礼をした。
そんな俺を見て、目の前の戦士は、泣きながら最敬礼を返してくれた。
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