奇跡の世代の「汚点」と呼ばれた男、魔法の才能がありません。

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二章 (ポーディングの街編)

9.ゴブリン駆除

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 ポーディング領主の号令の元、ゴブリン・ロード討伐部隊が結成された。
 先遣部隊が調査したところ、やはりゴブリン・ロードが出現していたとのことだ。
 今日はゴブリン駆除当日である。
 ポーディング自警団およびC級以上の冒険者で構成された、およそ500人の集団が向かう。

 出撃に伴い、領主様が労いの言葉をかける。
「ゴブリン・ロードが出現した。この街に攻撃を仕掛けてくるのは時間の問題だ。一刻の猶予もない我々ができるのは、早急ににゴブリン・ロードを討つことのみ。皆のもの、健闘を祈る!」
 討伐部隊の拳が一斉に挙がり、怒号が飛ぶ。


 第一発見者の俺は、ゴブリンの巣まで部隊を先導することになった。
 もはや分かりきっていることだったが、皆俺を敬遠している。

「あなた、強いの?」
 突然、自警団の女戦士が話しかけてきた。

「強くありませんよ」
 どうせ俺が「奇跡の世代」のだとバカにするのがオチだ。そう思ったので、初めから冷たくあしらう。

「そうかしら?」

 予想外の言葉に驚く。
「冷やかしに来たのか?」

「違うわ。あなた、ゴブリンの巣に侵入して笛を収集したと言っていたわね?」

「まぁ……そうだが」

「どうやったらそんな無謀なことができるの?」

 何を言っているか分からない。彼女は上位の冷やかしをしているのだろうか。
「どうやってって、隠蔽の魔術を付与したんだが……」

 女は驚いた顔をしている。
「あなた、魔術が使えるの?」

「愚問だな。この格好を見てくれ。どう見てもそうだろう」

 そろそろ会話を終わりにしたかったのだが、女は更に続ける。
「じゃあ、腰に挿しているその刀は何?」

 俺はヂラスから預かっている刀を腰に挿していた。
 今回の討伐、C級冒険者の仕事といえば、周りの警戒、監視だけだ。それといって戦闘をするわけでもない。せめて気持ちだけでも、と思って刀を持ってきていたのだ。
 どうやらこの女は、魔術師なのに刀を持っている、という不思議な格好の俺に疑問を持っていたらしい。

「これか。これは、そうだな……友人から預かっているものなんだ」

「じゃあ、あなたは魔剣術師なの?」

「いいや、違う。俺は純粋な魔術師さ」

「じゃあ何故刀を持っているの?使わないのに」

 面倒臭くなってきた。そろそろ話を切りたいのだが……
「あなた、もしかして英雄の刀術師?馬車を救ったって噂の!」

 一瞬何のことか分からなかったが、ようやく思い出した。
 この街に来た時、俺は馬車を救った英雄と言われていた。まぁ、今はの方で有名なのだが……

「まぁ、そう呼ばれていた時もあったかな」

「すごいわ!こんなところで会えるなんて!あれから噂を聞かないから、もう街を出たと思っていたの!」

 この女は俺がと言われていることを本当に知らないのだろうか。それにしても、妙に馴れ馴れしいな。

「ねぇ、握手してくれない?」

「握手か?……まぁ、良いが」
 俺が握手をすると、女は目を輝かせながら元の位置に戻って行った。
 嵐のような女に頭がついていかなかった。しかし、そのおかげで移動時間の暇つぶしができて良かったのかもしれない。


 自警団の隊長と思われる人が俺の横に来る。
「案内ご苦労様。これより私が先導する。君は下がっていてくれ」

「分かりました」

 いつの間にか巣の近くに来ていたらしい。勘というやつだろうか。隊長は一度も来たことがないにも関わらず、巣の位置を特定しているらしい。
 隊長が討伐部隊全てに向かって叫ぶ。

「戦闘用意!B級冒険者と自警団2班は外のゴブリンを。A級冒険者と自警団1班はゴブリンの巣に侵入。行動始め!」

 戦闘が始まり、ゴブリンが倒されていく。巣の外にいるゴブリンは既に大半が討伐されている。
 巣の中に流れ込んだ部隊も、善戦をしているようだ。
 俺たちC級冒険者は見張どころか、ただ立ってその様子を見ているだけが仕事になっていた。

 しかし、しばらく経った後、ゴブリンの巣の中から何も音がしなくなった。
 本当に無音だ。ゴブリンが立てる音も、人間が立てる音も、全て聞こえない。
 討伐が終わって待っている外の討伐部隊も、その異変に気がつき始めていた。
 どうしたのだろうか。ゴブリン・ロードであれば、街の自警団だけでも勝てるはずなのだが……
 俺は「第一発見者」というだけあって、不安が大きくなっていた。

 
 残っている討伐部隊が見守る中、巣の中から一人、隊長が出てきた。右足を引きずっている。


「トロールが……トロ…」
 そう言い残して隊長は倒れた。
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