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二章 (ポーディングの街編)
5.剣を携えて
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ミステリーダンジョンから南に50キロ。馬車に揺られて眠っている男がいる。
彼の名はルイス。金髪に黒のローブ。腰には魔法の書を携えている。
おそらく、魔術師か魔法使いだろうと人は思うだろう。しかし、彼が抱えているのは他でもない、刀だった。
東の島国でしか見られない武器を持つ魔術師を、人は呼ぶ。
「侍術師」と。
キャーーー!
女性の叫び声で目を覚ます。
「こっちに来るんだ!はやく!」
寝ぼけている目を叩き起こして、状況を判断する。
どうやら乗っている馬車が魔物の攻撃を受けているようだ。
「おいおい。まじかよ。あんなヤツ相手に勝てるわけがないだろ……」
乗客の視線の先には、ハイ・オークの変異体が一体。その後ろにノーマル・オークが二体控えていた。
乗客の一人の視線が俺に向く。
「その不思議な身なり、冒険者とお見受けする。……どうかこの場を救ってくれないか!」
その配偶者だろうか、更に続ける。
「報酬なら保証するわ!……子供だけでも……街に連れ帰ってはくれませんか!」
必死に訴えるその目は、人が極限状態を迎えた時のそれであった。
勿論、助けないわけがない。
「安心してください。ここにある全ての命。俺が守って見せましょう」
乗客の全員の目が輝いた。
まずは二体のノーマル・オークを倒すのが優先だろう。
ここから標的までの距離はおよそ200メートル。そしてオークは火属性の攻撃に弱い。
そうであれば、中級の火炎弾が効果的だろう。
魔法陣を起動する。そこに火属性の公式を描き込む。次に、それを中級の魔法陣へと格上げする。最後に標的の座標を描き込んで魔力を込める。
直後、大きなカボチャほどの炎の弾がノーマル・オーク目掛けて飛んでいく。
攻撃されることに気がづいて避けようとするが、時すでに遅し。炎に焼かれて丸焦げになった。
ハイ・オークの変異体は、より格上の上級の火炎弾で無力化した。
乗客の歓声がなる。
「あんた!本当に冒険者だったのか!」
「ぜひ、お礼をさせてくれ!」
「お礼なんて……俺は当然のことをしたまでですよ」
「なんと慈悲深いお方であるか!ぜひ、我が商会にお越しください!」
「は、はぁ」
乗客が歓喜しているは、単に命が助かったからではない。
普通の冒険者は命を救うようなことをした場合、明らかに法外な報奨金を要求することが一般的に知られている。それが払えないものは身ぐるみ全て剥がされたり、最悪の場合、体を要求されたりする。
俺は、当然そんなことはしない。ましてや、お金を取るなんてことはしない。
"能力を持つものは弱きものを助けよ"
魔術大学ではそう習った。もう死んでしまったおじいちゃんも、似たようなことを言っていた。
その後は無事に目的の街、ポーティングに到着した。予定時間より5時間も遅くなり、日も暮れていたが、それはもう丁重にもてなしてくれた。
「先ほどは命をお救いいただきありがとうございます。なんとお礼を申し上げたら良いか……」
「気にしないでください。魔術大学卒業生として、その名に恥じぬことをしたまでです。」
「なんと……そうでありましたか。明日、是非とも我が『カエム商会』へお越しください」
断ったらどこまでも追いかけて来そうな雰囲気だったので、渋々首を縦に振った。
「必ずお越しくださいね!」
そう言うと商会の男は違う馬車に乗って街の中へ消えていった。
一瞬にして、俺の名は街に広まった。人々は俺を英雄として語り始めた。
しかし、その時間も長くは続かなかった。
「あいつ、汚点じゃない?」
俺の名前に聞き覚えがあったのだろう。俺が「奇跡の世代」の汚点だと分かったらしい。
人から人へ渡る情報。
その勢いは衰えることを知らず、俺が「危機を救った英雄」という話を塗り替えて、一夜にして街中に広まってしまった。
その後、街の人の態度が変わってしまったのは、言うまでもない。
彼の名はルイス。金髪に黒のローブ。腰には魔法の書を携えている。
おそらく、魔術師か魔法使いだろうと人は思うだろう。しかし、彼が抱えているのは他でもない、刀だった。
東の島国でしか見られない武器を持つ魔術師を、人は呼ぶ。
「侍術師」と。
キャーーー!
女性の叫び声で目を覚ます。
「こっちに来るんだ!はやく!」
寝ぼけている目を叩き起こして、状況を判断する。
どうやら乗っている馬車が魔物の攻撃を受けているようだ。
「おいおい。まじかよ。あんなヤツ相手に勝てるわけがないだろ……」
乗客の視線の先には、ハイ・オークの変異体が一体。その後ろにノーマル・オークが二体控えていた。
乗客の一人の視線が俺に向く。
「その不思議な身なり、冒険者とお見受けする。……どうかこの場を救ってくれないか!」
その配偶者だろうか、更に続ける。
「報酬なら保証するわ!……子供だけでも……街に連れ帰ってはくれませんか!」
必死に訴えるその目は、人が極限状態を迎えた時のそれであった。
勿論、助けないわけがない。
「安心してください。ここにある全ての命。俺が守って見せましょう」
乗客の全員の目が輝いた。
まずは二体のノーマル・オークを倒すのが優先だろう。
ここから標的までの距離はおよそ200メートル。そしてオークは火属性の攻撃に弱い。
そうであれば、中級の火炎弾が効果的だろう。
魔法陣を起動する。そこに火属性の公式を描き込む。次に、それを中級の魔法陣へと格上げする。最後に標的の座標を描き込んで魔力を込める。
直後、大きなカボチャほどの炎の弾がノーマル・オーク目掛けて飛んでいく。
攻撃されることに気がづいて避けようとするが、時すでに遅し。炎に焼かれて丸焦げになった。
ハイ・オークの変異体は、より格上の上級の火炎弾で無力化した。
乗客の歓声がなる。
「あんた!本当に冒険者だったのか!」
「ぜひ、お礼をさせてくれ!」
「お礼なんて……俺は当然のことをしたまでですよ」
「なんと慈悲深いお方であるか!ぜひ、我が商会にお越しください!」
「は、はぁ」
乗客が歓喜しているは、単に命が助かったからではない。
普通の冒険者は命を救うようなことをした場合、明らかに法外な報奨金を要求することが一般的に知られている。それが払えないものは身ぐるみ全て剥がされたり、最悪の場合、体を要求されたりする。
俺は、当然そんなことはしない。ましてや、お金を取るなんてことはしない。
"能力を持つものは弱きものを助けよ"
魔術大学ではそう習った。もう死んでしまったおじいちゃんも、似たようなことを言っていた。
その後は無事に目的の街、ポーティングに到着した。予定時間より5時間も遅くなり、日も暮れていたが、それはもう丁重にもてなしてくれた。
「先ほどは命をお救いいただきありがとうございます。なんとお礼を申し上げたら良いか……」
「気にしないでください。魔術大学卒業生として、その名に恥じぬことをしたまでです。」
「なんと……そうでありましたか。明日、是非とも我が『カエム商会』へお越しください」
断ったらどこまでも追いかけて来そうな雰囲気だったので、渋々首を縦に振った。
「必ずお越しくださいね!」
そう言うと商会の男は違う馬車に乗って街の中へ消えていった。
一瞬にして、俺の名は街に広まった。人々は俺を英雄として語り始めた。
しかし、その時間も長くは続かなかった。
「あいつ、汚点じゃない?」
俺の名前に聞き覚えがあったのだろう。俺が「奇跡の世代」の汚点だと分かったらしい。
人から人へ渡る情報。
その勢いは衰えることを知らず、俺が「危機を救った英雄」という話を塗り替えて、一夜にして街中に広まってしまった。
その後、街の人の態度が変わってしまったのは、言うまでもない。
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