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第一章 デパーチャー 旅する者たち
ジャマイカへ
しおりを挟む妻の娘ですが、実は私たちが乗っているこの飛行機のパイロットをやっています。今コクピットの中にいます」
「え、このでかい飛行機の、ですか?」
「はい、ボーイング777。この飛行機です」
「女性ですよね?」
「勿論、妻の娘ですから。ちなみに最近まで二人の子のシングルマザーでした」
ページもタヨも、特にタヨは同じ女性としてこの短い会話に驚いた。
「ついでに申し添えますが、無差別テロが起こったあの911以前はこの飛行機会社の客室乗務員でした。でもここからが凄いのです。テロの影響で航空業界が衰退し、会社をレイオフされました」
「ただ、これを契機にパイロットへの道に進み、同じ会社で今この機体を飛ばしています。まさしく情熱大陸ものです」
機上の三人、ページ、タヨと私は、ニューヨーク経由で、ジャマイカへ向かっていた。今回は潤沢な経費があるので、ビジネスクラスを利用した。これから始まる貴重なレコーディングに備えるようにと、ページの叔父が配慮してくれた。
彼らにとっては、初めてのジャマイカ訪問、しかも初めての海外レコーディング。やっぱりビジネスクラスでの旅は大歓迎だ。基礎疾患多めの私にもとてもやさしい旅立ちだった。
ニューヨークでの一泊はJFK空港近辺のホテルに宿泊して、街には繰り出さなかった。翌日のキングストン行きが早朝でもあるし、みんなマンハッタンはよく知っている。
これから始まるプロジェクトに、彼らは高揚していた。ホテルで夕食を取り、早々と各々の部屋に戻り、体を横たえていた。
翌日、時差でよく寝られなかった三人は、午前五時にホテルを出た。
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