沙藍ちゃんは今日も困ってる。

恋のはじまり

GW期間中に迎える誕生日は
友人たちに祝ってもらえないのも通例で
慣れたものだけれど、持て余した時間の中で
ふと思い出したのは彼女のこと。
「帰りたくないって言ってたけど、大丈夫かな」
同じサークルの彼女は、周りが賑やかなのもあり
あまり自分のことを話さない。
だから休みに入る前に何気なくこぼした弱音が
妙に気にかかってしまう。

連絡してみようか。と思い立っては、
でも、そんな仲でもないし。
と勇気が出ずにスマホを机に置く。
そんな繰り返しを経て、気づいてしまった。

理由が欲しい。
彼女が浮かない顔をしているときに
ほんの少しでも気を紛らわせられるような
取り止めのない言葉を送ってあげられるだけの。

例えば、
「恋人、とか」

今年も誕生日がやってくる。
あの日ーー自分の恋心に気づいた日から
もうすぐ１年。