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後日談
後日談①
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――デビューから数か月後、とあるスタジオ内にて……。
「はぁーい、OK! ばっちりです! お疲れ様でした。」
「――お疲れ様でした!」
スタジオ内でスタッフ一同が一礼の言葉を掛けて解散となった、砕波たちはデビューした後初の映像つきPVが見られるミュージックビデオの撮影をしてたった今完成させたのだ。
スタッフルームの待合室にあるシャワー室で一風呂浴びた後、人化薬を飲み終えてスマートフォンを片手に身体を拭いていた。
「疲れたぁ~~」
「腹減った……」
「ハンバーガー食いたい……」
「おいおい、これくらいで疲れてたら後が持たないって……。あと、体系維持でジャンクフード控えろって言われたでしょうが」
レモンとヨシュアが疲れてぼやきながらソファに寝そべっている様子をヘディは見て呆れてハンバーガーを食べたいと我儘を呟くレモンに体系維持のために事務所の社長から控えるよう言われていたことを指摘した。
「みんなお疲れ様、ちゃんとケアしなさいよ。」
「といってもオレっち達、サメ肌だけどね」
「――そっちじゃない!」
マネージャーが疲弊しきっているメンバーに労いと厳しい言葉を掛けると、レモンが肌のケアと身体と声のケアをかけたボケをかますとマネージャーがツッコミを入れるのはデビュー後仕事が入るようになってからのお約束だった。
ソファでだらけていたレモンとヨシュアはヘディにマネージャーが家まで送ってくれるから起きないで寝てるとワサビ擦って顔に塗りたくると言われ、嫌々起き上がっていた。
デビューして数ヶ月、砕波の歌声のスキルとヘディ達の楽器演奏のスキル徐々に上がっていたが他にもヘディの世話焼きリーダーっぷりにも磨きがかかっている気がすると砕波は頭の端で思っていた。
「サイハ、なぁ~にしてんの?」
「――うおっ!?」
後ろからレモンが肩を組むように抱きついてきて、スマートフォンの会話内容を覗いて来る。
「おやおや、また愛しのユリちゃんとデート?」
「うるせえって……」
会話の内容で会話の相手が琉璃だと分かった様でレモンは砕波をからかってくるが、砕波は鬱陶しそうに肩を組んでくる腕を払う。
「ラブラブだよなぁ~~、パパラッチも騒ぐから破局や離婚率高い芸能界でサイハみたいなの貴重だと思うよ。」
「あんな子貴重なんだから逃げられない様にしろよ? 浮気するなよ? 元遊び人」
「――ちょっ、それどこで聞いた!?」
「「ノゼルさんからの情報~~♪」」
レモンの砕波いじりにヨシュアも乗っかってきて、グレて悪行を重ねていた頃、男女問わず色んな子と遊んだことを知られていたことに砕波は戸惑い、誰が情報提供したのか聞くと二人はそろってノゼルからの情報だと話した。
「遊び人が変わるもんだよねぇ~~」
「まぁユリちゃん心広い子だからねぇ~~、まともにならなきゃって思わずにはいられなかったんじゃない?」
(今度会った時しめてやる……)
「お前ら……その辺にしてやれ」
ヨシュアとレモンは琉璃と砕波の良好な関係をいじって楽しんでいるとヘディが二人に呆れて静止の声をかけ、二人にからかわれている端で砕波は勝手に二人にいらない情報を漏らしたノゼルに次に会ったらこのことについて詰問することを決める。一方、琉璃はと言うと……、
「さてと……」
丁度アルバイト先の店で、ゴミ捨てをしていたところだった。
琉璃は重たい生ごみを投げ終わって一息ついた後、バイト先である店に戻って行った。
「ありがとうございました~、またお越しくださいませ」
琉璃の働いているバイト先のカフェで二人組のお客が会計を終えて出て行った。
ふと時間を見てみると出勤時間の終わりが迫っていた時に店長が「もうあがっていいよ」と琉璃にひと声かけてくれた為、琉璃は制服を脱ぐためロッカーに向かった。
「あっ、メール……。」
ロッカーのチェックをしていた時に、自分のスマートフォンを見て琉璃は砕波からメールが届いていたことに気付く。砕波はデビューした後仕事も徐々に増えてきたがメールは欠かさなかったし、仲は良好のまま続いていた。
ノゼル曰く昔は相当な遊び人だったみたいだが今現在、琉璃以外の相手に手を出すなんて真似はしてはいない。
それに、もし琉璃を裏切るような真似をしたら毒殺してやるとフリッグに念を押されているせいかもしれないが砕波は浮気はしないし、同棲はしているが今のところパパラッチに嗅ぎ付けられるようなことも砕波がニュースで取り上げられるほどの誤解を招くようなことはされていない。
――琉璃は今、まさに順風満帆の幸せであった。
琉璃は同棲しているアパートに向かっている途中……、
「ゆーりー、今日はなんだかお楽しみ?」
「――わぁ! って……シエル!?」
いきなり声を掛けられ驚いていると、シエルが琉璃の前に顔を出したのだった。
「バイト先近いって知ったからさ、ちょっと顔出してみようと思ったら琉璃がいたから声かけてみたんだ」
「なんだそうだったんだ……」
伯父夫婦の家は琉璃のアルバイト先から逆方向の為ここにシエルが来ている理由がわからなかったが、シエルがそう説明してくれたおかげで納得が行った。
「ゆりー、その顔今日はお楽しみかなと思ったらやっぱりぃ?」
「あっ、ちょっと……!」
スマートフォンの画面に映し出されたメール内容を読まれたことに慌てふためくが、大体の内容を把握されたため遅かった。
「サイハとおデート? 良いねぇ、ついて来てもいい?」
「もう、冗談はやめてってば……」
「あはは、ごめんごめん」
シエルが琉璃をからかってくるため、二人は歩道を歩いている中じゃれ合う。
眼が見えなかった頃はシエルは気を使ってかあまりこういう風にじゃれてこなかったので視力が戻った今、事故が起きる前の昔に戻った様だった。
「でもその様子ならよかったよ……、サイハのやつ芸能界にデビューしたばっかりだからさ。
アンタのことおろそかにしないかちょっと心配だったからさ」
「シエル……」
シエルは安堵の言葉を述べたのち心配事を漏らしてくれた、シエルなりに自分を心配してくれていたのだと思って琉璃は嬉しく思った。
「――まぁ、その様子ならフリッグさんが少し大人しくなると思うから伝えておくよ。
アンタの旦那は浮気をしたり琉璃に冷たくしてませんよ~ってね。」
「あっ、ありがとう……」
実はフリッグが砕波に厳しいのはシエルも把握済みだった、フリッグの口出しがうるさくならない為に琉璃がちゃんと上手くやっていることを報告するとシエルが言うと、琉璃はフリッグの小姑ぶりに苦笑いを浮かべていた。
「まぁ、世間的にリスキーな橋を渡る仕事だと思うけどさ……頑張ってって伝えといてよ」
「シエル……ありがとう。」
芸能界は妙な誤解を招く行動を下手にすればすぐにマスコミが騒ぐ世界だ、琉璃もとばっちり受けないとは限らない世界ではある。しかし砕波は好きでこの道に進んだのでシエルも止めることはしないが心配してくれてはいるのだ。琉璃はその言葉でシエルがちゃんと砕波と拗れることなく仲良くやっているか心配して個人的な行動をしたことに気付いて、感謝の意を述べたのだった。
同棲しているアパートがある分かれ道でシエルと別れた後、琉璃はアパートへと帰宅する。
「ただいま~」
玄関を開けて一言言うと返事は帰ってこない、先程のメールには終わったと言っていたのでもう帰宅していると思っていたがまだ帰ってきていないようだった。
玄関にある靴箱の上には約束の証である“イタチザメ”のモデルフィギュアが飾ってある。
ちゃんと尾ひれの部分も接合している状態で飾ってあるフィギュアを見て、色々なことがあったと思いに耽った。この眼がちゃんと見えた状態でまたフィギュアに触れるのも、琉璃にとって夢のようだった。
――でも、まだ解決できていないこともある……。
「ミコト……」
今だミコトの居場所が掴めない、ミコトの両親も音信不通で連絡も一切取れず更正施設を出た後も家には寄らなかったと言う話だし、ミコトが今どんな状況なのかもわからない。
ミコトには話をしたいことがたくさんあるのに会うことが未だできないのがもどかしく思う。
「ゆり……」
「――!」
すると声を掛けられ、驚いて体が思わず跳ね上がってしまった。
「さっ、砕波さん……!?」
「わりぃ……、声をかけたんだが考え事してたみたいで声かけてみた」
考え事をしていて砕波が帰ってきていることすら気づいていなかった、どうやら自分が帰ってきてから間もなく砕波も帰ってきていたようだった。砕波は後ろ手で部屋のドアの鍵を掛けながらマスクとサングラスと帽子を外した。
「大丈夫……? マスコミや記者に目をつけられていない?」
「まぁ、保険として容姿が分かりにくいようにサングラスかけてマスクして帰ってきたから……」
パパラッチに跡をつけてこられていないか心配して聞くと、一応期待の新人バンドとして一目置かれているあの砕波と分からないような変装はしていたと明かす。
「それより、帰ってきたんだから挨拶が欲しいんだが?」
琉璃に後ろから抱きついてキスをさせてほしいと強請って来る。
「ふふ……お帰りなさい、お疲れ様」
琉璃は労いの言葉を掛けると砕波は自分の方に向かせると琉璃にキスを施してきた。
「――ん……」
「お前も、バイト大変だったんだろ? お疲れ様」
学業と両立させつつ、カフェのバイトを終えてきた琉璃に今度は砕波が労いの言葉を掛けてきた。
「そういや今日ね……ノゼルさんみたいに何でも知ってるお客さんに会ったんだ。」
リビングに向かいつつ、琉璃は何気ない日常の出来事を砕波に話す。
「あぁ、そういや聞いてくれよ……あの二人ノゼルからいらん情報貰ってきやがってた」
「あの二人……?」
「ヨシュアとレモンだよ」
ノゼルの名前を出されたことで二人に先程から買われたことを思い出し、少し怒りながら砕波は二人にからかわれた内容を話す。
「……たく、ノゼルもいらんことばかりあいつらに提供しやがって。ていうか何時の間にあいつら仲良くなったんだよ」
「あはは、仕方ないよ。過去は受け入れなきゃ……」
琉璃も、ノゼルから砕波がぐれて詠寿とも険悪なまま悪行三昧していた頃はクレミオだけでなく色んな子と遊んでいたことは聞いていたのでこれはずっと弄られるネタにされるのも仕方のないことだと苦笑いしながら告げる。
「……」
「どうしたの?」
じっとこちらを見ている砕波を不審に思った琉璃は、なにか悪い事でもあったのかと不審に思い心配になって声をかけた。
「いいや、お前……良く妬かねえよなって思ってさ」
「……?」
砕波は琉璃がこんな話になっても嫉妬をしないことが不思議だと呟く。
「だってよ、むかつかねえの? 俺が色んな奴抱いていたって聞いて……」
砕波はちょっと疑問に思っていたことをぶつけてみた、琉璃はクレミオ相手にも今まで遊び相手として付き合ってきた他の相手にも焼きもちを焼かないのが不思議に思って聞いてみた。
「だってほら……、普通なら自分以外の奴と遊んでいたなんて気に入らねーって思うのが普通なのかなって思ってたからよ」
砕波は普通なら嫉妬をするのではないかと思うところで嫉妬の念を醸し出さない琉璃が不思議だっただけで、別に悪気があったわけではないと弁解する。
「――しないわけ、ないじゃない」
「……?」
琉璃の表情が曇っていたことに砕波は気付いた……。
「はぁーい、OK! ばっちりです! お疲れ様でした。」
「――お疲れ様でした!」
スタジオ内でスタッフ一同が一礼の言葉を掛けて解散となった、砕波たちはデビューした後初の映像つきPVが見られるミュージックビデオの撮影をしてたった今完成させたのだ。
スタッフルームの待合室にあるシャワー室で一風呂浴びた後、人化薬を飲み終えてスマートフォンを片手に身体を拭いていた。
「疲れたぁ~~」
「腹減った……」
「ハンバーガー食いたい……」
「おいおい、これくらいで疲れてたら後が持たないって……。あと、体系維持でジャンクフード控えろって言われたでしょうが」
レモンとヨシュアが疲れてぼやきながらソファに寝そべっている様子をヘディは見て呆れてハンバーガーを食べたいと我儘を呟くレモンに体系維持のために事務所の社長から控えるよう言われていたことを指摘した。
「みんなお疲れ様、ちゃんとケアしなさいよ。」
「といってもオレっち達、サメ肌だけどね」
「――そっちじゃない!」
マネージャーが疲弊しきっているメンバーに労いと厳しい言葉を掛けると、レモンが肌のケアと身体と声のケアをかけたボケをかますとマネージャーがツッコミを入れるのはデビュー後仕事が入るようになってからのお約束だった。
ソファでだらけていたレモンとヨシュアはヘディにマネージャーが家まで送ってくれるから起きないで寝てるとワサビ擦って顔に塗りたくると言われ、嫌々起き上がっていた。
デビューして数ヶ月、砕波の歌声のスキルとヘディ達の楽器演奏のスキル徐々に上がっていたが他にもヘディの世話焼きリーダーっぷりにも磨きがかかっている気がすると砕波は頭の端で思っていた。
「サイハ、なぁ~にしてんの?」
「――うおっ!?」
後ろからレモンが肩を組むように抱きついてきて、スマートフォンの会話内容を覗いて来る。
「おやおや、また愛しのユリちゃんとデート?」
「うるせえって……」
会話の内容で会話の相手が琉璃だと分かった様でレモンは砕波をからかってくるが、砕波は鬱陶しそうに肩を組んでくる腕を払う。
「ラブラブだよなぁ~~、パパラッチも騒ぐから破局や離婚率高い芸能界でサイハみたいなの貴重だと思うよ。」
「あんな子貴重なんだから逃げられない様にしろよ? 浮気するなよ? 元遊び人」
「――ちょっ、それどこで聞いた!?」
「「ノゼルさんからの情報~~♪」」
レモンの砕波いじりにヨシュアも乗っかってきて、グレて悪行を重ねていた頃、男女問わず色んな子と遊んだことを知られていたことに砕波は戸惑い、誰が情報提供したのか聞くと二人はそろってノゼルからの情報だと話した。
「遊び人が変わるもんだよねぇ~~」
「まぁユリちゃん心広い子だからねぇ~~、まともにならなきゃって思わずにはいられなかったんじゃない?」
(今度会った時しめてやる……)
「お前ら……その辺にしてやれ」
ヨシュアとレモンは琉璃と砕波の良好な関係をいじって楽しんでいるとヘディが二人に呆れて静止の声をかけ、二人にからかわれている端で砕波は勝手に二人にいらない情報を漏らしたノゼルに次に会ったらこのことについて詰問することを決める。一方、琉璃はと言うと……、
「さてと……」
丁度アルバイト先の店で、ゴミ捨てをしていたところだった。
琉璃は重たい生ごみを投げ終わって一息ついた後、バイト先である店に戻って行った。
「ありがとうございました~、またお越しくださいませ」
琉璃の働いているバイト先のカフェで二人組のお客が会計を終えて出て行った。
ふと時間を見てみると出勤時間の終わりが迫っていた時に店長が「もうあがっていいよ」と琉璃にひと声かけてくれた為、琉璃は制服を脱ぐためロッカーに向かった。
「あっ、メール……。」
ロッカーのチェックをしていた時に、自分のスマートフォンを見て琉璃は砕波からメールが届いていたことに気付く。砕波はデビューした後仕事も徐々に増えてきたがメールは欠かさなかったし、仲は良好のまま続いていた。
ノゼル曰く昔は相当な遊び人だったみたいだが今現在、琉璃以外の相手に手を出すなんて真似はしてはいない。
それに、もし琉璃を裏切るような真似をしたら毒殺してやるとフリッグに念を押されているせいかもしれないが砕波は浮気はしないし、同棲はしているが今のところパパラッチに嗅ぎ付けられるようなことも砕波がニュースで取り上げられるほどの誤解を招くようなことはされていない。
――琉璃は今、まさに順風満帆の幸せであった。
琉璃は同棲しているアパートに向かっている途中……、
「ゆーりー、今日はなんだかお楽しみ?」
「――わぁ! って……シエル!?」
いきなり声を掛けられ驚いていると、シエルが琉璃の前に顔を出したのだった。
「バイト先近いって知ったからさ、ちょっと顔出してみようと思ったら琉璃がいたから声かけてみたんだ」
「なんだそうだったんだ……」
伯父夫婦の家は琉璃のアルバイト先から逆方向の為ここにシエルが来ている理由がわからなかったが、シエルがそう説明してくれたおかげで納得が行った。
「ゆりー、その顔今日はお楽しみかなと思ったらやっぱりぃ?」
「あっ、ちょっと……!」
スマートフォンの画面に映し出されたメール内容を読まれたことに慌てふためくが、大体の内容を把握されたため遅かった。
「サイハとおデート? 良いねぇ、ついて来てもいい?」
「もう、冗談はやめてってば……」
「あはは、ごめんごめん」
シエルが琉璃をからかってくるため、二人は歩道を歩いている中じゃれ合う。
眼が見えなかった頃はシエルは気を使ってかあまりこういう風にじゃれてこなかったので視力が戻った今、事故が起きる前の昔に戻った様だった。
「でもその様子ならよかったよ……、サイハのやつ芸能界にデビューしたばっかりだからさ。
アンタのことおろそかにしないかちょっと心配だったからさ」
「シエル……」
シエルは安堵の言葉を述べたのち心配事を漏らしてくれた、シエルなりに自分を心配してくれていたのだと思って琉璃は嬉しく思った。
「――まぁ、その様子ならフリッグさんが少し大人しくなると思うから伝えておくよ。
アンタの旦那は浮気をしたり琉璃に冷たくしてませんよ~ってね。」
「あっ、ありがとう……」
実はフリッグが砕波に厳しいのはシエルも把握済みだった、フリッグの口出しがうるさくならない為に琉璃がちゃんと上手くやっていることを報告するとシエルが言うと、琉璃はフリッグの小姑ぶりに苦笑いを浮かべていた。
「まぁ、世間的にリスキーな橋を渡る仕事だと思うけどさ……頑張ってって伝えといてよ」
「シエル……ありがとう。」
芸能界は妙な誤解を招く行動を下手にすればすぐにマスコミが騒ぐ世界だ、琉璃もとばっちり受けないとは限らない世界ではある。しかし砕波は好きでこの道に進んだのでシエルも止めることはしないが心配してくれてはいるのだ。琉璃はその言葉でシエルがちゃんと砕波と拗れることなく仲良くやっているか心配して個人的な行動をしたことに気付いて、感謝の意を述べたのだった。
同棲しているアパートがある分かれ道でシエルと別れた後、琉璃はアパートへと帰宅する。
「ただいま~」
玄関を開けて一言言うと返事は帰ってこない、先程のメールには終わったと言っていたのでもう帰宅していると思っていたがまだ帰ってきていないようだった。
玄関にある靴箱の上には約束の証である“イタチザメ”のモデルフィギュアが飾ってある。
ちゃんと尾ひれの部分も接合している状態で飾ってあるフィギュアを見て、色々なことがあったと思いに耽った。この眼がちゃんと見えた状態でまたフィギュアに触れるのも、琉璃にとって夢のようだった。
――でも、まだ解決できていないこともある……。
「ミコト……」
今だミコトの居場所が掴めない、ミコトの両親も音信不通で連絡も一切取れず更正施設を出た後も家には寄らなかったと言う話だし、ミコトが今どんな状況なのかもわからない。
ミコトには話をしたいことがたくさんあるのに会うことが未だできないのがもどかしく思う。
「ゆり……」
「――!」
すると声を掛けられ、驚いて体が思わず跳ね上がってしまった。
「さっ、砕波さん……!?」
「わりぃ……、声をかけたんだが考え事してたみたいで声かけてみた」
考え事をしていて砕波が帰ってきていることすら気づいていなかった、どうやら自分が帰ってきてから間もなく砕波も帰ってきていたようだった。砕波は後ろ手で部屋のドアの鍵を掛けながらマスクとサングラスと帽子を外した。
「大丈夫……? マスコミや記者に目をつけられていない?」
「まぁ、保険として容姿が分かりにくいようにサングラスかけてマスクして帰ってきたから……」
パパラッチに跡をつけてこられていないか心配して聞くと、一応期待の新人バンドとして一目置かれているあの砕波と分からないような変装はしていたと明かす。
「それより、帰ってきたんだから挨拶が欲しいんだが?」
琉璃に後ろから抱きついてキスをさせてほしいと強請って来る。
「ふふ……お帰りなさい、お疲れ様」
琉璃は労いの言葉を掛けると砕波は自分の方に向かせると琉璃にキスを施してきた。
「――ん……」
「お前も、バイト大変だったんだろ? お疲れ様」
学業と両立させつつ、カフェのバイトを終えてきた琉璃に今度は砕波が労いの言葉を掛けてきた。
「そういや今日ね……ノゼルさんみたいに何でも知ってるお客さんに会ったんだ。」
リビングに向かいつつ、琉璃は何気ない日常の出来事を砕波に話す。
「あぁ、そういや聞いてくれよ……あの二人ノゼルからいらん情報貰ってきやがってた」
「あの二人……?」
「ヨシュアとレモンだよ」
ノゼルの名前を出されたことで二人に先程から買われたことを思い出し、少し怒りながら砕波は二人にからかわれた内容を話す。
「……たく、ノゼルもいらんことばかりあいつらに提供しやがって。ていうか何時の間にあいつら仲良くなったんだよ」
「あはは、仕方ないよ。過去は受け入れなきゃ……」
琉璃も、ノゼルから砕波がぐれて詠寿とも険悪なまま悪行三昧していた頃はクレミオだけでなく色んな子と遊んでいたことは聞いていたのでこれはずっと弄られるネタにされるのも仕方のないことだと苦笑いしながら告げる。
「……」
「どうしたの?」
じっとこちらを見ている砕波を不審に思った琉璃は、なにか悪い事でもあったのかと不審に思い心配になって声をかけた。
「いいや、お前……良く妬かねえよなって思ってさ」
「……?」
砕波は琉璃がこんな話になっても嫉妬をしないことが不思議だと呟く。
「だってよ、むかつかねえの? 俺が色んな奴抱いていたって聞いて……」
砕波はちょっと疑問に思っていたことをぶつけてみた、琉璃はクレミオ相手にも今まで遊び相手として付き合ってきた他の相手にも焼きもちを焼かないのが不思議に思って聞いてみた。
「だってほら……、普通なら自分以外の奴と遊んでいたなんて気に入らねーって思うのが普通なのかなって思ってたからよ」
砕波は普通なら嫉妬をするのではないかと思うところで嫉妬の念を醸し出さない琉璃が不思議だっただけで、別に悪気があったわけではないと弁解する。
「――しないわけ、ないじゃない」
「……?」
琉璃の表情が曇っていたことに砕波は気付いた……。
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