シロワニの花嫁

水野あめんぼ

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本編

第十五話:自問と快楽 *

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「俺も……お前から垂れている媚薬の臭いであてられている。それに砕波が使った媚薬は何度か体を重ねない限り、毒素が抜けないんだ」
「そん、な……」

そして詠寿は、嗅覚が鋭敏なせいで明澄から漏れている媚薬の甘い匂いで自分もおそらくあてられていると詠寿は話す。この媚薬は砕波の言う通り、何度も肌を重ねる行為を繰り返さなければ媚薬の効果は薄れないと詠寿は告げる。処方はそれしかないことを言われ、明澄は言葉を失う。

「王子……」

厳生はすでに詠寿が媚薬の臭いであてられていることに気付いており心配し、声を掛ける。

「――クリア、今夜明澄は俺の部屋で過ごす。朝迎えに来てやってくれ。」
「待って、先、輩……」

クリアに朝自分の部屋に来て明澄を迎えに行ってやって欲しいと命令しているが、セックスしなくてはいけないとは思っていなくて止めてもらうよう明澄は懇願する。クリアは返答を迷うものの……、

「……申し訳ありません、明澄様。朝、必ず迎えに来ます。」

明澄に申し訳なさそうな顔を浮かべて命令を承諾する。

「アリヴはショットを呼んでともに俺の部屋の見張り番、厳生は薬と潤滑剤を持って来てくれ」
「いや、待って……」

二人に命令を下す詠寿に首を振って懇願するが、二人も少し申し訳なさそうに……、

「ーー承知しました。」

詠寿の命令を優先した。

「先輩、や……お願い……ボク、怖……」

薬を盛られているからとはいえこんな浅ましい状態で憧れていた詠寿に抱かれたくない。
しかも自分にはそれ以前に性的トラウマがある事を言おうとするが……、

「知ってる、でもこれしか方法がないんだ。分かってくれ……」

「……?」

詠寿はそんなことは承知していると明澄の言葉を遮り、媚薬の効果を薄めるにはこれしかないことを分かって欲しいと願い出る。詠寿が何故明澄が性的トラウマを持っていることを知っているのか、明澄はこの時はまだ知るよしもなかった。

「――疼いてどうにかなりそうだろ? とんでもない物を飲ませられたな……」
「……っ」

媚薬を飲まされ、身体が疼いてどうしようもないだろうと言われると反論が出来なかった。可哀そうにと呟き、詠寿は明澄があんな目に遭ってしまったことに悲痛の表情を浮かべていた。しかし、同時に何かの興奮を抑えているように顔を赤くしていることにも気づいた。

「でも、傷心のお前をこんな風に抱くなんて……でも嫉妬でどうにかなりそうで、しかも俺もこの薬の臭いにあてられたこともあって俺もいろんな感情が渦を巻いてどうにかなりそうなんだよ」

本当はただでさえ傷心している明澄に追い打ちをかけるような真似なんてしたくない。

 でも砕波に好き勝手されたのかと思うと嫉妬と怒りが込み上げきて、薬のにおいを嗅いでしまったせいで明澄を抱きたいという欲望に駆られるなど自分の中で消化しきれていない感情が渦を巻いているのだと詠寿は苦しそうな顔で伝えてくる。

そう話をしていると詠寿の部屋の扉までたどり着く。
両手が塞がっている為アリヴが詠寿の代わりにドアを開け、厳生は潤滑剤を取りに行った。

詠寿は明澄をベッドに寝かせると、明澄の唇にキスを施してきたのだ。

ーーちゅっ

「んぅ……」

くちっ……ピチャ

「んぅ、ふっ……ん、んっ……」

詠寿の舌がいやらしい蜜音と共に明澄の口に侵入し、明澄の舌の味を丁寧に堪能してくる。砕波に薬を飲ませるために無理矢理キスをされたが、砕波と違うキスだ。決して乱暴ではない、だった。

ひくん……

「――んぁっ」

解放されたが、キスひとつではしたなく欲望を放ってしてしまいそうになりそうだった。それほど自分の身体は媚薬に冒されている。

――カチャン

「失礼します、詠寿様……薬と潤滑剤を。」
「ーーご苦労。」

「ーーでは、失礼します。」

自分が要求したものを速攻で持って来てくれた厳生に労いの言葉を言いながら、薬と潤滑剤を貰う。
厳生は一礼した後、すぐ詠寿の部屋を退出した。

――ゴクッ

――キィ……ン

詠寿は薬の蓋を開けてそれを一気に飲み干す。
すると、足が何かに反応するかのように光ると詠寿の下半身は鮫の下半身ではなく人間の下半身へと姿を変えた。

「――っ」

あぁ、本当に自分は本当に今から彼に抱かれるのだと明澄はぼんやりとした頭の中でそう思った。

「ひどくはしない……約束する」

そう言いながら腰元に着けていたベルトを外すと、詠寿はベッドで横になっている明澄に覆いかぶさって来た……。

ちゅっ……

――かぷっ

「んぁっ、ひっ……!」

詠寿は、明澄の額にキスを落とした後、首筋と肩当たりの部分を甘噛みしてくる。噛まれるたびにそこが甘く痺れる、歯を立てていないのはまだ優しいのだろうか。

「――やめ、せんぱ、い……」
「あいつがお前を触っていたのだと思うとどうにかなりそうだ、明澄……お前が欲しい。欲しくてたまらない」

詠寿は砕波に対しての嫉妬をさらけ出した後、明澄のモノを弄り始めた。

シュッシュッ……

「はぅ、や、はぁ、あぁ……」
「感じているのか……可愛いな、この乳首も……」

――ちゅぷっ

「――あっ、ひぁ……あっ、あぁ……!」

詠寿は明澄の胸の飾りを明澄のすっかり勃ちがっているモノを弄りながら、吸ったり舐めたしてきた。
いたずらにちろちろと舌で胸の突起を弄ばれる。

「あっ、あっ……」
「ああ、かわいいよ……、んっ、は……明澄」
「やっ、せんぱい……」

薬を飲まされているせいもあってか、そんなことをされるたびに身体は過敏に反応してしまう。熱い吐息を零して詠寿は明澄の性器に顔を寄せた。

――ちゅっ、ぺろぺろ……

「――あぁっ、やっ! そんなところ……!」

ーーびくびく!

今度は快感で明澄のそそり勃っているモノを詠寿は舐め始める、詠寿の舌が自分のモノを上に沿って舐めてくるたびに身体は跳ねあがった。

「あっ、あっ……そんなところ、咥えたら……」

いやらしい音を立てて愛撫される己の性器を明澄はぞくぞくと震えながら見つめる。
そそり勃ったモノを咥えられ、愛撫され明澄も限界が来ていた。

「イきそうか?」
「やっ、ダメッ! 離して、くださっ……!」

詠寿の口内なんかで達してしまうのが恥ずかしくて口を放してくれるよう懇願するが……、

「いいんだ、明澄。イっても……」
「ひっ、やっ……や、あっ、――っ」

――ドクンッ

大きく震え逃げようともがく明澄の体を押さえつけ、詠寿はより深く明澄の性器を咥える。
それに声にならない悲鳴を上げてビクビクと腰を痙攣させた明澄は、そのまま詠寿の口の中に精を放った。

「あっ、うそ……」

詠寿の口内で精を放ってしまったショックで快感に震えながらも明澄は放心する。
放たれた精にうっとりと目を細めてそれをごくりと音を立てて嚥下するその音に、明澄は快感か恐怖か、ぞくりと体を震わせた。精を放ったというのにまだ薬の効果が切れていないのか体がまだ甘く痺れる。

「――明澄……、少し気持ち悪いかもしれないが我慢してくれ」
「――えっ?」

――ツプッ

「ーーんひぃ!」
 
詠寿はいつの間にか手に取っていた潤滑剤を手に持つとそれを手になじませて指を明澄の秘部に侵入させた。

ぽろぽろ……

「やっ、やっ……せん、ぱい」

砕波にあの忌々しい媚薬を秘部に入れられた後、砕波に秘部を指で犯された恐怖が再燃した。
明澄は涙を流しながら首を横に振って懇願する。

「――大丈夫だ、俺は

詠寿は明澄に優しく声を掛けて心を落ち着かせ、明澄の内部を弄り始める。

つぷっ、くちゅ……

「あっ、んぁ……やっ、あぁ……」

指が中でうごめくたびに明澄の身体は跳ね上がって嬌声を上げる。

――くちゅっ

「ひぃ……!?」

――突然、明澄の体に熱のようなものが走った。詠寿の指が明澄の前立腺を刺激したのだ。

「ここ……イイ所か」

恍惚な表情を浮かべながら詠寿は明澄の前立腺を見つけたことに笑みを浮かべる。

「明澄……いいか?」
「あっ……待っ、て、せんぱい」

詠寿は指を引き抜くとそそり勃っている自分の陰茎を明澄の秘部に宛がう。
恐怖か期待か、詠寿の陰茎が自分の窄まりに宛がわれたのだと気付くと体が震えあがる。

「――大丈夫だ。力を抜け……、じゃないときついのはお前だ」

――ツプッ

そう言い放つと詠寿は明澄の中に侵入してくる。

――ギチチッ

「――いぁ……」
「明澄……力抜け」

緊張で委縮している為、明澄の身体が詠寿の陰茎の侵入を拒もうとする。詠寿は明澄の耳元でそう囁いたが緊張が解ける気配がない。

「――んっ」
「んぅ、ふっ……ん、んっ……」

詠寿は侵入を許そうとしない明澄の身体の緊張を解こうとしているのかキスをしてきた。
深く舌をねじ込まれて息苦しくなってきたその時……、

――ずぷぷっ

「あぁ――っ」

詠寿の陰茎が完全に明澄の中に侵入を果たしたのだった、明澄は指とは比べ物にならない太さとそれをねじ込まれる痛さに絶叫を上げた。

「あっ、やっ、やっ……」
「明澄……動くぞ」

痛みだけではなく、快感も襲ってきて明澄は戸惑いを隠せない。
内部に侵入されたことに愕然としていた明澄に、詠寿は身体を揺さぶり始めると囁いた。

――ギッ、ギッ

「あっ、やぁっ……あ、あぁっ!」

詠寿は律動を開始した途端ベッドが軋み始める。明澄の華奢で白い裸体が最奥を貫かれるたびにびくびくと跳ね上がる。詠寿は細い腰を持つと、ゆっくり腰を動かしていく。

お互いの甘い吐息が混じりながら、ベッドの軋みが激しくなる。

「やぁ、やめて……どうして……こんな……」
「明澄……」

 十二歳の時、男に襲われて未遂だったもののセックスへの恐怖を埋め込まれた後男女問わずちゃんとしたセックスなんてしたことがない。したくても出来なかったのだ。

特に男と付き合おうと言われて付き合っても、相手の事は悪く思っていなくても体を求められた瞬間あのトラウマを植え付けた男の影がちらついて恐ろしくてセックスなんて出来やしなかった為付き合ってきた男達とは上手く行った試しなんてなかった。

――だから、詠寿も憧れだけで終わると思っていたのに……。

そのはずだったのに……。

――どうして、どうして……ボクは……彼に抱かれているんだろう?

素性を知ったからという理由で軟禁され、彼のいとこに勝手に気に入られて挙句には媚薬を飲まされて、過去のトラウマでセックスへの恐怖を持っているはずなのに薬の効果に抗えず恐怖を拭え切れずにいるものの……こうして今、自分は彼に抱かれている。

――どうしてこんなことされているのに……

彼を……嫌いになれないのだろう?

「明澄……」

明澄は心の中で自問しながら、薬に犯された快感と与えられる快楽に溺れていく。
快楽に溺れつつも、彼は憂いに満ちた表情と優しい声で明澄に囁きかける。

――ドクンッ

そんな彼になぜか胸が熱くなっている自分がいる。

 先程、そのトラウマを抉られるかのように砕波たちに襲われかけた為に恐怖は倍増していたはずなのに身体はそれを裏切るかのように詠寿を欲する。憧れていた詠寿に抱かれているからなのか、それとも他に理由があるのか、そんな自分に明澄は戸惑いと疑問を隠せなかった。

「――んぅ、ふっ、ん、んっ……」
「――明澄、そろそろ……俺も……」

そろそろ達してしまいそうになると詠寿も限界が来ていたらしく腰を振るスピードを速めた。
詠寿は明澄を抱きしめる力を強めてきて、まるで絶対に手放さないと言うような強い抱擁だった。

「――明澄っ!」
「あっ、ひぃ……あぁ、あぁあ――!」

明澄も奥を突かれ限界を感じて一際高い嬌声を上げて果てると、少しして詠寿も明澄の中に射精したのだった。
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