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本編
11:涙を乾かした後、毒蛇の罠にかかってしまった。
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「おい……?」
朧は七歩の様子を不審に思い、声を掛けるが……
「いや……、嫌、嫌!!」
高校生の顔写真を見た瞬間、新聞から離れて蒼白の表情を浮かべて嫌悪感を現す言葉を連呼する。
「おい、大丈夫か……!?」
取り乱す七歩の様子を見て朧は慌てて声を掛ける。
しかし……七歩は、
「いやぁ! 近づかないで!! 嫌あああ――!」
「おいっ、落ち着け! あの男に見つかる!」
声をあげれば久保井の追手が迫ることに焦りを感じて朧は声を掛けて七歩を宥めようとするが七歩は落ち着く気配を見せない……。
「……」
取り乱した原因は新聞に載っていた被害者の高校生の顔写真、朧は七歩から新聞を遠ざけるためにその新聞を投げた。
そして……、
「おい! 落ち着けっつってんだろ!!」
「――っ」
肩を掴んで声を張り上げて活を入れた、途端に七歩は取り乱すのを止めて落ち着きを取り戻したのだった。
「……あっ」
七歩は朧が声を掛けたおかげで漸く正気に戻った……。
「詮索するようで悪いけど……もしかしてあの新聞に載っていた奴ら、お前と関係あるのか?」
朧はあの高校生の顔写真を見て七歩が取り乱したのを見てもしかして知り合いか何かなのか聞いてみた。
「……」
七歩は最初沈黙を通していたが……、
「あのね、朧さんが寝ている間……少し記憶を取り戻したんだ」
「ーー!」
朧が寝ている間に自分の事を少し思い出したと七歩は話した。
「でも……」
やはり何か言いづらいものがある様で朧は……、
「やっぱいい、無理して話すな。」
七歩に無理に言いづらいことを話さなくていいと言った。
それに何より、七歩があの高校生3人を見た瞬間体が震えあがっている為深く追求すれば七歩を傷つけると思ったからの判断でもあった。
(不良高校生ら多分、七歩に……)
そして七歩の怯え方からして殺された不良高校生は何かしら七歩に関わっていることを朧は察した。
朧はこれ以上新聞の記事を見せたら七歩が取り乱すと判断し、その新聞を七歩の目に映らないよう捨てたのだった。
「ここには多分なんもねえ、行こうぜ」
「うん……」
何もないと判断した七歩達は部屋を出て地下の探索の続きをし始めたのだった。
一室一室部屋を探索していた時……、
「あっ、ここ……鍵掛かっている」
鍵が掛かっていた部屋は『勝手に入るな』と言う表札が飾ってあり、いかにも怪しそうだった。
今までの地下の部屋は鍵が開いていたのでここだけ鍵が掛かっていることに怪しさを感じずにはいられなかった。
「鍵探した方がいいんじゃないかな……?」
「まて、この部屋……久保井あいつが管理しているんだろうからあいつが手元に持っているんじゃないのか?」
この部屋は久保井にとって聖域となる部屋だとすればその部屋の鍵は肌身離さず持っているはずだと朧は言う。
朧の言う通りだとすれば、久保井がこの部屋に入るのを見越して入るか、直接久保井を襲って鍵を奪うかのどっちかになるがどちらも危ない賭けだと言うのは間違いない。
そう考えながら他に開いている部屋を探し回っていた時だった……。
二人はある部屋にたどり着いたのだった。
「なんだこりゃあ?」
異常な部屋の光景に二人は目を見張った。
何枚も何枚も……一室の壁びっしりに一人の少年の写真が貼ってある。
しかも少年の目線がカメラ目線に向かっていたり向かっていなかったりする。
久保井の部屋なのだろうか、ここまで壁びっしり貼る行為はまさしく……
「ドン引き、ストーカーの部屋そのものだな。」
「気持ち悪い」
一方的に異常な好意を向けるストーカーの典型的な部屋そのものだった、この部屋は久保井の部屋なのだろうか……この部屋の光景に朧は呆れ、七歩はこの光景に今すぐ部屋を後ずさりしたい気持ちになった。
この少年は片思いの相手か久保井の恋人だろうか、同じ少年が映っている写真ばかりだ。
「久保井ってやつぁ、この写真の坊やに執着でもしてたんかな……?」
同じ少年の写真ばかり飾っている様子から見て、この部屋の主が久保井なのだとしたら久保井はこの少年に余程執着していたことになるのだろう。
「この子、首輪ついてる……Ωだったのかな?」
写真に写っている少年の首元に首輪がついてあることからこの少年はΩだということは分かった。
「? ……日記」
肘に何かがぶつかり、その正体は一つの日記だった。
「……見てみようぜ?」
朧はその日記の内容を読んでみようと話した……。
そして、言われるまま日記のページを開くとこう書かれていた。
〈可愛い男の子に会った、僕が医学部の研究員として出入りする大学の子なんだって……。
よく見るとΩで首輪をしていた。名前を尋ねると“森崎累”と名乗った。Ωは基本小柄の子が多いからかな? 大学生より下だと思ったよ……。僕は分からないところがあれば教えると言って連絡を交換し合った。〉
1ページ目にはこう書かれていた。森崎累……おそらく壁の一面に貼りつくされた写真に写っている少年だろう。
〈累は真面目だった、Ωであることで周りから認められないのに……そんなひたむきな彼の姿に僕はなぜか目を離せない。彼はこの大学で何をしたいのか尋ねた。Ωの特効薬の開発をしたいんだって……発情期を迎えて特効薬を服用してせめて休んで三日くらいで収まるようにまで制限したいそうだ。確かにΩは就職に不利だからなぁ……〉
数ページくらい間が空き、書かれている部分を見つけると今度はこのようなことが書かれていた。記述によると累と言う少年は社会におけるΩの扱いに不服だったようだ。
「……」
「次は……?」
そしてまたページに間が空いて、書かれている部分を見つける。
〈彼が発情期を迎えた……彼はトイレにこもっていたがフェロモンがだだ漏れだった。αの医学生が累のいる個室に群がっていた。その時にβの教授たちやヒート抑制剤を飲んでいたαの教授たちが医学生から累を保護して累に特効薬を打った。欲しい……この時累が好きだと、あれは一目ぼれだったと自覚した、僕は累を番にしたい。〉
記述によると、累と言う少年はどうやら発情期を迎えたせいでちょっとしたトラブルがあった様だった。そしてこの日記の主に薄々と少年に対する執着が見え隠れしていることが分かる。
また違うページを開くと……、
〈……累が他の男と付き合っていた。相手はβだった……どうして? そんな奴が良いの? 俺は君の事を……そう問い詰めると彼は僕に言った。「僕の好きな人は僕が決める」って……「貴方なんか好きじゃない」「αなんて大嫌い」って……どうして? こんなに君を好きなのに! 好きなのに、好きなのに、好きなのに、好きなのに!!〉
累と言う少年が他の男性と付き合っていたことに日記の主が激怒している文章が見つかり、累という男の子は実はα嫌いで付き合っていたβの男子をとると日記の主に告げたらしい。
「おい、こっからヤバくなってねぇか?」
「累、αに対して嫌な思い相当したんだね……」
最後の文面からしてここから日記の主の何かが壊れ始めていることに二人は気付き始める。
そして、次の文章には……
〈嘘だ、嘘だ、嘘だ……! 累が死んだ……!? 交通事故で累が死んだ!? どうしてだ……どうしてなんだ! 累……累……〉
見つけた書かれているページにはこうしか書かれておらず次のページをめくると……、
〈いいこと思いついた……累を僕が治せばいいんだ。生き返らせればいいんだ。生き返らせるためには体が必要だよねえ? だったら……累の身体を作ってあげなきゃ……〉
「「――!?」」
日記の主の思考がここで完全に狂い始めていることに二人は気付く。
〈大学病院の遺体を切り取っていた事バレて学会追放された……僕は悪い事なんてしていない、これは崇高な、累を生き返らせるための必要な研究なんだ……みんなわからず屋な馬鹿ばかりだ。……しかし幸運かすぐいいところが見つかった、この屋敷の若様は僕に研究所を与えてくれた。「Ωの特効薬の研究を続ける」条件で……〉
最後のページにはこう書かれていた……。
「……狂ってる」
「大学病院のお偉いさんの判断の方が正しいだろこれ……」
二人は日記の感想を述べて、日記の主の思考は到底理解できないと言った。
「この日記書いた人、間違いなくあの人だよね?」
この日記を書いた人物はもう二人は悟っていた。
「もう行こうぜ……、この部屋にいたって気持ち悪ぃだけだ」
「そうですね。」
そう言って二人は久保井が使っていたと思われる部屋を後にした。
そして次の部屋はやけに広く、他の部屋と違って設備も科学的な部屋だった。
しかも部屋の中央には手術室の診察台のような物と上には手術室のライトがある。
部屋の中央にある手術台は血に汚れている。
「この部屋だけ随分違うな……」
今までの部屋と雰囲気が違うのが余計に怪しかった、この様子だと……
「でも、ここに特効薬あるかもしれない」
七歩はそう思っていた。
そして奥に怪しい部屋があったのを七歩は見つけた。
「この部屋……」
――ガシャン!!
「――!?」
ドアノブに触ろうとするとドアが少しだけ開き、手が現れ七歩の手首をつかみ部屋の中に引っ張った。
「――やめ、放せ! 朧さん……!」
「! ――おい!?」
叫び声をあげるものの、遅かった……。
七歩は誰かに連れられ、別室に閉じ込められてしまった。
朧もそれに気付いたが、時すでに遅しで内側から鍵を掛けられた。
七歩を別室に引きずり込んだ相手はもうわかっていた……。
「マジキチ医者……! ーーてめえ!!」
――ドンドン!
朧は声をあげてドアを乱暴に叩いて久保井を呼んだ。
「んふふふふふふっ、野良犬……さっきのお返しだよ。七歩様はこっちで預かった。大丈夫、何もしてないさ。今はね……?」
久保井は朧をせせら笑い、七歩は自分の手中にあることを告げた。
ガシャン!
「――!?」
ビー! ビー!
すると自分たちが入って来たドアが急に閉まり、急に警報が作動した。
「早くおいでよ、じゃないと数分後にトラップが発動して火達磨確定だよ?」
「――!?」
そして久保井はこの部屋は侵入者の為に起爆トラップが仕込んである事を話した。
「それに七歩様はお前といていいご身分の方じゃないんだよ、野良犬はそこで粉々に吹き飛ぶのがお似合いさ。」
「――てめえ!」
久保井は挑発し、七歩は朧といて良い身分じゃないと告げる。
「悔しかったらその部屋を出てごらん。それじゃあ、俺は七歩様と大事な話があるんでね……」
「――まっ、待て!」
その言葉の後、久保井の声は聞こえなくなった。
「クソ……!」
朧は焦っていた、また小夜人の悲劇を繰り返すのではないかと……。
――ドォン!
試しに猟銃を撃ってみるものの、ドアは頑丈で開く気配がない。猟銃の弾は今さっき撃った分で尽きてしまった。
「――クソ……! 絶対抜け出すからそれまで殺されるなよ!?」
そして起爆装置が発動する前になにか手立てはないか棚を探りつつ、自分が来るまで七歩が久保井に殺されないことを祈った。
朧は七歩の様子を不審に思い、声を掛けるが……
「いや……、嫌、嫌!!」
高校生の顔写真を見た瞬間、新聞から離れて蒼白の表情を浮かべて嫌悪感を現す言葉を連呼する。
「おい、大丈夫か……!?」
取り乱す七歩の様子を見て朧は慌てて声を掛ける。
しかし……七歩は、
「いやぁ! 近づかないで!! 嫌あああ――!」
「おいっ、落ち着け! あの男に見つかる!」
声をあげれば久保井の追手が迫ることに焦りを感じて朧は声を掛けて七歩を宥めようとするが七歩は落ち着く気配を見せない……。
「……」
取り乱した原因は新聞に載っていた被害者の高校生の顔写真、朧は七歩から新聞を遠ざけるためにその新聞を投げた。
そして……、
「おい! 落ち着けっつってんだろ!!」
「――っ」
肩を掴んで声を張り上げて活を入れた、途端に七歩は取り乱すのを止めて落ち着きを取り戻したのだった。
「……あっ」
七歩は朧が声を掛けたおかげで漸く正気に戻った……。
「詮索するようで悪いけど……もしかしてあの新聞に載っていた奴ら、お前と関係あるのか?」
朧はあの高校生の顔写真を見て七歩が取り乱したのを見てもしかして知り合いか何かなのか聞いてみた。
「……」
七歩は最初沈黙を通していたが……、
「あのね、朧さんが寝ている間……少し記憶を取り戻したんだ」
「ーー!」
朧が寝ている間に自分の事を少し思い出したと七歩は話した。
「でも……」
やはり何か言いづらいものがある様で朧は……、
「やっぱいい、無理して話すな。」
七歩に無理に言いづらいことを話さなくていいと言った。
それに何より、七歩があの高校生3人を見た瞬間体が震えあがっている為深く追求すれば七歩を傷つけると思ったからの判断でもあった。
(不良高校生ら多分、七歩に……)
そして七歩の怯え方からして殺された不良高校生は何かしら七歩に関わっていることを朧は察した。
朧はこれ以上新聞の記事を見せたら七歩が取り乱すと判断し、その新聞を七歩の目に映らないよう捨てたのだった。
「ここには多分なんもねえ、行こうぜ」
「うん……」
何もないと判断した七歩達は部屋を出て地下の探索の続きをし始めたのだった。
一室一室部屋を探索していた時……、
「あっ、ここ……鍵掛かっている」
鍵が掛かっていた部屋は『勝手に入るな』と言う表札が飾ってあり、いかにも怪しそうだった。
今までの地下の部屋は鍵が開いていたのでここだけ鍵が掛かっていることに怪しさを感じずにはいられなかった。
「鍵探した方がいいんじゃないかな……?」
「まて、この部屋……久保井あいつが管理しているんだろうからあいつが手元に持っているんじゃないのか?」
この部屋は久保井にとって聖域となる部屋だとすればその部屋の鍵は肌身離さず持っているはずだと朧は言う。
朧の言う通りだとすれば、久保井がこの部屋に入るのを見越して入るか、直接久保井を襲って鍵を奪うかのどっちかになるがどちらも危ない賭けだと言うのは間違いない。
そう考えながら他に開いている部屋を探し回っていた時だった……。
二人はある部屋にたどり着いたのだった。
「なんだこりゃあ?」
異常な部屋の光景に二人は目を見張った。
何枚も何枚も……一室の壁びっしりに一人の少年の写真が貼ってある。
しかも少年の目線がカメラ目線に向かっていたり向かっていなかったりする。
久保井の部屋なのだろうか、ここまで壁びっしり貼る行為はまさしく……
「ドン引き、ストーカーの部屋そのものだな。」
「気持ち悪い」
一方的に異常な好意を向けるストーカーの典型的な部屋そのものだった、この部屋は久保井の部屋なのだろうか……この部屋の光景に朧は呆れ、七歩はこの光景に今すぐ部屋を後ずさりしたい気持ちになった。
この少年は片思いの相手か久保井の恋人だろうか、同じ少年が映っている写真ばかりだ。
「久保井ってやつぁ、この写真の坊やに執着でもしてたんかな……?」
同じ少年の写真ばかり飾っている様子から見て、この部屋の主が久保井なのだとしたら久保井はこの少年に余程執着していたことになるのだろう。
「この子、首輪ついてる……Ωだったのかな?」
写真に写っている少年の首元に首輪がついてあることからこの少年はΩだということは分かった。
「? ……日記」
肘に何かがぶつかり、その正体は一つの日記だった。
「……見てみようぜ?」
朧はその日記の内容を読んでみようと話した……。
そして、言われるまま日記のページを開くとこう書かれていた。
〈可愛い男の子に会った、僕が医学部の研究員として出入りする大学の子なんだって……。
よく見るとΩで首輪をしていた。名前を尋ねると“森崎累”と名乗った。Ωは基本小柄の子が多いからかな? 大学生より下だと思ったよ……。僕は分からないところがあれば教えると言って連絡を交換し合った。〉
1ページ目にはこう書かれていた。森崎累……おそらく壁の一面に貼りつくされた写真に写っている少年だろう。
〈累は真面目だった、Ωであることで周りから認められないのに……そんなひたむきな彼の姿に僕はなぜか目を離せない。彼はこの大学で何をしたいのか尋ねた。Ωの特効薬の開発をしたいんだって……発情期を迎えて特効薬を服用してせめて休んで三日くらいで収まるようにまで制限したいそうだ。確かにΩは就職に不利だからなぁ……〉
数ページくらい間が空き、書かれている部分を見つけると今度はこのようなことが書かれていた。記述によると累と言う少年は社会におけるΩの扱いに不服だったようだ。
「……」
「次は……?」
そしてまたページに間が空いて、書かれている部分を見つける。
〈彼が発情期を迎えた……彼はトイレにこもっていたがフェロモンがだだ漏れだった。αの医学生が累のいる個室に群がっていた。その時にβの教授たちやヒート抑制剤を飲んでいたαの教授たちが医学生から累を保護して累に特効薬を打った。欲しい……この時累が好きだと、あれは一目ぼれだったと自覚した、僕は累を番にしたい。〉
記述によると、累と言う少年はどうやら発情期を迎えたせいでちょっとしたトラブルがあった様だった。そしてこの日記の主に薄々と少年に対する執着が見え隠れしていることが分かる。
また違うページを開くと……、
〈……累が他の男と付き合っていた。相手はβだった……どうして? そんな奴が良いの? 俺は君の事を……そう問い詰めると彼は僕に言った。「僕の好きな人は僕が決める」って……「貴方なんか好きじゃない」「αなんて大嫌い」って……どうして? こんなに君を好きなのに! 好きなのに、好きなのに、好きなのに、好きなのに!!〉
累と言う少年が他の男性と付き合っていたことに日記の主が激怒している文章が見つかり、累という男の子は実はα嫌いで付き合っていたβの男子をとると日記の主に告げたらしい。
「おい、こっからヤバくなってねぇか?」
「累、αに対して嫌な思い相当したんだね……」
最後の文面からしてここから日記の主の何かが壊れ始めていることに二人は気付き始める。
そして、次の文章には……
〈嘘だ、嘘だ、嘘だ……! 累が死んだ……!? 交通事故で累が死んだ!? どうしてだ……どうしてなんだ! 累……累……〉
見つけた書かれているページにはこうしか書かれておらず次のページをめくると……、
〈いいこと思いついた……累を僕が治せばいいんだ。生き返らせればいいんだ。生き返らせるためには体が必要だよねえ? だったら……累の身体を作ってあげなきゃ……〉
「「――!?」」
日記の主の思考がここで完全に狂い始めていることに二人は気付く。
〈大学病院の遺体を切り取っていた事バレて学会追放された……僕は悪い事なんてしていない、これは崇高な、累を生き返らせるための必要な研究なんだ……みんなわからず屋な馬鹿ばかりだ。……しかし幸運かすぐいいところが見つかった、この屋敷の若様は僕に研究所を与えてくれた。「Ωの特効薬の研究を続ける」条件で……〉
最後のページにはこう書かれていた……。
「……狂ってる」
「大学病院のお偉いさんの判断の方が正しいだろこれ……」
二人は日記の感想を述べて、日記の主の思考は到底理解できないと言った。
「この日記書いた人、間違いなくあの人だよね?」
この日記を書いた人物はもう二人は悟っていた。
「もう行こうぜ……、この部屋にいたって気持ち悪ぃだけだ」
「そうですね。」
そう言って二人は久保井が使っていたと思われる部屋を後にした。
そして次の部屋はやけに広く、他の部屋と違って設備も科学的な部屋だった。
しかも部屋の中央には手術室の診察台のような物と上には手術室のライトがある。
部屋の中央にある手術台は血に汚れている。
「この部屋だけ随分違うな……」
今までの部屋と雰囲気が違うのが余計に怪しかった、この様子だと……
「でも、ここに特効薬あるかもしれない」
七歩はそう思っていた。
そして奥に怪しい部屋があったのを七歩は見つけた。
「この部屋……」
――ガシャン!!
「――!?」
ドアノブに触ろうとするとドアが少しだけ開き、手が現れ七歩の手首をつかみ部屋の中に引っ張った。
「――やめ、放せ! 朧さん……!」
「! ――おい!?」
叫び声をあげるものの、遅かった……。
七歩は誰かに連れられ、別室に閉じ込められてしまった。
朧もそれに気付いたが、時すでに遅しで内側から鍵を掛けられた。
七歩を別室に引きずり込んだ相手はもうわかっていた……。
「マジキチ医者……! ーーてめえ!!」
――ドンドン!
朧は声をあげてドアを乱暴に叩いて久保井を呼んだ。
「んふふふふふふっ、野良犬……さっきのお返しだよ。七歩様はこっちで預かった。大丈夫、何もしてないさ。今はね……?」
久保井は朧をせせら笑い、七歩は自分の手中にあることを告げた。
ガシャン!
「――!?」
ビー! ビー!
すると自分たちが入って来たドアが急に閉まり、急に警報が作動した。
「早くおいでよ、じゃないと数分後にトラップが発動して火達磨確定だよ?」
「――!?」
そして久保井はこの部屋は侵入者の為に起爆トラップが仕込んである事を話した。
「それに七歩様はお前といていいご身分の方じゃないんだよ、野良犬はそこで粉々に吹き飛ぶのがお似合いさ。」
「――てめえ!」
久保井は挑発し、七歩は朧といて良い身分じゃないと告げる。
「悔しかったらその部屋を出てごらん。それじゃあ、俺は七歩様と大事な話があるんでね……」
「――まっ、待て!」
その言葉の後、久保井の声は聞こえなくなった。
「クソ……!」
朧は焦っていた、また小夜人の悲劇を繰り返すのではないかと……。
――ドォン!
試しに猟銃を撃ってみるものの、ドアは頑丈で開く気配がない。猟銃の弾は今さっき撃った分で尽きてしまった。
「――クソ……! 絶対抜け出すからそれまで殺されるなよ!?」
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