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本編
05: 暴れ馬を知能で駆使して退ける
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「……どういう事?」
七歩は何故“メリーさんの羊”が次へ進む鍵なのか分からず、朧に聞く。
「この床の変な模様を見てみろ、それと星座記号の奴と見比べてみな」
七歩は朧に言われた通りに星座記号と床の大きな模様を見比べてみる、よく見ると床の模様が牡羊座の星座記号と一致するのだ。
「きらきらでふわふわ……って、――あっ!」
朧の言いたかったことが七歩にも漸くここで分かった。
「そういうこった、あとは羊が出てくるピアノ曲を探し出して弾いてやればいいだけの話だ……」
「きらきらって星の事でふわふわって羊の毛並みのことだったんだ。」
つまりは不思議な模様が大きく浮かぶ床は牡羊座の星座記号を象っており、牡羊座、つまり羊を題材にした曲を奏でることがこの部屋の鍵となっていたというのが答えだと朧は分かったのだ。
「この屋敷の主は俺達を試しているのもあるかもしれないが、こういう仕掛けには凝るタイプなのかもな……」
朧はそう言いながら次の部屋に続く扉を開けた。
「――おっ、今度は何だ? 人形ばかりの部屋だ。」
すると次は、人形だらけの部屋に二人はたどり着いた。
「でもなんだか悪趣味だな……カモの人形の胸辺りにナイフが突き刺さっている」
ミニチュアのような土台にカモの人形が置いてあり、そのカモの人形には胸辺りにナイフが突き立ててあり、綿が出ていた。
そしてその土台の足元に表札があり、七歩はそれに気づいて表札を読み上げる。
「〈午後3時ごろ家にいた母カモが殺された、母ガモ殺しの犯人を捜せ、犯罪者には被害者と同じ裁きを下せ〉……だって。」
「今度は犯人探しかい……たく、この人形の扱いからしてここの主の趣味がよく分かるぜ」
そう皮肉りながら朧は何かないか辺りを見渡す、そしてすぐ近くに立札があり一列に並んだ台に子ガモの人形が乗ってある。そこにあった立札を朧が読んでみると……、
「〈彼らは証人の子ガモ達、彼らの証言をもとに犯人を導き出せ〉……だとよ」
声に出して立札を読み上げ、呆れながら朧は教える。
「――あっ、よく見たら子ガモの人形の首元にタグがついている。……あっ、この台よく見たら文字が書いてある表札がはめ込まれている」
七歩が小鴨の人形を調べてみると長男から末っ子と書かれたタグが子ガモの首元についていることや子ガモが乗っている台に文字が書かれている表札があることに気付く。
「――んで、あっちの次の部屋の扉に続く方に並んでいる台にある人形はさしずめ犯人候補ってわけか」
朧が見つけた犯人候補と思われる台には左から、アヒル、牛、ロバ、犬のぬいぐるみが並んでいた。
そして、そのすぐ近くにナイフが台座に置いてある。
「これで犯人のぬいぐるみにナイフを突き立てろってこと……?」
「だろうな、どっちにしろここから出るには解かなきゃいけねえからさっさと済ませようぜ」
七歩達はそれぞれの子ガモ達の証言を確認することにした。
長男子ガモの証言は〈犬さんはママが死ぬ少し前の時間にお隣の鶏さんとお話をしてたよ〉と、次男子ガモには〈ママを殺した犯人は菜食主義者だった〉と書かれ、長女子ガモは〈アヒルさんが水浴びしていたのを見かけたわ〉と、次女子ガモは〈牛さんはいつも近くのスーパーで2時くらいに買い物をするはずなんだけど今日は見かけてないなぁ〉と、そして末っ子子ガモは〈コウノトリさんから聞いたけど、ロバさんは風邪をひいて一歩も外出ていないんだって〉とそれぞれ書かれていた。
「消去法でいえば……多分、“牛”だ」
「――えっ?」
朧は消去法で考えれば、“牛”に辿り着くと告げる。
「――証言をもとにして考えてみろ、犬はニワトリとだべっていたんだからニワトリが証人になるから無実。アヒルは水浴びしていたのを長女が見かけてるし、末っ子はコウノトリから聞いた話でロバが一歩も外を出ていないとコウノトリが証言してるんだから犯人だと考えにくい。次女の話は一見アリバイがあるように見えて牛がその場いたという証言は全くない、証人になる人物が一人もいない……だったら、子供たちのいないその間を狙ってカモの家で母親を殺したと考えられるだろ」
「あっ……」
朧は牛が犯人と睨む理由を詳しく説明すると、七歩はそれに納得する。
「唯一家にいて犯人をちらっと見たと思われる次男は『犯人は菜食主義者』と言っていただろ? 犬は肉を好む雑食、アヒルは虫や魚も食うから菜食主義者じゃない。残るはロバと牛だがロバは風邪引いて一日中家にいたことをコウノトリが証言してるんだから……残るは牛だ」
「そうか……、菜食主義者って草食動物の事か。」
次男の子ガモのところに書かれていた文章の意味を、七歩はここで理解する。
「じゃあ、牛にナイフを突き立ててみっか。」
――ズシャッ
朧はそう言うと、すぐさまナイフを牛のぬいぐるみに容赦なく突き立てる。
――カチッ
すると何かを押したような手応えがあった……。
カチャッ……
そして何かを押す音が聞こえたのち、次の部屋に進む扉の鍵が聞こえた音が響いた。
「――あっ、開いた」
「合ってた様だな……良し、次行くぞ」
正解の動物に裁きを下したとみなして鍵が開いたとみて、朧は鍵の開いた扉の方に歩みを進める。
七歩は腹にナイフを突き立てられた牛のぬいぐるみを見て……、
「ちょっとかわいそう。」
と感想をこぼした。
「――言ってる場合かよ、ほらさっさと行くぞ。」
朧は容赦なく突っ込みを入れ、早く次の部屋に進むよう七歩を急かす。
ドアを開けると廊下が続いており、地下に繋がる階段と上の階に繋がる階段があった。
「……地下もあるんだ、この屋敷」
「いかにも怪しそうだな、あのマッドサイエンティストの塒かもしれん」
上の階に続く階段にはすぐ部屋に繋がる廊下へ続くが地下に続く階段には鍵付きの扉があり、先に行くには鍵が必要のようだ。
屋敷に地下があることに気付いた二人は階段を見て、もしかしたら朧が最初に会った白衣の男の研究室がここに有るかもしれないと思い始めた。もし屋敷の地下に本当に白衣の男の研究室があれば朧が携帯していた銃などがそちらに保管しているかもしれないし、もしかしたらΩ専用特効薬があるかもしれない。
もし白衣の男に出くわしたらあちらはあちらで黙ってはいないだろうが、もし研究室に薬があれば七歩の為にも奪っておかなければならない。
「――よし、地下に一回行ってみよう。俺の銃も特効薬もあるかもしれん」
朧はいかにも怪しそうな地下に先に行くことを決めた、七歩もそれに同意した。
すちゃっ
「――!?」
すると朧が何かの気配に気付き……、
「――伏せろ!」
「――!?」
何かを避けるように七歩を押し倒した。
――ガキキン!
「――!?」
フローリングには分割したハサミやペーパーナイフが刺さっていた。
「おぅ、もう気付いたのか……悪いな。服を拝借させてもらったぜ? お前が鞭打ってくれたおかげで俺の一張羅破けたんでね」
朧にはハサミやナイフを投げつけた相手が誰なのか分かっていたようだった。
「――!?」
「くくくくっ、ふざけたマネしやがって……! このくそヤクザ!」
自分たちが謎解きして開けた部屋から森田が姿を現した。
森田は殴られた仕返しも兼ねてハサミやナイフを投擲したのだろうが、躱された為ますます不機嫌になっていた。
「もういいわ、若様の命令違反だろうが何だろうが関係ねぇ……、お前らぶっ殺す!!」
「――ひっ!」
森田はぎろりと睨み、二人とも自分が殺すことを宣言する。殺意を向けられて七歩は震えて委縮するが、朧はすぐさま逃げの体制に入り……、
「――何、突っ立ってる! 急いで逃げるぞ、殺されてぇのかっ!?」
怖気付く七歩に叱咤して、七歩の手を引くと森田から逃げることに専念する。
「くくく、あっはははははっ!」
森田は何を思ったのか高笑いし……、
「いいねいいね、憎きαをΩと一緒に俺が追い詰める! 最高の絵面じゃん!!」
森田は自分が大嫌いなαの人間を追い詰めているという優越感に酔いしれ、歪んだ感動と嗜虐心に煽られていた。
「逃げろ逃げろ、追い詰めて二匹ともまとめてぶっ殺してやる……!」
窮鼠を追い込む猫の気持ちになって、森田は植木用ハサミを手に持つと二人を追いかけ始めた。
(――くそ、このままじゃああのでかハサミ野郎に追いつかれちまう……!)
朧は七歩の手を引いて逃げながらも必死で対策を考えていた、七歩は手を引かれながらも必死に走ってはいるものの長い廊下を走っている為、息を切らしている。
このままだと七歩の体力にも限界が来てしまい、森田にも追いつかれるのも時間の問題だった。
「――大丈夫か? もうひと踏ん張りだ!」
「――はい」
朧は気にかけて七歩に声を掛けると七歩はそう返事するが、かなり疲弊しているようだ。
「……!」
そして朧はある部屋のところに足を止める。
「どっ、どうしたんですか?」
七歩は朧が何を思って足を止めたのか気になってそう聞く。そして、ある部屋を見つけた朧は……
――にやっ
「坊ちゃん、一か八かの勝負に行こうぜ……」
ある作戦を思いつき、七歩にそう告げたのだった。
・・・
――そして森田がワイン貯蔵庫に入った時だった……。
「――くそ、どこ行きやがった?」
森田は二人を追い掛けたは良いものの、見失ってしまい苛立ちを隠せないでいた。
「……ん?」
そして森田は七歩の頭らしきものを見つけた、森田はほくそ笑み七歩の頭と思わしきものに近づく。
「――おい、隠せてねえぞ? Ωちゃん……くくく」
そう言いながら森田は植木用ハサミを七歩の頭に突き立てようと体制をとると……、
――ザン!
七歩の頭めがけて植木用ハサミを振り下ろした。
「――!?」
しかし何かの違和感を覚えた、七歩の頭にハサミを突き立てたが肉の刺さる感触の手応えが全くしない。
それもそのはずだった。七歩の頭と思っていたものの正体は……、
「――まっ、マネキン!?」
マネキンの頭部だったのだ、肉の刺さる感触がしないのは当然である。
――ハッ!
そして森田はあることに気付いたのだ、ワイン貯蔵庫の向かいにある部屋は被服室なのだ。
おそらくこのマネキンはそこから引っ張ってきたもの……、
「ようやく気付いたようだな?」
「――!?」
朧の声が聞こえて声がした方に振り向くと何処に隠れていたのか、背を壁に寄りかかって立っていた。
「どうだ? 坊ちゃんの髪の毛の色そっくりのマネキン良く見つけてきただろ?」
朧は森田に七歩と間違えたマネキンには、七歩の髪の色と全く一緒の鬘が着けられていたのだ。
「――てめぇ、おちょくりやがって!!」
「最初に仕掛けたのはそっちだろうが……まぁ、最初に殴ったのは俺だがよ」
騙された怒りに森田はぎろりと朧を睨。確かに最初に殴ったのは自分だが今回はしかけてきたのは森田だと朧は反論し……、
「それにな、そのマネキン……お前を騙すだけのものじゃないんだぜ?」
「……なんだと?」
マネキンは森田を騙すだけの道具では無いことを朧が告げると、森田は顔を顰める。
「――っ」
すると今まで部屋の隅の樽の隙間に隠れていた七歩が、ロープ状の何かを引っ張った。
すると森田のすぐ近くに有った棚がぐらりと倒れそうになる、その棚にはいつの間にかロープが上の部分にくくりつけられていることに気付いた。
「――!?」
棚が倒れると、丁度森田がいる場所に直撃することに森田は気付いたが遅かった。
――がたたっ
「――うああああっ?!」
森田は棚の下敷きになり、棚に収蔵されていたワインのガラス音とともに悲鳴を上げた。
七歩は何故“メリーさんの羊”が次へ進む鍵なのか分からず、朧に聞く。
「この床の変な模様を見てみろ、それと星座記号の奴と見比べてみな」
七歩は朧に言われた通りに星座記号と床の大きな模様を見比べてみる、よく見ると床の模様が牡羊座の星座記号と一致するのだ。
「きらきらでふわふわ……って、――あっ!」
朧の言いたかったことが七歩にも漸くここで分かった。
「そういうこった、あとは羊が出てくるピアノ曲を探し出して弾いてやればいいだけの話だ……」
「きらきらって星の事でふわふわって羊の毛並みのことだったんだ。」
つまりは不思議な模様が大きく浮かぶ床は牡羊座の星座記号を象っており、牡羊座、つまり羊を題材にした曲を奏でることがこの部屋の鍵となっていたというのが答えだと朧は分かったのだ。
「この屋敷の主は俺達を試しているのもあるかもしれないが、こういう仕掛けには凝るタイプなのかもな……」
朧はそう言いながら次の部屋に続く扉を開けた。
「――おっ、今度は何だ? 人形ばかりの部屋だ。」
すると次は、人形だらけの部屋に二人はたどり着いた。
「でもなんだか悪趣味だな……カモの人形の胸辺りにナイフが突き刺さっている」
ミニチュアのような土台にカモの人形が置いてあり、そのカモの人形には胸辺りにナイフが突き立ててあり、綿が出ていた。
そしてその土台の足元に表札があり、七歩はそれに気づいて表札を読み上げる。
「〈午後3時ごろ家にいた母カモが殺された、母ガモ殺しの犯人を捜せ、犯罪者には被害者と同じ裁きを下せ〉……だって。」
「今度は犯人探しかい……たく、この人形の扱いからしてここの主の趣味がよく分かるぜ」
そう皮肉りながら朧は何かないか辺りを見渡す、そしてすぐ近くに立札があり一列に並んだ台に子ガモの人形が乗ってある。そこにあった立札を朧が読んでみると……、
「〈彼らは証人の子ガモ達、彼らの証言をもとに犯人を導き出せ〉……だとよ」
声に出して立札を読み上げ、呆れながら朧は教える。
「――あっ、よく見たら子ガモの人形の首元にタグがついている。……あっ、この台よく見たら文字が書いてある表札がはめ込まれている」
七歩が小鴨の人形を調べてみると長男から末っ子と書かれたタグが子ガモの首元についていることや子ガモが乗っている台に文字が書かれている表札があることに気付く。
「――んで、あっちの次の部屋の扉に続く方に並んでいる台にある人形はさしずめ犯人候補ってわけか」
朧が見つけた犯人候補と思われる台には左から、アヒル、牛、ロバ、犬のぬいぐるみが並んでいた。
そして、そのすぐ近くにナイフが台座に置いてある。
「これで犯人のぬいぐるみにナイフを突き立てろってこと……?」
「だろうな、どっちにしろここから出るには解かなきゃいけねえからさっさと済ませようぜ」
七歩達はそれぞれの子ガモ達の証言を確認することにした。
長男子ガモの証言は〈犬さんはママが死ぬ少し前の時間にお隣の鶏さんとお話をしてたよ〉と、次男子ガモには〈ママを殺した犯人は菜食主義者だった〉と書かれ、長女子ガモは〈アヒルさんが水浴びしていたのを見かけたわ〉と、次女子ガモは〈牛さんはいつも近くのスーパーで2時くらいに買い物をするはずなんだけど今日は見かけてないなぁ〉と、そして末っ子子ガモは〈コウノトリさんから聞いたけど、ロバさんは風邪をひいて一歩も外出ていないんだって〉とそれぞれ書かれていた。
「消去法でいえば……多分、“牛”だ」
「――えっ?」
朧は消去法で考えれば、“牛”に辿り着くと告げる。
「――証言をもとにして考えてみろ、犬はニワトリとだべっていたんだからニワトリが証人になるから無実。アヒルは水浴びしていたのを長女が見かけてるし、末っ子はコウノトリから聞いた話でロバが一歩も外を出ていないとコウノトリが証言してるんだから犯人だと考えにくい。次女の話は一見アリバイがあるように見えて牛がその場いたという証言は全くない、証人になる人物が一人もいない……だったら、子供たちのいないその間を狙ってカモの家で母親を殺したと考えられるだろ」
「あっ……」
朧は牛が犯人と睨む理由を詳しく説明すると、七歩はそれに納得する。
「唯一家にいて犯人をちらっと見たと思われる次男は『犯人は菜食主義者』と言っていただろ? 犬は肉を好む雑食、アヒルは虫や魚も食うから菜食主義者じゃない。残るはロバと牛だがロバは風邪引いて一日中家にいたことをコウノトリが証言してるんだから……残るは牛だ」
「そうか……、菜食主義者って草食動物の事か。」
次男の子ガモのところに書かれていた文章の意味を、七歩はここで理解する。
「じゃあ、牛にナイフを突き立ててみっか。」
――ズシャッ
朧はそう言うと、すぐさまナイフを牛のぬいぐるみに容赦なく突き立てる。
――カチッ
すると何かを押したような手応えがあった……。
カチャッ……
そして何かを押す音が聞こえたのち、次の部屋に進む扉の鍵が聞こえた音が響いた。
「――あっ、開いた」
「合ってた様だな……良し、次行くぞ」
正解の動物に裁きを下したとみなして鍵が開いたとみて、朧は鍵の開いた扉の方に歩みを進める。
七歩は腹にナイフを突き立てられた牛のぬいぐるみを見て……、
「ちょっとかわいそう。」
と感想をこぼした。
「――言ってる場合かよ、ほらさっさと行くぞ。」
朧は容赦なく突っ込みを入れ、早く次の部屋に進むよう七歩を急かす。
ドアを開けると廊下が続いており、地下に繋がる階段と上の階に繋がる階段があった。
「……地下もあるんだ、この屋敷」
「いかにも怪しそうだな、あのマッドサイエンティストの塒かもしれん」
上の階に続く階段にはすぐ部屋に繋がる廊下へ続くが地下に続く階段には鍵付きの扉があり、先に行くには鍵が必要のようだ。
屋敷に地下があることに気付いた二人は階段を見て、もしかしたら朧が最初に会った白衣の男の研究室がここに有るかもしれないと思い始めた。もし屋敷の地下に本当に白衣の男の研究室があれば朧が携帯していた銃などがそちらに保管しているかもしれないし、もしかしたらΩ専用特効薬があるかもしれない。
もし白衣の男に出くわしたらあちらはあちらで黙ってはいないだろうが、もし研究室に薬があれば七歩の為にも奪っておかなければならない。
「――よし、地下に一回行ってみよう。俺の銃も特効薬もあるかもしれん」
朧はいかにも怪しそうな地下に先に行くことを決めた、七歩もそれに同意した。
すちゃっ
「――!?」
すると朧が何かの気配に気付き……、
「――伏せろ!」
「――!?」
何かを避けるように七歩を押し倒した。
――ガキキン!
「――!?」
フローリングには分割したハサミやペーパーナイフが刺さっていた。
「おぅ、もう気付いたのか……悪いな。服を拝借させてもらったぜ? お前が鞭打ってくれたおかげで俺の一張羅破けたんでね」
朧にはハサミやナイフを投げつけた相手が誰なのか分かっていたようだった。
「――!?」
「くくくくっ、ふざけたマネしやがって……! このくそヤクザ!」
自分たちが謎解きして開けた部屋から森田が姿を現した。
森田は殴られた仕返しも兼ねてハサミやナイフを投擲したのだろうが、躱された為ますます不機嫌になっていた。
「もういいわ、若様の命令違反だろうが何だろうが関係ねぇ……、お前らぶっ殺す!!」
「――ひっ!」
森田はぎろりと睨み、二人とも自分が殺すことを宣言する。殺意を向けられて七歩は震えて委縮するが、朧はすぐさま逃げの体制に入り……、
「――何、突っ立ってる! 急いで逃げるぞ、殺されてぇのかっ!?」
怖気付く七歩に叱咤して、七歩の手を引くと森田から逃げることに専念する。
「くくく、あっはははははっ!」
森田は何を思ったのか高笑いし……、
「いいねいいね、憎きαをΩと一緒に俺が追い詰める! 最高の絵面じゃん!!」
森田は自分が大嫌いなαの人間を追い詰めているという優越感に酔いしれ、歪んだ感動と嗜虐心に煽られていた。
「逃げろ逃げろ、追い詰めて二匹ともまとめてぶっ殺してやる……!」
窮鼠を追い込む猫の気持ちになって、森田は植木用ハサミを手に持つと二人を追いかけ始めた。
(――くそ、このままじゃああのでかハサミ野郎に追いつかれちまう……!)
朧は七歩の手を引いて逃げながらも必死で対策を考えていた、七歩は手を引かれながらも必死に走ってはいるものの長い廊下を走っている為、息を切らしている。
このままだと七歩の体力にも限界が来てしまい、森田にも追いつかれるのも時間の問題だった。
「――大丈夫か? もうひと踏ん張りだ!」
「――はい」
朧は気にかけて七歩に声を掛けると七歩はそう返事するが、かなり疲弊しているようだ。
「……!」
そして朧はある部屋のところに足を止める。
「どっ、どうしたんですか?」
七歩は朧が何を思って足を止めたのか気になってそう聞く。そして、ある部屋を見つけた朧は……
――にやっ
「坊ちゃん、一か八かの勝負に行こうぜ……」
ある作戦を思いつき、七歩にそう告げたのだった。
・・・
――そして森田がワイン貯蔵庫に入った時だった……。
「――くそ、どこ行きやがった?」
森田は二人を追い掛けたは良いものの、見失ってしまい苛立ちを隠せないでいた。
「……ん?」
そして森田は七歩の頭らしきものを見つけた、森田はほくそ笑み七歩の頭と思わしきものに近づく。
「――おい、隠せてねえぞ? Ωちゃん……くくく」
そう言いながら森田は植木用ハサミを七歩の頭に突き立てようと体制をとると……、
――ザン!
七歩の頭めがけて植木用ハサミを振り下ろした。
「――!?」
しかし何かの違和感を覚えた、七歩の頭にハサミを突き立てたが肉の刺さる感触の手応えが全くしない。
それもそのはずだった。七歩の頭と思っていたものの正体は……、
「――まっ、マネキン!?」
マネキンの頭部だったのだ、肉の刺さる感触がしないのは当然である。
――ハッ!
そして森田はあることに気付いたのだ、ワイン貯蔵庫の向かいにある部屋は被服室なのだ。
おそらくこのマネキンはそこから引っ張ってきたもの……、
「ようやく気付いたようだな?」
「――!?」
朧の声が聞こえて声がした方に振り向くと何処に隠れていたのか、背を壁に寄りかかって立っていた。
「どうだ? 坊ちゃんの髪の毛の色そっくりのマネキン良く見つけてきただろ?」
朧は森田に七歩と間違えたマネキンには、七歩の髪の色と全く一緒の鬘が着けられていたのだ。
「――てめぇ、おちょくりやがって!!」
「最初に仕掛けたのはそっちだろうが……まぁ、最初に殴ったのは俺だがよ」
騙された怒りに森田はぎろりと朧を睨。確かに最初に殴ったのは自分だが今回はしかけてきたのは森田だと朧は反論し……、
「それにな、そのマネキン……お前を騙すだけのものじゃないんだぜ?」
「……なんだと?」
マネキンは森田を騙すだけの道具では無いことを朧が告げると、森田は顔を顰める。
「――っ」
すると今まで部屋の隅の樽の隙間に隠れていた七歩が、ロープ状の何かを引っ張った。
すると森田のすぐ近くに有った棚がぐらりと倒れそうになる、その棚にはいつの間にかロープが上の部分にくくりつけられていることに気付いた。
「――!?」
棚が倒れると、丁度森田がいる場所に直撃することに森田は気付いたが遅かった。
――がたたっ
「――うああああっ?!」
森田は棚の下敷きになり、棚に収蔵されていたワインのガラス音とともに悲鳴を上げた。
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