18 / 25
暖炉。
しおりを挟む
「さぁ今日も頑張ろう!」
気合を入れてお店へと向かう。
同じ敷地内だけど中庭を通るので外の寒さが身にしみる。
季節はすっかり冬。
この国にも四季がある。
気候も日本とそれほど変わらない。
雪はまだ降っていないけど少しは積もるらしい。
雪が降るほどの寒さだけれども建物内は寒くはない。
街の中央に温度調節施設があって一年中快適に過ごせる温水を各家庭、お店などに供給している。
足りないときは個々で追加の暖房を使う。
うちは……暖炉を自宅のリビングとカフェで使っている。
暖炉のある生活に憧れていたからというのもある。
暖炉の着火は火の魔法が込められた石を使う。ライターやマッチなどはない。
石をケースから取り出して専用の紙の上に置くと火がつくようになっている。
紙がなくなると消えるので次回は新しい紙に乗せれば再利用できる優れものアイテム。
薪の組み方は色々あるけど長持ちさせたいのでシンプルに横一列に並べるだけにしている。
火をつけるとじわじわ暖まってくる。
つい、ぼーっとしてしまう。
少し暖まりみんなにごはんの準備をする。
開店時間になり、カウンターの中でお客様をお出迎えする準備をしている。
チリリン♪ お客様が入ってきて挨拶をする。
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいマセ」
「おぉ~今日もケット・シー様は可愛いですのぉ。よろしくたのむよ」
「はい。ごゆっくりどうぞ」
おじいさんが入ってきた。朝イチ常連さんのひとり。
「こんにちは。今日も寒いですね」
「そうじゃのう。寒くて敵わんわい」
「いつものホットコーヒーにしますか?」
「ありがとう。いただこうかのぅ」
「はい。かしこまりました。少々お待ちください」
注文を受け、キッチンのジェフさんに伝票を渡す。その間に砂糖、ミルクなどカトラリーを用意して淹れ終わったコーヒーと一緒にテーブルまで運ぶ。
「熱いですから気をつけて下さいね」
「あぁ。あんがとう」
「あとこちらがモーニングのパンです。」
「いつもありがとう」
東京でお店をやっていたのだけど出身は愛知県。
愛知県名古屋より西、岐阜、一宮近隣を中心にモーニング文化がある。
コーヒーを注文すると朝ごはんもついてくる。
知らずに朝ごはんのメニューも注文してしまうとお昼ごはんが食べられない量になる。
そういう喫茶店文化に慣れ親しんでいた。
この国にきて食事の提供を始めたついでにモーニングをはじめた。といっても近所のパン屋さんのパンを温めて提供するだけだけ。
ふと、シロノワールを思い出す……。あれは美味しかったなぁ。ここで作ることができればいいのになぁ……。
そういえばこういうときって新聞を読む方が多い。
「シンブン?」
デンさんが反応する。
「あっ独り言が出ちゃいましたか。ええと。私のいた国であったのですが、毎日、前日やそれまでにあった出来事を地域や国別に政治の話からご近所のお店の紹介とかいろんなことが書いてある物なんです。それを床に広げて読んでいるとその上に猫が乗ってきてくちゃくちゃになって読めないということがよくありました」
「毎日ではないがギルドで似たようなものはあるぞい」
常連のおじいさんが会話に混ざってきた。
「あぁ。ギルドでは各国の情報を共有するからのぉ。定期的に国や地域の出来事をやりとりしておるんじゃ。内容としては交易のための農作物や狩猟や採掘などの収穫在庫状況。国や地域の祭り事のお知らせ。要人の訪問に関して。また魔物などの発生状況なども共有しておる。流石にお店の紹介などはしておらんけどなぁ」
「へぇお詳しいんですね。えぇと……」
「おぉ。自己紹介をしておらなんだな。ワシはこの地区のギルドマスターをしておるトウギじゃ」
「そうとは知らずに申し訳ございませんでした」
「よいよい、知らぬ方が普通じゃ。もし興味があればギルドにくるとよい。ある程度は閲覧できるようになっとるからの。それじゃまたくるからのぉごちそうさま」
そう言ってトウギさんはお仕事へ向かっていった。
「ありがとうございました。またのご来店お待ちしております」
お店が終わり、猫のお世話をナナさんにやってもらいカフェの暖炉の火を消す。この暖炉は魔法の火だから消すのは簡単。魔法石を取り出してケースにしまうだけ。あとは薪の燃えカスが残るのでホウキで集めて灰用のゴミ箱に入れる。明日のために発火用紙を敷いて薪を並べる。明日の朝は薪の隙間から紙の上に魔法石を置くだけ。薪はエルフのさんたちが見回りついでに集めてきてくれるのでみんなで分け合って使っている。
自宅へ帰り一足先に戻っていたみんなと一緒に夕食。そのあとはお風呂。シャワーのみが一般的だったけど国王の内藤さんが湯船につかることを流行らせた。室温調整のお湯をそのまま使っている。
お風呂から出ると暖炉の前へ。おうちの暖炉はシルフィさんがやってくてれる。コーヒーを飲みながらまったりする。特に何もすることもなく過ごして自室のベッドに入ろうとするが、そこにはすでに先客。今日はデンさんがいた。スヤスヤ寝ているのを邪魔しないようゆっくり端っこに入る。ふとギルドの共有情報のことを思い出す。
「デンさん。ちょっといいですか?」
「ンー? どうした?」
「明日ギルドに行ってみたいのですが一緒にいきませんか?」
「ワカッタ。いこう」
「ありがとうございます。起こしてごめんなさい。おやすみなさーい」
「おやすみ」
★登場人物
トウギ:トークオ王国ギルドマスター
気合を入れてお店へと向かう。
同じ敷地内だけど中庭を通るので外の寒さが身にしみる。
季節はすっかり冬。
この国にも四季がある。
気候も日本とそれほど変わらない。
雪はまだ降っていないけど少しは積もるらしい。
雪が降るほどの寒さだけれども建物内は寒くはない。
街の中央に温度調節施設があって一年中快適に過ごせる温水を各家庭、お店などに供給している。
足りないときは個々で追加の暖房を使う。
うちは……暖炉を自宅のリビングとカフェで使っている。
暖炉のある生活に憧れていたからというのもある。
暖炉の着火は火の魔法が込められた石を使う。ライターやマッチなどはない。
石をケースから取り出して専用の紙の上に置くと火がつくようになっている。
紙がなくなると消えるので次回は新しい紙に乗せれば再利用できる優れものアイテム。
薪の組み方は色々あるけど長持ちさせたいのでシンプルに横一列に並べるだけにしている。
火をつけるとじわじわ暖まってくる。
つい、ぼーっとしてしまう。
少し暖まりみんなにごはんの準備をする。
開店時間になり、カウンターの中でお客様をお出迎えする準備をしている。
チリリン♪ お客様が入ってきて挨拶をする。
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいマセ」
「おぉ~今日もケット・シー様は可愛いですのぉ。よろしくたのむよ」
「はい。ごゆっくりどうぞ」
おじいさんが入ってきた。朝イチ常連さんのひとり。
「こんにちは。今日も寒いですね」
「そうじゃのう。寒くて敵わんわい」
「いつものホットコーヒーにしますか?」
「ありがとう。いただこうかのぅ」
「はい。かしこまりました。少々お待ちください」
注文を受け、キッチンのジェフさんに伝票を渡す。その間に砂糖、ミルクなどカトラリーを用意して淹れ終わったコーヒーと一緒にテーブルまで運ぶ。
「熱いですから気をつけて下さいね」
「あぁ。あんがとう」
「あとこちらがモーニングのパンです。」
「いつもありがとう」
東京でお店をやっていたのだけど出身は愛知県。
愛知県名古屋より西、岐阜、一宮近隣を中心にモーニング文化がある。
コーヒーを注文すると朝ごはんもついてくる。
知らずに朝ごはんのメニューも注文してしまうとお昼ごはんが食べられない量になる。
そういう喫茶店文化に慣れ親しんでいた。
この国にきて食事の提供を始めたついでにモーニングをはじめた。といっても近所のパン屋さんのパンを温めて提供するだけだけ。
ふと、シロノワールを思い出す……。あれは美味しかったなぁ。ここで作ることができればいいのになぁ……。
そういえばこういうときって新聞を読む方が多い。
「シンブン?」
デンさんが反応する。
「あっ独り言が出ちゃいましたか。ええと。私のいた国であったのですが、毎日、前日やそれまでにあった出来事を地域や国別に政治の話からご近所のお店の紹介とかいろんなことが書いてある物なんです。それを床に広げて読んでいるとその上に猫が乗ってきてくちゃくちゃになって読めないということがよくありました」
「毎日ではないがギルドで似たようなものはあるぞい」
常連のおじいさんが会話に混ざってきた。
「あぁ。ギルドでは各国の情報を共有するからのぉ。定期的に国や地域の出来事をやりとりしておるんじゃ。内容としては交易のための農作物や狩猟や採掘などの収穫在庫状況。国や地域の祭り事のお知らせ。要人の訪問に関して。また魔物などの発生状況なども共有しておる。流石にお店の紹介などはしておらんけどなぁ」
「へぇお詳しいんですね。えぇと……」
「おぉ。自己紹介をしておらなんだな。ワシはこの地区のギルドマスターをしておるトウギじゃ」
「そうとは知らずに申し訳ございませんでした」
「よいよい、知らぬ方が普通じゃ。もし興味があればギルドにくるとよい。ある程度は閲覧できるようになっとるからの。それじゃまたくるからのぉごちそうさま」
そう言ってトウギさんはお仕事へ向かっていった。
「ありがとうございました。またのご来店お待ちしております」
お店が終わり、猫のお世話をナナさんにやってもらいカフェの暖炉の火を消す。この暖炉は魔法の火だから消すのは簡単。魔法石を取り出してケースにしまうだけ。あとは薪の燃えカスが残るのでホウキで集めて灰用のゴミ箱に入れる。明日のために発火用紙を敷いて薪を並べる。明日の朝は薪の隙間から紙の上に魔法石を置くだけ。薪はエルフのさんたちが見回りついでに集めてきてくれるのでみんなで分け合って使っている。
自宅へ帰り一足先に戻っていたみんなと一緒に夕食。そのあとはお風呂。シャワーのみが一般的だったけど国王の内藤さんが湯船につかることを流行らせた。室温調整のお湯をそのまま使っている。
お風呂から出ると暖炉の前へ。おうちの暖炉はシルフィさんがやってくてれる。コーヒーを飲みながらまったりする。特に何もすることもなく過ごして自室のベッドに入ろうとするが、そこにはすでに先客。今日はデンさんがいた。スヤスヤ寝ているのを邪魔しないようゆっくり端っこに入る。ふとギルドの共有情報のことを思い出す。
「デンさん。ちょっといいですか?」
「ンー? どうした?」
「明日ギルドに行ってみたいのですが一緒にいきませんか?」
「ワカッタ。いこう」
「ありがとうございます。起こしてごめんなさい。おやすみなさーい」
「おやすみ」
★登場人物
トウギ:トークオ王国ギルドマスター
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる