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番外編
海辺のコテージにて 4 ☆
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本項目はR-18描写を含みます。
(といっても軽めです)
あらかじめご了承の上、お楽しみください。
********************************************
「はっ、あぁ……、あ、はぁ、は……っ」
どくどくと伝わる鼓動を感じながら、マリエンヌは絶頂の余韻に火照る身体を小刻みに震わせる。頭の中がぼうっと霞みがかるようで、ひとりでは立っていることもできなかった。
「んっ、く」
やがて息を整えたアルフレッドが、マリエンヌの中から半身を引きずり出す。
それに合わせて、白濁を含んだ蜜がごぷりと割れ目からあふれ、その水音にさえマリエンヌはびくびくと身体を震わせた。
「……せっかく洗ったのに、また汚れてしまったな」
「ん……」
笑い混じりに言うアルフレッドの声に、マリエンヌは朦朧としたまま頷く。
アルフレッドは蜜と白濁で汚れた浴槽からシャワーを取り上げると、それで自身とマリエンヌの身体をさっと洗い流した。
「おれは先に出るから、もう少し温まってきなさい。また肩が少し冷えている」
「ええ……」
浴槽の縁にしどけなく寄りかかりながら、マリエンヌは震える手でシャワーを受け取った。
アルフレッドが浴室を出ても上がった息はなかなか整わず、マリエンヌは全力疾走したあとのようにぐったりと身体を投げ出してしまう。
「はぁ、はぁ……、早く、しないと、風邪を引いちゃう……」
未だ絶頂の余韻を引きずる身体に鞭打って、マリエンヌはシャワーを肩の高さまで引き上げる。
未だ噴き出す汗をお湯で流しながら、マリエンヌは足のあいだへとノズルを向けた。
「んっ……!」
蜜と白濁に汚れたところを洗おうと思ったのに、未だ剥き出しの花芯がお湯にふれてさっそく快感を走らせる。
ひくつく膣口からさらなる白濁がこぼれて、マリエンヌはただよう熱と匂いに真っ赤になってしまった。
「っ、はぁ、……くぅ……っ」
なんとか洗おうと、未だとろとろと蜜がこぼれる割れ目に手を添えるが、指が触れた途端にジンとした快感が走って、力が抜けそうになる。
それでも懸命に指を滑らせ、漏れそうになる喘ぎ声をこらえながら、マリエンヌは必死に身体を洗おうとした。
「……シャワーで自慰をするなんていけない子だな。早くしないとのぼせるぞ?」
揶揄を含んだ声が聞こえて、マリエンヌはハッと息を呑む。
慌ててシャワーを離すが、脱衣所へ続く扉は閉まったままだ。マリエンヌはほっとしながらも、それとなく膝を擦り合わせて秘所を隠そうとした。
「じ、自慰なんてしてないわ。洗っていただけよ……」
「本当にそうかな? それにしては気持ちよさそうな顔をしていたふうだったが?」
「み、見てもいないのに、勝手なことを言わないでっ」
声を張り上げたマリエンヌは、ハッと目の前の鏡を思い出す。未だ情交の名残を残した自分の裸身がはっきり映し出されていて、彼女はますます赤くなりながら、慌てて残りの部位を洗った。
そうしてようやく身体を洗い終え、脱衣所に戻ったときにはふらふらになってしまっていた。どうやらのぼせる一歩手前だったようだ。
結局流されてしまったが、お風呂でことに及んでのぼせなかったときのほうが少ない。これからはもっと注意しなければ……。
「なんだ。もう出てきたのか」
残念だなと嘯きながら、バスローブに身を包んだアルフレッドが寝室から戻ってきた。
その手には炭酸水入りの瓶があり、マリエンヌはそれを受け取ると、一息で半分も飲み干してしまった。
「もうっ。二度とシャワーであんなことしないで」
幾分落ち着いたマリエンヌは眉をつり上げて抗議するが、アルフレッドは心外だとばかりに肩をすくめる。
「存外、君も気にいったように見えたが? さっきも洗いながら息を切らしていたじゃないか」
「だから! 見てもいないのに勝手なことを言わないで……」
と、アルフレッドの肩が小刻みに揺れているのをマリエンヌは見つける。戸惑って口を紡ぐと、アルフレッドは耐えられないとばかりに軽快な笑い声を響かせた。
「残念だが、一部始終を見せてもらったよ」
「っ?」
目を剥くマリエンヌの前で、アルフレッドは傍らの壁をとんとんと叩く。
「なに……?」
手招きされるまま近寄ってみれば、その壁からは浴室の中がはっきりと見通せるようになっていた。
だが、驚くべきところはそこではない。
「なっ……!? どうして、ここの壁は向こうが透けて見えるの? だって、この壁の裏側にはあの鏡があったはず……っ」
アルフレッドが示した壁からは、ちょうど猫足の浴槽が正面に見える。もしあの浴槽で熱く交わるふたりがいたなら、ばっちりと真正面から目撃できる位置取りだ。
マリエンヌは慌てて浴室に戻り、浴槽の側から壁をのぞき込む。そこにあるのは透ける壁ではなく、大きな鏡。向こう側は見えず、驚愕の表情のマリエンヌが映り込むばかりだ。
「ど、どうなっているの?」
「これは特殊な鏡でね。明るいほうからはただの鏡のようにしか見えないが、暗いほう……つまりこの脱衣所のほうからは、向こうの景色が透けて見えるんだ。まるでガラスのようにね」
「そ、そんな……っ」
どういう仕組みでそうなっているかはわからないが、はっきりとわかっていることがひとつ。
「――じゃああなたは、わたしがシャワーで身体を洗っているのを……!」
「支度をしながら、存分に干渉させてもらった。新しく知った快楽を得る方法をさっそく試しているあたり、夜のあなたはやはり奔放で淫乱だな」
楽しげに笑いかけられ、マリエンヌは恥ずかしさのあまりぶるぶると手足を震わせてしまった。
「ひどいわ! 今日のあなたはいつもに増して意地悪よっ」
「これくらいの意地悪は許容範囲だろう? 供もつけずに、慣れない海辺を散策した挙げ句、波に呑まれそうになったお仕置きだ」
ぽかぽか胸を叩くマリエンヌを押さえ、ちゅっと唇にキスしたアルフレッドは、一転してまじめな顔つきで愛妻を見つめた。
「もう懲りただろうが、夜のあいだはひとりで出歩くのはやめなさい。じゃないと……夜と言わず昼と言わず、ここにいるあいだはずっとベッドに縛り付けてやるからな」
あながち冗談とも取れない脅しに、マリエンヌは言葉に詰まる。
アルフレッドの灰色の瞳には怒りとともに紛れもない情欲が潜んでおり、それまで強気でいた彼女はしおしおとうなだれてしまった。
「……今夜のことは、悪かったわ。本当にごめんなさい」
「わかればいいんだ」
アルフレッドは満足のいった顔で、マリエンヌの身体を優しく抱き寄せる。
先ほどまでとは違う親しみの籠もった抱擁に、マリエンヌもほっとしながら広い胸に頬を寄せた。
「――さて、さっそく続きをするか。ベッドへ行くぞ」
「えっ」
気安い口調で言われて、マリエンヌは瞬きを繰り返した。
「な、なにを言っているの。さっきしたばかり……」
「一度出したくらいで満足できるか。あなただってまだくすぶっていたからシャワーで自慰をしたんだろう」
「だから、していないわ! 洗っただけよ」
「言い訳は無用」
そのまま横向きに抱え上げられそうになって、マリエンヌは慌てて手足をばたつかせる。まだ情交の名残で気怠いというのに、これ以上されては、明日は本当にベッドで過ごすハメになるだろう。
「せ、せっかくの新婚旅行なのに、そんなのだめ……きゃあっ!?」
と、いきなりアルフレッドの身体が大きく傾いで、マリエンヌは柔らかな絨毯の上に投げ出されてしまう。
転がるように倒れたマリエンヌは、その上に重たい身体がのしかかってくるのに気づき悲鳴を上げた。
「ちょっ、ちょっと待ってアルフ! せ、せめてベッドで……って、……え?」
ぐったりと倒れたままのあるフレッドに、下敷きになったマリエンヌはきょとんとする。
慌てて彼の下から這いだしたマリエンヌは、うつぶせに倒れたまま動かないアルフレッドを見てかすかに眉を顰めた。
「……アルフ? アルフ? いったいどうして――」
何気なく夫の額に手を当てたマリエンヌは、異常に熱い体温に気がつき、天と地がひっくり返るほどに驚いてしまった。
「あ、アルフレッド!? しっかりして……っ、だ、誰かーっ! お医者様を呼んで! 早く!」
めずらしいことに、鏡の前での激しい情交でのぼせてしまったのは、アルフレッドのほうだったようである――
************************************************
まっ、たまにはそういうこともあるだろうっていうお話。
ちなみに後日談↓
***
「少し目眩がしただけだ。寝込むほどのことじゃない」
「あら、駄目よ。今朝になっても熱が下がらないんですもの。お医者様も疲れがたまっているせいだっておっしゃっていたわ。今日は一日、ちゃんとベッドで過ごさなきゃ」
「そういう意味で過ごしたいわけではなかったんだが……」
ため息をつくアルフレッドの前で、ベッドサイドに腰かけたマリエンヌは、メイドが持ってきた食事のトレイを受け取った。
「さ、おかゆがきたわ。少しでも食べて元気にならなくちゃ」
「いらん。食欲がない」
「だーめ。ほら、ミルクで炊いた麦のおかゆよ。これなら消化もいいし、身体が温まるわ」
「ただでさえ暑い南方にきたというのに……」
「もう、ぐちぐち言わないのっ」
寝ているだけがよほど退屈なのか、ふてくされてばかりのアルフレッドに、マリエンヌは「めっ」という顔で言い聞かせた。
そして木製の匙に粥をすくうと、ふーふーと繰り返し息を吹きかける。
「はい、あーんして?」
その匙を口元に寄せられ、アルフレッドは反射的に口を開いていた。
しっかり冷まされたミルクの粥は、優しい味と舌触りがする。
「ね? 美味しいでしょう?」
わずかに首を傾げて微笑んだマリエンヌは、もう一度粥をすくって「ふーふー」した。
「はい、あーん」
アルフレッドは大人しく口を開き、二口目を受け取る。
マリエンヌは飽きもせず、新たな粥をすくっては「ふーふー」を繰り返す。
ちょっと唇を突き出して息を吹きかける様は、こう言ってはなんだが……破壊的に可愛らしい。
おまけに、
「あーん」
と言いながら顔を寄せられると……正直、匙じゃなくてその唇に吸いつきたくなってくる。
飽きもせずに「ふーふー」「あーん」を繰り返す愛妻を横目で見ながら、アルフレッドはそれとなく毛布をかき集め、膨らみ始めた股間を隠そうと努力した。
おそらくそれを目にすれば、この可愛らしい妻は、二度とこの愛らしい仕草を彼の前でやらなくなってしまうだろうから。
(病気になるというのも、悪いことばかりではないな……)
認識を改めたアルフレッドは、別に猫舌ではないから冷まさなくてもいいということはあえて伝えず、妻の献身的な介護という魅力的なデザートに食いついたのであった。
***
こんなに救いようがないヒーローもめずらしい……orz
次の番外編はいつ更新になるかわかりませんが、
リクエストの多かったマーガレットに焦点を当てる予定です。
エロはありませんが、ブログで明かした彼女のその後に
ほんの少しふれていく形になりますので、
よろしければおつきあいください。
(といっても軽めです)
あらかじめご了承の上、お楽しみください。
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「はっ、あぁ……、あ、はぁ、は……っ」
どくどくと伝わる鼓動を感じながら、マリエンヌは絶頂の余韻に火照る身体を小刻みに震わせる。頭の中がぼうっと霞みがかるようで、ひとりでは立っていることもできなかった。
「んっ、く」
やがて息を整えたアルフレッドが、マリエンヌの中から半身を引きずり出す。
それに合わせて、白濁を含んだ蜜がごぷりと割れ目からあふれ、その水音にさえマリエンヌはびくびくと身体を震わせた。
「……せっかく洗ったのに、また汚れてしまったな」
「ん……」
笑い混じりに言うアルフレッドの声に、マリエンヌは朦朧としたまま頷く。
アルフレッドは蜜と白濁で汚れた浴槽からシャワーを取り上げると、それで自身とマリエンヌの身体をさっと洗い流した。
「おれは先に出るから、もう少し温まってきなさい。また肩が少し冷えている」
「ええ……」
浴槽の縁にしどけなく寄りかかりながら、マリエンヌは震える手でシャワーを受け取った。
アルフレッドが浴室を出ても上がった息はなかなか整わず、マリエンヌは全力疾走したあとのようにぐったりと身体を投げ出してしまう。
「はぁ、はぁ……、早く、しないと、風邪を引いちゃう……」
未だ絶頂の余韻を引きずる身体に鞭打って、マリエンヌはシャワーを肩の高さまで引き上げる。
未だ噴き出す汗をお湯で流しながら、マリエンヌは足のあいだへとノズルを向けた。
「んっ……!」
蜜と白濁に汚れたところを洗おうと思ったのに、未だ剥き出しの花芯がお湯にふれてさっそく快感を走らせる。
ひくつく膣口からさらなる白濁がこぼれて、マリエンヌはただよう熱と匂いに真っ赤になってしまった。
「っ、はぁ、……くぅ……っ」
なんとか洗おうと、未だとろとろと蜜がこぼれる割れ目に手を添えるが、指が触れた途端にジンとした快感が走って、力が抜けそうになる。
それでも懸命に指を滑らせ、漏れそうになる喘ぎ声をこらえながら、マリエンヌは必死に身体を洗おうとした。
「……シャワーで自慰をするなんていけない子だな。早くしないとのぼせるぞ?」
揶揄を含んだ声が聞こえて、マリエンヌはハッと息を呑む。
慌ててシャワーを離すが、脱衣所へ続く扉は閉まったままだ。マリエンヌはほっとしながらも、それとなく膝を擦り合わせて秘所を隠そうとした。
「じ、自慰なんてしてないわ。洗っていただけよ……」
「本当にそうかな? それにしては気持ちよさそうな顔をしていたふうだったが?」
「み、見てもいないのに、勝手なことを言わないでっ」
声を張り上げたマリエンヌは、ハッと目の前の鏡を思い出す。未だ情交の名残を残した自分の裸身がはっきり映し出されていて、彼女はますます赤くなりながら、慌てて残りの部位を洗った。
そうしてようやく身体を洗い終え、脱衣所に戻ったときにはふらふらになってしまっていた。どうやらのぼせる一歩手前だったようだ。
結局流されてしまったが、お風呂でことに及んでのぼせなかったときのほうが少ない。これからはもっと注意しなければ……。
「なんだ。もう出てきたのか」
残念だなと嘯きながら、バスローブに身を包んだアルフレッドが寝室から戻ってきた。
その手には炭酸水入りの瓶があり、マリエンヌはそれを受け取ると、一息で半分も飲み干してしまった。
「もうっ。二度とシャワーであんなことしないで」
幾分落ち着いたマリエンヌは眉をつり上げて抗議するが、アルフレッドは心外だとばかりに肩をすくめる。
「存外、君も気にいったように見えたが? さっきも洗いながら息を切らしていたじゃないか」
「だから! 見てもいないのに勝手なことを言わないで……」
と、アルフレッドの肩が小刻みに揺れているのをマリエンヌは見つける。戸惑って口を紡ぐと、アルフレッドは耐えられないとばかりに軽快な笑い声を響かせた。
「残念だが、一部始終を見せてもらったよ」
「っ?」
目を剥くマリエンヌの前で、アルフレッドは傍らの壁をとんとんと叩く。
「なに……?」
手招きされるまま近寄ってみれば、その壁からは浴室の中がはっきりと見通せるようになっていた。
だが、驚くべきところはそこではない。
「なっ……!? どうして、ここの壁は向こうが透けて見えるの? だって、この壁の裏側にはあの鏡があったはず……っ」
アルフレッドが示した壁からは、ちょうど猫足の浴槽が正面に見える。もしあの浴槽で熱く交わるふたりがいたなら、ばっちりと真正面から目撃できる位置取りだ。
マリエンヌは慌てて浴室に戻り、浴槽の側から壁をのぞき込む。そこにあるのは透ける壁ではなく、大きな鏡。向こう側は見えず、驚愕の表情のマリエンヌが映り込むばかりだ。
「ど、どうなっているの?」
「これは特殊な鏡でね。明るいほうからはただの鏡のようにしか見えないが、暗いほう……つまりこの脱衣所のほうからは、向こうの景色が透けて見えるんだ。まるでガラスのようにね」
「そ、そんな……っ」
どういう仕組みでそうなっているかはわからないが、はっきりとわかっていることがひとつ。
「――じゃああなたは、わたしがシャワーで身体を洗っているのを……!」
「支度をしながら、存分に干渉させてもらった。新しく知った快楽を得る方法をさっそく試しているあたり、夜のあなたはやはり奔放で淫乱だな」
楽しげに笑いかけられ、マリエンヌは恥ずかしさのあまりぶるぶると手足を震わせてしまった。
「ひどいわ! 今日のあなたはいつもに増して意地悪よっ」
「これくらいの意地悪は許容範囲だろう? 供もつけずに、慣れない海辺を散策した挙げ句、波に呑まれそうになったお仕置きだ」
ぽかぽか胸を叩くマリエンヌを押さえ、ちゅっと唇にキスしたアルフレッドは、一転してまじめな顔つきで愛妻を見つめた。
「もう懲りただろうが、夜のあいだはひとりで出歩くのはやめなさい。じゃないと……夜と言わず昼と言わず、ここにいるあいだはずっとベッドに縛り付けてやるからな」
あながち冗談とも取れない脅しに、マリエンヌは言葉に詰まる。
アルフレッドの灰色の瞳には怒りとともに紛れもない情欲が潜んでおり、それまで強気でいた彼女はしおしおとうなだれてしまった。
「……今夜のことは、悪かったわ。本当にごめんなさい」
「わかればいいんだ」
アルフレッドは満足のいった顔で、マリエンヌの身体を優しく抱き寄せる。
先ほどまでとは違う親しみの籠もった抱擁に、マリエンヌもほっとしながら広い胸に頬を寄せた。
「――さて、さっそく続きをするか。ベッドへ行くぞ」
「えっ」
気安い口調で言われて、マリエンヌは瞬きを繰り返した。
「な、なにを言っているの。さっきしたばかり……」
「一度出したくらいで満足できるか。あなただってまだくすぶっていたからシャワーで自慰をしたんだろう」
「だから、していないわ! 洗っただけよ」
「言い訳は無用」
そのまま横向きに抱え上げられそうになって、マリエンヌは慌てて手足をばたつかせる。まだ情交の名残で気怠いというのに、これ以上されては、明日は本当にベッドで過ごすハメになるだろう。
「せ、せっかくの新婚旅行なのに、そんなのだめ……きゃあっ!?」
と、いきなりアルフレッドの身体が大きく傾いで、マリエンヌは柔らかな絨毯の上に投げ出されてしまう。
転がるように倒れたマリエンヌは、その上に重たい身体がのしかかってくるのに気づき悲鳴を上げた。
「ちょっ、ちょっと待ってアルフ! せ、せめてベッドで……って、……え?」
ぐったりと倒れたままのあるフレッドに、下敷きになったマリエンヌはきょとんとする。
慌てて彼の下から這いだしたマリエンヌは、うつぶせに倒れたまま動かないアルフレッドを見てかすかに眉を顰めた。
「……アルフ? アルフ? いったいどうして――」
何気なく夫の額に手を当てたマリエンヌは、異常に熱い体温に気がつき、天と地がひっくり返るほどに驚いてしまった。
「あ、アルフレッド!? しっかりして……っ、だ、誰かーっ! お医者様を呼んで! 早く!」
めずらしいことに、鏡の前での激しい情交でのぼせてしまったのは、アルフレッドのほうだったようである――
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「少し目眩がしただけだ。寝込むほどのことじゃない」
「あら、駄目よ。今朝になっても熱が下がらないんですもの。お医者様も疲れがたまっているせいだっておっしゃっていたわ。今日は一日、ちゃんとベッドで過ごさなきゃ」
「そういう意味で過ごしたいわけではなかったんだが……」
ため息をつくアルフレッドの前で、ベッドサイドに腰かけたマリエンヌは、メイドが持ってきた食事のトレイを受け取った。
「さ、おかゆがきたわ。少しでも食べて元気にならなくちゃ」
「いらん。食欲がない」
「だーめ。ほら、ミルクで炊いた麦のおかゆよ。これなら消化もいいし、身体が温まるわ」
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「もう、ぐちぐち言わないのっ」
寝ているだけがよほど退屈なのか、ふてくされてばかりのアルフレッドに、マリエンヌは「めっ」という顔で言い聞かせた。
そして木製の匙に粥をすくうと、ふーふーと繰り返し息を吹きかける。
「はい、あーんして?」
その匙を口元に寄せられ、アルフレッドは反射的に口を開いていた。
しっかり冷まされたミルクの粥は、優しい味と舌触りがする。
「ね? 美味しいでしょう?」
わずかに首を傾げて微笑んだマリエンヌは、もう一度粥をすくって「ふーふー」した。
「はい、あーん」
アルフレッドは大人しく口を開き、二口目を受け取る。
マリエンヌは飽きもせず、新たな粥をすくっては「ふーふー」を繰り返す。
ちょっと唇を突き出して息を吹きかける様は、こう言ってはなんだが……破壊的に可愛らしい。
おまけに、
「あーん」
と言いながら顔を寄せられると……正直、匙じゃなくてその唇に吸いつきたくなってくる。
飽きもせずに「ふーふー」「あーん」を繰り返す愛妻を横目で見ながら、アルフレッドはそれとなく毛布をかき集め、膨らみ始めた股間を隠そうと努力した。
おそらくそれを目にすれば、この可愛らしい妻は、二度とこの愛らしい仕草を彼の前でやらなくなってしまうだろうから。
(病気になるというのも、悪いことばかりではないな……)
認識を改めたアルフレッドは、別に猫舌ではないから冷まさなくてもいいということはあえて伝えず、妻の献身的な介護という魅力的なデザートに食いついたのであった。
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