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第四話 魔法が全属性使えるのは基本です
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何もかも分からないまま一夜を明かす。いや、一つだけ分かったことは、僕が勇者として神様に召還されたということだけだ。朝起きると声も掛けていないのに、従者が現れ着がえと食事を部屋まで運んできた。従者に名前を尋ねると、ナタリアだと教えてくれた。頭から白いベールを被っているので髪の色は分からない。彼女曰く、僕専属の従者だという。
食事はパンとスープに、鶏肉をスライスしたような肉が皿に盛られて出てきた。食べ物には香辛料が使われていて、日本で食べる洋食と比べても遜色はなかった。
食事が終わるとナタリアと一緒に、刺繍入りの白い法衣をまとった女性が現れた。
「勇者様、私はナービスと申します。疑問があれば、何なりとお尋ねください」
ナービスは僕に対して、慈愛に満ちた柔らかな表情を浮かべながら、優しく声をかけてくれた。
何なりと言われたが、どこから聞けばいいのかさっぱり決まらない。
「僕がここに呼ばれた経緯と、大きな力とは何でしょうか?」
「イージス神の思し召しです。私たちが神に祈り、貴方を召還したのです。勇者様には大いなる力が秘められていると、伝えられているのですが実際は力を試してみないと分からないのが事実です」
「ナービスさん、僕は神の使徒ではなく人間です!!」
「フフフ、勇者様は冗談も言うのですね。では、力を解放出来る場所に移動しましょう」
答えをはぐらかされた訳ではなく、誠意を持って答えてくれたのを感じて何も言えなくなった。とりあえず彼女に即されるまま付いていくことにした。
「ここが、魔法の練習場です」
魔法とはまた突拍子もない言葉が、彼女の口から飛び出す。
「魔法って!! 僕をからかわないで下さい」
「勇者様は、冗談がお好きなんですね」
「ち、違います。僕は魔法なんて使えないのです」
当たり前のことを彼女に言ったが、顔が真っ赤になってしまう。
「私は回復系なので、あの向こうにある的は壊せませんが、当ててみますね」
彼女は手のひらを的に向け何かを呟いた。すると手から不思議な光が飛び出し、数メートル先の的に当たって、光がはじけ消え去った。
「では、勇者様の番ですよ」
僕は馬鹿らしいとは思いつつ、TVゲームの主人公が使っている魔法を唱えた。
「メララン」
すると、手のひらから炎が飛び出し、的が炎に包まれ爆発する。
「さすが勇者様!! 火属性だったのですね」
僕は自分の手から魔法が出たのが信じられなくて、何度も手のひらを見直した。見た感じ何の変哲もない自分の手というしか言いようがなかった……。
「じゃあ、もう一度やってみるね。コールドルガ!」
手から冷たい冷気が飛び出し、的がカチコチに氷で覆われてしまう。
「す、凄いです! 二つの属性を扱える魔法使いなど、この国には数人しかおりませんよ」
ナービスは目を潤ませながら、尊敬の眼差しを僕に向けた。正直、ただの呪文を叫んでいるだけなので、自分が魔法を出している感覚は殆ど無かった。別の所に隠れている誰かが、僕の仕草に合わせて魔法を使っているとさえ疑ってしまう。
そこで両手を前に突き出し叫ぶ。
「ギラガント&フィールデガ!!」
右手から雷鳴、左手から竜巻が飛び出し全ての的をなぎ倒し、電撃で焦がしてしまった。
「よ、四属性!!!!!」
ナービスはこれを見た途端に失神した。
「ナービスさん、大丈夫ですか」
僕は彼女に駆け寄り身体を揺らした。しかし彼女はピクリとも動かない……。
「ライフン」
全パラ―メータ異常に効く、国民的人気ゲームの呪文を唱えた。すると彼女は淡い緑の光に包まれ目覚める。そして彼女は突然号泣した。
「ああ、勇者様、ありがとうございます」
僕は訳が分からず、口をあんぐり開けるしかなかった。
「貴方様の魔法のお陰で、私が魔王に掛けられていた呪いが全て消え去ったのです」
僕は彼女の言っていることが全く信じることが出来ず、大がかりなドッキリを誰かに仕掛けられていると思わずには居られなかった。しかし、そんなスタッフなど何処にもおらず、ただ僕を勇者と崇める一人の神官が、涙を流しながら跪いているだけであった。
「ナービスさん、恥ずかしいから止めて下さい」
僕は彼女に声を掛けたが、一向に顔を上げない。仕方がないので
「勇者の言うことが、聞けないのですか!」
声を少し荒げて叱咤する。
彼女は頭をすぐ上げ陳謝した。
「なんとなく魔法を使えることは分かりました。これから僕は何をすればいいのですか?」
「あ、はい……この後に剣聖ダレン様が闘技場で勇者様の適性が知りたいとおっしゃっていて、お断り出来ませんでした……」
「適性検査なら別に問題ないと思うんですが」
「恥ずかしながら、ダレン様は勇者降臨を信じておりません。腕は確かなのですが、性格は粗暴で、勇者様の化けの皮をひん剥いてやると……」
「それは怖いですね……」
「大丈夫です、先ほどの魔法なら絶対にダレン様に負けるはずはないと思います」
「そうなんですか!それなら安心出来ます。僕の魔法で勝てるなら問題ないですね」
「それが……あの威力なら、当たれば人は死んでしまいます」
僕はどうすればいいのか頭を抱えてしまう。暫く考えた末、妙案を思いつく。
僕は彼女にある条件で適性検査を受けることを、剣聖に伝えて貰うことにした。
食事はパンとスープに、鶏肉をスライスしたような肉が皿に盛られて出てきた。食べ物には香辛料が使われていて、日本で食べる洋食と比べても遜色はなかった。
食事が終わるとナタリアと一緒に、刺繍入りの白い法衣をまとった女性が現れた。
「勇者様、私はナービスと申します。疑問があれば、何なりとお尋ねください」
ナービスは僕に対して、慈愛に満ちた柔らかな表情を浮かべながら、優しく声をかけてくれた。
何なりと言われたが、どこから聞けばいいのかさっぱり決まらない。
「僕がここに呼ばれた経緯と、大きな力とは何でしょうか?」
「イージス神の思し召しです。私たちが神に祈り、貴方を召還したのです。勇者様には大いなる力が秘められていると、伝えられているのですが実際は力を試してみないと分からないのが事実です」
「ナービスさん、僕は神の使徒ではなく人間です!!」
「フフフ、勇者様は冗談も言うのですね。では、力を解放出来る場所に移動しましょう」
答えをはぐらかされた訳ではなく、誠意を持って答えてくれたのを感じて何も言えなくなった。とりあえず彼女に即されるまま付いていくことにした。
「ここが、魔法の練習場です」
魔法とはまた突拍子もない言葉が、彼女の口から飛び出す。
「魔法って!! 僕をからかわないで下さい」
「勇者様は、冗談がお好きなんですね」
「ち、違います。僕は魔法なんて使えないのです」
当たり前のことを彼女に言ったが、顔が真っ赤になってしまう。
「私は回復系なので、あの向こうにある的は壊せませんが、当ててみますね」
彼女は手のひらを的に向け何かを呟いた。すると手から不思議な光が飛び出し、数メートル先の的に当たって、光がはじけ消え去った。
「では、勇者様の番ですよ」
僕は馬鹿らしいとは思いつつ、TVゲームの主人公が使っている魔法を唱えた。
「メララン」
すると、手のひらから炎が飛び出し、的が炎に包まれ爆発する。
「さすが勇者様!! 火属性だったのですね」
僕は自分の手から魔法が出たのが信じられなくて、何度も手のひらを見直した。見た感じ何の変哲もない自分の手というしか言いようがなかった……。
「じゃあ、もう一度やってみるね。コールドルガ!」
手から冷たい冷気が飛び出し、的がカチコチに氷で覆われてしまう。
「す、凄いです! 二つの属性を扱える魔法使いなど、この国には数人しかおりませんよ」
ナービスは目を潤ませながら、尊敬の眼差しを僕に向けた。正直、ただの呪文を叫んでいるだけなので、自分が魔法を出している感覚は殆ど無かった。別の所に隠れている誰かが、僕の仕草に合わせて魔法を使っているとさえ疑ってしまう。
そこで両手を前に突き出し叫ぶ。
「ギラガント&フィールデガ!!」
右手から雷鳴、左手から竜巻が飛び出し全ての的をなぎ倒し、電撃で焦がしてしまった。
「よ、四属性!!!!!」
ナービスはこれを見た途端に失神した。
「ナービスさん、大丈夫ですか」
僕は彼女に駆け寄り身体を揺らした。しかし彼女はピクリとも動かない……。
「ライフン」
全パラ―メータ異常に効く、国民的人気ゲームの呪文を唱えた。すると彼女は淡い緑の光に包まれ目覚める。そして彼女は突然号泣した。
「ああ、勇者様、ありがとうございます」
僕は訳が分からず、口をあんぐり開けるしかなかった。
「貴方様の魔法のお陰で、私が魔王に掛けられていた呪いが全て消え去ったのです」
僕は彼女の言っていることが全く信じることが出来ず、大がかりなドッキリを誰かに仕掛けられていると思わずには居られなかった。しかし、そんなスタッフなど何処にもおらず、ただ僕を勇者と崇める一人の神官が、涙を流しながら跪いているだけであった。
「ナービスさん、恥ずかしいから止めて下さい」
僕は彼女に声を掛けたが、一向に顔を上げない。仕方がないので
「勇者の言うことが、聞けないのですか!」
声を少し荒げて叱咤する。
彼女は頭をすぐ上げ陳謝した。
「なんとなく魔法を使えることは分かりました。これから僕は何をすればいいのですか?」
「あ、はい……この後に剣聖ダレン様が闘技場で勇者様の適性が知りたいとおっしゃっていて、お断り出来ませんでした……」
「適性検査なら別に問題ないと思うんですが」
「恥ずかしながら、ダレン様は勇者降臨を信じておりません。腕は確かなのですが、性格は粗暴で、勇者様の化けの皮をひん剥いてやると……」
「それは怖いですね……」
「大丈夫です、先ほどの魔法なら絶対にダレン様に負けるはずはないと思います」
「そうなんですか!それなら安心出来ます。僕の魔法で勝てるなら問題ないですね」
「それが……あの威力なら、当たれば人は死んでしまいます」
僕はどうすればいいのか頭を抱えてしまう。暫く考えた末、妙案を思いつく。
僕は彼女にある条件で適性検査を受けることを、剣聖に伝えて貰うことにした。
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