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第百九十三話 王女と竜
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魔法陣から抜け出すと、ドラゴニア王国の竜王自らが、俺たちを出迎えに来てくれていた。
「竜王ガルム様、わざわざ私共を出迎えて頂き、誠にありがとうございます。この人間らが持ってきた案件は魔王様に伝えなければならないと思い、この地まで彼らを連れて参りました。ガルム様とおっちゃん様は、友好な関係を築いていると聞き及んでおりますので、後の事は宜しくお願いします」
エルゾナ皇妃は、ガルム竜王に向かって丁寧に頭を下げる。
「エルゾナ皇妃よ、彼らの願いを無下には断ることはしないので心配無用だ。頼まれた件は絶対に守ると約束させて貰う」
「それを聞いて安心して、国に帰れます」
彼女は満足そうに微笑んだ。
「「……ふぅ」」
俺と王女の口から思わず安堵の息が漏れる。
「ではお二人とも、交渉が上手く行くことを祈りますね」
「エルゾナ皇妃様、何の力も無い私に協力して頂き、感謝の言葉もございません」
皇妃は大きな胸をぶるりと振るわせ、魔法陣の中に消えていった。
「竜王様、挨拶が遅れました……私ローランツ王国の第二王女パトリシアと申します。魔王様にお取り次ぎをお願いしたく、ここまで来ました。どうか私の案件を魔王様に直接伝える事をお許し下さい」
「ドラゴニア王国の竜王ガルムと申す。人間の子よ、そんな堅苦しい挨拶は不要だ……詳しい話しは中でゆるりと話そうではないか」
彼は二人を青銅の塔に招き入れる――
「おっちゃんよ、思ったより早く会うことになったな」
「ああ。人生とは本当に読めないもんだ。あんたともう一度、生きている内に顔を突き合わせるなんて、思いもしなかった」
俺はそう言って大声で笑う。
「俺たちは魔王様に会いたくて、ここまで来た。なんとか彼女の願いを叶えて貰えないだろうか」
ガルムは俺の顔を見つめ、顎の下に手をやった後、口を開いた。
「その内容にもよると言いたいが、直接話しを通したいということも聞いている。結論から申せば、魔王様に会わすことは可能だ。ただ、魔王様がちゃんと国にいればという話しになる。正直に言わせて貰えば、魔王様とは数年間、連絡を取り合ってはいないのだ……。我らに道を示した後、余程の問題がない限り国政に口を挟むこともなく、自由気ままに生きておられる、そんなお方なのだ」
「全く連絡方法が無いのか!?」
テーブルの上で前のめりになって、声を荒げる。
「おっちゃんよ、慌てるでない。我らには大きな翼があるので、何かあれば魔王様の住まいまで一っ飛びでいける」
魔王と連絡を取る方法をガルムが言った。
「ふはっ……行き当たりばったりって事か!?」
「魔王城に行けば、誰も居ない訳ではない。言付けを頼めば連絡は取れるはずだ。直接お前を乗せて、魔王城に行っても良いが、まずは家臣を行かせて、報告を待つのが良かろう。今から行けば、明日には結果も判るはずだ」
「よろしく頼む」
俺はガルムに頭を下げた。
「ガルシアよ、話は聞いてたであろう、すぐに魔王城に飛んで行ってくれ」
「はい、行かせて頂きます」
「悪いな、ガルシアさん……」
「竜王様の命だ! それに貴方には返せないほどの借りがあるので、出来るだけ早く、魔王様に取り次いで貰うように頑張らせてもらう」
「ふはは、そうだな。これぐらいのお使いで、借りが返せれば楽なことはない」
「竜王様、お戯れを」
三人は声をそろえて笑った。
「この後、ソラとは会っていくかね」
ガルムに突然振られた言葉に、息が詰まりそうになる。
「俺たちは、ここで会わないのが一番だよ……気を遣ってくれて感謝する」
彼の申し出をきっぱりと断った。
「ソラは妻と一緒に、塔とは別の場所に居るのでばったりと会うことはないので、その心配はせずとも良い。ゆっくり寛いで行かれよ」
「それを聞いて安心した」
会談を済ませた俺たちは、メイドのアリッサさんに案内され、貴賓室に向かう。
「では、このベルを鳴らせば伺わせて頂きます」
そう言って、彼女は部屋から出て行った。
「なんとか最後の関門も、通過出来た感じだな」
「はい、おっちゃんにはなんと言って良いのか……」
「まだ依頼は達成されてないので、その言葉は最後まで取っておけ」
「はい……」
彼女は弱々しく頷いた。
「ドラゴンと聞いていたのですが、まさか緑髪の人とは思いもしませんでした」
「それは、違うぞ。正体はどでかい竜だと言えば失礼だが、身体を小さくすることで、食べ物を消費する量も押さえられるのであの姿をしていると聞く。小さくなった姿は、古代の神様を模した姿で、人間に合わした訳ではない――『人化』という言葉は、竜族にとって侮蔑の呼び方なの気をつけた方が良い」
俺はアリッサさんからの受け売りの知識を、そのまま彼女に伝えた。
「そ、そうなのですか!? 」
彼女は目を丸く見開いて、大きな部屋の中で声を上げた。
パトリシア王女に、ドラゴニア王国の歴史などを話して時間を潰していると、扉からノックの音が聞こえた。アリッサさんかと思い
「入ってこいよ」
と、軽い調子で中から声を掛けた。すると部屋に入ってきたのはアリッサさんではなく、赤髪が腰まで真っ直ぐに伸びた、目つきが鋭い美女だった。
「おっちゃん、久しぶりだな」
クラリスが、俺に頭を深々と下げ挨拶をした。
「おいおい、気持ち悪いからいつものように罵ってくれよ」
「馬鹿者! 私がいつあんたを罵ったと言うんだ!!」
「ふはは、そういうことだよ」
クラリスは耳先まで真っ赤に染まっていく。
「くっ……相変わらず口の悪いお人だ」
閉口したようにクラリスが小さく呟いた。
「からかって悪かった。で、何のようだ?」
俺は首をひねって、尋ねてみた。
「私の命を救って貰ったお礼を、いいに来た……」
少し寂しげな表情で、クラリスはおっちゃんに対する感謝の言葉を述べた。
「俺が何をしたか分からんが、お礼というなら、あの夜のことで十分対価は頂いている」
それを聞いた彼女の顔は、ゆでだこのように真っ赤になり、頭から湯気を立てる。
「こ、殺す……」
彼女は腰に差した刀を握りしめ、身体をブルブルと震わせていた。どうやら俺は赤い竜をからかいすぎたらしい……。
「竜王ガルム様、わざわざ私共を出迎えて頂き、誠にありがとうございます。この人間らが持ってきた案件は魔王様に伝えなければならないと思い、この地まで彼らを連れて参りました。ガルム様とおっちゃん様は、友好な関係を築いていると聞き及んでおりますので、後の事は宜しくお願いします」
エルゾナ皇妃は、ガルム竜王に向かって丁寧に頭を下げる。
「エルゾナ皇妃よ、彼らの願いを無下には断ることはしないので心配無用だ。頼まれた件は絶対に守ると約束させて貰う」
「それを聞いて安心して、国に帰れます」
彼女は満足そうに微笑んだ。
「「……ふぅ」」
俺と王女の口から思わず安堵の息が漏れる。
「ではお二人とも、交渉が上手く行くことを祈りますね」
「エルゾナ皇妃様、何の力も無い私に協力して頂き、感謝の言葉もございません」
皇妃は大きな胸をぶるりと振るわせ、魔法陣の中に消えていった。
「竜王様、挨拶が遅れました……私ローランツ王国の第二王女パトリシアと申します。魔王様にお取り次ぎをお願いしたく、ここまで来ました。どうか私の案件を魔王様に直接伝える事をお許し下さい」
「ドラゴニア王国の竜王ガルムと申す。人間の子よ、そんな堅苦しい挨拶は不要だ……詳しい話しは中でゆるりと話そうではないか」
彼は二人を青銅の塔に招き入れる――
「おっちゃんよ、思ったより早く会うことになったな」
「ああ。人生とは本当に読めないもんだ。あんたともう一度、生きている内に顔を突き合わせるなんて、思いもしなかった」
俺はそう言って大声で笑う。
「俺たちは魔王様に会いたくて、ここまで来た。なんとか彼女の願いを叶えて貰えないだろうか」
ガルムは俺の顔を見つめ、顎の下に手をやった後、口を開いた。
「その内容にもよると言いたいが、直接話しを通したいということも聞いている。結論から申せば、魔王様に会わすことは可能だ。ただ、魔王様がちゃんと国にいればという話しになる。正直に言わせて貰えば、魔王様とは数年間、連絡を取り合ってはいないのだ……。我らに道を示した後、余程の問題がない限り国政に口を挟むこともなく、自由気ままに生きておられる、そんなお方なのだ」
「全く連絡方法が無いのか!?」
テーブルの上で前のめりになって、声を荒げる。
「おっちゃんよ、慌てるでない。我らには大きな翼があるので、何かあれば魔王様の住まいまで一っ飛びでいける」
魔王と連絡を取る方法をガルムが言った。
「ふはっ……行き当たりばったりって事か!?」
「魔王城に行けば、誰も居ない訳ではない。言付けを頼めば連絡は取れるはずだ。直接お前を乗せて、魔王城に行っても良いが、まずは家臣を行かせて、報告を待つのが良かろう。今から行けば、明日には結果も判るはずだ」
「よろしく頼む」
俺はガルムに頭を下げた。
「ガルシアよ、話は聞いてたであろう、すぐに魔王城に飛んで行ってくれ」
「はい、行かせて頂きます」
「悪いな、ガルシアさん……」
「竜王様の命だ! それに貴方には返せないほどの借りがあるので、出来るだけ早く、魔王様に取り次いで貰うように頑張らせてもらう」
「ふはは、そうだな。これぐらいのお使いで、借りが返せれば楽なことはない」
「竜王様、お戯れを」
三人は声をそろえて笑った。
「この後、ソラとは会っていくかね」
ガルムに突然振られた言葉に、息が詰まりそうになる。
「俺たちは、ここで会わないのが一番だよ……気を遣ってくれて感謝する」
彼の申し出をきっぱりと断った。
「ソラは妻と一緒に、塔とは別の場所に居るのでばったりと会うことはないので、その心配はせずとも良い。ゆっくり寛いで行かれよ」
「それを聞いて安心した」
会談を済ませた俺たちは、メイドのアリッサさんに案内され、貴賓室に向かう。
「では、このベルを鳴らせば伺わせて頂きます」
そう言って、彼女は部屋から出て行った。
「なんとか最後の関門も、通過出来た感じだな」
「はい、おっちゃんにはなんと言って良いのか……」
「まだ依頼は達成されてないので、その言葉は最後まで取っておけ」
「はい……」
彼女は弱々しく頷いた。
「ドラゴンと聞いていたのですが、まさか緑髪の人とは思いもしませんでした」
「それは、違うぞ。正体はどでかい竜だと言えば失礼だが、身体を小さくすることで、食べ物を消費する量も押さえられるのであの姿をしていると聞く。小さくなった姿は、古代の神様を模した姿で、人間に合わした訳ではない――『人化』という言葉は、竜族にとって侮蔑の呼び方なの気をつけた方が良い」
俺はアリッサさんからの受け売りの知識を、そのまま彼女に伝えた。
「そ、そうなのですか!? 」
彼女は目を丸く見開いて、大きな部屋の中で声を上げた。
パトリシア王女に、ドラゴニア王国の歴史などを話して時間を潰していると、扉からノックの音が聞こえた。アリッサさんかと思い
「入ってこいよ」
と、軽い調子で中から声を掛けた。すると部屋に入ってきたのはアリッサさんではなく、赤髪が腰まで真っ直ぐに伸びた、目つきが鋭い美女だった。
「おっちゃん、久しぶりだな」
クラリスが、俺に頭を深々と下げ挨拶をした。
「おいおい、気持ち悪いからいつものように罵ってくれよ」
「馬鹿者! 私がいつあんたを罵ったと言うんだ!!」
「ふはは、そういうことだよ」
クラリスは耳先まで真っ赤に染まっていく。
「くっ……相変わらず口の悪いお人だ」
閉口したようにクラリスが小さく呟いた。
「からかって悪かった。で、何のようだ?」
俺は首をひねって、尋ねてみた。
「私の命を救って貰ったお礼を、いいに来た……」
少し寂しげな表情で、クラリスはおっちゃんに対する感謝の言葉を述べた。
「俺が何をしたか分からんが、お礼というなら、あの夜のことで十分対価は頂いている」
それを聞いた彼女の顔は、ゆでだこのように真っ赤になり、頭から湯気を立てる。
「こ、殺す……」
彼女は腰に差した刀を握りしめ、身体をブルブルと震わせていた。どうやら俺は赤い竜をからかいすぎたらしい……。
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